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ss@5スレ(その2) - (2006/01/21 (土) 20:03:16) の1つ前との変更点
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&aname(birthday1)
321 名前:誕生日SS-1-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 00:07:34 ID:???
「お母さん、そろそろ行って来るわね」
七瀬が玄関からそう声を掛けると、パタパタと足音を立てながら母親がやってきた。
「はい、いってらっしゃい、ナナちゃん」
「うん、行って来ます。帰ってくるのは19日になるから宜しくね」
「はいはい。でも明日の誕生日を挟んで二泊三日の出張なんて大変ねぇ…
本当だったら18日は御泊り込みで、織屋君と一緒に過ごすトコだったのにねぇ」
「え!? ええ…。で、でも仕事だから…」
「そうねぇ、仕事ならしょうがないわよねぇ。まぁ兎も角、お仕事頑張ってね、いってらっしゃい」
「い、行って来ます…」
「織屋君に宜しくねぇ」
「━ッ!」
全てを見通すかのような母親の細い目からの暖かい眼差しを背に、七瀬はそそくさと家を出た。
「全く、我が母親ながら、何ていう勘の良さなのかしら…」
家を出る際のやり取りを思い出しつつ、七瀬は呟いた。
確かに今日、明日は泊り込みの出張があるが、その仕事は明日の午前中には片付き、
18日の午後からはフリーになっていて、翌19日は休暇を取っていたので、誕生日は浪馬と一緒に過ごす事になっていた。
「ひょっとして私の生活全てを把握して…ううん、流石にそんなことは━━━って、あら…?」
駅に向かう途中の広場に見慣れた姿があった。
「あれは…浪馬? 何でこんな場所に居るのかしら…?」
そこにはベンチに座り何かをしている浪馬が居た。自分は出張のため、いつもより大分遅い時間に家を出たが、
仕事のある浪馬が、こんな時間にこんな場所に居るのは少しばかりおかしい。
「浪ま━━━」
「でも高遠さんには言わなくて良かったの?」
「そりゃあ、こんなこと言えやしませんよ」
何故此処に居るのか聞いてみれば分かることだと、浪馬に声を掛けようとした時、
浪馬の横に女性が座り、二人が話し合っていることに七瀬は気付いた。
345 名前:誕生日SS-2-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 00:31:19 ID:???
(あの人は誰…? 何を話しているの…!?)
七瀬は思わず二人からは見えない様に身を隠した。
「でも…、貴方達が卒業してから随分経つから、そういうことも考えるわよねぇ…」
そのままの状態で、そっと浪馬と女性の様子を窺う。
浪馬の隣に座るのは、自分より年上であろう、髪に軽くウェーブのかかった綺麗な女性だった。
「いや、まぁ…って、そんな感慨深げにならないで下さいよ、みさき先生」
(みさき先生…? っ! 確か、私達が三年の時に赴任してきた美術教師…!)
体調を崩した美術教師に代わりにやってきた美術教師で、若く、そして綺麗な容姿をしていたため、
男子生徒からの人気があった女教師のことを、浪馬の言葉で思い出した。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「そうですね」
二人の様子をもやもやとした気持ちで窺っていると、二人はベンチから立ち上がり駅へと向かい出した。
(何で、浪馬がそんな人と一緒に…? ━━━ッ!?)
そんな七瀬の目の前で、突然みさきは浪馬と腕組みを始めた。
「ちょっ…! せ、先生、人前ですよ!」
「いやぁ、やっぱりこういう幸せな気持ちは共有しないと駄目じゃない♪」
「共有って…! 誰かに見られたら…」
「いいから、いいから。しかし浪馬君、随分と言葉使いが丁寧に…」
「そりゃ、いい加減、俺も社会人ですから、それくらいは…」
仲睦まじげに駅構内へと入っていく浪馬とみさき。
そんな二人の背中を、七瀬はただ呆然と見詰めることしか出来なかった…
「何、これ…、どういうことなの……浪馬………」
371 名前:誕生日SS-3-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 01:03:54 ID:???
