魔道戦屍リリカル・グレイヴ Brother Of Numbers 第一話「ビヨンド・ザ・グレイヴ」
覚えているのは青い空…覚えているのは輝く雲…覚えているのは……
それは彼の一番古い記憶、親友と見た蒼穹の空と純白の白い雲、悠久の眠りにつく死人にまた闘争の運命が近づいていた。
男の名はブランドン・ヒートと言った、彼は孤児として生まれ同じ境遇の親友と共に紆余曲折を経てマフィアとなった、親友・仲間・ボスそして全ての愛する者を守るためブランドンは銃を取り殺し屋へとその身を堕とした。
ブランドンと親友は組織の中で不動の地位を確立したが親友はそれでは満足しなかった、親友はボスを殺し自分が組織を支配しようとしたのだ、ボスを裏切れなかったブランドンは親友に殺されその短い生涯を閉じる。
しかし死者を兵器として蘇らせる技術ネクロライズ計画により死人兵士(しびとへいし)ビヨンド・ザ・グレイヴと成った彼は最愛の女性がボスとの間に生んだ少女を守り親友を倒し数多の戦いを駆け抜けた。
そして戦いを終えた彼は深き眠りの中に落ちた、二度と醒めない筈の深き眠りに。
太陽の光の届かない地下施設、違法なる科学者ジェイル・スカリエッティの研究所の一室で意識を闇に落としていた男は目を覚ました。
「おや、目を覚ましたのかね?」
声をかけたのは白衣を着込んだこの施設の主、ジェイル・スカリエッティ、対するは隻眼の死人兵士ビヨンド・ザ・グレイヴ。
「古びたコンテナに眠る君を発見してね、勝手かもしれないが修復と蘇生をさせてもらったよ…グレイヴでいいのかな?」
スカリエッティの言葉にグレイヴは険しい目つきで答える。
「ああ名前か、私はジェイル・スカリエッティだ一応は科学者のはしくれだよ、それと君の名前はコンテナの資料から知ったよ」
スカリエッティがそう言うと彼の作った戦闘機人たち、セイン・ノーヴェ・ウェンディといった元気のある面々がコンテナから発見された荷物を部屋へと運び込んだ。
「ドクタ~これは何に使うんっすか~?」
「ああ、それは彼の身体の血液を交換するために使う専用の椅子だよ」
「そんなモンが必要なのかよ、とんだ欠陥品だなそいつ」
「本人の前で失礼な事を言っちゃダメだよノーヴェ、セインお姉ちゃんおこるよ~」
「うっせー、姉貴面すんな」
「う~妹が反抗期だ~今度チンク姉に言いつけてやる~」
「それはヤメロ!」
そうやってグレイヴの前でナンバーズがやかましく微笑ましい会話を繰り広げる、表情こそ変わらないが彼の出していた殺気が引いたのをスカリエッティは感じた。
「彼女たちはナンバーズ、私の作った戦闘機人…つまり君と同じような人工的な処置を受けた人間だよ、もっとも君は既に死んだ人間のようだが」
「えっ…その人って死んでるんっすか…ちょっと恐いっす」
「厳密に言えばね、でもこうやって生きて動いているのだから、君たちとそう変わらないさ」
怯えるウェンディにそう言うとスカリエッティはグレイヴに向き直り彼に声をかけた。
「さて、それじゃあ必要な事はこの3人から聞いてくれたまえ、私は研究に戻るよ」
「マジかよ」
「別にいいじゃんノーヴェ、最近は暇だったんだからさ」
「そうっすよ、死人も幽霊も戦闘機人には恐くないっすよ」
「恐がってんのはお前だけだろうが」
スカリエッティはそう残してその場を去り、ノーヴェたちがグレイヴの下に集まる。
「あたしはナンバーズ6番のセインだよ♪よろしくねグレイヴ」
「…ノーヴェだ」
「あたしは11番ウェンディっすよ、とりあえず服を着るっすよ」
3人は自己紹介をしてグレイヴの十字架の刻まれたスーツを差し出した、彼は目覚めの血液交換の為に上半身裸の状態だった。
服を着たグレイヴは3人に施設内を案内され様々な場所を歩いた、そして自分が眠っていたというコンテナの下にたどり着いた。
「これがグレイヴのいたコンテナっすよ」
