魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~
第十話「龍と雷光」
忠勝は優しき雷神、フェイトの武器、バルディッシュによく似た大剣を振る。
振る度に量産型は爆発。残るは数体。
だが、その数体を大剣で一掃しようとはしなかった。大剣を黒い宝石に戻すと。地面へと降りる。
(ヴィヴィオを救うにはやはり突入か・・・!!)
今度は金色の宝石を取り出すとその腕を天に掲げる。目の色から金色から雪の如き白へ。
宝石が光り、杖へと姿を変えた。
「あの杖って・・・!」
「シュベルト・・・クロイツやて・・・・!?」
その杖は最後の夜天の王、八神はやてが手に握る杖「シュベルトクロイツ」に似ていた。
忠勝は両手で杖を構えると十字の先の部分から白い稲妻が発生。稲妻は異様といえるほど大きくなる。
刹那、その大きすぎる稲妻は量産型とガジェットドローンを巻き込みながら聖王のゆりかごへ迫る。
案の定展開してあった結界にぶつかる。それでも忠勝は諦めない。叫び声にもよく似た鋼の唸るをとが響く。
大きな爆発の後結界が一箇所だけ見事に割れ、潜入できるほどの穴ができていた。
「・・・・忠勝さん!なのはちゃんとヴィータちゃんと一緒にゆりかご内部へと潜入!フェイトちゃんは先ほどの指示通りにスカリエッティの研究所へと潜入!」
指示された皆は頷くと、それぞれの場所へと飛ぶ。戦いはまだ、続く。
「ぐはぁぁぁっ!」
その戦場から少し離れ、吹き飛ばされたのはエリオだ。壁をぶち抜いてビルの中で倒れこむ。
吐血するエリオだがガリューは容赦なくエリオの腹に蹴りを入れていく。
「ぐふっ・・・!!」
「エリオ君っ!きゃあぁ!」
エリオの方に注意が逸れたところをルーテシアにつかれ、攻撃されるキャロ。
しかしルーテシアやガリューの方も優勢とはいえ次第に体力を奪われていく。そう、エリオとキャロのガッツで。
だが召喚のほうに問題がある。フリードリヒは今巨大な龍となってルーテシアの召喚虫を蹴散らしているがキリがないのだ。
おまけに地雷王という巨大なのもいるし、ルーテシア達の後ろでヴォルテールと戦っている白天王というのもいる。
「く・・・!」
エリオは槍を杖代わりにして立ち上がるがすでに満身創痍。
キャロも同じような状態である。
「ルーちゃん!私のお話を聞いて!」
「・・・消えて・・・!!」
ルーテシアは再び魔力を放つ。魔力に襲われ吹き飛ぶ二人。その足元には蒼い渦だった魔方陣が。
「え・・?キャロ・・・・これ!!」
「魔方陣・・・!?」
その瞬間晴天のはずの空から稲妻が落ちる。
稲妻の落ち方は尋常ではなく、何本もの稲妻が一本に集結、大きな一本となって落ちてきたのだ。
「Ha!楽しそうなpartyじゃねぇか・・・・!俺も混ぜろや・・・・・!」
そこには、一人の蒼い侍が立っていた。
蒼い侍は腰に挿していた六本の刀を片手に三本ずつ構える。
「さぁ行くぜぇ!イカレたパーティの始まりだ!Let's rock!!」
━━━━"The dragon without the right eye" runs(「右目の無い龍」は走る。)
━━━━The sword that it is called "the nail of the dragon" to grasp in the hand.(その手に握るのは「龍の爪」と呼ばれる刀。)
━━━━"The dragon" infringes upon an enemy as far as there is a fight there and cuts it down.(「龍」はそこに戦いがある限り、敵を蹂躙し、切り倒す。)
━━━━Orbit of the lightning that it is blue that a nail weaves. But the blue does not have the cloudiness.(爪が織り成すのは蒼い稲妻の軌道。だが、その青に曇りはなく。)
━━━━And the dragon gives its name.(そして龍は名乗る。)
「この奥州筆頭、伊達政宗を楽しませてくれるヤツぁ、ここにいねぇのかい?」
奥州の龍、伊達政宗推参、その背後には斬り捨てられた召喚虫の群れ。
だがその中の一匹が立ち上がり、腕を振るう。腕は当たることなく、「龍の右目」に防がれた。
「政宗様、背中が隙だらけとあれほど・・・・!!」
━━━━To a dragon without the right eye, there are the right eye and a man to be able to invite.(右目の無い竜には、右目と呼べる男がいる。)
