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木乃花(このはな)は嫁へ行く
八千武(やちのたける)という男のもとへ
彼の国は広大ではあったが、野も山も荒れ果てた大地であった
木乃花は自分の国から持ってきた一本の花を植えた
夏に芽を出し、秋に幹を太らし、冬には枝を蓄えた
そして春になったら花を咲かせ、数多の花びらが彼の国を包んだ
そして幾年、彼の国は花の国として知れ渡るようになった

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いえ、めっさ別バージョンで!!!!!!!

                     ある企画会議での一言
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 何度もくぐった巫の門である。
 ボロマールはそれを見上げていた。
 荷物は、ほとんどない。ただ右手に大きな布袋を下げているだけである。
 ボロマールはそれを引きづりながら、巫の門をくぐった。

 巫の大通りは今日も人で賑わっていた。あちこちの店から客寄せの声が上がっている。
「よう、にいちゃん。どうだい、うちで何か買ってかないか?」
 ボロマールを引き止める声、それは巫一の衣服屋「高砂屋」の呼び込みだった。
 どうりで、どこかで見たことのある顔だ、ボロマールの右手にほんのわずか力がこもる。
 ここは初仕事の思い出の場所でもあった。
「いや、今日はやめとくよ。またの機会に」
 ボロマールは力ない笑みを浮かべて、その場を立ち去った。

 しばらく歩いたボロマールの前に、大きな鳥居が姿を現した。
 そう言えばここも……。
 ボロマールは視線を落とし、右手の布袋を見つめる。ここでの仕事は厄介だった。いや、戦争であったと言っても過言ではない、それほどの激闘だった。
 懐かしい気持ちが込み上げてきたボロマールの足は、気が付くと境内へ向かって動き出していた。

 祭も終わった白浜宮神社、てっきり静かな社だろうと想像していたが、境内では神祇官服にその身を包んだ人で溢れていた。境内の中央には「かつて神輿だった木材」が一カ所に集められ、小さな櫓のように積み上げられていく最中だった。
 何をしているのだろう、不思議に思ったボロマールは事情を知りたくなり、誰かに聞いてみようと、辺りを見回してみた。すると見知った顔が一人、忙しそうに指揮をとっている姿が目に入った。
「信乃さん!」
 ボロマールの声に反応した男、有馬信乃は、ボロマールを見て頭を下げると、側にいた神祇官に二言三言何かを言って、ボロマールの方へ近づいてきた。
「こんにちわ、ボロマールさん。何かご用でしょうか?」
「いえ、たいした用事ではないんですがね、これ、何やってるんですか?」
 ボロマールは積み上げられた木材を指差して問う。
「あぁ、これですか。これは神輿供養と言いましてね、ほら、この間祭で使った神輿あるでしょ。あれを弔う儀式ですよ。神輿を燃やして灰に変え、半分はこの境内に、残り半分を神輿用木材の植林地に撒くんです」
「ほうほう、なるほどー。何でそんなことをするんです?」
「神輿の魂と言いますか、まあそんなものを次の祭や神輿に引き継いでいく、と言った感じですかね。すべてのものには神が宿り、魂が存在する、そう言った思想から来ている式ですよ」
「すべてのものに、ですかぁ」
「ええ。生物はもちろん、神輿や社、それだけじゃなく、木や草と言った自然のものにも、衣服や剣のような人のてで作ったものにも。すべての物質には魂が存在するんですよ」
「なるほどー。いや、ありがとうございます。お仕事のお邪魔してすいませんでした。では、これで」
 気難しそうな顔のボロマールは、しかし時折、くもの晴れたような笑みを浮かべつつ、腕を組みながら、立ち去っていった。

 その日の夜、それは月のない朔の空。真っ暗な巫の街の片隅に、一人の男がいた。
「ふふふ、何を弱気になっていたんだろうな、俺は」
 腰に巻いた赤い褌を固く締めながら、彼は呟く。
「たとえ姿はなくしても、お前達には魂があったんだな」
 彼は右手に持っている布袋をさすりながら笑った。
「さあ行こうか。お前達の魂を引き継ぎに!」

「有馬様! 有馬様! 大変です、赤が現れましたっ!」
 草木も眠る丑三つ時、自宅で眠りこけていた信乃のもとに、大声を上げた役人が押し掛けてきた。
「赤だと! ち、こんな夜中にぃ!」
 寝癖の付き始めた頭をおさえながら、信乃は役人の前に姿を見せ怒声を上げた。
「姫さまと摂政さまにすぐに連絡を。それから越前藩国に至急連絡を入れて宇宙のデータを送ってもらえ。軍には民間人の対空避難誘導を伝達。それから……」
「あ、有馬様……、オーマではなくて。……小僧の赤です」
申し訳無さそうな声で、役人が信乃の言葉を止める。
「……」
「……」
「マルフンに連絡、至急街中に警戒網を。それから、一隊は被害のあった家へ向かわせろ。僕もすぐに着替えてそちらへ向かう」
 マルフン達への指示を出した信乃は小さな咳払いその場をしめて、急ぎ足で自室へ戻る。役人の目の前にあった障子が、ぴしゃりと音をたてて閉まった。

「ふははははははーっ!!!!」
 奇声のような笑い声をあげながら、屋根から屋根へと飛び移る黒い影。
 時折止まっては手に持った布袋から何かを掴んで空へと投げる。
 粉のようなその物体は、風に乗って巫の街の至る所へと降り注いでいた。
「いたぞ! あの屋根の上だ!」
 松明を持った役人が屋根を指差して仲間に報せる。
「ふははははー。お前達のような輩に捕まるものか! これでも食らって成長するが良い!」
 赤は布袋から粉を掴んで役人達に浴びせる。
「うわー! げほげほっ! な、なんだこれはー!?」
「漢の魂! 勇ましき神の権化! お前達にもしっかりと注入してやるぞ!」
 そして赤はまた隣の屋根へと飛び移り、布袋の粉をばら撒きながら走った。
「お、追えー! やつを逃がすなー!」

「一体やつは何をしたかったんだ?」
 翌日、信乃が被害にあった家や店をすべて回った後、首を傾げながら政庁に戻ってきた。
 被害にあったのはすべて過去に褌小僧の被害にあった場所の近辺であった。そして、今回、褌は一つも盗まれてはいなかったが、家屋中が灰まみれになっていた。
 どうやら昨晩現れた赤は、過去自分が盗みに入ったところへ何かを燃やした後の灰を撒いただけのようである。
 まったく不可思議な事件に、この後しばらくの間、信乃は頭を悩ませることとなった。

 灰まみれになった男が一人、入国管理局を訪れた。
「すいませーん、この国に移住したいのですが……」
 対応口の奥からキセルをひょこひょこと上下させながら役人が姿を現した。
「あいよー、っと。おいおい、あんたも昨夜の被害にあったのかい?」
「被害? 何かあったんですか?」
 灰まみれの男が首を傾げる。
「いや、あんたのその灰まみれの格好さ。昨夜褌小僧が現れて街中に灰を撒いていったって話だが、あんたもそのせいでなったんだろ?」
「はははー、そんなことないですよ。この灰はね、漢の魂の継承ですよ!」
「そ、そうなのか? まあいいや、入国だったな。そこの書類適当に埋めといてくれや」

 その日、巫の国民台帳に新しく「ボロマール」という名が刻まれた。

<了>