――――本局のある将官達の会話
「うげ、新設部隊の為こちらの部署の予算削るんだとさ」
「嘘だろ、ただでさえこっちの部署は予算不足でピーピー言っているんだぜ」
「どれもこれもすべては3提督やとりまきの口添えだとさ」
「うがぁー、あの老害め、いつまで居座ってやがんだ!」
「おい、本局で滅多なこと言うなよ、カナリスの例知っているのか?」
「ちくしょ~~、ここは何処の独裁者国家だよ」
「しかもあいつら例の3名を自分の後継者にするんだとさ」
「けっ!結局は魔法至上主義の影響力残したいだけじゃないか、いたいけな少女達をだまくらかしやがって」
「例の対ガジェットを想定した特殊部隊ねぇ、高レベル魔道士はイパーイ」
「予算はいたれりつくせり、しかも本部でさえまだ配備されていない最新機材配備だってさ」
「だから、陸戦課は怒り狂っているよ、レジアスに気持ち分かるわ」
「「「「「「「「「「「やってらんね~~」」」」」」」」」」」
―――時空管理局本局一室
「宗方になにか動きはないのですか?」
リンディ・ハラオウンは、情報局局長のラインハルト・ゲーレンに問うた、会議が終わった後に宗方の部屋に
斎藤中将子飼いの部下佐藤大輔三佐が入ったことに何か疑念を感じたからだ。
「ええ、彼は彼の任務を着々とこなしているだけです、レリックの件もありますがそればかり構っていられる
ほど時空間に暇はありませんから」
「そうですか」
リンディはホッとする、ゲーレンは有能であることはレンディも認めている。正直彼女は宗方が何を
企んでいるのか全く分からないし、何せレティに至っても「宗方?あいつは何考えているのか分からん」と言われるほどだった。
「ああ、それと例のレリックと共に現れるガジェットの件ですが、犯人の特定は出来ましたか?」
「いいえまだ特定出来ていません、現在割り出しを急いでいます」
「そうですか…」
しかし宗方が例えどう行動とって損害を与えても結局は管理局の益になるばかりだから迂闊に口出し
出来るはずもないが…まぁもし彼の考えを知ったら、速攻彼の逮捕へ向かうだろう?何故だって?
だって彼の考えは新暦における管理局の根底を覆すうえに、下手をすると自分の娘たちをあの世に送る行為なのだから…
彼女がそれを知るのは到底無理だろう、何故ならすでに情報局主要幹部全員(有力な提督派のスクライア一族は叩き出している)
が宗方派であるからだ。そして通信がきられ、ゲーレンはタバコを取り出し火をつけ、吸い、煙を吐く、一息ついて呟いた・・・「馬鹿め」
それは何も知らないリンディの事だろうか?それとも管理局そのものなのか?それは彼にしか分からない。
――――時空管理局情報局一室
「たいした役者だよ貴方は」
呆れ果てた様に、ハンティトン・シェルドン副局長はゲーレンに言った。
「敵を騙すにはまず味方と言う諺があったはずだが?」
「ああ、それはそうですね、しかしまぁ…貴方も中将(宗方)とグルになっていると知っていたら彼女いや…上層部はどういう顔をするでしょうね?」
「そんな事私にとって何も価値はない」
ゲーレンは素っ気無く言う、毎日膨大な書類相手に何でそこまで相手にしなければならないのか、
彼の偽らざる心境だった、まぁゲーレン(とシェルドン)も現在の未だ(さっさと引退すればいいのに)
巨大な発言力を保持する三提督とそれに便乗するとりまき、とりわけ魔法至上主義者には心底うんざりしているのだ。
「所で、例のガジェットの対抗手段は?」
「捕獲したガジェットに対する実験では、普通の拳銃弾でも機能停止に持ち込めますよ、ま、あのサイズである程度の武装を供えた上に、
多少の機動性の保持、そしてAMF発生する為の発電(魔力)装置、そうすると必然的に直接装甲は最低限なものになります、まぁスカエリッティは
AMFで大丈夫だろとタカくくっているそうですからね」
「つまりワンショットライターというわけか」
「まぁそう言うことですよ」
「スカエリッティもとんだ道化だな」
「自分が管理局本部を手の平で操っていると思っても、結局自分も踊らされている・・・」
「哀れだな」
そしてゲーレンは宗方に機密通信回線を繋いだ。
―――――管理局本局 宗方部屋
「ふむ、まだリンディ総務統括官が私の動きに疑問を抱いていると?」
「ああ、まぁこちらが知らないといったらあっさり納得した」
「そうか、だが場合によっては提督派の情報局局員に内偵を行うかもしれん」
「えらく弱気だな」
「小さな穴が時に大きな穴になるきっかけを作る」
「確かに…まぁそういった局員は管理世界に飛ばしているし、こちらには二重工作者である沖田静がいる、フン、
