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朱鷺と鴉

「…んー、あー、もー!!」


 深夜のストラウル跡地。
誰もいない廃墟ビルの一室で、私は不満の声をあげていた。

___グループの雑務を遂行せよ。
ヴァイスの一件以来、ホウオウ様に直接呼び出され、かつその命令を受けた私は、
日夜、今までの失態を埋めるかのように仕事に励んでいた。
雑務とはいっても、主な仕事は『後始末』という奴で、使われなくなった兵器の処分、
残骸の回収、また、ノア&ノルン、クランケ=ヘルパーのような反逆者への処罰。
ちなみに今回のクランケの処分についてはエミウミが担当するそうなので、私は関係ない。
そしてもう一つは、ホウオウグループが介したという証拠の隠滅。
無駄な殺人は合理化に反するのは分かっているけど、調査で犠牲0を目指して遂行するのは
意外に難しかったりする。私だけ?そんなことないし!リオくんだってユーイちゃんが絡むと
暴走するもん。
とにかく最近は、ホウオウグループ、というかホウオウ様の為に一生懸命働いていたのだ。
…とはいえ、


「一人じゃ辛いよ…この数。」


 私の足元には、破壊された擬人兵の数々。
これは、コヨリことCYR-00Aを元に作られた応用版…のようなものらしい。
戦ってみたところ、実力は本体に引け劣らず、それなりには強かったのだが、
試作段階というのこともあってか、少し本気を出したらあっけなく壊れてしまった。
私的にはパニッシャー、CYR-00Aを足して2で割ったような感じだったと思う。
…とまぁ、こんな風に試作段階の兵器のテストを行い、報告することもまた
雑務の内に含まれるのだ。
測定、解析、その後報告。ほうれんそう!


「疲れたー!」


 とりあえず私は床に寝っ転がり、一旦休憩することにした。
崩れかけた天井を見上げると、隙間から星空が見える。


「…はぁ~…」


 …鳥さんから告白を受けてから早数日、一応お礼は言ったけどそれっきりで、
肝心の返事はまだ返していない。日中学校にいても疲れでほとんど寝てるし、
放課後はスイネちゃんのおうちに行って花を置き、スイネちゃんの帰りを待っている。
そしてお仕事の時間になったらそこから離れて、遅くまで働いて、家に帰って就寝。
ここ最近はそんな調子だから、鳥さんとはあんまり話していない。…というか、鳥さんが
若干避けている節がある。ちょっと引っ掛かるけど、
まぁ原因は私にあるだろうかそれは仕方が無い。


「…うーん…」


 告白に関しての返事はもうすでに私の中で決まっている。
鳥さんの告白は喜んで受けるつもりだ。
もちろんそれはホウオウグループを裏切るという意味ではないし、
依然、私の中で一番大切なのはホウオウ様だ。そのことも、ちゃんと伝えるつもり。
…そう、返事は問題ない。


「何が問題って、シチュエーションが問題なんだよねぇ・・・」


 だって、だって一世一代の大告白だよ?
それを日常会話のように簡単に返すって、逆に相手に失礼じゃん。
恋する乙女にとって告白ってそれぐらい大事なんだよ!
さっき眠いからって言ったけど、学校で返事を返さなかったのはそれも理由としてある。
この答えは鳥さんだけ、強いて言うなら影さんに知って欲しいから。


「・・・とはいえ、なんとか上手い具合に二人っきりになれないかなぁ。」


 ゴロゴロと転がりながら、ない頭で一生懸命考える。
おうちにしたって、私のところじゃムードがないし、鳥さん家・・・は蒼さんがいるし。





「うーん・・・」
「何しているんだ。」
「ん?」

 声がした方を向けば、メガネをかけた男が怪訝な表情を浮かべ立っていた。
左目のレンズに浮かぶホウオウグループのエンブレム、
グループの中でもこんな凝った場所に証を持つ男はあの人しかいない。


