魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~
第九話「立ち上がった白銀の城」
「行くのだな?」
かつて大武闘会が行われていた石の四角い土俵。
一人の巨人は迷い込んでいた世界へ、救うべき者を救うためにもう一度赴こうとしている。
巨人はコクリと頷くと、その巨大な体を唸らせる。
手に握る巨大な槍は今までのものよりも太く、大きく。より鋭さを増している。
「機巧槍 雷神真王」。鋼より硬い炭素の結晶で作られた巨大な槍、もといドリル。
肩は今までの葵の御紋が刻まれたものではなく、先端が軽く尖っていてより機械的になっている。
「鋼具足 飛翔壁」。今までどおり鋼で作った鎧だが重いのに速く動ける。それは紋章の中の不思議な筒が強化されたのだとか。
紋章の中には以前より強化されたプラズマ発生装置。準備は万端だ。
巨人は槍を高々と掲げ、地面に刺す。大の字になって空中に浮かぶ。予想通り、地面が渦になる。
(今度はもう迷わない)
渦に飛び込む。技師のおかげで強化され、白銀の城となった本多忠勝は戦地、ミッドチルダへと駆ける。
「さて・・・お主等も行くのだろう?」
家康の後ろに、四つの人影。
その忠勝が今向かっているミッドチルダ。
まさに戦場と化していた。飛び交う魔力弾。倒れる人々。止むことのない爆発。
戦場を、黒い人影が跳ぶ。また一人、二人、倒れる人。得物の鎌は血に染まる。
「ククククク・・・・ハハハハハハハハハハ!!あぁ・・・楽しい・・楽しい・・・!この鎌の刃が抉りこむ肉!肉から飛び散る血!!
響く絶叫!!痛い・・痛い・・・気持ちいい・・・!!痛い楽しい痛い楽しい痛い楽しい痛い楽しい痛い楽しいィィィィィィッ!!」
「ひ・・・ヒェェェェェェ!!」
思わず魔道士が逃げてしまうほどの狂気を放つ男。それは本能寺の変にて信長と刀を交えた男、明智光秀。
「・・・・」
その隣で敵を殴り倒していくのはかつてのスバルの姉、ギンガ。そのリボルバーナックルは数多の人を倒しているのに血に染まってはいない。
殴られた者はまだ動いている。生きているという証拠だ。
二人の前に立ちはだかる一人の少女、スバル・ナカジマ。
「ギン姉・・・!!」
ギンガへと接近していくスバル。
「誰ですか・・・?邪魔しないでくださいよ・・・。」
光秀がスバルに接近しようとすると巨大な手裏剣が地面に刺さる。光秀が飛びのいて避けるとその手裏剣は黒い影となって消える。
そしてその影は一人の忍へとなった。風魔小太郎へと。
「私の相手は貴方ですか・・・いいでしょう。」
ギンガとスバル、光秀と小太郎の戦いが、始まった。
「フフ・・・袋のネズミっすねぇ・・。」
「観念しやがれ・・・」
「・・・・・。」
廃墟となったビルの中でディード、ウェンディ、ノーヴェが倒すべき相手、ティアナを睨む。
この不利な状況でもティアナは表情を変えない。
「三対一、しかも外部との念話はすべて外部に届かずあたし達に届く・・。結界も張ってあるから増援も望めない。」
ディードが冷静に解説するとティアナは突然大口開けて笑い出した。男の声で。
「ハッハッハッハ!俺様の幻術・・見破れてない・・!!ハッハッハッハ!!」
コホン、と咳払いすると印を唱え霧が生じる。その霧をティアナだったものが払うとそこには忍、猿飛佐助が立っていた。
「な・・・!」
「テメェは・・・!!」
「どう?似てたー?嬢ちゃんー。」
「あたしはそんな大口開けて笑わないわよ・・・。」
ウェンディ達の背後から現れたのは本物のティアナ。クロスミラージュの銃口を敵に向ける。
佐助は腰に装着してあった手裏剣を持ち、構える。
「さーて、いっちょやりますか!」
佐助とティアナは三人の戦闘機人へと走った。
ティアナ達が戦っているビルから少し離れた所で、別の戦いが起こっていた。
「消えて・・消えて・・消えてぇぇぇぇ!!」
「ルーちゃん・・っ!」
キャロの説得も虚しく、眼鏡をかけた戦闘機人、クアットロの言葉によって感情を切り捨てられた人形になってしまった少女、ルーテシア。
「ガリュー!」
「・・・・」
ルーテシアの変化を見て戸惑う彼女の召喚虫、ガリュー。それでもガリューは対峙するエリオに攻撃を仕掛けてくる。