三提督派の莫迦共はまんまと騙されている」
「ふ・・・わかった」
「私も管理局の腐敗に目を被うばかりだ、其の為にお前にあえて機密情報を流している…だから…お前に賭けている」
ゲーレンは嘆くように宗方に言う、確かに尊敬でき、尚且つ恩師であるヴィルヘルム・カナリスを辺境に飛ばした挙句
死なせた事に深い恨みを持っていた、しかしゲーレンの嘆きは情報という重要的存在を蔑ろにし、あまつさえ折角得た情報を握り潰したり、
時には自分達の成果だと喚くアホ共に心底うんざりしていた、だから闇の書事件だけではないPT事件でも早期に警告したにも関わらず、
御偉方が無視したせいで(優秀な魔道士2名確保したとはいえ)危うく大惨事になる所だった。其のことについて宗方は知っていた。
「ところで、あのスカエリッティについてだが…いつか犯人割り出しを発表しないと、やばいぞ」
「言われるまでもない、なに、局の御偉方にも何名かスカエリッティのやっていることを黙認している奴がいる、
そいつらに情報をわざと流させて、意図的に妨害させる」
「そしてすべてが終わった時に情報局の失態はそいつらに転化されると言う事か」
「ま、そういうことだな」
「だが、これから先はどうなるか分からない、歴史は常にどう動くかわからない」
「お前のことだ、いくつかの手段は想定してあるだろ」
「当然だ」
「お前らしいな」
リリカルなのはストライカーズ エピソード
「黄色い悪魔」
―――道中
「あれ?」
はやてはフェイトが運転する車の助手席で見た対向車に市川がいたことに疑問を思い浮かべた、
たしかエルセアにある亡き妻の墓参りするって聞いたんだが…まぁ彼には彼の事情があるのだろう、
はやてはそう思った、だがもし市川がこれから行おうとする事を知ったら間違いなく彼女は有無言わずに彼を取り押さえようとして
…殺されただろう。
―――時空管理局施設某所
市川が目的の場所についたのは夕暮近くだった。そこはクラナガンから隔離されたように周りを森で覆われた中で
ポツリと建てられていたが重厚なつくりの建物だった。そして身分証を提示し、かつての部下を呼び出させた、
小走りで掛けてきたかつての部下は彼の車へ乗り込んだ、そして市川は言った。
「頼みたいことがあるのだ」
「二佐のおっしゃることならばどんなことでも」
カリウス曹長は答えた、十年程前に、カリウスは市川に人生を救われたことがあった。
「君は今、押収質量兵器の管理をやっているはずだな」
「はい、ほとんど倉庫に放り込んであるだけで、いい加減な物です。誰も、何がそれだけあるか知りません、
そのおかげで仕事のストレスが溜まった局員が憂さ晴らし場所ですよ」
まぁつまり、ストレスが溜まった局員が射撃場で押収した質量兵器をぶっ放して憂さ晴らしを行うある意味知る人ぞ知る、
リフレッシュ場所だ。(実はゲイズやゲンヤも愛用していたりもする)
「いくらか融通してもらえないか」
「理由をお尋ねしても宜しいでしょうか?」
「犯罪ではない。少なくとも私はそう信じている。可能な限り、君に迷惑をかけないように努力する」
カリウスは市川の横顔に視線を走らせた。任せてくださいと答える。彼も、かつての上官が抱えて
いる個人的な問題についての噂話を耳にしていた。そして二人は押収兵器が治められている倉庫に
向かい、中に入った、そして武器特有のあの油臭い臭気が鼻をついた、そしてどの武器を必要かカ
リウスは問うた。
「そうだな、短機関銃はサイレンサー付きMP5、弾倉は10個、拳銃は同じくサイレンサー付きのベレッタMF92Fこれも弾倉10個、あるか?」
「ええありますよ、97管理外世界の質量兵器の優秀さは他世界より群を抜いています」
それを勝手にコピーした反管理局組織によって酷い目に会った連中は沢山いますよとカリウスは言
った。
「手榴弾もほしい、破片型と閃光型とをあわせて10個ずつ出来れば音響も一つか二つ」
「もてますかね?」
「体力は落ちてない」
「了解」
「それとC4と雷管、2つくれ」
武器を袋に納めた二人は射撃場に向かった。誰もいない射撃場でMP5、ベレッタ、を取り出し試射を行う、
修復しつつとはいえ片目を失ったのは痛かった、かつてなら五〇メートル先にでも拳銃弾を標的の中心に
収束させることが出来たが、今では15メートルが限界だった、MP5は…まぁ言わなくても分かる、
試射と分解組み立ては1時間で終わった。
「すまない、しかし私は責任をとらねばならない。無論、おろかな行為だと言うのは分かりきっている」
「貴方は局法会議にかけけられそうになった3等陸士を救ってくださいました。とてつもなく愚かな事をやらかした莫迦な下士官を、