18日夕方。七瀬は浪馬が予約したというレストランに一人先に着き、昨日の駅前広場でのことを考えていた。
『高遠さんには言わなくて良かったの?』
『貴方達が卒業してから随分経つから、そういうことも考えるわよねぇ…』
『やっぱりこういう幸せな気持ちは共有しないと駄目じゃない♪』
昨日から頭の中で響くみさきの言葉が、七瀬に嫌な予感を走らせていた。
(ううん…、そんなことはない。きっと昨日のアレは誤解よ………
いいえ、そもそもあれが浪馬っていうのも見間違え━━━)
「ワリィ、七瀬、遅れちまって、スマン!」
丁度その時、浪馬が店内に入ってきた。
「う、ううん。私も今来たところだから…」
「そうか? いや、今抱えている裁判がさ、急に厄介なことになっちゃって………」
さっきまで頭の中で考えていたことを忘れ、目の前に座った男を見詰める。
その表情は、今まで自分が愛してきた織屋浪馬その人の表情と何ら変わりなく、
自分が予想していたことを切り出そうとしている男とはとても思えなかった。
(うん、そうよ… 昨日のは何か用事で、私との仲を………)
「…んなわけで……って、おい、聞いてるか、七瀬?」
「…えっ、あっ……うん、な、何?」
浪馬の顔を見たら、先程まで考えていたことが馬鹿馬鹿しく思え、
急いでその考えを打ち消し、自分の誕生日を目の前の愛する男と楽しむことにした。
「いや、だからさ…、最近忙しかったから、お前のことを考えてやれる余裕がなくてさ…」
「あら、忙しいのはお互い様よ。それに私はこうして二人一緒に居られるだけで十分よ」
「でも……その、折角の誕生日なのにさ…」
「うん、誕生日なのに?」
「えっと、時間が無くてさ…、その…プレゼントの用意が出来なかったんだ…」
「…う、うん………」
ふと先程まで心を占めていた考えが再び頭の中を過ぎる。
392 名前:誕生日SS-4-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 01:34:38 ID:???
浪馬という人間は、普段はふざけた所が見受けられるが、肝心な時にふざけることは絶対に無い。
事実、七瀬自身、誕生日やクリスマスなど、その手のイベントの時に愛されることを実感しても、
ガッカリさせられることは無かった。しかし…
「けどさ、プレゼント無しの誕生日ってのもアレだろ? でさ…」
昨日聴こえてしまった会話が頭の中で再び繰り返される。
『高遠さんには言わなくて良かったの?』
『こんなこと言えやしませんよ』
「…部屋を探したら、頼津通ってた頃には受け取って貰えなかった…」
やはりそうなのだろう。例え忙しくとも以前の浪馬なら彼女への想いを疎かにすることは無かった。
「…昔の物って思うかも知れんが、今だからこそっていうもあって…」
もう七瀬はこの場に居るのが耐えられなくなった。
「…コレを、その…う、受け取って……」
「もう、いいわ」
「…らえな……………え?」
最期の時くらいは、昔の自分に戻ろう━━━そう思い、七瀬は湧き上がって来る感情を抑え続けた。
「いいわ、そんな無理してプレゼントを渡してくれなくても。
新しい恋人の方に手が懸かって、こちらにお金を回す余裕が無いんでしょ」
「………へ?」
「いいのよ、演技なんてしなくても。………昨日、駅前で見させて貰いましたから」
「………ッ! 七瀬っ、みさき先生との…!」
「ええ、腕なんて組んじゃって随分と親密なようで」
「バ、馬鹿、あれは違くて…」
「もういいって言ってるでしょ!!」
とうとう堪えきれなくなり、七瀬は感情のまま立ち上がった。
そのまま浪馬の顔を見ないようにして出口へと向かう。
402 名前:誕生日SS-5-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:15:53 ID:???
「待てよ、七瀬っ!」
浪馬は七瀬の腕を掴み、止めようとした。
そんな浪馬に愛しさが込み上げる…が、自分を奮い立たせ七瀬は言葉を続けた。
「……うん、ありがとう……、貴方と過ごした時間、凄く楽しかったわ……
でも、もういいから……さようなら……!」
七瀬は力尽くで浪馬の手を振り解くと店を後にした。
店外に出るともう駄目だった。
感情のまま、眼からは涙が、口からは声にならない嗚咽が溢れ出し、そのまま駆け出した。
「…っ……っ………っ!!」
哀しくてしょうがない、胸が張り裂けそうなくらいに辛いのに、頭の中では浪馬との想い出ばかりが繰り返される。
“初めて会った時は、自分が最も嫌うタイプの人だと思った”
“事実、彼のすることの多くはとんでもないことばかり。そんな彼を何度も怒鳴りつけた”
“いつからか、彼の存在が私の中で大きくなっている事に気付いた”
“三年生、秋と冬の間、彼が自分にとって大事な人だということに気付いた”
“一緒に居られることが一番の幸せだと思った”
「っ…グスッ………ッ!……きゃあっ!!」
突然、七瀬は大きくバランスを崩し、地面へと倒れ込んだ。
「………………ったぁ……」
倒れたまま周りを見ると、どこを走ってきたのか、此処は公園の広場らしく
近くには転んだ原因であろう靴のヒールが欠けて取れていた。
(顔は涙でグシャグシャ…、服は転んで埃塗れ…、靴はヒールが欠けて、おまけに男には振られたばかり…と)
笑っちゃうくらいに間抜けな状況、泣く以外は何も出来ない浪馬との別れ。
「フフ…フ……ッ……グスッ……ス…ッ!」
地面に転がりながら、天を仰ぎ、七瀬は顔を抑え、再び泣き始めた。
416 名前:誕生日SS-6-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:51:40 ID:???
