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思いっきりネタバレシリーズです。
斑鳩とななどらのネタかぶせです。

簡単なキャラ紹介を先に。
シンラ:ナイト(男) 男の詳しい外見なんてどーでもいいですよね?
カガリ:白ヒーラー(女) 脳内で衣装を黒ワンピに変換してください。
ヴァイス:白ローグ あれはきっと男装の女性
シュヴァルツ:黒ローグ あれはきっと(ry 

chapter1: [理想 ideal]

「大丈夫……いつかきっと、分かり合える日が来る」
「そして遠い未来へ、命は受け継がれるから……」

 俺は汗だくになって跳ね起きる。いつもの夢だ。あの手術を受けてからこの
かた、毎晩のように見る、あの夢。分かり合える? 馬鹿馬鹿しい。この戦い
は、俺たちと奴らの生存競争だ。人間がいままさに市場へと運ばれていく牛に
憐憫を感じるのは、その牛よりも自分のほうが絶対的に立場が上であり、牛の
運命のすべてを自分が握っていると確信しているからだ。牛と人間の立場が対
等であれば、そこには勝利感と達成感以外には存在し得ない。ましてや、分か
り合うなど。
「Activation confirmed. おはようございます、シンラ」
 いつもどおり、まるで感情のこもらない「おはようございます」が投げかけ
られる。
「いま何時だ、シュヴァルツ?」
「+1762.3、現地における24時間表記では0506です」
「朝か。ヴァイスと、カガリはどうしてる」
「ヴァイスは警戒斥候中。0515帰投予定、現時点での任務成功率は99.76%。
 カガリ女史は就寝休養中。ramp指数に基づく戦闘活動効率の規定値を維持す
るconscienceの回復まで、期待値で3042.5秒」
「あと2時間は寝かせてやってくれ。それから、コーヒーを頼む」
「了解。睡眠増強剤放出まで5秒。放出完了しました。ついては、提案なので
すが」
「分かってるよ」。いつものお説教だ。俺はシュヴァルツから熱い缶コーヒー
を受け取りつつ、思わずうんざりした声を出してしまう。
「この2,592,000秒での統計ですが、シンラとカガリ女史が休息前に性交渉を
行うほうが、カガリ女史の回復率に112.6%の向上が見られます。シンラも101.6%
の効率向上が確認されました。以上のデータに基づき、operation controlとし
て毎休息前3482秒以内での性交渉を推奨します」
 寝起きの缶コーヒーを飲んでいた俺は、思わずむせ返った。
「あ、あああアホか。そんなに毎晩毎晩もたねえっつーの」。しかも時間指定
つきかよ。3482秒……1時間弱? いやいやいやいや、違うぞ、何か問題が違
う。こいつらと話してると、どうも感覚が狂う。
「そのようなものなのですか? 平均的な成人男子のデータをもとに計算した
のですが」
「あのなあ」。そこで俺は違和感の原因に行き当たった。「まず、何より、だ。
嫁入り前の娘が、性交渉を推奨だの何だの、そんな言葉を淀みなく口にするな
っての」
「その指摘と、任務効率との間には、有効な相関が認められな」
「いいから俺の話を聞け。俺のメンタルを管理するのも、お前らの任務のはず
だな? 俺は、実際の中身がどうであれ、年端もいかない小娘相手に、スイー
ツなシモネタで盛り上がりたくはないんだ。オーケー?」
「了解しました、シンラの言語処理野に効率低下を確認。今後、慎みます」
「遠まわしに馬鹿にされた気分だ」
「いえ、直接馬鹿にしました」
「おま」
「ヴァイスが帰投。0515をもって警戒斥候に出ます。ご武運を」
 ツッコミを入れる隙もなく、シュヴァルツが薄明の森へと姿を消す。圧倒的
な質と量を誇る敵ですら、彼らを見つけるのは至難の技だ。俺の目で探して見
つかるはずもない。俺は缶コーヒーの残りを確認しながら、近くの切り株の上
に腰を下ろし、何とはなしにため息をついた。
 まったく、タケハヤも同じ思いをしてるんだろうか。あのアイテルって女も、
どこかシュヴァルツやヴァイスに似たところがある。エメル総指揮官とアイテ
ルを中心としたチームが造り上げたハイブリッド戦闘生命体なのだから、性格
が似ているのはある程度まで予想できるが。