それがもし親族ならば、ええ、当然と言ってもよいと思います。どの道自分の局歴は、二佐、貴方に貰ったものなのですから」
「ありがとう」
「貴方からその言葉を与えられること、それに勝る光栄はありません、二佐」
ああ、それから、ずっと御預かりしていたものをお返ししますと刃が少し曲がった、刃渡り60セ
ンチぐらいの刀、ククリナイフを取り出した。それにほぅと市川はうめいた、そうSAS時代に銃
弾を喰らって動けなくなったグルカ人を助けた際に譲り受けた業物だった、それからこのククリと
は任務で市川の助けとなり、多くの命を奪っていった。そしてそのククリナイフはよく磨がれて
いた。そして二,三度振り回した、貴方の帰りをお待ちしていましたといわんばかりに手に馴染んだ。
「ミッドチルダにおいて絶滅したと言ってもいいマイスターと呼ばれる鍛冶屋を探し出して磨ぎ直してもらいましたよ」
「随分と軽い感じがするな、そして刃がちょっと違うな」
「ええ、持ち出したオリハルコンを使用しています」
「ほう」
「本来なら違反ものですけど、何それぐらいゲイズ中将は握りつぶしてくれますよ」
「中将には世話になりっぱなしだな」
「まぁ共に戦い続けた戦友に対する礼儀ですよ、ああ、並のAMFぐらいや最近現れたガジェットぐらいなら簡単に切り裂けますよ」
「ああ、そうだなそんな感じがする」
そして市川は自分のバリアジャケットを着込んだ、平服で戦場に向かう気にはなれないからだ。そして彼はバリアジャケットのデータを改竄し
かつて自分が所属した特殊戦隊の軍服にアレンジする、そして鏡の前に立ち自分が服装規定を満たしているか確認した、背筋を伸ばす、
胸につけられた様々な略綬が士官として自分がどのような人物であったか証明した。無数の栄光と勝利。義務への献身。管理局への忠誠。
ただ一人の娘を救えなかった父親が勝ち得た様々なもの。そして市川は軍帽を丁寧にかぶり、黒い眼帯をはめた黄色の悪魔の姿を映し出された。
市川は背後を振り向いた。カリウスが敬礼を送った。彼は答礼した。二人は別々の射撃場から出た。
―――施設外
市川は衛兵に答礼し、車で営門を出た。後席には武器弾薬の詰まったバッグが置かれていた
そして営門のそばに車が停車していた、市川は其の前に自分の車を止め外に出る、そしてフレイザーも外に出た。
「酷い人ですよ貴方は…一応貴方につけた人はクラナガン警察において一番の腕利きと太鼓判押した人のですがね…
まぁ軍属には適わないと言うことですか」
「まぁな、しかし私は娘に会わねばならないのだ、例えそれが管理局を裏切ってでも」
「正直に言ってはどうです。この時空管理局本部がおかれているクラナガンで戦争を始めたいと」
それに対し市川は断固たる口調、むしろ悲鳴に近いほどの感情をこめた声で言った。
「君は誤解している、始めたいわけではない。終わらせたいのだ」
「可及的速やかに?」
「可及的速やかに」
フレイザーは悲しげな微笑を浮かべ、運転は私がしますと言って市川の車に乗り込んだ、そしてフレイザーは助手席の市川に兵隊言葉で尋ねた。
「で、二佐、指揮官の構想は?」
「私の目的を果たすと同時に、君にも礼をしたい」
「なるほど」
「まず、リッチェンス氏の指揮下にある人間を一人、調達せねばならない」
「了解」
「君は構わないのか」
「私にもあれこれと考えるところがあります」
「そうか・・・」
市川はある場所に殺気を込めた視線を送った、それに疑問を抱くフレイザー
「どういたしましたか?」
「何、ちょっとした鼠がいたような気がしてな…では行こうか」
フレイザーは車を発進させた。
――――茂み
「やっぱバレてたなぁ…適わないなぁ」
狙撃銃型デバイスを構えていた伊達英明二尉は呟いた
「はぁ、やっぱ4年収容所に放り込まれても、殺気を感じる感覚は衰えないか・・・」
補助兼
その他役の伊達と同期の田宮秀司二尉も感嘆そうに呟く、彼らが宗方から受けた任務は可能であれば市川の阻止、
無理ならしょうがないといった任務であった、そして田宮は連絡を入れる。
「阻止失敗、後は天に祈るのみ」
――――本局
「やはり、伊達では彼の阻止は不可能か…」
宗方は呟く…そして行動に乗り出す、市川が成すべき任務を終了した後の事を沈静化するための行為だ。
――――本部 ゲイズ室
レジアス・ゲイズも市川がこれから何をするのか、すでに施設内から送られた情報によって分かった…あいつはミッドチルダで
忌み嫌われた物を持って、よりによってクラナガンで戦争を起こすつもりだ…たった一人で。だが自分に何が出来る?
