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昔、影の薄い子がいました。
一緒に遊んでいても誰も名前を知らず、いつの間にか現れていつのまにかいなくなっているそんな子どもでした。
その子の名前は誰も知らないけれど、誰も気に留めることなく仲良く遊んでいました。
けれど、いつしかその子と一緒に遊ぶ子ども達がいなくなりました。
もう子どもと一緒に遊ぶような歳じゃなくなったのだろうかとしばらく噂されましたが、元々名前も知られていなかったのですぐにそんな噂も消えていきました。
けれど、それからすぐ、夜道を歩いていると誰かの足音がついてくるという話が聞かれるようになりました。
初めのうちは物の怪の仕業だとかいう噂もありましたが誰から言い出したのか名前のない子が忘れられたのが寂しくてついてきていると言い出し、いつしか夜道についてくる足音をその子の仕業だというようになりました。
物の怪の仕業であれば恐ろしいけど、あの子なら怖くない。子どもの頃、一緒に遊んだことのある者たちはそういって夜道で足音に気づくと子どもの頃の思い出話をしていました。
そうした時はその子も嬉しいのでしょうか、足音がいつもより楽しそうだったという事です。
けれど、村の皆が足音になれた頃ふっつりと足音を耳にする事がなくなりました。
足音だけになった子を探すのはどうしたらいいかわかりませんでしたが、それでもみんなが探しました。
寂しい夜道を足音だけだったけれどそばに居てくれた事に感謝していたのです。
けれどいつまでたっても足音は見つかりませんでした。
とうとう村人達も諦め、せめて墓を作ってやろう。
名前も姿もわからないけれど、同じ村の仲間だったのだからせめて俺達が弔ってやろう。
そういって村人達が足音だけの子の墓を作ろうとすると何かが邪魔をします。
村人が道を歩くと見えない何かが通せんぼうします。
最初は一体何なのかわからなかったけれど、村人達はその見えない何かが足音の子の姿だと気づきました。
気づいてもらえなくなった子がまだ生きている事を一生懸命伝えようとしているのだと。
名前も顔もわからなかった子どもは足音だけになり、とうとうその足音さえ無くしてしまったのです。
このままだと遠からずどこに居るのかさえわからなくなると気づいた村人達は、お墓ではなく家を建ててやることにしました。
きっと道を塞いでも誰も止めることができなくなる、けれど家があればそこに居るってわかるから。
その子に寂しい思いをさせないですみます。

それが今も残っている誰も住んでいない家です。
今もそこにいるかわからないけれど、いつまでも仲間だと伝えるために、お祭りの時や会合はその家でやっています。
誰も住んでいないけど、いつも誰かが居ます。
寂しい思いをさせないで済むように。
だからみんなも寂しくないようにたまには遊びに行ってあげてほしいな。