326 名前:イカルガ[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 23:38:23 ID:d47zzsJW
 俺たちは、地球に侵攻してきた異星生命体である「竜」との戦いにおける切
り札として生産された、人造兵士だ。とはいっても、ベースはあくまで人間だ
し、俺自身、普通の人間として育ってきた記憶はある。偽造記憶である可能性
は否定しないが、そこを疑っても仕方ないだろう。偽だろうが、本物だろうが、
俺の記憶は俺のものだ。人造兵士であろうがなかろうが、俺は俺であるように。
 この人造兵士の第一号になったのが、いまや人類戦士の二つ名で呼ばれるよ
うになったタケハヤ。彼は竜の遺伝子を体内に取り込むことで、文字通り人間
を超越した。その代償は大きかったが、彼が踏み出した一歩によって、押され
っぱなしだった人類は巻き返しを始めている。
 俺はタケハヤと同じ、第一世代の人造兵士に相当する。俺にも竜の遺伝子が
投入されているが、タケハヤのような大御所クラスの竜ではない。俺は人類が
なし得る限界程度であれば容易に超越できるし、そこらの竜に遅れをとること
もあり得ないが、本当にヤバイどころが相手となるとタイマンは到底不可能だ。
だからこそのチームだが。
 カガリは、第二世代の人造兵士になる。第一世代での数多くの失敗をもとに
理論化された生産工程によって、彼女らの世代は高い生存率と適応率を見せて
いる。身体にかかる負担も低いようで、潜在的には俺よりもタフだ。ただ、微
妙な差とはいえ爆発力に欠ける。
 ヴァイスとシュヴァルツは、第三世代――あるいは、完全に新世代の戦闘生
命体だ。第一世代・第二世代で得た教訓をもとに、人間のもつ生物としての弱
点を補うように、野生生物の遺伝子が配合されている。生存率と適合率はきわ
めて高く、自己繁殖も可能とあって、戦争が超長期戦になった場合における決
定力として期待されている。
 しかしまあ、いくら野生生物の遺伝子を配合したからって、猫耳娘が量産さ
れるってのはどういう理屈なんだろうか。お偉さん方は、文化統計的に見て親
しみやすい外見を構築することで、既存の人類種からの忌避反応を低減させる
必要があったとか何とか言っていて、実際に彼・彼女らが登場するプロモ映像
は熱狂的なファンはついている。憑いている、に近いくらいに。
 ヴァイスはその手のプロモ映像の収録に参加したこともあるそうで、綺麗に
化粧して水着を着た写真を見せられたことがある。戦車とは男性の性的願望を
具現化した兵器であり、それゆえに陸戦の主力となり得たのだと論じた軍事科
学者が大昔にいたそうだが、してみるとその議論はそこまで完璧には間違って
いないということか。アホらしいことこの上ないが、そのアホらしさを大真面目に
追求して大金まで投じてしまえるのがエメル総指揮官の総指揮官たる所以かも
しれない。
 彼女は、信じられないくらい、既存の価値観や習慣に固執しない。自分は人
間ではないと言わんばかりに。その果断さが、人類の生存を維持してきた。

 ともあれ、いずれの世代にしても、普通の人間たちや、あるいはエメル総指
揮官にとってみれば、俺たちは鉄砲玉以上の何かではない。俺たちは、人間で
ある以前に、武器なのだ。
 けれど俺たちにとってみれば、それはなんら語るべき問題ではない。武器で
あろうが何だろうが、俺たちは俺たちの命を生きている。だから、俺たちはた
だの武器ではない。武器は死なない。俺たちは死ぬ。死ぬために、俺たちは生
きる。生きねばならない。
 もしかしたら、俺たちの戦いは無為に終わるかもしれない。俺たちの夢も、
理想も、中途で破れるかもしれない。だが、それならばそれでいい。理想が実
現されなかったからといって、理想そのものが朽ちるわけではない。俺たちが
死ぬことによって生きる、そのことで、理想は誰かの手に委ねられるだろう。
 だから、俺たちに悔いはない。生きている今も。死ぬその寸前にも。