「すごいボロボロだね~」
「ってかグレイヴっつたか、なんか喋れよ!最初っから一言も喋らねえじゃねえか」
「そう言わないっすよノーヴェ、きっと美少女だらけで緊張してるんっすよ」
そんな3人を置いてグレイヴはコンテナ内部を見た、最後の自分の記憶では仲間である十二やビリーと共に戦いを終え、“ミカ”に見守られて眠りについた筈だった。
「あっそうだ、グレイヴ、あたしこれをコンテナの中で見つけたっすよ、たぶんグレイヴ宛っすよ」
ウェンディはそう言うと古びた手紙をグレイヴに差し出した。
彼はその手紙を丁寧に開き、読み始める……そして最初の目覚めから一切の感情を見せなかった表情を悲しみに曇らせ、頬に一筋の雫を零す。
「どうしたっすか!?どこか痛いっすか?」
「どっか痛いならドクター呼ぶか?」
「グレイヴ~大丈夫?」
たった一滴の涙だったが、表情を表に出さない彼が発露するその感情の重さを語っていた。
グレイヴは自分を心配する3人の少女を見て優しく微笑み、かつて自分のファミリー“ミカ”にしたように、そっとその頭を撫でた。
「うわっ、いきなり何するの?まあ悪くないけど…」
「勝手に撫でんなよ…」
「セインとノーヴェずるいっすよ~その後はあたしっすよ!グレイヴ~」
地下の薄暗い施設に温かい空気が流れ、微笑ましい笑い声が響いた。
それはグレイヴへ宛てられた古びた手紙、送り主は最愛のファミリー(家族)、かつて愛した女性と忠誠を誓ったボスとの間に生まれた彼の相棒の一人の少女が残した最後のメッセージであった。
グレイヴへ。
あなたがこの手紙を読んでいる時、私はきっともう、この世には居ません。
専門医の先生からは後半年の命だと言われました、最後まであなたの傍に居られなくてごめんなさい。
最近は昔の記憶ばかり思い出します、スパイクや屍さんビリーさん、そしてグレイヴと一緒に駆け回ったあの時のことを…
きっと私が死んだらあなたは悲しんで泣いてくれるねグレイヴ、でも私はあなたや皆に会えて本当に嬉しかったから、これだけは忘れないで。
この先あなたが安らかに眠り続けてくれるのを祈ります。
でも目を覚ましたらあなたは、また誰かを守ろうと助けようとするよね、私はそんなあなたが大好きだから、そんな時はその人を守ってあげて。
それじゃあ、ありがとう、さようなら…愛しています。
浅葱ミカ。
スカリエッティの地下施設で今日も3バカ(セイン、ノーヴェ、ウェンディ)が騒ぐ。
「うわ~ん。グレイヴ~またノーヴェがいじめるよ~助けて~」
「いじめるっす~」
「ウソ言ってんじゃねえコラ! てめえらがあたしのプリン食ったんだろうが!!」
「だっておいしそうだったんだもん」
「“だもん”じゃねえ!!」
「ノーヴェは心が狭いっすよ~」
「あんだとお!!」
作業用のツナギを着てスカリエッティが実験に使う器具を一人で運んでいたグレイヴの周りにやって来た3人はいつものドタバタ騒ぎを起こす、グレイヴは運んでいた荷物を床に置いて暴れるノーヴェの頭を撫でた。
「なんだよ…子供扱いすんなよ。」
顔を赤らめて不満そうな声を出すノーヴェにグレイヴはポケットから飴を出して渡した、最近彼はナンバーズのこういったケンカの仲裁用に何かお菓子を持ち歩くようにしていたのだ。
「ずるいっす~あたしも欲しいっすよ~」
「あたしも~」
「うっせえ! あたしのプリン食ったんだからこれはあたしんだ!」
そう言って3人はまたグレイヴの下から駆けて行った、やれやれと小さくため息をつくグレイヴに小柄な影が近づく。
「すまないなグレイヴ、妹達が迷惑をかけて。姉からあやまっておこう、それといつも面倒を見てくれてありがとう」
銀髪隻眼の小さな戦闘機人ナンバーズ5番チンクである、手のかかる妹達の面倒を見てくれるグレイヴに今日も彼女は礼を言った。