「たくっ……何してんだよ」
そんな七瀬に誰かが近付いて来た。七瀬は「夜の公園」という今の自分が居る場所を思い出し、
この場を去ろうと慌てて立ち上がる…が、ヒールの欠けた靴だということを忘れ、再びバランスを崩した。
「きゃっ!」
「おっと!」
ぽす…っと誰かに抱きかかえられる。顔を上げると、そこには浪馬の顔があった。
「あーあ、服も靴も、おまけに顔まで汚くしちゃって…」
「浪馬………?」
「全く、人の話をちゃんと聞かずにどっか行っちゃうからこんなことになんだぞ」
浪馬は七瀬の身体を支えたまま、服についた汚れを掃っていく。
「え…あの………?」
「うむ、こんなものだろ。とりあえずそこに座って休むか」
呆然としている七瀬を園内のベンチに座らせ、浪馬もその隣へと座った。
「ほら、受け取るか受け取らないかはお前の自由だけど………忘れ物だぞ」
座るなり、浪馬は先程レストランで渡そうとしていた小箱を、七瀬の手に無理矢理押し付けた。
「え……な、何…?」
「いいから! 何かイロイロと勘違いしてるみたいだが、まずはそれを受け取れ。
それから順を追って説明するから!」
明後日の方を向きながら、ぶっきらぼうに喋る浪馬と、手のひらにのる小さい小箱。
その二つが何なのか全く分からないまま、とりあえず七瀬は小箱を開いた。
「えっ………!」
月と数えるくらいしかない星だけの明かりしかなかったが、
その箱の中には精彩な彫刻が施された綺麗な指輪があった。
419 名前:誕生日SS-7-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 03:16:15 ID:???
「へ……その…浪馬……これ…?」
「みさき先生に会ったのは、それを作ってもらえる人を紹介してもらうためだ」
七瀬の顔を見ないよう、浪馬が喋り始めた。
「あの人、美大出身だから、そういう職人の知り合いを教えてもらって、
で、昨日は、一緒にその職人のトコにそれを取りに行っただけで…
腕組まれたのは…その………幸せな俺にあやかりたいとか、やっかみだとかで…」
相変わらず明後日の方を向いているので、浪馬がどんな顔をしているかは分からなかったが、
耳がとてつもなく赤くなっているのは、七瀬の目に映った。
『高遠さんには言わなくて良かったの?』
『貴方達が卒業してから随分経つから、そういうことも考えるわよねぇ…』
昨日のみさきの言葉が甦る。そして手の上には指輪。
「あの…浪馬………その、これって…」
「昔さ、まだ頼津に通ってた時の誕生日にさ、プレゼントに指輪渡そうとしたけど
七瀬、受け取ってくれなかったろ」
七瀬の言葉を遮り、浪馬は続けた。
「…でだ。もう結構長い間付き合ってきたし、俺もちゃんと職に付けたし、
それを受け取って貰ってもイイ頃かと思ってさ」
浪馬はベンチから立ち上がると、真っ赤な顔をして七瀬の前へ立った。
421 名前:誕生日SS-終-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 03:17:54 ID:???
「その、あれだ! 朝飯にお前の作る味噌汁が食いたい!」
「……えっ?」
「いや、えっと…、俺のパンツを洗ってくれ!」
「………」
七瀬は何も言わずに立ち上がると、浪馬の胸へと顔を埋め、静かに言った。
「もう……そういうのは…シンプルなので良いんだよ…」
「えっ、あっ……うん………」
浪馬はそっと七瀬の背に手を回し、優しく言った。
「七瀬…、俺と結婚してくれ…」
「…はい…」
二人は強く抱きしめあった。
ふと、浪馬は七瀬が震えていることに気付いた。
「何だ、寒いのか、七瀬?」
「…グスッ…違うわよぉ……、今までの人生で一番嬉しい瞬間を迎えて嬉しいのと…
その時を…スンッ……こんな汚い格好で迎えて悲しいのとで、泣いてるのぉ………」
「大丈夫、俺、どんな七瀬でも愛してるから」
「馬鹿ぁ………」
七瀬は埋めていた顔を上げると、月と星の下の公園で、浪馬と誓いの口付けを交わした………
―END―
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&aname(birthday2)
404 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:22:25 ID:???
