魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~
第七話「その日、機動六課。そして崩れ落ちる城(後編)」
「くぅっ・・・!!」
吹き飛ばされるノーヴェ。対峙するは武帝、豊臣秀吉。
すかさず立ち上がり拳を突き出すが秀吉の大きな手で防がれる。
「ふぅむ・・・中々の攻撃だ。しかし!」
反対側の腕で腹を殴る。また大きく吹き飛ばされるノーヴェ。
「ぐ・・・がはっ・・」
壁に叩きつけられ倒れこむ。そしてその横ではウェンディと戦っている忍、猿飛佐助の姿があった。
「よっ!とっ!はっ!」
「この・・・!ちょこまかと・・・!」
華麗な身のこなしでウェンディが放つ砲撃を回避していく佐助。
しかしその回避した先に魔力が込められた球が待ち構えていた。
「なぁにぃ~!?」
「とった!」
爆発する魔力。ウェンディは勝利を確信してガッツポーズをとった。
しかし、ウェンディの頭上から
「何をとったって?」
声がして佐助の手裏剣を肩にうける。すばやく距離を取るウェンディだが表情を見る限り何が起こったかわからないようだ。
忍術、空蝉の術
攻撃が当たる直前に姿を消して素早く相手の頭上に現れ、攻撃するという佐助が得意とする術の一つ。
次に手裏剣を腰に装着、低く構えて印を結ぶと影が立体化して回転しながらこちらへ向かってくる。
忍術、影当ての術。
自分の影を立体化させて相手へと突進させる高度な忍術の一つだ。
ウェンディはその一撃を受けてノーヴェの隣に吹き飛ぶ。
「これは・・・あたし達のほうが圧倒的に不利っすね・・・ぐ・・・」
「そうだな・・・ちっ・・退くしかねぇか・・。」
そういうとウェンディが砲撃。秀吉が防ぐとあたりにすさまじい爆風が起こる。
爆風が止んだときには少女二人の姿はなかった。
「逃げられたか・・・。しかし佐助よ。どうしてあの者達の味方をした?」
「いやだってあんな触手に絡めとられてた美少女を人質だーって言われてたら助けるしかないでしょー!」
そう言って秀吉の背中をバシバシ叩く佐助。佐助の冗談を聞き流す秀吉。
「さて、この世界はどうやら戦国の世ではないようだな。」
「しかも多分臭いからして地下だぜこれ?とっとと上行こうぜ。」
「うむ。」
二人の武将は地上に出るべく走り出した。
そして、その頃、スターズ部隊は・・
「あ・・・あ・・・あ・・・」
蒼髪の少女、スバルは絶望に飲まれた。
異様な邪気を出して佇む銀色の鎧に身を包む男。
その手には血まみれになり、意識を失って頭を掴まれた姉・ギンガの姿があった。
「ふん・・・また虫が来たか・・・。」
ギンガを放り投げる。その先には隻眼の少女、チンク。
「の・・・信長・・・これは少しやりすぎではないのか・・・?」
「黙れ。さっさとそいつを連れて戻るがよい。カラクリ人形めが。」
「くっ・・・」
ギンガを大きめのアタッシュケースに入れ、奥へと撤退するチンク。
だが、その顔には怒りがあらわになっていた。それは自分をカラクリと呼ばれたことではなく、「信長」という男に対してだった。
「あいつは・・・本当に人なのか・・・!?味方とはいえ・・・あいつのやり方には腹が立つ・・・!」
「うぁ・・かえせぇぇぇぇぇぇ!!」
目を金色に輝かせ、蒼い魔力を発しながら信長へと向かうスバル。
だが剣に防がれ、押され始める。
「く・・・ぅ・・・う・・・」
その目には涙を浮かべていた。
「ふん・・・虫けらめが。この第六天魔王に刃向かうか・・・。」
軽くあしらい、右肩へと剣を振り下ろす。
切り裂かれた箇所からは大量に血が出て、スバルは激痛で倒れこむ。
