<秘境ハンター>
「ふふふふふふ…」
ガイドブック片手に不気味な哂い声をあげるのは、小柄な少女だった。
リュックサックにヒノキの手桶、手ぬぐい。そして温泉浴衣。
完璧な装備である。
少女が手に持つのは自作「秘境100選」のマップ。
さっきまで100選のひとつである神聖巫連盟の温泉につかってきたところである。
マップには、達成のあかしとして温泉を管理するおばちゃんに「はいりました」と「筆」(ここが重要!!)で書いてもらった。
神聖巫連盟には秘境とよばれる場所が多く存在する。
実際にはのんびりした農業国であるがために、開発が進んでないだけなのだが、だからこそ手付かずの自然やら、人の手垢にまみれていない場所が数多く存在する。
「人が行った場所に追随するなんて邪道よ!自分で開拓してこそ秘境ハンターというものっ!!」
握りこぶしで力説する。
あ、一人目をあわせないようによけていった。
そして今、ハンターが降り立つのは「水薙島(みずなぎじま)」。
神聖巫連盟伝承の発祥の地、の一つである。
この海沿いの地区は観光ルートからやや外れた場所にあるのと、ガイドにも「美しい海がある」という記述がわずかにあるだけなので、足を伸ばす観光客は少ない。
ましてや伝承を聞き、それを目当てに訪れる者は皆無。
子供が親を守って死んで島になるというありえない話だが、そんなこたあ重要じゃないっっ!!
伝承を胸にきざみ、この地に降り立ち、その証拠を書き留める!これぞ醍醐味!!
「すいません!!」
そこにいた人に声をかける。
「は、はいっ?」
「ここが「水薙島(みずなぎじま)」ですよね?」
「んー、どうだっけ?」
首をかしげる地元民(たぶん)。
地元民は案外伝承やら地元の地理にうといのだ。(注:「秘境ハンター主観」)
「そうなんです!!だから、この、じゃーん!秘境100選にサインしてください!!」
数歩後ろに下がったが、その地元民(決まってる!)は「確かに来ました」と書いてくれた。
「ふふふふふふ…、これでまた一つ制覇したわ」
コンプリートまであと一息!
でも、秘境ハンターは知ってしまった。
秘境は100なんていう少ない数字では語りつくせないことを。
「100選コンプリートしたら、秘境1000選ね…」
ふっと笑みがもれる。
そして秘境ハンターは今日もニューワールドをかけめぐる!!
~fin
最終更新:2008年04月09日 13:59