彼はごく普通の男だった
父と母、そして妹の3人が彼の家族だった
彼は戦士だった
父、母、妹を殺され復讐のため、彼は戦士になった
彼には仲間がいた
技の戦士がいた
力の戦士がいた
足りない力をその知恵で補った戦士がいた
海を駆ける戦士がいた
野性の力を宿す戦士がいた
電気と拳で戦う戦士がいた
大空を翔る戦士がいた
五つの腕と拳法で戦う戦士がいた
完全機械の忍びの戦士がいた
彼らとともに、人類の自由と平和を守るために戦った
―――●●●●●●!!!頼む!俺を●●●●にしてくれ!!!―――
それは決意と始まりの言葉
―――後は頼んだぜ!!●●!!―――
激しい戦いが続き、戦友は一人、また一人と散っていった
彼は独りになった
それでも彼は戦い続けた
友が信じた正義を、託された想いを胸に抱き
傷つき、倒れようとも立ち上がり
ついに平和を手に入れた
誓った仲間はもう誰もいなかったが彼は満足だった
穏やかな日々が続き
そうして、人類は自ら滅んだ
彼は本当に孤独になった
―――魔法少女リリカルなのはA's―S.I.C―帰ってきたV3――――始まります
見渡す限りの砂漠の世界。時折、文明の名残かビルの残骸が見える
天空には三つの太陽が輝き、地表を灼き尽くさんばかりに照り付けている
人類が滅んだこの世界では砂竜が食物連鎖の頂点である。
彼らは環境の変動による突然変異で誕生した。
本来ならばこの世界のかつての人類のように魔力をもつことはあまりない
しかし、稀にこの種の中から莫大な魔力を持つリンカーコアを保持するものが生まれることがあった。
「なんなんだよこいつは……!?」
はやての為、リンカーコアを回収するためにヴィータは砂竜と戦っていた
そこそこ手強い相手ではあるもの、その強さに比例しない強大な魔力を持った相手であり、ページを増やすにはうってつけの相手の"はず"だった。
そう、そのはずだったのだ。
単なる経験値の高いボーナスモンスターのような存在だと思った。
敵を侮り、逃げる砂竜相手に狩猟気分を味わいながら追い詰めた。
実際は深追いし、気がつけば巧みに誘導され、20匹ほどの群れに囲まれてしまっていた。
ヴィータが追っていた砂竜は他の固体とは明らかに際立っていた。
ふたまわりも大く全身が白く、後頭部(?)から2本の触覚が生えていた。
先ほどから周囲を囲んでいた雑兵は手を出さず。ボス砂竜は"にやり"と嗤った
「!!?」
明らかに嘲笑だ!
この鉄槌の騎士ヴィータが嗤われた!ベルカの騎士である自分が!嘲られた!蟲ごときに!!
いや、もう蟲とは呼ぶまい!獲物とは呼ぶまい!
鉄槌の騎士ヴィータはこいつらを倒すべき"敵"と認識した!
「でえええええええええゃゃああああああああああ!!!!」
吼えた!目の前の敵を打ち倒すべく、愛する主に誓いを立て騎士は立ち向かった!!
GUUUUUOOOOOOOOOOO!!!!!!!!
鬨の声をあげ砂竜が応える。
1対20
覚悟を決めたヴィータの相手にはやや不足の相手かもしれなかった。
しかし「鉄槌の騎士」といえど連日の戦闘、管理局の目を盗んでのリンカーコア回収による疲労は確実に戦闘力を削いでいた。
それに加え、砂竜どもは巧みに連携し、死角をつき、仲間が倒されようともかえりみず襲い掛かる。
6:4でこちらのやや不利だったが気にしない邪魔する相手を叩き、潰し、崩し、抉り、鬼神の如き有様で葬り去っていった。
「テートリヒ・シュラーク!!」
最後の雑兵が倒れた。
こいつらをいくら倒してもリンカーコアを得ることはできない。
ボスはそこにいた。
どうやら2本の触覚で雑兵を操っていたようだ
こいつにとっては部下など換えの聞く駒でしかないらしい
全ての雑兵が倒れようやく動き出す。
「残りはてめぇだけだ!!」
魔力はほとんど残っていなかったがそれを微塵も感じさせぬほどの気迫だった。
ボス砂竜は大きく口を開け、灰色の巨大な魔力を収束させている
原始的な魔力砲だ。普段なら何の問題もないが満身創痍の自分には危険だ。
一撃で決めるしかない!
「ギガント……シュラーク!!」
残りの魔力を全てつぎ込んで、相棒グラーフアイゼンが身の丈10倍に迫る巨大なハンマーに変化する。
それと同時に魔力砲が発射された。
魔力砲をぶち抜いて、本体を潰す!ギガントシュラークをたたきつけようとした瞬間
「轟天………!!爆さ…!?」
ガゥン!!!
轟音とともに巨大砂竜の頭部が揺らぐ
「………あ?」
ガゥンっ!!ガゥン!!!ガゥン!!!
GUSYAAAAAAAAAAAAA!!!!!
最初の銃声から3発、計4発で巨大砂竜は断末魔の叫びを上げて崩れ落ちた
穿たれた穴から毒々しい色の体液が噴出し、ヴィータに降り注ぐ
「うぇ!べっべっ!!きたねぇ! くせぇ!!」
降り注いでくる体液に辟易しつつ射撃地点と思われる方向を見る。
そこに人の容をした"ナニカ"がいた。
赤い仮面、緑の複眼、2つの風車を模したようなベルト、継ぎ接ぎに見えるプロテクターをまとった"何か"がマフラーを棚引かせて立っていた。
その手には先の砂竜を屠ったと思われるひょうたん型の奇妙な銃が、硝煙をくゆらせている。
「いったい…なんなんだよ………?」
「……人間?………女の子だと?」
最終更新:2007年12月11日 17:17