━━━━The man did not have the nail of the dragon, but there was scathing brightness of the eye named the sword.(その男に龍の爪はないが、刀という名の鋭い眼光があった。)
「あぁ?俺の背中はお前が守るんじゃなかったのか?」
「無論、この片倉小十郎。命を賭けて政宗様の背中をお守りいたします!」
「Coolじゃねぇか。それでこそだ。」
槍使いの少年と龍使いの少女の前に現れたのは、一匹の「龍」だった。
「小十郎、俺は黒いあいつと戦う。他のは任せたぜ。」
政宗はガリューへと目標を変え、走り出す。すぐにぶつかり合う刃と刃。ガリューは背中から生えた触手で政宗の腹を打ち、吹き飛ばす。
ビルに突っ込む政宗だが体勢を立て直してまた突撃。顔は、笑っていた。
「やれやれ、困ったお方だ・・。さて・・・嬢ちゃん、俺はできればアンタと戦いたくないんだが・・・?」
小十郎は刀を肩で背負い、ルーテシアを見据える。
ルーテシアは小十郎の問いかけにも答えず、魔力の球を撃ち出す。
素早く刀を前に突き出して球を斬る。真っ二つに割れた球はかなり後方で爆発。
「こっちも困ったやつだ・・・。流石に斬るわけにはいかねぇけどな。」
そう言って刀を反す。にらみ合いが続く中で何かを思いついたように後ろにいるエリオに声をかけた。
「おい、そこの坊主。」
「は、はいっ!?」
「ちょいと手を貸してくれねぇか?作戦があってな・・。」
小十郎はエリオに背を向けたままできるだけ小声で話す。
「Hey!よーく耳を澄ませな、俺の心臓はここだぜぇ?」
自分の左胸を親指で指し、ガリューを挑発する。ガリューはそんな挑発に乗るほど短気ではない。
じっとしてたら政宗が接近、三本の刀で斬り上げる。
「!」
攻撃を防御するガリューだが政宗の攻撃は終わりじゃない。そのまま空中に上がり、もう片方の三本の刀を振り下ろしてくる。
「DETH FANG!!」
その攻撃も防御したが明らかに先ほどの斬り上げより重い。すこし手が痺れ、震えている。
自分も負けてはいられない。触手をまた政宗の腹に打ち込むと今度はそのまま接近。手首についた刃を突き出す。
ギリギリのところで避けたから兜の緒が切れ、兜が地面に落ちる。
「ヒュウ、やるねぇアンタ。」
「・・・・。」
また刀と刃のぶつかり合いへと変わるが、直ぐに両者は離れた。
政宗は片手に六本の刀を持ち、ガリューへと接近。六本の刀を横に凪ぐ。
「PHANTOM……」
「!!」
横凪ぎは今までの政宗の攻撃を遥かに凌ぐ重さ。ガリューの体が浮いた。政宗はジャンプし、ガリューへと迫る。
手には六本の刀。六つの斬撃が、ガリューの体に向けて振り下ろされた。
「DRIVE!!」
その四肢は宙を舞い、地に落ちる。刀を仕舞い、倒れているガリューへと言葉を送る。
それは一言だけだったが今の気持ちを伝えるには十分な言葉。
「楽しかったぜ。」
「……というわけだ。いけるか?坊主。」
「はい、やってみます。」
エリオは立ち上がり、ストラーダを再び構える。
小十郎はその隣に立ち、腰を落とす。ルーテシアは何もしないままだ。
静寂が場を支配する。何も動かず、聞こえるは風の音と自らの心臓の音。静寂は十秒、五十秒、一分。長く続く。
先に動き出したのは小十郎だった。一歩踏み込み、二歩目で地面を思い切り蹴る。
刀を前に突き出して蒼いオーラを纏いながらルーテシアに突進していく。
「穿月!」
穿月はルーテシアを捕らえることはなく、横を通り過ぎる。
「うおぉぉぉぉ!」
小十郎のあとに続きエリオがストラーダを構え、突進してきていた。ルーテシアは思わず飛び退くがエリオは止まる。
ルーテシアが飛び退いた先に小十郎がいた。刀を上に掲げ、肩と首を叩くと気絶。その場に倒れこんだ。
「今は静かに眠れ・・。」
刀を鞘へと納めると同時に政宗が近づく。どうやら終わったようだ。
エリオとキャロが近づき、少し戸惑いながらも二人の武将の前に立つ。フリードリヒもキャロの近くに降りてきて元の小さい竜へと戻り、
ヴォルテールの方も決着がつき、消える。白天王を含めた召喚虫はルーテシアが気を失ったと同時に消えてしまったみたいだ。
「あの、ありがとうござい・・・」
「おっと、礼はまだだ。オメェらにはまだ行かなきゃならねぇ所がある。だろ?」
言い切る前に政宗が喋る。言葉に対してエリオとキャロが頷くと政宗と小十郎は顔を見合わせて微笑。
フリードリヒの上にルーテシアを乗せ、四人はゆりかごへと走り出した。
最終更新:2007年12月29日 16:40