「♪~」
(今日は夕方から駅前だったわね。遅れてきたりは…しないか。いつも時間までには必ずくるものね。)
「おはよう七瀬。ずいぶんご機嫌だけど、なんかいいことあったの?」
「♪~」
(一度帰って着替えようかしら?それともこのままのほうがいいのかな。彼ってそういうところに無頓着だから好みがよくわからないのよね。)
「??、七瀬、七瀬ってば。お~い、七瀬さ~ん。」
「きゃっ、な、なによ急に。」
「全然急じゃないわよ。夢見る顔でどうしたの?ほんとに寝てたとか?」
「そ、そんなことありませんっ!」
「そうだよね~。ナナちゃんが授業中に寝てるところなんて見たことないよ。」
「まったく…。授業中に寝るというのはどうかと思いますけど。」
「まぁまぁ、この子がそんなにまじめにできる子じゃない事は七瀬も知ってるでしょ?」
「わ~い、さっちゃんは優しいねぇ。鬼のナナちゃんとは大違いだ。」
「誰が鬼ですかっ!」
「きゃ~、ナナちゃん怒っちゃったぁ。」
「あなたも怒らせること言わないの。で、どうしたの本当に。ずいぶんご機嫌そうだけど。」
「え?」
「そうそう、お小言も長くないし。ねぇ、みんな?」
うんうん。あんまり広くない教室の中にいる知った顔全員が首を上下させる。
驚きの顔、少し笑った顔、ニヤニヤした顔…。
大学に入ってからの友達ばかりだがいい人ばかりだ。堅物と言われた自分でもすんなり溶け込む事が出来た。
ただ、他人の詮索が大好きでおせっかいなのが玉に瑕だが。
「で、ほんとにどうしたの?」
「べ、別に…。なんでもないわよ?」
「うそばっかり。ま、どうせ理由は一つしかないけれどもね。」
「ね~。」
「なによぉ。」
「カ・レ・シ。浪馬くんっていったっけ?彼がらみでしょ。」
「ど、どうしてそんな…」
「だって七瀬がそんな嬉しそうな顔するの、彼のノロケ話のときしか見たことないもの。」
「誰がノロケ話なんか…」
「してるじゃない。この間の飲み会なんかずっと彼の話してたじゃない。あの日何人の子が帰っちゃったと思ってるの。玉砕覚悟だろうけれども、ぶつかる前に弾幕に蹴散らされたようなもんよ。」
「あ、やっぱりそうなんだ。トイレやら入り口やらで何人も崩れ落ちてたのはそれで…」
「え、え?」
「しかも本人は自覚がないし。」
「いんんじゃないの?ナナちゃんには愛しの彼さえ居ればいいんだから。」
「い、愛しのって…」
「七瀬、顔真っ赤だよ(w」
405 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:22:42 ID:???
「あ、そういえばナナちゃんの誕生日今日じゃなかった?」
「お、そういえばそうねぇ。じゃあ、パーティーでもぱっとやりましょうか。」
「ご、ごめんなさい。今日はちょっと…」
「あーあーあー、みなまで言わなくてもいいって。夜はデートって言うんでしょ?大丈夫よ。お昼に軽くやるだけにしましょ。」
「ううう…」
「いーなー、ナナちゃん。幸せそうで。」
「そのぶんたくさん冷やかしてあげればいいじゃない。」
「それもそっか。」
「ハァ…」
(なんで私の周りの人はみんなこんなに気が利きすぎるのかしら?昨日の母さんもそうだったし…。)
(父さんもずっと寂しそうにしながら鉄仮面磨いていたし。)
「じゃあ七瀬、またお昼ね。」
(でもそれだけ幸せに見えるのなら隠そうとするのも悪いのかしら。)
「お昼たのしみにね~。」
(うん、それなら…)
「ええ、楽しみにしておいて。幸せな話をいやになる位してあげるから。」
「う…?」
「え…?」
「あら、どうしたの?驚いた顔して。」
「なんだか…」
「すごい失敗したかも…」
「大丈夫よ。お昼休みがなくなるだけですもの。」
「ほんとに…?」
「夕方まで続くんじゃないの…?」
(私もこれだけ幸せなんですもの。浪馬くんも幸せでいてくれるよね。)
「さて、今日もがんばっていきましょうか。」
「「お、おー。」」
(そうでなければ私がなんとしても幸せにするんだから!!)
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&aname(birthday1)
321 名前:誕生日SS-1-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 00:07:34 ID:???
「お母さん、そろそろ行って来るわね」
七瀬が玄関からそう声を掛けると、パタパタと足音を立てながら母親がやってきた。
「はい、いってらっしゃい、ナナちゃん」
「うん、行って来ます。帰ってくるのは19日になるから宜しくね」
「はいはい。でも明日の誕生日を挟んで二泊三日の出張なんて大変ねぇ…
本当だったら18日は御泊り込みで、織屋君と一緒に過ごすトコだったのにねぇ」
「え!? ええ…。で、でも仕事だから…」
「そうねぇ、仕事ならしょうがないわよねぇ。まぁ兎も角、お仕事頑張ってね、いってらっしゃい」
「い、行って来ます…」
「織屋君に宜しくねぇ」
「━ッ!」
全てを見通すかのような母親の細い目からの暖かい眼差しを背に、七瀬はそそくさと家を出た。
「全く、我が母親ながら、何ていう勘の良さなのかしら…」
家を出る際のやり取りを思い出しつつ、七瀬は呟いた。
確かに今日、明日は泊り込みの出張があるが、その仕事は明日の午前中には片付き、
18日の午後からはフリーになっていて、翌19日は休暇を取っていたので、誕生日は浪馬と一緒に過ごす事になっていた。
「ひょっとして私の生活全てを把握して…ううん、流石にそんなことは━━━って、あら…?」
駅に向かう途中の広場に見慣れた姿があった。
「あれは…浪馬? 何でこんな場所に居るのかしら…?」
そこにはベンチに座り何かをしている浪馬が居た。自分は出張のため、いつもより大分遅い時間に家を出たが、
仕事のある浪馬が、こんな時間にこんな場所に居るのは少しばかりおかしい。
「浪ま━━━」
「でも高遠さんには言わなくて良かったの?」
「そりゃあ、こんなこと言えやしませんよ」
何故此処に居るのか聞いてみれば分かることだと、浪馬に声を掛けようとした時、
浪馬の横に女性が座り、二人が話し合っていることに七瀬は気付いた。
345 名前:誕生日SS-2-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 00:31:19 ID:???
