ここは数多ある次元世界の一つ。
その世界の中の、分割ホンコンと呼ばれる場所。そこでは現在、AS(アーム・スレイブ)という人型ロボットが戦闘を行っていた。

赤色で一つ眼のAS、「コダール」が、手足を破壊された黒いAS、「ファルケ」に拳銃を突き付けている。
が、一見優勢に見えるコダールのパイロットから余裕は感じられない。
「近付くな!パイロットを殺すぞ!?」
コダールのパイロットは前方20メートルの所にいる白いASに向けて怒鳴る。
彼が狼狽するのも無理はない。配下として共にやって来たコダールタイプのAS四機が、突如現れた一機だけの白いASによって瞬く間に叩き潰されたのだから。
「どういう事だ…“ミスリル”のラムダ・ドライバ搭載機は未完成ではなかったのか!?…貴様、一体何者なんだぁ!!」

コダールのパイロットの叫び声に、白いAS、「アーバレスト」は通信機越しに返答する。

「俺が誰なのか教えてやろうか」

そういった後、アーバレストは右拳を前に突き出し、そこに機体に搭載された特殊な力場発生装置「ラムダ・ドライバ」から発生したエネルギーを充填する。

「俺は陣代高校2年4組、出席番号41番、二学期もゴミ係の…」
言いながら、アーバレストは足を一歩踏み出し、徐徐にスピードを上げてコダールに近付く。そして遂には走り出し、右拳をコダールの盾になっていたファルケに叩き付けると同時に叫んだ。
「相良 宗介だ!!!」

アーバレストは溜めていたエネルギーを前方に向けて解放するが、その圧倒的な力の奔流はファルケを透過し、背後のコダールのみを飲み込んだ。
『全ターゲットを撃破しました。』
アーバレストのAI』アルがそう報告し、宗介は安堵の溜め息をついた。


だが、異常はこの後起こった。


「ウルズ7より各位へ、本機はこれより…」
『警告。前方の空間に異常を感知。』
「!?」
周りの仲間に報告しようとした宗介は、アルの発した警告に耳を疑う。
(敵は全て撃破した筈…!?)
そして確認の為にモニターに目を向け、そこで固まった。

「何なのよ、あれ…」
「どうしたんだよ、こりゃあよ…。」
後方にいたメリッサ・マオ、ビルの上にいたクルツ・ウェーバーはそう呟き、モニターから飛込んで来る映像を凝視する。
その映像とは、空間が歪み光を発しているという、常識的な人間ならば信じられないものであった。

「ウルズ1、ウルズ7、早くそこから離れて!!何だか知らないけど計器類がとんでもない数値を出してるわ、そこにいるのは危険よ!!」
いち早く冷静に戻ったマオが宗介とファルケのパイロット、クルーゾーのコールサインを呼ぶ。

その声に我に返った宗介が機体を反転させようとするが、そこである事実に気付く。ファルケの足の損傷は、とても素早く動く事は出来ないほど酷かったのだ。
このままではこの奇妙な空間につかまってしまう。

「軍曹、俺の事はいい、早く離脱しろ!」クルーゾーが叫ぶが、宗介は『自分の力で仲間を守る』と誓ってここに戻って来たのだ。見捨てる事など出来はしない。

「くっ!」宗介はクルーゾーの所まで急いで駆け寄り、機体の腕と胴体を掴んだ。
「マオ、頼む!」叫ぶと同時に宗介はアーバレストの腰を捻り、その勢いでファルケを後方へと投げ飛ばし、それをマオ機がキャッチした。

これによってファルケは危険域から脱したが。残ったアーバレストが空間に囚われてしまった。
「ソースケ!」ビルの屋上から降りてきたクルツが近寄る。
「よせ、来るな!」宗介は拒絶するが、クルツは構わずにアーバレストを引き寄せようとする。

その時、空間の光が一層強くなり、二機を飲み込んだ。
「くぅっ…!」
「うおっ…!」
そして光は急速に弱まっていき、後には何も残らなかった。
そう、そこにいたはずの宗介、クルツの両機さえも…

「ちょっと、二人ともどこに隠れたのよ…ソースケ!クルツ!」
マオの悲痛な叫びが響くが、それもすぐにビル風の中に消えていった。

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最終更新:2007年12月22日 10:53