「ピザはあるんだろうな?」
あとはジン・トニックとストロベリーサンデーも、とダンテは付け加えた。
これがダンテの好物であり、今回の条件でもあった。
何故彼がこんな事を聞いているかを説明するには少し時間を遡る必要がある。
事の発端はデュマーリ島での事件だ。
要するにデビルメイクライ2本編の事で、その最後にダンテは魔界へと行き、帰れなくなってしまった。
そして、その事に関して干渉しようとする者達がいた。
時空管理局だ。
管理局からすれば人間界(第169管理外世界)と魔界(第666管理外世界)が一時的にとはいえ繋がった事は問題である。
この事態に管理局は調査隊を派遣。
この調査隊の指揮を執ったのがフェイト・T・ハラオウンである。
調査隊はまず、魔界の方で人間界と繋がっていた場所を見つけ、エリアサーチを行なった。
その結果、魔界にはあるはずの無いタイヤの跡を見つけその跡を追跡。
そして数時間後にガス欠で動かないバイクとその持ち主を発見。
血のような赤を基調としたロングコートが特徴的な持ち主の男は事情を聞くべく近づいたフェイトに向かってこう言った。
「よう、いきなりで悪いがガソリン分けてくれねーか?」
悪魔も泣き出す男と、後の機動六課ライトニング分隊隊長の邂逅であった。
「つまりあなたはアリウスという男の野望を止めた為にここに来たというわけですね?」
「ああ、そうだよ」
フェイトからダンテへの質問が始まって十数分。
ダンテから聞き出した事実はフェイトにとって驚くには値しない出来事だった。
何らかの目的を持った者がそのために異世界への門を開く、それはフェイトの母も行なおうとしていたことである。
それを止めたこの男には力はあれど危険は無いはず。それなら元の世界に帰してあげるべきだ。
フェイトはその旨を伝えダンテも帰れるなら帰ろうと思ったため、ダンテは元の世界に帰り、それで終わりになるはずだった。
ダンテが書類の手続きのためにミッドチルダの本部に来ていた時に、あるちびだぬきがダンテの事を聞いてしまった事で終わりにはならなかった。
「機動六課に来ません?」
ダンテの事をフェイトから聞いた途端に現物を見に行き、
そしてそれなりの実力を持っている事を見抜いたちびだぬきこと八神はやてがダンテを勧誘してしまったのだ。
はやてが見たところダンテの実力は少なく見積もってもAA。かなりの戦力になるだろう。
そしてダンテは今のところ何の資格も検定も受けていない。つまり、いくらでも誤魔化しようがあるのだ。
彼がこういった事を受けるかどうかはそこに悪魔が絡んでいるかどうかで決まる。
だがダンテははやての勧誘を受けながら別のことを考えていた。
確か一年間顔を会わせなければ借金って無効になるんだったか?
これである。もっとも法律なんて彼らの間で役に立つかどうかは疑わしいが。
だがダンテはなんとなくこの仕事をする気になっていた。
勘ではあるがダンテは『軌道六課にいれば悪魔と関る事になる…多分』と思っていた。そして彼は自分の勘を信用している。
ダンテが金などに興味を持たない事を知ったはやては「可愛い子もいっぱいおるで~」と別の手を使ってきている。
が、既にダンテは結論を出していた。
「おれの質問の答え次第だな」
と。はやてはダンテの反応から結構乗り気であることを悟った。
「なんです?」
と聞き返したはやてに対して帰ってきたのが最初の言葉である。
これに一瞬はやての頭は止まったが、すぐにこれが彼なりのジョークであることに気付き、
「それが条件なら食堂のメニューに追加しますよ」
と笑みを浮かべながら返した。
これがきっかけで機動六課の食堂は予定されていたよりちょっとメニューを増やす事となった。
部隊長である八神はやてのこれからの苦悩と引き換えに…
最終更新:2007年11月27日 19:46