Devil never Strikers
Mission : 02
borrowed money from GAS-LPRF6


古代遺物管理部機動六課、通称機動六課。
その食堂でダンテはピザを食べていた。

彼がここにいる理由は一つ、彼のデバイスの受け取りのためだ。
ダンテは戦闘スタイルを変えるつもりは全く無い。
だがそれはエボニー&アイボリーを使い続けるという事で、管理局から見れば許されない事で、何らかの対策を練る必要があった。
そして出した結論はエボニー&アイボリーの改造。改造といってもマガジン部分を変更し、魔力弾のみを撃ち出せるようにするだけの改造だ。
こうしてエボニー&アイボリーの改造が始まったが、ダンテの『空薬莢が出ないと嫌だ。ちゃんとブローバックするようにしろ』等のワガママによって完成は遅れていた。
そしてついにエボニー&アイボリーS(改造を請け負ったシャーリーのS)が完成し、ダンテは受け取りに来たのだった。
ダンテがピザを食べ終えた頃、シャーリーが現れた。隣にはなのはや、新人達四人もいる。

「ダンテさん。後で模擬戦をしてみませんか?」
「ん?」
「他の子たちのデバイスも完成したので試しに模擬戦をしてもらいたいんです」
「ああ、いいぜ」

久しぶりに撃ちまくりたかった為に何も考えずに引き受けた。
デバイス調整室でダンテはエボニー&アイボリーを、新人達四人もそれぞれデバイスを受け取った。
シャーリーが説明を始めたがダンテは全く聞かずにクルクルと回し、ポーズを取るなどして遊んでいる。

説明も全て終わり、さあ模擬戦だ。となったところでモニターに赤いウインドウが表示され、アラーム音まで鳴り始めた。

「このアラートって!?」
「一級警戒態勢!?」
「グリフィス君!」

どうやら何か起こったらしい。スバルが驚き、エリオが解説し、なのはがグリフィスを呼び出す。

「はい、協会本部から出動要請です!」
「なのは隊長!フェイト隊長!グリフィス君。こちらはやて!」

グリフィスが詳しい状況を伝える前に割り込んできたのは部隊長のはやてだ。
話の内容は、協会騎士団の調査部で追ってたレリックらしきものが見つかった。
対象は山岳リニアレールで移動中で、そのリニアレールの制御を奪ったらしい。
リニア内のガジェットは最低でも三十体。他にもいるかもしれない、という事だ。

「機動六課フォワード部隊、出動!」
「「「「「「ハイ!」」」」」」

全ての説明、指示を終えたはやてが出動命令を出し、なのはたちフォワードがそれに答える。
フォワード陣が全員出動したが、フォワードでないシャーリーはまだ調整室に残っている。
そして彼女はもう一人のフォワードではない者に話しかけた。

「これじゃあ模擬戦は無しですね」
「ああ」

その言葉に答えたのは、ダンテだった。
なぜ彼が出撃していないのか、その答えは簡単だ。
ダンテが嘱託試験に落ちたからだった。
試験結果は戦闘以外は散々なもので、結局彼の機動六課入りは無かった事になった。
それでも彼がミッドチルダに居ることに関してはちゃんとした手続きを踏めば問題が無かったので、彼は今ミッドチルダに住んでいる。
何故彼が帰らずにミッドチルダにいるのかは誰にも分からない。
おそらく彼なりの理由があってここにいるのだろう。

「ところでダンテさん」

そう言いながら一枚の紙をダンテに渡すシャーリー。

「改造に掛かった費用の請求書です。ちゃんと払ってくださいね?」

機動六課の人間で無い以上、当然自腹である。
もちろん彼には払えない。

「そのうちな」

だからこう言ってお茶を濁すしかなかった。

そしてダンテは自分の今の住まいに帰り、夜まで眠った。
しばらくして目を覚まし、腹が減っていたのでピザの出前をとった。


さて、ダンテが眠っている頃、フォワードの新人達四人は無事に列車へと降下していた。
新人達だけなのは、隊長二人が空に現れた航空型ガジェットを叩きに行ったからだ。
スバルとティアナが先頭から、エリオとキャロが最後尾からレリックのある中央を目指して殲滅する形になっている。