レジアスは深刻な顔をする、手持ちの局員を派遣すれば彼を取り押さえることも出来るが、だがその場を凌いでもあいつは娘の為になら
…ゲイズは溜息をついた、そして羨ましくも思った、思えば自分も娘に対しては幼い頃に愛情をあまりそそいでやれなかった
(仕事優先で家庭を顧みなった)、その贖罪の為かある程度の地位を(まぁオーリス自身も猛勉強したがな)
与えている、だから彼女にとって私は父ではなく、上級将官として自分を見ているだろう…だが彼は大事な娘を父親として取り戻そうとしている
…そしてゲイズは再び溜息をつき、デスクにおいてある写真を見ながら呟いた。
「なぁゼスト…」
死んだ戦友の顔を浮かべ懐かしむように呟く、そしてある人物を呼び出した、陸戦課第一実働部隊の部隊長であるスナブノーズ一尉と副隊長だ、
無論彼らも市川の個人的問題を知っている。そして入室する二人…
「急に失礼なのだが…非殺傷設定で市川守二佐を取り押さえる事は出来るかね?」
「「無理です」」
二人は即答し、スナブノーズは理由を述べる。
「彼はSASだけではなく数多の戦場で鍛え上げられたおかげで、多少の非殺傷設定での魔法攻撃は通用しにくいと思われます、
そして4年間虜囚の閉鎖された時代を過ごしても身体的、ならびに魔法能力は全く衰えを見せていません、それに彼の魔法は
主に攻撃よりも身体強化、非殺傷で取り押さえようとしてもこちらの損害は多いだけです」
「では君達二人ではどうかね?」
「…抑えることは出来ると思いますが、双方ともただではすみません、中将も知っておられますが彼はあのイリヤ・ジェルジンスキー
を単独で叩きのめしたのですよ」
イリヤ・ジェルジンスキー、ある世界の過酷な暮らしの森林民族出身で2mを軽く越す身長と、凶暴なグリズリーも素手で殺せるほどの筋力、
殺傷設定の魔法攻撃を喰らってもびくともしないお前本当は試験管から生まれたモンスターじゃないのか?といわれる陸戦課では有名な局員なのだ。(何と妻帯者)
「うううむ…」
顔をしかめるゲイズ、少なくとも実戦経験では市川には及ばないが、積んでいる2人が揃って言うのだ、そしてゲイズは言った
「すまないが至急準備して市川の後をつけてくれ、万が一の場合は彼を支援もしくは撤収の為の援護をお願い出来ないか?」
「「了解しました」」
スナブノーズと副長は敬礼すると準備の為部屋を出た。
―――通路
「しかし、まさかクラナガンで戦争を起こすとは流石二佐と言うべきか…しかし相手は地上課の潜入局員を次々と屠ったマフィア…それに単独で挑むとは」
副長はぼやく
「だが、彼にはそれに勝つだけの度胸と技量がある、我々以上のな…」
「それもそうですな」
――――繁華街外れ
フレイザーは繁華街外れに車を停め、待っていてくださいと外に出る。市川は其の間に戦争を起こす準備をした。
そしてフレイザーは30がらみのリッチェンスの部下を引っ張ってきた。市川は車から降りた、フレイザーが訪ねた。
「こんなところでどうです?」
「充分だ」
市川は、男の腹を殴りつけ昏倒させた、男を後席に乗せると彼は言った。
「さっ、ゆこう」
「どこにです?」
「もちろん、リッチェンス氏を忌み嫌っている所で最も有力なところな」
「まさか…」
「君の思う通りだよ、安心しろ死者は出さない」
「…ちょうど108部隊のゲンヤ3等陸佐とその配下がいますよ」
「それは好都合だ」
次の目的地までさして時間はかからなかった。
――――クラナガン警察署前裏門
周辺に人はいなかった、フレイザーは車の速度をゆっくりと落として停止させた。
「何をするつもりです?想像はつきますが」
「君はここにいてくれ」
市川は車から降り、後席で昏倒している男を路上に放り出した。そしてホルスターからベレッタを抜き署に向けて弾倉から弾がなくなるまで発砲し、