グレイヴは膝を突きチンクの頭を撫でた、かなり身長差のある彼がチンクを撫でる時は自然と膝を突かねばならないからだ。
「……グレイヴ。さすがに姉にこれは恥ずかしいのだが」
チンクは恥ずかしそうにするがグレイヴはこれに静かに微笑んで返した、ネクロライズ技術により生ける屍として兵器と成った彼はあまり口を開かない、故にこうやって彼女達の頭を撫でるのは彼なりの返事だった。
こうしてグレイヴはスカリエッティの下で色々と雑用を行いながらナンバーズの面倒を見て静かに暮らす、かつての血と硝煙に塗れた日々を忘れるかのように……しかしそんな日々は長くは続かない。
その日ノーヴェ以下いつものメンツ3人がレリックの回収として実戦経験習得のために出動したのだが予想以上の敵戦力、時空管理局の魔道師との戦いに苦戦を強いられているようだった。
救援を求める通信が入るも戦闘可能なナンバーズは他の任務に出動か調整中、ルーテシア一行も救援には来れないという状況。
その話をウーノから聞いたグレイヴは彼のコンテナ内にあった二度と使いはしないと思っていた“得物”を取りにスカリエッティのラボに向かった。
スカリエッティのラボのドアが乱暴に蹴破られグレイヴが姿を現す、彼の目はノーヴェ達を戦場に送ったスカリエッティに怒りの視線を投げかけると同時に自分の“得物”を探す。
「君か…来ると思ったよ」
スカリエッティは視線をその場に置かれていたグレイヴの得物である武器の詰まった棺桶“デス・ホーラー”へと移して説明を始めた。
「この棺を取りにきたんだろう? 弾は全弾非殺傷設定のものを込めておいたよ、転送の準備も整っているから救援に行きたければ行ってくれたまえ」
スカリエッティは転移魔法陣を指差し武器の説明を入れた、そんな彼をグレイヴは怒気を込めた目で睨みながら上腕に鎖でデス・ホーラーを固定して戦闘準備をする。
「おいおい…そんな目で見ないでくれ、彼女達は危険を承知で行っているんだから」
背に棺桶を背負うとグレイヴは転移魔法陣に向かって歩き出す、そんな彼にスカリエッティはふと質問を投げかけた。
「しかし君は良いのかね? 時空管理局とはこの管理世界の秩序そのもの、世界を全て敵に回すようなものなんだよ?」
グレイヴはその質問に銃弾で答えた、デス・ホーラーから抜かれた巨大な二丁銃“ケルベロス”が火を噴き純魔力ダメージ弾頭がスカリエッティの頬をかすめた。
「キツイ返事だねえ、随分と嫌われたものだ…」
かつて国家を動かす程に巨大な組織と二度も渡り合いそして壊滅させた最強の死人兵士が再び戦場に舞い戻る。
「ちっきしょう! なんでこんな時にセインがやられてんだよ!!」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないすっよ!!」
ノーヴェとウェンディはコンクリートの壁を遮蔽物に管理局の魔道士の放つ射撃魔法を凌ぎながら応戦していた。
本来ならセインの能力ディープダイバーでレリックコアを回収した時点で離脱しているのだが、運悪くセインが敵の撃った射撃魔法を受けて昏倒してしまったのだ。
救援も期待できない状態で二人は気を失ったセインを連れて局の魔道師から逃げねばならなくなった。
「もうすぐガジェットの応援が来るみたいっすよ!」
固有武装ライディングボードからの砲撃で弾幕を張るウェンディが同じく自身の装備ガンナックルから射撃攻撃を撃ち続けるノーヴェに叫ぶ。
「あんな鉄屑どもが来てどうなんだよ! とにかくチャンスはそん時しかねえぞ、ガジェットがあいつらと交戦始めたらすぐにトンズラだ!!」
ガジェットの応援程度では心もとない程に敵の数は多かったが今のノーヴェ達が離脱するには最後のチャンスだった、そして駆けつけたガジェットの中の一機、飛行特化のⅡ型の上に見慣れた男が立っているのを二人は見た。
