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しふぉんけーき - (2007/04/05 (木) 16:39:29) の最新版との変更点

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しふぉんけーき  朝の政庁。 小鳥のさえずりに耳をかたむけながら、摂政、七比良 鸚哥(ななひら いんこ)は登庁した。 うん、今日もよい天気。一日仕事がんばろう。 「ちょっと荷物多いんじゃなぁ~い?」 姫巫女さまの声がする。 (近くにおられるのか) 藻女(みずくめ)、神聖巫連盟の藩王である。この国では姫巫女とか巫女姫とお呼びするのがならわしだった。 「だってえ~」 わかばのみぽりんの声もする。 うんうん。藩王と国民のなかがよいのはよいことだ。 「お外の国に行くんですよ~。お着替え、ぼうし、たおるに、おさいふ、寒かったらいけないから上着も持って、お水あわなかったら困るからお薬も…」 うんうん。用意がよいのはよいことだ。 って……。 「姫巫女様、ご歓談中、ちょっと失礼いたします」 衝立の外から、声をかけ、入室した摂政が見たものは、部屋一面に広げられた荷物だった。 「摂政もこの荷物は多いと思うよねぇ」 「おはようございます~摂政さま~」 「そうですね、ちょっと多いかな…、って。これはなんですか?先ほど『お外の国』と言っておられたようですが」 努めて冷静に尋ねる摂政。 「しふぉんけーき、食べにいくです~!姫様と約束したですよ」 「そう。この前の戦いのときに。ね~♪」  先の戦いで他国の兵から食べにおいでとさそわれたという。 「一緒に食べにいこうって、約束したんだよ」 「しふぉんけーき?確か、この国にはないはずですが、もしかして…」 「うん。外国」 頭抱えて座り込む摂政。 「大丈夫。摂政がいるから政務はとどこおらないよ」 「そういう問題じゃありません!!」 思わず大声。 びっくりするみぽりんを見て、ちょっと冷静になる。 こほんと咳払い。 「藩王がそんな理由で国をあけるなんて、前代未聞です」 「すぐ帰ってくるよ~」 ぴきっときたが、我慢、我慢。 「摂政職は、そんな理由のためにあるわけじゃありません。ともかく中止。いいですね」 「え~」 不満そうなみぽりん。彼女が来てから、胃痛が増した気がする。 なにしろ姫巫女とあわせて二倍。 「中止です!お返事は?」 「は~い」 しぶしぶながら、素直に返事するみぽりん。 まあ、素直なところはよしとしよう。 「じゃあ、摂政が作ってくれるの?」 (何?!) 姫巫女の言葉にけーきけーきといいながら、くるくる踊るみぽりん。 「どうしてそういう話になるんですか」 「摂政が作ってくれるなら、出歩かないよ☆」 それはつまり、作らなかったら出歩くということか。 「………、わかりました」 ここは、腹をくくるしかない。 摂政は覚悟を決めた。 政庁の台盤所にこもって、摂政はむ~んと材料とにらめっこしていた。 小麦粉、砂糖、卵、油。 けーき自体は、外交のため赴いた地で食べたことがある。 そのとき、話のたねに作り方も聞いた。 (それがこんなところで役に立つとはなあ) はあとため息。 確か、小麦粉はふるうこと、黄身と砂糖をよく混ぜること、そして白身もふわふわによく混ぜること。 (あとは知らんぞ) 釜に材料を入れて、焼けるのを待つ。 (ところで俺は何してるんだろう…) もひとつ、盛大にため息。 これも摂政の職務に入るんだろうか。 なんか、涙でてきた。 できあがったけーきは、話に聞くしふぉんけーきほどふわふわではなかったが、姫巫女さまもみぽりんも、満足そうに食べていた。 (まあ、よかった) 笑顔の二人を見るのは、悪いきはしない。 (これでしばらく二人もおとなしく…) そう思ったときだった。 「摂政さま、ぷりんって、ご存じですかあ?」 (え、何、この展開) 「ぷりんかあ、食べたいねぇ♪」 「ね~?」 「いいかげんにしてください!!」 それから一月の間、政庁は、甘いかおりにつつまれるのだった。                                         おしまい