「うあぁぁあぁぁぁあ・・・・!!」
さらに信長は左手に持っていたショットガンでスバルの左足、そしてマッハキャリバーを打ち抜く。
「あぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
顔は激痛で歪み、目からは涙がとめどなく溢れる。
信長はスバルの腹を踏み、頭に銃口を向ける。
「・・・この織田信長に刃向かった罪、死して償え。」
「い・・・いや・・・・いやぁ・・・!」
刹那、銃口が響くことはなかった。
突然飛んできた手裏剣でショットガンが弾き飛ばされたからだ。
手裏剣は一つ、また一つと増えていく。信長はそれを回避。
そして影がひとつ、走りぬけながら手裏剣を投げる。信長はそれを剣で弾き落としながらバックステップ。
影はスバルの前に止まるとその姿を現した。
白と黒を強調させた着物、背中に背負う忍者刀二本。それは病室にいたはずの伝説の忍、風魔小太郎。
「本当の・・・風魔・・・さん・・?」
風魔がふと振り返ると、口の端をほんのわずかだが、つり上げた。右肩にはまだ包帯が。
自分の怪我そっちのけでスバルを助けに来た。借りを返しに。
そして魔王、織田信長の方へと向くと忍者刀を構えた。しかし相手はあの魔王。自分は負傷。圧倒的不利だ。
信長がマントをはためかせて邪気を塊にして放つ。
当たる直前、忍と少女の姿は消えていた。
「うつけが・・・。」
「・・・・」
「・・・・」
ここは先ほどスバルが通ってきた通路。そこにスバルと、風魔はいた。
「守れなかった・・・ギン姉が・・・つれてかれちゃったよ・・・」
目から零れる雫。それはスバルが流した涙。拳を握り締める。
風魔はただ見ているだけしかできない。
「あたし・・守れなかったよ・・風魔さん・・・風魔さん・・・!!」
今にも正気を失いそうなスバルを風魔は抱きかかえ、歩き出す。スバルは泣くのをやめて、自分を抱きかかえた者の顔を見る。
「え・・?」
「・・・・・」
風魔はただ歩く。自分がもし、喋れたとして、このことを喋ったら腕の中の儚い少女は崩れ去るだろう。
だから言葉があっても言おうとは思わない。六課本部が襲われていること、自分は忠勝に任せ、ここまで来たこと。そして小さな妖精を抱え、泣き叫ぶ真紅の少女を見たことを。
決して、言えなかった。二人は後になのは、ティアナと合流し、ともに外に出ることになる。
一方、ロングアーチの連絡を受け、六課に戻るべく急いでいたエリオ、キャロ、フリード、フェイトのライトニング部隊。
その途中で二体の戦闘機人の襲撃を受け、エリオ達を先に行かせて一人で応戦しているフェイト。
「さすがに・・強い・・・」
フェイトはザンバーフォームにしたバルディッシュを構えて呟く。目の前には戦闘機人、トーレとセッテ。
そこに、新たなる乱入者が。
「イェア!!」
突然飛んできたのは巨大な錨の先端。
トーレはそれをインパルスブレードで弾く。戻っていく先端。
その先には海に浮かぶガジェットドローンの残骸の上に立つ鬼ヶ島の鬼の姿があった。
「おうおうおう、人ん家を荒らしておいて挨拶もなしかぃ?」
鬼、元親は唾を吐き捨てると錨をトーレとセッテに向ける。
「よーし、オメェら二人、どっちが強い?強いほうは俺と戦いやがれ!!」
「上等だ!!」
元親の挑戦を受けてトーレは向かう。接近しても無防備な元親の腹に拳の一撃を喰らわせる。
が、吹き飛びもせずその場で立っていた。
「ゴホッ・・・中々いいパンチじゃねぇか。気に入ったぜ。」
元親もトーレにボディーブローを放つ。
「グハッ・・・お前も・・・やるじゃないか!」