どうしていいのかわからず防戦一方になるエリオ。
止め処なく現れる召喚虫達。ルーテシアの魔法攻撃に必死に防御して耐えるキャロ。その間も説得を続ける。
ガリューと激戦を続けながらもボロボロになっていくエリオ。
そのビルの横では巨大な者同士の戦いが始まっていた。
一方はキャロが召喚したヴォルテール。もう一方はルーテシアが召喚した白天王。
そんな激戦の中で、蒼い稲妻を放った小さな渦が生まれたのには、誰も気付いてはいない。
渦からは、もう一つの「龍」が誕生しそうだった。
聖王のゆりかご周辺・・。
ここは特に戦火が激しく、爆発と銃弾の数は増していた。
その中でも浮いていたのは量産された本多忠勝。
量産されているから力は弱体化されていて、撃墜しているがそれでもはやて達はいい気分がするはずはない。
「この野郎・・忠勝の・・・忠勝の格好をするんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
赤き鉄槌の騎士、ヴィータはグラーフアイゼンで量産型忠勝を次々と落としていく。
また、同じく撃墜しているはやてはヴィータのように大きな言葉は発していないが顔は怒りを露にしている。
「不愉快通り越して・・・むかついたわ・・。」
白い魔力の砲撃で一掃していく。しかし怒りの元凶、量産型忠勝はまだかなりの数だ。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
フェイトはというと一機一機順調に撃墜はしているが顔は悲しみに歪んでいる。
なのはもそうだ。本人ではないとしても同じ姿のものを撃墜していくのはどうにもやりきれない。
「早く・・・終わってよ・・・!」
なのはは悲しみと怒りを混ぜた表情で呟き、また撃墜していく。
「おおりゃあ!!」
「ふぅんっ!!」
錨になぎ払われて吹き飛ぶ一体と投げられ、爆発する一体。
それは元親と秀吉によるもの。二人は敵を撃破しながら会話をしていた。
「やっぱ・・・弱体化してるとはいえ数で来られるとどうもね・・・!!」
「うむ、流石に堪えるものがあるな。」
二人も何も感じない・・というわけではなかった。やはりどこか嫌な感じがする。
その嫌な気分を少しでも紛らわせようと二人は敵を撃破していく。
「うっ・・・く!」
なのはは槍の一撃で地面に落ちる。
体を地面に叩きつけられる。なんとか魔力で衝撃はある程度和らげたものの防ぎきれなかったダメージと痛みが体を走る。
立ち上がって再びRHを構えると囲まれていた。
皆背中から砲身を出していた。そう、訓練のときになのは達に見せた攻撃形態。次第に砲口へ溜まる稲妻。
思わず目を瞑るなのは。しかし、爆発音が響くだけで自分に衝撃は何もこなかった。
「・・・え?」
目を開けると白銀の鎧の巨人が立っていた。
手に持っていた槍を振るうと一瞬にして周りの量産型の忠勝は上下真っ二つになり、爆発した。
間接から出る煙、赤く光る目。背中に背負った紋章。その白銀の城を見たものは量産型忠勝を見た時よりも驚いた顔をしている。
「ただ・・かつ・・・さん?」
巨人は振り返り、ただ頷く。驚愕の表情が一気に喜びの顔へと変わる。
「忠勝さん・・・っ!!」
忠勝は仲間が戦う戦場へと、到着したのだ。ロケットを展開、背中に電撃が走ると球体が生まれる。
敵が近づくと稲妻に巻き込まれ、吹き飛び、爆発する。
忠勝、電磁形態。
電磁形態のまま空中に飛び上がり、両手を交差させると稲妻が量産型忠勝を襲う。
襲われた量産型は爆発。忠勝の周りに数多の爆風が生じた。
その爆風の中から忠勝はロケットを展開して槍を振るう。瞬く間に撃墜されていく量産型。
空中で制止し槍を背負う。
体に背負った数珠の中から黒く丸い宝石を取り出し、その腕を前に突き出す。
その宝石は光ると次第に形を変え、目の光も赤から金色に変わる。
「え・・・?あれは・・・!?」
宝石は黒き体、金色の刃の大剣だった。忠勝はそれを手に、また量産型を撃墜していく。
その大剣は優しき雷神が持つ武器に瓜二つだった。
これが忠勝が家康から渡された、「力」の一つ。
最終更新:2007年12月29日 15:33