(あの人は誰…? 何を話しているの…!?)
七瀬は思わず二人からは見えない様に身を隠した。
「でも…、貴方達が卒業してから随分経つから、そういうことも考えるわよねぇ…」
そのままの状態で、そっと浪馬と女性の様子を窺う。
浪馬の隣に座るのは、自分より年上であろう、髪に軽くウェーブのかかった綺麗な女性だった。
「いや、まぁ…って、そんな感慨深げにならないで下さいよ、みさき先生」
(みさき先生…? っ! 確か、私達が三年の時に赴任してきた美術教師…!)
体調を崩した美術教師に代わりにやってきた美術教師で、若く、そして綺麗な容姿をしていたため、
男子生徒からの人気があった女教師のことを、浪馬の言葉で思い出した。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「そうですね」
二人の様子をもやもやとした気持ちで窺っていると、二人はベンチから立ち上がり駅へと向かい出した。
(何で、浪馬がそんな人と一緒に…? ━━━ッ!?)
そんな七瀬の目の前で、突然みさきは浪馬と腕組みを始めた。
「ちょっ…! せ、先生、人前ですよ!」
「いやぁ、やっぱりこういう幸せな気持ちは共有しないと駄目じゃない♪」
「共有って…! 誰かに見られたら…」
「いいから、いいから。しかし浪馬君、随分と言葉使いが丁寧に…」
「そりゃ、いい加減、俺も社会人ですから、それくらいは…」
仲睦まじげに駅構内へと入っていく浪馬とみさき。
そんな二人の背中を、七瀬はただ呆然と見詰めることしか出来なかった…
「何、これ…、どういうことなの……浪馬………」
371 名前:誕生日SS-3-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 01:03:54 ID:???
18日夕方。七瀬は浪馬が予約したというレストランに一人先に着き、昨日の駅前広場でのことを考えていた。
『高遠さんには言わなくて良かったの?』
『貴方達が卒業してから随分経つから、そういうことも考えるわよねぇ…』
『やっぱりこういう幸せな気持ちは共有しないと駄目じゃない♪』
昨日から頭の中で響くみさきの言葉が、七瀬に嫌な予感を走らせていた。
(ううん…、そんなことはない。きっと昨日のアレは誤解よ………
いいえ、そもそもあれが浪馬っていうのも見間違え━━━)
「ワリィ、七瀬、遅れちまって、スマン!」
丁度その時、浪馬が店内に入ってきた。
「う、ううん。私も今来たところだから…」
「そうか? いや、今抱えている裁判がさ、急に厄介なことになっちゃって………」
さっきまで頭の中で考えていたことを忘れ、目の前に座った男を見詰める。
その表情は、今まで自分が愛してきた織屋浪馬その人の表情と何ら変わりなく、
自分が予想していたことを切り出そうとしている男とはとても思えなかった。
(うん、そうよ… 昨日のは何か用事で、私との仲を………)
「…んなわけで……って、おい、聞いてるか、七瀬?」
「…えっ、あっ……うん、な、何?」
浪馬の顔を見たら、先程まで考えていたことが馬鹿馬鹿しく思え、
急いでその考えを打ち消し、自分の誕生日を目の前の愛する男と楽しむことにした。
「いや、だからさ…、最近忙しかったから、お前のことを考えてやれる余裕がなくてさ…」
「あら、忙しいのはお互い様よ。それに私はこうして二人一緒に居られるだけで十分よ」
「でも……その、折角の誕生日なのにさ…」
「うん、誕生日なのに?」
「えっと、時間が無くてさ…、その…プレゼントの用意が出来なかったんだ…」
「…う、うん………」
ふと先程まで心を占めていた考えが再び頭の中を過ぎる。
392 名前:誕生日SS-4-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 01:34:38 ID:???