その男は背中に十字架を刻まれた黒いスーツを着て両手に巨大な拳銃を持ち上腕に巻いた鎖で棺桶のような物を背負っていた。
両の手の銃はケルベロス常人には扱えぬ死人兵士用の巨大銃、背負った棺桶は彼の為に作られた武器を満載した棺桶デス・ホーラー内部に過剰なほどに火器の内臓された棺だった。
その男グレイヴはかつて使った武器の数々を引っさげて、上空を通り過ぎたⅡ型ガジェットから飛び降り管理局の魔道師の只中に着地した。
「うわあ! なんだこいつ…」
「動くな! 我々は管理局の…」
口々に叫ぶ局の魔道師だったが彼らがその言葉を言い切ることは無かった、次の瞬間には彼ら全員はグレイヴが超高速で乱射した二丁銃ケルベロスの銃弾を受けて倒れたからだ。
100人は下らない数の管理局の魔道師が一切の反撃を許されずに倒れた、空中に棺を放って完全に自由になった両腕でケルベロスの銃弾を嵐のように撃ち出す技“Executioner’s Blood”この魔技を逃れられる者などいないのだ。
かつて死神とまで言われた最強の死人兵士が再びその手に銃を持ち、新たなファミリー(家族)の為に再び戦場に舞い降りた。
「グレイヴ…なんでここに来てんだよ? べ、別にお前の助けなんてなくたってあたしらだけで何とかしったっつーの…」
いつもの優しい様が嘘のような凄まじい戦いを見せるグレイヴにいささか狼狽しながらノーヴェが口を開く。
「なんでノーヴェは素直になれないっすかね~。ありがとっすよグレイヴ♪ あたしから素直じゃないノーヴェの分もお礼を言っとくっす」
「つまんねえこと言ってんじゃねえ!」
二人はいつものように軽くじゃれあう、その様子に少し微笑むグレイヴだが気を失ってライディングボードに乗せられたセインに心配そうな目を向けた。
「あ…セインなら大丈夫っすよ。射撃魔法の魔力ダメージで気を失ってるだけっす」
セインを心配そうな目で見るグレイヴにウェンディはそう答えて彼を安心させた、その時彼らにスカリエッティから通信が入る。
『あ~やっと通信が入ったよ。全員大丈夫かね?』
「ドクター遅いっすよ~」
「そうだよ。何やってんだよまったく…」
『そう言わないでくれ、これでも局の通信妨害が酷いんだよ。ウーノが調整中なんだからしかたないだろ? それに心強い味方が来たじゃないか』
スカリエッティの通信に文句を言う二人をやれやれと見るグレイヴだったが首筋に感じた寒気、第六感を刺激する感覚に目を遠方に向ける。
『おや、管理局の増援のようだね。これはこれは…機動六課の皆様方みたいだよ』
「マジっすか!? 早く逃げるっすよ~」
「そうだな。おいグレイヴ早くしようぜ!」
ノーヴェがグレイヴに声をかけた瞬間、グレイヴは手のケルベロスを構え銃火と共に弾頭をはるか遠方に撃ち出した。
「きゃああ!!」
眉間に魔力ダメージ設定の弾丸を受けて少女ティアナ・ランスターは倒れた、遠距離からの狙撃弾で敵を無力化しようとした彼女だったが、敵は幻術でカモフラージュする彼女に先に撃ち倒したのだ。
「ティア!」
相棒であるスバルが思わず声をかけたが既にティアナの意識は深い闇の底に落ちていた、少なくとも1時間は意識を取り戻さないだろう。
「スバル! ティアナは他のみんなにまかせて先に敵を叩くよ!」
「わ、分かりました」
スターズ分隊隊長、高町なのはの声にスバルはティアナを他の隊員に預けなのはと共に犯人を制圧せんと駆けた。
「敵さんが来ちゃったみたいっすね…」
「ちっきしょう…もう来やがったのかよ。こうなったら全員で応戦して逃げ道作るぞ!」
早すぎる敵の来襲に決死の覚悟で交戦の意気を高めるノーヴェとウェンディの頭を大きな手が優しく撫でた。
「ちょグレイヴ何するっすか~」
「な、なんだよ」
グレイヴは優しい微笑みを見せてから、戦意を宿した鋭い眼光を二人に投げかけたそれは二人が見る初めての彼の本気の顔、決して揺るがない意思を持つ戦士の顔だった。