327 名前:イカルガ[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 23:42:07 ID:d47zzsJW
「シュヴァルツから入電。敵の偵察部隊を発見したとのこと。現状では0717に
コンタクトします。誤差プラスマイナス15%」
「カガリが起きる前に接敵する可能性は?」
「16%強。無視できる数字ではありません。1時間以内の活性化を提案します」
「寝起き悪いんだよなあ、あいつ。仕方ない。最低活動保障のラインで起こし
てくれ」
「了解。1726.8秒後、およそ30分で覚醒パルスを発信します」
「シュヴァルツには敵部隊のトレースを続けさせろ。ヴァイス、戻ったすぐで
すまないが、もういちど斥候に。他の部隊がいないか、確認を急げ」
「アイ・サー。シンラはどうします?」
「俺は、とりあえずコーヒーを飲み終えることにする」
「了解。では、ご武運を」
 ヴァイスが音もなく走り去っていった。俺は手元の缶コーヒーを一息であお
ると、タバコを取り出して火をつける。何を悠長なことをと言われそうだが、
チームの一人が動けない状態でバタバタあがいても仕方ない。

 黒いシンプルなワンピースに身を包んだカガリは、ハンモックの上で静かな
寝息をたてている。戦場にいるという緊張感は、まったく感じられない。でも
それは、俺たち全員に言えることだ。正直、任務を達成して本部に戻り、そこ
でマスコミのフラッシュを浴びてマイクを突きつけられるときのほうが、よほ
ど緊張する。
 俺は半分ずり落ちていた彼女の毛布をかけなおしてやる。30分に満たないと
はいえ、少しでもちゃんと眠らせてやったほうがいい。彼女が目覚めたら、野
営を畳んで戦闘の準備を進めねばならない。だがそれまでの間、彼女の寝顔を
見守る時間があってもいいだろう。秒で数えるような時間だとしても。
 無意識のうちに、ため息が出た。俺はタバコを地面でもみ消すと、武器の点
検を始めることにする。

 装備をひととおり点検して、野営の片付けに手を付け始めた頃、カガリが目
を覚ました。ハンモックの上でしばらく虚ろな目をしていたが、俺が戦闘準備
をしていることに気がつくと、のそりとハンモックから降りる。
「おはよう。だいたい30分くらい前、シュヴァルツが敵の偵察部隊を発見した。
現在もトレース中。ヴァイスは周辺の索敵。ヴァイス、報告を」
「異常ありません。敵偵察部隊は単体での行動であると判断します」
 インカムからヴァイスの落ち着いた声が聞こえる。シュヴァルツと違って、
ヴァイスはわりとファジーな報告をよこす。緊急時にはありがたい。
「わかった、シュヴァルツに合流しろ。ランデブーポイントの予測は?」
「46-85です。野営地から23分前後」
「了解、油断するなよ。シュヴァルツ、敵のデータを送ってくれ」
 インカムのマイクをオフにする。カガリはまだぼんやりしていた。俺は焚き
火をかき回して、地面に埋まっている缶コーヒーを掘り起こすと、カガリに投
げてよこす。
「ありがと。こんなもの、どこにあったの?」
「ここから30分くらい歩いたところにあるコンビニの自販機で買ってきたそう
だ。ヴァイスが手に入れた」
「コンビニ? 自販機? そんなものがまだあるの?」
「ここはそういう場所ってことだ」
 カガリはちみちみとコーヒーを啜っている。
「コインを入れて、ボタンを押したら、熱いコーヒーが出てくる。これだって
ひとつの理想よね。敵は、やっぱり、人間?」
「多分な」
「イヤになるわ」
 カガリは一息でコーヒーの残りを飲み干すと、荷物をまとめ始めた。俺は焚
き火を消し、自分の荷物を背嚢に放り込む。
「敵の装備確認。通常装備の歩兵1個小隊です。対竜装備は確認できず」
 インカムからシュヴァルツの声が聞こえる。
「了解、46-85で待ち伏せを仕掛ける。俺たちも移動を開始する。武運を」
「ご武運を」
 今日も長い一日になりそうだ。俺たちは背嚢を背負いなおすと、山道を歩き
始めた。



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最終更新:2013年05月05日 09:23