しふぉんけーき  朝の政庁。 小鳥のさえずりに耳をかたむけながら、摂政、七比良 鸚哥(ななひら いんこ)は登庁した。 うん、今日もよい天気。一日仕事がんばろう。 「ちょっと荷物多いんじゃなぁ~い?」 姫巫女さまの声がする。 (近くにおられるのか) 藻女(みずくめ)、神聖巫連盟の藩王である。この国では姫巫女とか巫女姫とお呼びするのがならわしだった。 「だってえ~」 わかばのみぽりんの声もする。 うんうん。藩王と国民のなかがよいのはよいことだ。 「お外の国に行くんですよ~。お着替え、ぼうし、たおるに、おさいふ、寒かったらいけないから上着も持って、お水あわなかったら困るからお薬も…」 うんうん。用意がよいのはよいことだ。 って……。 「姫巫女様、ご歓談中、ちょっと失礼いたします」 衝立の外から、声をかけ、入室した摂政が見たものは、部屋一面に広げられた荷物だった。 &ref(ケーキ.jpg) 「摂政もこの荷物は多いと思うよねぇ」 「おはようございます~摂政さま~」 「そうですね、ちょっと多いかな…、って。これはなんですか?先ほど『お外の国』と言っておられたようですが」 努めて冷静に尋ねる摂政。 「しふぉんけーき、食べにいくです~!姫様と約束したですよ」 「そう。この前の戦いのときに。ね~♪」  先の戦いで他国の兵から食べにおいでとさそわれたという。 「一緒に食べにいこうって、約束したんだよ」 「しふぉんけーき?確か、この国にはないはずですが、もしかして…」 「うん。外国」 頭抱えて座り込む摂政。 「大丈夫。摂政がいるから政務はとどこおらないよ」 「そういう問題じゃありません!!」 思わず大声。 びっくりするみぽりんを見て、ちょっと冷静になる。 こほんと咳払い。 「藩王がそんな理由で国をあけるなんて、前代未聞です」 「すぐ帰ってくるよ~」 ぴきっときたが、我慢、我慢。 「摂政職は、そんな理由のためにあるわけじゃありません。ともかく中止。いいですね」 「え~」 不満そうなみぽりん。彼女が来てから、胃痛が増した気がする。 なにしろ姫巫女とあわせて二倍。 「中止です!お返事は?」 「は~い」 しぶしぶながら、素直に返事するみぽりん。 まあ、素直なところはよしとしよう。 「じゃあ、摂政が作ってくれるの?」 (何?!) 姫巫女の言葉にけーきけーきといいながら、くるくる踊るみぽりん。 「どうしてそういう話になるんですか」 「摂政が作ってくれるなら、出歩かないよ☆」 それはつまり、作らなかったら出歩くということか。 「………、わかりました」 ここは、腹をくくるしかない。 摂政は覚悟を決めた。 政庁の台盤所にこもって、摂政はむ~んと材料とにらめっこしていた。 小麦粉、砂糖、卵、油。 けーき自体は、外交のため赴いた地で食べたことがある。 そのとき、話のたねに作り方も聞いた。 (それがこんなところで役に立つとはなあ) はあとため息。 確か、小麦粉はふるうこと、黄身と砂糖をよく混ぜること、そして白身もふわふわによく混ぜること。 (あとは知らんぞ) 釜に材料を入れて、焼けるのを待つ。 (ところで俺は何してるんだろう…) もひとつ、盛大にため息。 これも摂政の職務に入るんだろうか。 なんか、涙でてきた。 できあがったけーきは、話に聞くしふぉんけーきほどふわふわではなかったが、姫巫女さまもみぽりんも、満足そうに食べていた。 (まあ、よかった) 笑顔の二人を見るのは、悪いきはしない。 (これでしばらく二人もおとなしく…) そう思ったときだった。 「摂政さま、ぷりんって、ご存じですかあ?」 (え、何、この展開) 「ぷりんかあ、食べたいねぇ♪」 「ね~?」 「いいかげんにしてください!!」 それから一月の間、政庁は、甘いかおりにつつまれるのだった。 作・みぽりん                                        おしまい

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