浪馬という人間は、普段はふざけた所が見受けられるが、肝心な時にふざけることは絶対に無い。
事実、七瀬自身、誕生日やクリスマスなど、その手のイベントの時に愛されることを実感しても、
ガッカリさせられることは無かった。しかし…
「けどさ、プレゼント無しの誕生日ってのもアレだろ? でさ…」
昨日聴こえてしまった会話が頭の中で再び繰り返される。
『高遠さんには言わなくて良かったの?』
『こんなこと言えやしませんよ』
「…部屋を探したら、頼津通ってた頃には受け取って貰えなかった…」
やはりそうなのだろう。例え忙しくとも以前の浪馬なら彼女への想いを疎かにすることは無かった。
「…昔の物って思うかも知れんが、今だからこそっていうもあって…」
もう七瀬はこの場に居るのが耐えられなくなった。
「…コレを、その…う、受け取って……」
「もう、いいわ」
「…らえな……………え?」
最期の時くらいは、昔の自分に戻ろう━━━そう思い、七瀬は湧き上がって来る感情を抑え続けた。
「いいわ、そんな無理してプレゼントを渡してくれなくても。
新しい恋人の方に手が懸かって、こちらにお金を回す余裕が無いんでしょ」
「………へ?」
「いいのよ、演技なんてしなくても。………昨日、駅前で見させて貰いましたから」
「………ッ! 七瀬っ、みさき先生との…!」
「ええ、腕なんて組んじゃって随分と親密なようで」
「バ、馬鹿、あれは違くて…」
「もういいって言ってるでしょ!!」
とうとう堪えきれなくなり、七瀬は感情のまま立ち上がった。
そのまま浪馬の顔を見ないようにして出口へと向かう。
402 名前:誕生日SS-5-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:15:53 ID:???
「待てよ、七瀬っ!」
浪馬は七瀬の腕を掴み、止めようとした。
そんな浪馬に愛しさが込み上げる…が、自分を奮い立たせ七瀬は言葉を続けた。
「……うん、ありがとう……、貴方と過ごした時間、凄く楽しかったわ……
でも、もういいから……さようなら……!」
七瀬は力尽くで浪馬の手を振り解くと店を後にした。
店外に出るともう駄目だった。
感情のまま、眼からは涙が、口からは声にならない嗚咽が溢れ出し、そのまま駆け出した。
「…っ……っ………っ!!」
哀しくてしょうがない、胸が張り裂けそうなくらいに辛いのに、頭の中では浪馬との想い出ばかりが繰り返される。
“初めて会った時は、自分が最も嫌うタイプの人だと思った”
“事実、彼のすることの多くはとんでもないことばかり。そんな彼を何度も怒鳴りつけた”
“いつからか、彼の存在が私の中で大きくなっている事に気付いた”
“三年生、秋と冬の間、彼が自分にとって大事な人だということに気付いた”
“一緒に居られることが一番の幸せだと思った”
「っ…グスッ………ッ!……きゃあっ!!」
突然、七瀬は大きくバランスを崩し、地面へと倒れ込んだ。
「………………ったぁ……」
倒れたまま周りを見ると、どこを走ってきたのか、此処は公園の広場らしく
近くには転んだ原因であろう靴のヒールが欠けて取れていた。
(顔は涙でグシャグシャ…、服は転んで埃塗れ…、靴はヒールが欠けて、おまけに男には振られたばかり…と)
笑っちゃうくらいに間抜けな状況、泣く以外は何も出来ない浪馬との別れ。
「フフ…フ……ッ……グスッ……ス…ッ!」
地面に転がりながら、天を仰ぎ、七瀬は顔を抑え、再び泣き始めた。
416 名前:誕生日SS-6-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:51:40 ID:???
「たくっ……何してんだよ」
そんな七瀬に誰かが近付いて来た。七瀬は「夜の公園」という今の自分が居る場所を思い出し、
この場を去ろうと慌てて立ち上がる…が、ヒールの欠けた靴だということを忘れ、再びバランスを崩した。
「きゃっ!」
「おっと!」
ぽす…っと誰かに抱きかかえられる。顔を上げると、そこには浪馬の顔があった。
「あーあ、服も靴も、おまけに顔まで汚くしちゃって…」
「浪馬………?」
「全く、人の話をちゃんと聞かずにどっか行っちゃうからこんなことになんだぞ」
浪馬は七瀬の身体を支えたまま、服についた汚れを掃っていく。
「え…あの………?」
「うむ、こんなものだろ。とりあえずそこに座って休むか」
呆然としている七瀬を園内のベンチに座らせ、浪馬もその隣へと座った。
「ほら、受け取るか受け取らないかはお前の自由だけど………忘れ物だぞ」
座るなり、浪馬は先程レストランで渡そうとしていた小箱を、七瀬の手に無理矢理押し付けた。
「え……な、何…?」
「いいから! 何かイロイロと勘違いしてるみたいだが、まずはそれを受け取れ。
それから順を追って説明するから!」
明後日の方を向きながら、ぶっきらぼうに喋る浪馬と、手のひらにのる小さい小箱。
その二つが何なのか全く分からないまま、とりあえず七瀬は小箱を開いた。
「えっ………!」
月と数えるくらいしかない星だけの明かりしかなかったが、
その箱の中には精彩な彫刻が施された綺麗な指輪があった。
419 名前:誕生日SS-7-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 03:16:15 ID:???