「うおりゃああああ!」

車両の上でリボルバーナックルを突き出すスバルのテンションはいつもより若干高い。
彼女が今着用しているバリアジャケットがなのはの物を参考に作られたからだろう。
一方、車両内を担当しているティアナはクロスミラージュの性能に感嘆しつつ、ガジェットを撃ち抜いていた。
そしてティアナは今までの部屋よりも広い部屋に入った。

「貨物室?…でもレリックが無い」

この部屋はそこらじゅうに積まれているダンボール箱や木箱から見て、貨物室だ。
だがレリックは無い、という事はここは別の貨物室なのだろう。
だが、ティアナの目を引く物があった。やたらと数の多い木製の人形だ。
人間くらいの大きさのそれはボロボロで、不気味で、今にも動き出しそうだった。
だが人形が動く訳がない、そう考えたティアナは次の車両へのドアに近づく。

しかし次の瞬間、天井を突き破りガジェットが襲ってきた!
人形に気をとられていたティアナは間一髪でこれをかわす。

「油断した…」

今のガジェットの攻撃は完全に不意打ちだ。それを喰らわなかっただけ良かった方だろう。
だがいつもなら迎撃を選択していた距離で回避を選んだのだ、油断をしたと思うのも仕方が無い。

「ティア!大丈夫!?」

ガジェットがあけた穴からスバルが降りてくる。
そのままティアナと背中合わせに立ち、互いの死角をカバーする。
スバルがいるのなら隙を見つけてコンビネーションで攻撃するといったいつものパターンに持ち込めば良い。

「ティア~何これ~」

その考えもスバルの情けない声によって改めなければならないらしい。
スバルの言う『これ』を見るべくスバルとの位置を反転させたティアナが見たものは、さっきの人形だった。
しかも手の部分には刃物までつけられている。
間違いなく敵だろう。
何も無い静かな部屋で、もしかしたら動くんじゃないか?と思っていた物が全く動かず、
全く予想もしていない所から敵が現れたり、
最初の動きそうな物がいつの間にか後で動いている。
スバルがいなかったら人形が動いているのに気づいたのは触れてからかもしれない。
このまるでホラー映画のような流れに、ティアナは思った。
『これを考えた奴は性格が悪い』と。
だが恨み言を言っても事態は何も変わらない。
人形の能力を測るためにも何かしなければならない。
そのためにティアナが選んだ行動は攻撃だった。

「シュート!」

ティアナが撃ったのはヴァリアブルシュート。
選んで撃ったと言うよりはガジェットがいるためにこれ以外に手が無かったと言うべきだ。
AMFを突破する為に魔力弾に膜状のバリアを纏わせたそれは高度な技術を必要とするが、威力の増加はあまり無い。
そのヴァリアブルシュートの直撃を受けた人形は、あっけなく砕けた。

「あれ?」
「あんまり…強くない?」

いきなり現れた新手の敵があまりにもあっけなかった事に拍子抜けするも、ガジェットと合わせれば相当な数になる。
とはいえ

「うおおおおお!」
「シュート!」

訓練校から三年間のコンビである二人に、ガジェットと人形が数だけで対抗できるはずも無く、
スバルの打撃とティアナの射撃の前にガジェットと人形は次々と粗大ゴミへと姿を変えていった。
そしてスバルのリボルバーナックルが最後の一体を叩き壊した。

「良し、次行くわよスバル!」

この部屋の敵は全滅させたので、次の部屋へと移動するティアナとまた屋根の上に登るスバル。
スバルが屋根の上に登る為に、ガジェットが開けた穴の位置を確認している時、
黒い影を見つけた。
影といっても物が光を遮る事でできる影ではない。
光に遮られてもないのに水溜りのように影が出来ているのだ。
そしてそれはティアナに向かって行った。