弾倉を交換してから閃光手榴弾と音響手榴弾を堀越しに投げつけた、そして恐らく不運にもそこにいた警察官か、果たして108部隊の局員が叫び声を上げ、
うめき声をあげる、それを尻目に市川は車に乗り込み扉を閉める。
――――署内
ゲンヤはクラナガン警察とのクラナガン及び周辺地域の治安などの会合に出席していた。
「な、何がおきたんだ!」
ゲンヤ・ナカジマは突然おきた銃声と轟音と閃光に仰天した、そして警察官がドアを蹴飛ばすようにあけて叫んだ。
「リッチェンスの部下がついにやりやがった!」
そう、上層部は買収されていたとはいえ、一部の上層幹部とかもリッチェンスの密輸業に怒り狂っていたのだ、
しかしリッチェンスは狡猾にもそうやって汚れたお金などは消毒するか、慈善団体として孤児院などに寄付していたのだ、
そして証拠を得ようと内偵調査はことごとく失敗し続けていたのだ、ようやく掴んだ強制捜査の証拠、沸き立つ署内、
大急ぎで屋敷突入(抵抗するのは分かっているから)の準備が行われる。
「すいません、108部隊の支援も頂きたいのですが…」
警部と思われる男からの要請にゲンヤは快く承諾した、そしてギンガと何名か隊員を呼び出した。
「悪いが、ずっと追っていたリッチェンスに対する強制捜査が行われる、すまんが同行してくれギンガ」
「はい、御父さん」
――――別の車
「ゲッ!本当にやりやがった」
「相手の戦力を分断させる作戦か」
「しかし、何もそこまでやりますかね?」
「彼だからこそよるのだ、大切な存在を守る為にな」
スナブノーズと副長はこっそりと市川の車の後をつけた
―――車
「表門の様子が見えるところまで移動してくれ」
フレイザーは車を急発進させた、そして民家の影で止まった車の中から警察の様子を窺った、
そうすると大慌てで警察官や局員がパトカーに乗り、表門から飛び出した、皆武装していた、そしてフレイザーはうめいた。
「何てこった、本当に戦争になっちまった」
「まだまだこれからだ、彼らより5分ほど遅れて行動しよう。それで十分なはずだ」
「リッチェンスの屋敷へ?」
「我が娘の下へ」
目的地へと向かう車内で市川は言った。
「屋敷の西側につけてくれ」
「貴方の娘さんがいる部屋は、恐らく南側にあります」
「庭に面しているのか?」
「いいえ」
「君には感謝しなければならないな、例え私が逮捕されても、君が心配する必要はない。確約する。私は尋問に慣れているのだ」
「貴方が車から降りてから20分待ちます」
「何故そこまで親切にしてくれる?」
「警察としての巧妙を上げたいからですよ」
「それだけだとは思えない。君のような警官にとって感状や昇進はそれほど意味のあるものではないはずだ」
「トーベイという局員を覚えていませんか。あの戦争で貴方の部下だった」
「ジョン・トーベイ3等陸士。いい局員であり、兵隊であった。魔力ランクは低いがそれを補うほどの射撃術の腕は最高だった。
子供に好かれるような男だった。彼に微笑みかけられた子供と其の母親は必ず微笑を返すほどだった。
管理局員に対してある種の恐れと侮蔑とは無縁ではないあの戦争でもそれは変わりなかった。」
「ええ、あいつは他愛のないほどに子供好きな男でした」
「彼は負傷し、ミッドチルダに送還になった。幸運だった」
「彼は私の弟です」
「名字が違うな」
「男の子がいない親戚の家に貰われたんですよ。それなりに金のある家です。別に珍しくもない話です」
「やはり幸運な男だ」
「ええ、しかし、あいつはそこで幸運を使い切ってしまった。傷が癒え、帰還して、家に戻り、交通事故で死にました。戦争が終わる直前です。莫迦な奴ですよ。何の為に生きてきたのか分からない」
「成る程」
「貴方のことは弟から教えられました。弟は本当に尊敬していましたよ、市川二佐の事を。
