妙な視線を感じていた。
それは保健室に入ってからずっとだ。
なんなんだ?、気味が悪い…。
緑音ののかと何気ない会話をしながら室内をぐるりと見渡す。
そして窓に目が止まる。
それは不可思議な視線だった。
雀が一羽。
春には満開を見せた桜の、青々と芽吹く枝から室内を覗いていた。
雀はノラの注視には目もくれず、ある男を見つめていた。
玉置静流。
ちょうど氏型環の怪我の手当てをしている所であった。
彼の傍ではシベリアンハスキーのマサムネが尻尾を下げて心配そうに見つめている。
保健室にはいつも何かしらの動物がいるのが普通だった。
いかせのごれ高校ではごく当たり前の風景であった。
だから、たかが小鳥が一羽、
保健室の近くにしばらく居続けてもなんの違和感もない。
だがその雀の瞳は紫に光っていた。
あれは、確か…
がしゃああああん
後先考える前に黒妖犬を作り出し放つ。
黒い獣が一匹。
窓を突き破り、バードウォッチャーに襲いかかるべく牙を剥いた。
窓が割れる音に周囲の人間が驚き、振り向いたのと同時に、ガキンっという音が響く。
捕えたかと思った矢先、
数枚の葉が桜の木の上空から舞い落ちる中、
上空を見つめる獣の姿が視界に入る。
あ~ぁ逃がしちまった…。
「こ、こらぁーっ!だめじゃないかぁ!勝手に飛び出しちゃあ!!」
玉置が何やら慌てて黒妖犬に向かって棒読みな台詞を叫びだした。
ん?
「おいシゲ見ろ!犬じゃ犬!!あーんな高い木の上に乗ってて器用じゃのぅ!」
「本当だ。また玉置先生、犬連れてきたのか。雑種かなぁ?どう思う
ケイイチ」
「さ、さぁ雑種なんじゃないかな。そ、そそそんな事よりさ!早くカラオケに行こうよ!
リーダーが歌う新曲聴きたいし!ね!ね!!」
「なんじゃいケイ、そんなにわいの歌が聞きたいのか。ほな、さっさと行こうかのぅ!」
『タマちゃん怒り爆発まであと数分』
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「あら、あなた怪我をしたのね、かわいそうに。」
バードウォッチャーの頭を人撫ですると、
バードウォッチャーはその手に懐くようにすり寄る仕草をした。
機械にあらかじめ入力した動作の一つとはわかってはいても不思議と愛おしいものだ。
「おいで、下で手当てをするわ。」
ロゼは機械仕掛けの小鳥の嘴に軽くキスをした後、
バーの地下室へと降りて行った。
最終更新:2011年06月03日 17:39