「カラスさんだー、久しぶり。」
「・・・」
「あ、もう否定しないんだ。」
「お前には、言うだけ無駄だからな。」


 そう言ってカラスさんは、私の横を通り過ぎると壊れた擬人兵の残骸を手に取る。
私は少しだけ起き上がり、彼の背中に声をかけた。


「今日はあともう終わりー?」
「ああ。」
「やった。」
「これの片付けが終われば、な。」
「・・・カラスさんがやってよ、それ。」
「片付けも報告もお前の仕事の内だろう。」
「う、」


 人間であれば容易に規制がかかるほどバラバラになったガラクタ。
・・・とはいえ、一つ一つのパーツが重くないわけではなく、その上、
正確なデータを取る為に部品は全部回収しなければならない、
ボルトの一つまでもだ。
一個でも欠けたら確実にゼアが嫌味を言ってくるし、かなりめんどくさい。
げんなりしている私を見て、カラスさんがクク、と喉で笑う。


「まぁ、精々頑張るんだな。」
「そんなせっしょーな!」


 うぎゃー!と叫んでもカラスさんは手伝う素振りも見せないで、
壁に背もたれて、傍観し始めた。
・・・なんとなくだけど、カラスさんは私の『監視』役なんだろうなと思う。
裏切りとかじゃなくて、前回のような余計な行動をしないかどうかという程度で、
指示したのはおそらくあの男。
まぁでも、別に私はカラスさんのこと嫌いじゃないから居心地悪いわけじゃないし良いけどね。


「・・・あ、そーだ。」


 パーツを拾い上げながらふと、私は呟くとカラスさんがこちらを向いた。
なんともまぁ、いいタイミングで来てくれたものだ彼は。


「ねぇねぇカラスさん。」
「なんだ?」
「カラスさんは告白したことある?」


 そう言ったら、カラスさんは漫画みたいにずるっと滑り、
ずれたメガネを直しながら答えた。





「・・・なんだその質問は・・・」
「だから、好きな人に告白したことがあるのかなーって。」
「そんなの、リオトかユウムにでも聞けばいいだろう。何故俺なんだ。」
「たまたまそこいたから。」
「・・・・・・・・・」
「カラスさん、視線が痛いよ。」
「お前が変な事を聞くからだろうが。」
「・・・」


 半ば衝動的に立ち上がってスタスタとカラスさんの元へ。
少し様子のおかしい私に気付き、彼は少しだけ後ずさった。
そして私は一旦息を吸って吐くと、カラスさんを真っ直ぐ見てこう言った。

「あのね、女の子にとって告白はするもされるも大事なことなんだよ?
世間話するのと全然レベルが違うの。ある意味一生を左右する大事な儀式みたいなもので、
それをいい加減にやっちゃえば真剣な気持ちがなくなっちゃって、
後々「あー、なんであんなこと言ったんだろう。」ってなるんだよ。そんなのでいいの?
よくないよね!?第一、告白っていうのは大勢の前でするものじゃなくて二人っきりでひっそりと
行うのが普通なんだよ、じぇーけーなんだよ!でも鳥さんは人気者だから二人っきりになろうとも
そうは上手くいかないし、だからって皆の前で「私も好きだよ。」なんて答えたくないの!
だって冗談にしか聞こえなくなるかもしないじゃん!大事な大事な返事がそんな風に捉えられたら
嫌だよ私!だから参考に、って恋愛経験全然なさそうだけどもしかしたら稀な確立であるかもしれない
カラスさんに聞いてみようと思って聞いたら変な事って言ったよね?言ったよね!?
まずその考え方から間違ってるよ!いい!?恋愛する上で告白っていうのは」
「分かった!俺が分かったから落ち着け!!」


 一夜明けても喋ろうと思えば喋られるのに、カラスさんは私を宥めてそれを制した。
甘い、甘いよこの男は!恋愛を舐めきってる!
そう思っている私を余所に、カラスさんはもう一度メガネを直してこう言った。


「つまり、なんだ・・・お前は、その鳥さんと二人っきりになりたいと?」
「うん!」
「で、告白の返事をしたいと?」
「そう!」
「・・・それなら、二人でどこかに出掛けたらいいんじゃないか?必然的にそうなるだろ。」
「・・・・・・・・・」










朱鷺と鴉


「それだー!!」
「・・・(トキコでも気付かなかったのか、その発想に。)」

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最終更新:2011年05月31日 21:03