「ティア!危ない!」

影の速度はそう早くない、せいぜい人が歩くのと同じくらいの速度だ。
スバルは影に易々と追いつきマッハキャリバーで踏みつけた。
だが影にダメージは無い。代わりにダメージを受けたのは踏みつけた足のほうだった。
スバルが踏みつけた瞬間に現れたトゲ状の魔力弾。
それががスバルの足に突き刺さっていた。
スバルの声を聞いたティアナも明らかに異常な影と足をケガしているスバルを見て、戦闘体制をとる。

「スバル、大丈夫?」
「大丈夫!」

スバルの言う大丈夫は当てにならない事をティアナは今までの経験で知っていた。
だが実際にスバルのケガは軽く、行動に問題は無さそうだった。


状況を確認している間にも敵は動いていた。
影の状態から犬の形になったのだ。
色は相変わらず影のように不気味な黒だ。

「まずは相手の防御魔法の正体を突き止めないとね」

この敵についてわかってる事は踏んでもダメージにはならない事と、スバルの足に刺さっているトゲだけだ。
だがこの謎の答えはあっさりと明かされる。

「多分、このトゲはカウンターで現れるんだと思う」

実際に喰らったスバルにはトゲが現れる所からはっきりと見えていた。
喰らったものだからこそ分かる攻撃の感触。
それがこのトゲはカウンターであることをスバルに教えていた。
ならカウンターの対象じゃない攻撃を見つければ良い。
踏みつけは一応物理攻撃だから次に試すのは魔法攻撃。

ティアナが無言で魔力弾を撃ち込む。
これがダメだったのなら様々な威力、角度、方法を試さなければいけなくなる。
だが魔力弾は普通に当たり、影の犬をよろけさせた。

「効いてる…魔法攻撃なら効いてるよ!」
「分かってるわよ!スバルうっさい!」

二人はこの影の犬の防御は物理カウンターで、魔法攻撃が有効と結論を出した。
(正確に言うのなら物理ではなく武器カウンターなのだが、魔法攻撃が有効なのは間違いでない。)

スバルが敵を引き付け、ティアナが撃つ。
この単純な行動を繰り返しているだけで、影の犬が弱っていくのが分かった。
しかし、ティアナが七発目の魔力弾を作り終えた時にそれは起こった。

「グアアアァァァァ!」

人間のものとは思えない叫び声が響いた瞬間、ティアナの体が動かなくなった。
ティアナは吊るされた操り人形のような状態で空中に固定された。

「バインド!?」

何とか動く首を回して辺りを見る。
右斜め後ろにさっき全滅させたはずの人形が立っていた。
おそらくガラクタになった他の人形に紛れて隠れていたのだろう。
思わぬ伏兵と能力によって、状況はこちらが不利になった。

「生き残りがいた!?」
「ティア!危ない!」

スバルが危ないと言ったのは人形ではなく、影の犬の方だった。
ティアナが拘束されたのを見た瞬間、ティアナに狙いを定め、跳びかかろうとしている。
右斜め後ろからは人形が、正面からは影の犬がそれぞれ自分を狙うこの状況で、ティアナは七発目の魔力弾を発射した。
そのまま操り、人形の方に撃ち込む。人形はさっきのようにあっけなく砕け散り、ティアナの体に自由が戻る。

だが今の魔力弾を操って影の犬に当てるには時間が足りない。
宙吊りにされていたのでまだ地面に足がついていないので回避もできない。
着地して体制を立て直した次の瞬間に影の犬の攻撃がくるだろう。
この状況ではティアナが何をしても間に合わない。
だからティアナは何もしなかった。
地面に立つこともせずそのまま倒れこんだのだ。
ティアナが倒れこんだため影の犬がティアナの上を越えて行った。

影の犬も今の攻撃が当たらなかった事に驚いているらしいがそれで止まる事はない。
着地して振り向き、体を刃物のように変形させてから再びティアナに飛び掛った。
今度は本当に何もできない。
地面を転がって避ける事も、
横になったまま迎撃する事も、間に合わないだろう。