兵隊が例え血の池地獄に落ちても、そこに飛び込んで助けてくれる人だといって。
あいつが地雷原の真ん中で腹を撃たれてうめいた時も貴方はは地雷原と相手の攻撃を駆け抜け、
私の弟を救ってくれた。彼はその事を酔うたびに話してくれました」
「当然だ」
市川は当然の義務のように答える。
「襟に付けた線の数が私にそれを要求していたのだ」
「現状における私の立場も余り違いはありません。誰も困らないならば、何が悪いと言うのか。警察にあるまじき発想ですがね」
「可能ならば、機会を捕らえて墓参りさせてもらいたい。勿論君の許しを得た後に」
「喜びますよ、あいつは」
デバイスから魔力弾が放たれ応戦するように銃声が響いてきた。フレイザーは車を裏通りへ乗り入れた、屋敷の西側につける、
市川は扉を開けた、そしてフレイザーは念押しした。
「20分ですよ…二佐、御武運を祈ります。まぁ、武運は貴方の得意技なんでしょうが、兎も角、戦争を終わらせてください。可及的速やかにね・・・」
「ありがとう、警部補」
――――リッチェンス邸正面
当然と言えば当然の事だった、警察と局員が邸宅へ強制捜査に踏み込もうとして、リッチェンスの部下たちと揉み合いとなって、そして誰かが発砲したことにより、警察、局員そしてリッチェンスの部下たちはたちまち撃ち合いとなった。
「これ、本当に家なの?」
ギンガ・ナカジマはうめいた、そらそうだ、壁には若干とはいえAMFが貼られており、警察は苦戦、そしてギンガも
ウイングロードで空中から突入しようとするが、リッチェンスの部下が配備していた対空用の重機関銃(後にZU-23と判明)
による攻撃で迂闊に攻撃を駆けられないのだ、確かに張った防御魔法トライガードもたとえ1,2発ぐらいなら弾でも何発も喰らうと
あっさりと砕け散るだろう。
「丸で要塞ね」
ギンガは思った、そして悲鳴が上がる、警察の一名が銃弾によって倒れたのだ。ギンガは歯を噛み締める…そして空が駄目なら…、
ギンガは警察の指揮官に連絡を入れる、自分が壁をぶち抜くので其の為援護をしてほしいと、指揮官は言った、大丈夫なのかと、
AMFが貼っているじゃないかと。しかしあのぐらいのAMFなら自分のデバイスで充分ぶち抜けますと、指揮官は難しい顔をしたが、あっさりと了承した。
そして警察官や局員が自分を支援するように弾幕を貼る、そして怯んだ隙を狙って、壁に向かって突進する、何発か銃弾が飛んできたが、大体は外れて、
そして当たりそうなのはトライガードで防いでいた、そして魔力を貯めた左手に装着しているリボルバーナックルのカートリッジの薬莢を撃ち出し、
そこによって発生した魔力を直接壁に叩き込んだ、轟音がして壁の一角が崩壊した、歓声が上がるが、リッチェンスの部下達はしぶとく抵抗する、
まだ邸内突入は無理だ…そう思い一端離脱(自分の銃弾が集中してきた為)した・・・
だが突然裏口から爆発が起きる。あれ?まだ後ろに回った部隊はいなかったはず、では一体誰が?
――――邸裏口
市川は周囲の状況を確認し、塀の弱い部分を確認、C4を取り付け雷管を作動させ、飛び跳ねるようにして距離をとり伏せた、
そして爆発が発生し、塀が崩れ落ちた、一応AMFを貼っているといっても膨大な破壊力を持つ質量兵器の前では無力と言って過言ではなった、
そして市川はMP5を構え、崩れた塀を乗り込えた、愛すべき娘の下へ行く為…
――――某車
「突入したようだな」
「ええそうですね」
スナブノーズも副長も既に戦闘体制を整えつつあった。
「暫くは様子見だ、こっちにノコノコやってきた連中は」
「とりあえず、暫く冷たい地面の上でお昼ねと言うわけか」
「殺すなよ…」
「隊長も拳の威力抑えといて下さいよ、隊長の拳は簡単に人殺せますからね」
最終更新:2010年04月09日 21:17