「へ……その…浪馬……これ…?」
「みさき先生に会ったのは、それを作ってもらえる人を紹介してもらうためだ」
七瀬の顔を見ないよう、浪馬が喋り始めた。
「あの人、美大出身だから、そういう職人の知り合いを教えてもらって、
で、昨日は、一緒にその職人のトコにそれを取りに行っただけで…
腕組まれたのは…その………幸せな俺にあやかりたいとか、やっかみだとかで…」
相変わらず明後日の方を向いているので、浪馬がどんな顔をしているかは分からなかったが、
耳がとてつもなく赤くなっているのは、七瀬の目に映った。
『高遠さんには言わなくて良かったの?』
『貴方達が卒業してから随分経つから、そういうことも考えるわよねぇ…』
昨日のみさきの言葉が甦る。そして手の上には指輪。
「あの…浪馬………その、これって…」
「昔さ、まだ頼津に通ってた時の誕生日にさ、プレゼントに指輪渡そうとしたけど
七瀬、受け取ってくれなかったろ」
七瀬の言葉を遮り、浪馬は続けた。
「…でだ。もう結構長い間付き合ってきたし、俺もちゃんと職に付けたし、
それを受け取って貰ってもイイ頃かと思ってさ」
浪馬はベンチから立ち上がると、真っ赤な顔をして七瀬の前へ立った。
421 名前:誕生日SS-終-[sage] 投稿日:04/10/18(月) 03:17:54 ID:???
「その、あれだ! 朝飯にお前の作る味噌汁が食いたい!」
「……えっ?」
「いや、えっと…、俺のパンツを洗ってくれ!」
「………」
七瀬は何も言わずに立ち上がると、浪馬の胸へと顔を埋め、静かに言った。
「もう……そういうのは…シンプルなので良いんだよ…」
「えっ、あっ……うん………」
浪馬はそっと七瀬の背に手を回し、優しく言った。
「七瀬…、俺と結婚してくれ…」
「…はい…」
二人は強く抱きしめあった。
ふと、浪馬は七瀬が震えていることに気付いた。
「何だ、寒いのか、七瀬?」
「…グスッ…違うわよぉ……、今までの人生で一番嬉しい瞬間を迎えて嬉しいのと…
その時を…スンッ……こんな汚い格好で迎えて悲しいのとで、泣いてるのぉ………」
「大丈夫、俺、どんな七瀬でも愛してるから」
「馬鹿ぁ………」
七瀬は埋めていた顔を上げると、月と星の下の公園で、浪馬と誓いの口付けを交わした………
―END―
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&aname(birthday2)
404 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:22:25 ID:???
「♪~」
(今日は夕方から駅前だったわね。遅れてきたりは…しないか。いつも時間までには必ずくるものね。)
「おはよう七瀬。ずいぶんご機嫌だけど、なんかいいことあったの?」
「♪~」
(一度帰って着替えようかしら?それともこのままのほうがいいのかな。彼ってそういうところに無頓着だから好みがよくわからないのよね。)
「??、七瀬、七瀬ってば。お~い、七瀬さ~ん。」
「きゃっ、な、なによ急に。」
「全然急じゃないわよ。夢見る顔でどうしたの?ほんとに寝てたとか?」
「そ、そんなことありませんっ!」
「そうだよね~。ナナちゃんが授業中に寝てるところなんて見たことないよ。」
「まったく…。授業中に寝るというのはどうかと思いますけど。」
「まぁまぁ、この子がそんなにまじめにできる子じゃない事は七瀬も知ってるでしょ?」
「わ~い、さっちゃんは優しいねぇ。鬼のナナちゃんとは大違いだ。」
「誰が鬼ですかっ!」
「きゃ~、ナナちゃん怒っちゃったぁ。」
「あなたも怒らせること言わないの。で、どうしたの本当に。ずいぶんご機嫌そうだけど。」
「え?」
「そうそう、お小言も長くないし。ねぇ、みんな?」
うんうん。あんまり広くない教室の中にいる知った顔全員が首を上下させる。
驚きの顔、少し笑った顔、ニヤニヤした顔…。
大学に入ってからの友達ばかりだがいい人ばかりだ。堅物と言われた自分でもすんなり溶け込む事が出来た。
ただ、他人の詮索が大好きでおせっかいなのが玉に瑕だが。
「で、ほんとにどうしたの?」
「べ、別に…。なんでもないわよ?」
「うそばっかり。ま、どうせ理由は一つしかないけれどもね。」
「ね~。」
「なによぉ。」
「カ・レ・シ。浪馬くんっていったっけ?彼がらみでしょ。」
「ど、どうしてそんな…」
「だって七瀬がそんな嬉しそうな顔するの、彼のノロケ話のときしか見たことないもの。」
「誰がノロケ話なんか…」
「してるじゃない。この間の飲み会なんかずっと彼の話してたじゃない。あの日何人の子が帰っちゃったと思ってるの。玉砕覚悟だろうけれども、ぶつかる前に弾幕に蹴散らされたようなもんよ。」
「あ、やっぱりそうなんだ。トイレやら入り口やらで何人も崩れ落ちてたのはそれで…」
「え、え?」
「しかも本人は自覚がないし。」
「いんんじゃないの?ナナちゃんには愛しの彼さえ居ればいいんだから。」
「い、愛しのって…」
「七瀬、顔真っ赤だよ(w」
405 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:04/10/18(月) 02:22:42 ID:???