「…ノーヴェ、ウェンディ」
そしてグレイヴはこの世界で初めて口を開く、静かに澄んだそして熱い心を宿した言葉と瞳で彼は二人に語りかけた。
「…二人は逃げろ。俺が食い止める」
「なっ! グレイヴを置いて行けないっすよ!」
「そうだよ誰が置いてくかってんだ!…それに喋れるなら早く言えよ」
反論する二人にグレイヴは鋭い眼光を浴びせて黙らせたその目は一切の妥協を許さない意思を持っていた、二人はそれ以上口出しできず結局グレイヴを残して脱出することとなる。
『大丈夫だよ二人とも。今ガジェットの大部隊とルーテシア達の準備を整えているからね、彼だけならルーテシアの遠隔転送で後から回収可能だ』
「…わかったよ。いいかグレイヴ! 絶対帰れよ約束だかんな!!」
「…ああ」
静かに答えるグレイヴにノーヴェが寂しそうな瞳を向ける、二人を乗せてウェンディのライディングボードが飛び去った。
『さてグレイヴ君、君の棺のエネルギーチャージはもう済んでいるだろう? 思う存分に使ってくれたまえ!』
インカム越しに響く耳障りなスカリエッティの管制を受けながらグレイヴは近づいた気配に二丁の巨銃を向けて銃火の花を咲かせた。
「くっ! なんて弾幕なの!」
高町なのはが思わず呻く、彼女を含めた機動六課の隊員達を迎えたのは背に棺を担ぎ雨のように銃弾を吐き出す二丁の銃を操る黒衣の男だった。
誘導弾を牽制として大量に撃ち出すもその全てが銃弾に叩き落されるのだった、そして接近戦に持ち込もうとしたスバルがウイングロードを駆けて腕の鉄拳を振るった。
「喰らえええ!!」
大きく振りかぶって出されたスバルの鉄拳を黒衣の男グレイヴは背の棺で難なく防ぐ、相応の威力を誇るスバルの拳を微動だにせず受け止めさらに力任せにスバルを棺桶で吹き飛ばす。
「きゃああ!!」
「スバル!」
グレイヴはスバルに駆け寄るなのはに容赦なくケルベロスの銃弾を撃ち出す、なのはは防御障壁を展開しながらスバルを助けに向かう、そしてなのはに追撃を続けるグレイヴに紅い騎士が踊りかかった。
「こっちだデカブツ! ラケーテンハンマー!!」
スターズ分隊副隊長ヴィータが手にしたデバイス、グラーファイゼンの強烈な一撃をグレイヴに振るう、さしものグレイヴも吹き飛ばされ瓦礫と土煙の中に埋もれる。
「大丈夫かなのは!」
「大丈夫だよ、スバルは一旦下がらせたし。それよりあの人大丈夫かな。ヴィータちゃんちょっとやりすぎじゃあ」
「なに言ってんだよ! これくらいまだ手加減したくらい…」
そんな会話を続ける二人の前で瓦礫を蹴り飛ばし立ち込める煙を割って手に二丁の巨銃を背に棺を持った死神が這い上がる。
「嘘だろ…」
「まさかあの一撃を防御障壁なしで…」
グレイヴは驚くなのは達に再び手の二丁銃を向ける、デバイスを構えて応戦の準備をする二人がそれぞれに口を開いた。
「待って下さい! なんであなたはこんな事をするんですか? 戦闘機人…彼女達が何をしているか分かっているんですか!?」
「お前も戦闘機人なのか!? なんか訳があんのか!? もし何か理由があるんなら管理局はちゃんと話しを聞く!」
なのは達の言葉にグレイヴは手の巨銃を棺にしまった、その行動に二人は顔を緩めるが彼の行為は別に降伏の合図などではなかった。
「…守る」
「えっ?」
「…俺はファミリー(家族)を守る」
グレイヴは静かな声と共に背の棺桶を肩に担いだそれはエネルギーをチャージの終わったデス・ホーラーの大技、大型のロケットランチャーを正面に撃ち出す“Death Blow”だった。
ランチャーが迫りなのはとヴィータは慌てて防御障壁を張りその攻撃を防いだ、軋む障壁でなんとか防ぎきり爆炎の晴れた二人の視界からはもう既に男は消えていた。
続く。
最終更新:2008年05月15日 20:54