でもやはりティアナは何もしない。
何かするのはティアナじゃなく

「そのまま寝ててよ!ティア!」

スバルの方だ。

「一撃必倒!」

危ないと言った時からスバルはチャージを始めていた。
この状況になるのを計算していたのではなく、単に両方倒せる技がこれしか思いつかなかったからだ。
だがティアナはスバルがチャージしているのを見た瞬間にこの行動を思いついた。
もっともティアナが考えたのは『伏せなきゃヤバイ』くらいなものでここまで計算していたわけではないが。

「ディバイン!」

影の犬が跳ぶ体制を整える前にスバルはチャージを済ませていた。
だから間に合うかどうかは考えなくて良い、
考えるべきはどのタイミングで撃つかだ。

「バスタアアアア!」

そしてスバルはそれを間違えず、影の犬の跳躍の頂点でバスターを当てた。
バスターの直撃を受けた影の犬は車外へ吹き飛ばされ、最後に列車の外で爆発を起こし、消滅した。
しかしあの敵を倒したからといってまだ油断はできない、さっきもそんな風に気が緩んだ時に襲われたのだ。
だが次に二人の前に現れたのはちょっと意外な人のかなり意外な言葉だった。

「最後に爆発するのですか~、外に出せてラッキーでしたね!」

本来ならサポートをするはずのリインだった。

「「リイン曹長?」」
「お見事です!みんな良く頑張りましたです。任務完了です!」
「え?」

リインが言うにはこの列車内にもう敵はいないらしい。
前半分の敵はあれが最後で、後ろ半分の敵はエリオとキャロがもう倒したらしい。

「ライトニングの方にばかり行っててごめんなさいです。あ、ほらあれがフリードの真の姿なのですよ」

外にはいつものニワトリくらいの大きさのフリードではなく、十メートル以上の大きさのフリードがいた。
その上にはエリオとキャロが乗っている。
あの二人は外にいるのでレリックの回収はこっちですることになった。
そして中央車両まではリインの言うように敵は無く、後は特に何の問題も無くレリックを回収できた。

機動六課、最初の任務が完了した。


同時刻、全く別の場所で、今回の戦闘を見ていた者がいた。
戦闘が映されているモニター。その前に一人の男がいた。
男の名はジェイル・スカリエッティ。
ロストロギア関連以外にも数え切れない罪状で広域指名手配されている次元犯罪者だ。

「レリックは取られたか…だが十分データは取れた」

スカリエッティが独り言を呟く。

「君達とはいい付き合いができそうだよ」

この言葉は独り言ではない、現在通信中のモニターの向こういる者に対しての言葉だ。
スカリエッティが話しかけたのは、明らかに人間ではなく悪魔だった。

「そうか」
「ああ、あのマリオネットやシャドウは気に入ったよ」

マリオネットとシャドウ。
それはさっきスバルとティアナが戦った人形と影の名前で、人形がマリオネット、影がシャドウだ。

「あれがか?マレット島ではそう活躍しなかったぞ?」
「マレット島にAMFは無かっただろう?」

そう、AMF状況下での戦闘では使える魔法が限られる。
その状態ではマリオネットでも魔導師たちにとっては脅威となるのだった。
他にもシャドウとガジェットの相性は最高だった。
武器攻撃の通用しないシャドウにダメージを与えるには魔法攻撃しかない。
だがその魔法はガジェットのAMFが封じてしまうのだ。
銃のように例外となる武器がほとんど封印されているこの世界で、この組み合わせに対抗できる人間ははたして何人いるだろうか。

「まあ良い。俺は戦いたいだけだ。じゃあな」
「もう帰るのかい?ルーテシアによろしく頼むよ」

まだ悪魔とAMFの組み合わせについて語りたそうなスカリエッティにうんざりした悪魔は通信を切った。
部屋の温度はモニター越しの悪魔の熱気に当てられたかのように少し暑くなっていた。


Mission Clear and continues to the next mission

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最終更新:2007年12月12日 21:33