互いに離れ距離を取る。そしてまた錨とインパルスブレードのぶつかり合い。その上空ではセッテとフェイトが戦闘を繰り広げていた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ!!」
バルディッシュを振るいセッテに切りかかる。セッテも負けじとブーメランブレードで切りかかる。
ぶつかり合った二つの刃からは火花が散る。
しかし、トーレとセッテは後ろへと飛び退き、並んだ。
「今回は時間なのでこれで引き上げます・・が。次に会ったときは・・・貴方達は勝てませんよ?」
そういうと二人は消えた。元親は別に追う動作はせず、錨の上に乗る。
「チッ、そんなに始めてから時間経ってねぇのによ・・・。気に食わねぇ・・・戻るぞ。」
「あ、待って!貴方は!?」
錨の上に乗ってサーフィンの如く海上を走る元親と空を飛ぶフェイトは、六課本部へと戻った。
一方、六課本部。
「・・・すごいね。一人でここまでやるなんて。」
戦闘機人、オットーとディードが見下げて眺めるは装甲が砕け、煤だらけで間接のあちこちから電流が流れる本多忠勝の姿があった。
忠勝の周りには粉砕された幾千のガジェットドローン。
忠勝は機械音を唸らせて立ち上がり、槍を構える。
「正直・・・驚いたけど・・・ここまでだね。IS発動。レイストーム。」
オットーの周りから緑色の砲撃が放たれる。それは数本から一本になり、大きさを増した。
一方の忠勝は背中の紋章から盾を二枚出して腕に装着、両腕を交差させる。
忠勝、防御形態。
次第に溶けていく盾。その直後に爆発。
「さて・・あとは・・・何?」
爆風の中から出てきたのは上半身の左半分を消滅させながらもなお機動し続けている黒の巨人。
オットーもさすがに目を見開く。
次にディードが飛び出す。
「IS発動、ツインブレイズ。」
その一撃は、右手だけで掴んだ槍で防御された。次第に押していく忠勝。最後には完全に押し返してディードを吹き飛ばした。
吹き飛ぶディードをすかさず受け止めるオットー。
またレイストームを発動させる。今度はロケットを点火して上空へ逃げる忠勝。しかし後ろから接近してきたディードのツインブレイズで紋章を斬られ、落下。
これで本多忠勝の大半の形態は使えなくなる。ということだ。
「さて、注意を向けてくれてありがとう。」
二人は横を見る。忠勝もその方向を向くと倒れているシャマルとザフィーラ。そして紫の少女が連れた謎の黒い人影に抱えられているヴィヴィオ。
忠勝は手を伸ばすが足が動かない。
そのまま消え去ってしまったオットー、ディード、そして謎の黒い人影と紫の髪の少女。
残されたのは大量のガジェットドローン。
それでも忠勝は諦めなかった。勢いよくジャンプして槍を前方に構える。例え紋章を失ってもなれる形態が一つある。
槍に内蔵されたロケットを点火。そのままガジェットドローンの群れへと突進する。
忠勝、突進形態。
戦国最強と呼ばれた巨人の姿は巨大な爆風の中へと、消えた。
キャロとエリオが着いた時には、遅かった。
燃え盛る六課本部。
そして、本多忠勝が背中に装着していた紋章。その紋章は、ところどころへこみ、二つの切り裂かれた跡があった。
「・・・ただ・・かつ・・さ・・ん・・忠勝・・・さん・・・。」
目に涙を浮かべるキャロ。そしてまた接近してくるガジェットドローン。
キャロは何かを呟きながら立ち上がる。そして天空に向かって、叫んだ。
「ヴォルテーーーーーーーーールッ!!」
そして、夜空の下、ガジェットドローンを一掃した巨大な竜の姿があった。
その咆哮は、どこか悲しそうに聞こえた。
最終更新:2007年12月27日 11:30