「あ、そういえばナナちゃんの誕生日今日じゃなかった?」
「お、そういえばそうねぇ。じゃあ、パーティーでもぱっとやりましょうか。」
「ご、ごめんなさい。今日はちょっと…」
「あーあーあー、みなまで言わなくてもいいって。夜はデートって言うんでしょ?大丈夫よ。お昼に軽くやるだけにしましょ。」
「ううう…」
「いーなー、ナナちゃん。幸せそうで。」
「そのぶんたくさん冷やかしてあげればいいじゃない。」
「それもそっか。」
「ハァ…」
(なんで私の周りの人はみんなこんなに気が利きすぎるのかしら?昨日の母さんもそうだったし…。)
(父さんもずっと寂しそうにしながら鉄仮面磨いていたし。)
「じゃあ七瀬、またお昼ね。」
(でもそれだけ幸せに見えるのなら隠そうとするのも悪いのかしら。)
「お昼たのしみにね~。」
(うん、それなら…)
「ええ、楽しみにしておいて。幸せな話をいやになる位してあげるから。」
「う…?」
「え…?」
「あら、どうしたの?驚いた顔して。」
「なんだか…」
「すごい失敗したかも…」
「大丈夫よ。お昼休みがなくなるだけですもの。」
「ほんとに…?」
「夕方まで続くんじゃないの…?」
(私もこれだけ幸せなんですもの。浪馬くんも幸せでいてくれるよね。)
「さて、今日もがんばっていきましょうか。」
「「お、おー。」」
(そうでなければ私がなんとしても幸せにするんだから!!)
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&aname(sotugyo)
418 名前:卒業前夜~初めて手を繋いだ日~1/7[sage] 投稿日:04/10/18(月) 03:16:05 ID:???
七瀬「あ……だめよ、ジッとしていて」
浪馬「そんな事言ったってさ、このままじゃ俺だけイッちまいそうだよ」
七瀬「だからね、今日は私が気持ち良くしてあげるって…あぁ、ダメ、下から突かないで!」
浪馬「ふたりで一緒にイクのは嫌か?俺はその方が良いんだけどな」
七瀬「だ、ダメよ…あぁ、ん…」
浪馬「うわ、急にしがみつくなよ…あ、やべぇ、俺もうイキそうだ」
七瀬「あ、だ、ダメ、動かないでって…ダメェ!!」
浪馬「クゥ……な、七瀬!!」
七瀬「ダメ、ダメェ!あ、アアッ!!」
抱きしめてくれて私の髪を撫でていた織屋くんがふと口にした。
浪馬「七瀬って時々すごくエッチになるよな、大胆になるって言うのか」
七瀬「急に何を言い出すの」
浪馬「イテッ、つねるなよ!」
七瀬「誰のせいだと思ってるの?」
浪馬「俺のせいか?」
七瀬「そうよ」
浪馬「そうか?誘ってきたのは七瀬が先だろ?」
七瀬「え?何言ってるの!?」
浪馬「ほらさ、おまえの誕生日の日…いや、一日前だったか、あの日にさ」
七瀬「あ…」
420 名前:卒業前夜~初めて手を繋いだ日~2/7[sage] 投稿日:04/10/18(月) 03:17:08 ID:???
そう、その日の前日に私は織屋くんに助けられた、そして怒られた。
家に帰って部屋で考えていると色々な感情が湧き上がってきた。
織屋くんに腹が立って怒ったり、織屋くんが助けてくれた事に安堵を覚えたり、
織屋くんが私を心配してくれた事が嬉しかったり、織屋くんに嫌われたのかもと悲しかったり、
織屋くんが……
『織屋くん』ばっかりな私、でも彼は?
次の日には会う約束があった、出来るだけ普通にと努めた。
でも内心はドキドキしていた、あの時の私は。
織屋くんは……いつもの織屋くんだった。
あえていつも通りにいてくれたの?それとも昨日の事は気にもならないの?
デートの内容は覚えていない…ずっと彼を見ていた、
彼が何を考えているか気になってどうしようもなかった。
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