とある辺境の地に、小さな国があった。そこでは、ルシェ族と呼ばれる種族は、迫害の対象となっていた。
ゆえに、幼くして差別をうけ、ボロボロの状態だったルシェ族の男の子を、国王が偶然に見つける。
王は、ルシェ族の恋人がいたが、王という立場により、人目につく所では被差別種族の彼女と会う事が出来なかった。
この日も彼女に会う為に裏路地に来た帰りに、男の子を見つけた。
王は、元々差別に対しては反対の考えを持っていた為、こう呼び掛けた。
―――――君さえよければ、我が城へ来ないか?
それが、10年程昔のお話。
「そろそろ着きますよ、姫様」
「・・・うん」
二人の若い男女が、小さな辺境の国へと続く道を進んでいた。
二人ともルシェ族のようで、少年の方は強固な鎧に身をつつみ、少女はいかにも王族、といったような服装だ。
「三ヵ月ぶりですか、あの国へ帰るのは・・・」
「・・・そうだね。」
「王様達は皆、怒るどころじゃ済まないんだろうな・・・。」
「・・・だろうね。」
あの国であったのだろう出来事を思い出していく。
「まぁ、素直に謝罪すれば、王様はお優しい方です、この事も許してくださるはずです。」
「・・・どうかな?」
少女は、王族でありながら、被差別種族のルシェ族だった。貴族達や、城に仕える者達からも、同じルシェである母とともに差別をうけていた。
だが、たった一人、王だけは彼女らのことを良くしてやっていた。
王の手回しにより、護衛の者や、勉学を教える者に、年の近いルシェを遣わせた。
たった一人の味方。たった一人の父――――
「・・・姫様?」
はっ、と現実に意識を戻した少女。
「さぁ、この門の先ですね。行きましょう。」
甦る記憶、込み上げる思い。
離れていたのはたった三ヵ月だが、感慨深い物がある。
そして、門を開いた瞬間、目に飛び込んで来たものは、
美しい、地獄だった。
「なっ―――!?」
「うそ・・・・」
一面に狂った様に咲き乱れる毒花があった。
「これは・・・ひどすぎる・・・!」
あちこちに血がこびりつき、結晶化した人もあちこちにいる。
「・・・・お父さん!お母さん!」
「!? 姫様!一人では危険です!姫様!」
城へ向かって駆け出した少女は、ためらいもなくフロワロの中へ足を踏み込み、自らを傷つけながらも進んでいく。
お父さん、お母さん、お父さんお母さん、お父さんお母さん―――!
無我夢中で、自分と母の二人で過ごした城の一室へとやってきた。そして扉に手を掛け、開いた先には、結晶と化した母がいた。
「い・・・いやぁぁぁぁぁ!!お母さん、お母さぁん!」
いつも自分の事を一番に考えてくれた、最愛の人の変わり果てた姿に、泣く事しか出来なかった。
良くみると、母はペンを握っている。
そのしたには、手紙らしき物があった。
それを手に取り、読んでみた。
最愛の娘、サンへ
貴女がいなくなってから、もう二ヵ月が経とうとしています。
この国はもう持ちません。竜に襲撃されている様です。
貴女の姉さまは、貴女のおつきの方―――確かコッポラちゃんよね、二人はサンがいなくなってから一週間後位かしらね、貴女達を見つけるまでは帰らない、と言って国を出て行ってしまったの。
今となっては正しい選択だったのね。
私は、何があろうと、いつか貴女達が帰って来るであろうこの城を決しては なれたりはしま せん。
もうあ まり手も 動かなくな ってきたわ、最 後に一 つだけ。
母親らし いことあ んまりしてあ げられな くて、ご めんね。
「うぅ・・・お母さん・・・」
自分へと宛てられた手紙を読んだら、また涙が止まらなくなってしまった。
「おーい、姫様、どこで――あ、いた!」
遅れて来た少年は、泣きじゃくる少女に驚き、理由を聞いた所、無言のまま手紙を渡された。
一通り読んだ後、少女の様子を見るとどうやらあまりよろしくない。
「私も・・・死にたいよ・・・」なんて言っている。
そんな彼女に、こう話し掛けた。
「・・・父様や母様がいなくなってしまったからといって、決して姫様は一人では無いという事を忘れないで。今、姫様は自分も死んでしまいたい、と思っているかも知れませんが、そしたらコッポラさんも・・・ボクも、とても悲しくなります。
貴女には、ボク達が一生ついていますから、死にたい、だなんてこと言わないでくださいよ。お母様やお父様の分まで、生きなければいけないんです。」その言葉を聞いた少女ははっとした表情で少年の方を向いて、
「・・・そうだね、ヒトの言うとおりだ・・・。軽はずみに変な事言って、ごめんなさい。」
分かってくれたのならいいんですよ、と、ヒトと呼ばれた少年は答えた。
姫が、強い心の持ち主であって良かった、と少年はほっとした。
それからほどなくして、かつて小さな国であった地をでて、これからどうするかを考えた。
少しして、サンと呼ばれた少女が言った。
「私・・・お母さんの手紙には、『竜』にやられたって書いてあったのみて、思ったの。竜を倒すって。あの国の様なとこ、増やしちゃいけないって。」
「・・・敵討ちという理由もあるんでしょう?あんまり褒められた事では無いんですが・・・。姫様が決めた事なら、ボクも、全力を尽くさせてもらいます!」
「・・・ありがと、ヒト。」
「!? ・・・お、お礼なんていいですよ!?ボクがやりたい事をやるまでですから!」
―――こうして、少年達の歩む道は、決まった。
最終更新:2013年04月22日 20:18