魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~
最終話「それから」
桜が舞う機動六課宿舎。
ここにJS事件を戦い抜いた英雄達は集う。
これで役目を終えた機動六課は解散…のはずが、武将達が元の次元へ帰るための手がかりは一向に見つかってないために運営期間は延びた。
何せ戦国時代から来たのだ。過去にさかのぼる…というのはかなり難しい話である。
どこか複雑な心境が胸に渦巻く。
「綺麗ですね~、桜っていうんでしたっけ?」
「どうやら部隊長やなのはさんの世界の花らしいよ。」
「それはそうと、なんか嬉しいよね。まだ続くんでしょ?」
「まぁ…ね。でも、なんか複雑…。」
「それはそうだけどさ…っあ、ごめんなさい。」
歩いているスバルに男性局員の肩がぶつかる。スバルは謝るが男は近づく。
慌てふためくスバルだが頭の中に響いた念話で慌てる理由が別のに変わった。
(待て…ナカジマ殿、ランスター殿、モンディアル殿、ルシエ殿。自分は風魔小太郎だ。)
「え…えぇっ!?風魔さん!?なんで管理局の制服を!?」
「な…!?」
四人が驚くと風魔は肩を落とし、情けない顔でため息をつく。
(八神殿に魔力検査に協力をして、自分が魔力の素質があると言ったのだ。そうしたらこの服を着せられ、勧誘された。
まぁ、魔力があったおかげで念話とやらも使えるのだが…。)
「「「「あ…あははは…」」」」
そりゃまぁあんな自分の体を手裏剣にしたりとかすればあるはずだ。もしかしたら他の武将達もなのかもしれない。
しかし勧誘とは、八神部隊長がしそうなことだ。苦笑いすることしかできなかった。
ふと、何かを疑問に思い、エリオが質問する。
「そういえば…戦国時代って天下統一みたいなことをやってたんでしょ?大丈夫なんですか?」
(伊達殿をはじめ、かなりの権力を持った武将がいるからな。多分天下取りはかなり長引くだろう。)
「うわ…なんか他人事。」
(自分はもともと傭兵だったから、そればかりは。)
話を続けていくともう一人の忍が現れた。迷彩の忍者服を着ている姿からして猿飛佐助。
いつもののんきな笑みをそのままに、三人に語りかけた。
「いよぅ。おそろいで。」
佐助にティアナは気付いたこと質問する。
「佐助?アンタはどうするの?」
「今までどおり機動六課にお世話になるかなぁ。第一他の皆もそうじゃない?ほら、あれ。」
指差した先には管理局員のスーツを着て宿舎内を歩く大男、豊臣秀吉の姿が。後ろにはスーツに戸惑う幸村をからかう政宗、あきれ果てている小十郎と元親の姿もある。
幸村や政宗、小十郎と元親はともかく秀吉はデカイ。よくあんなサイズの制服が見つかったなと思う少女二人。
「あんな天下がどーたらこーたら騒いでた人がねー。ま、帰れないから仕方ないけどさ。」
(しかし、自分はできればこの世界にずっと暮らしていたい…。)
「あれ?なんでですか風魔さん。」
スバルの問いに風魔はさらに情けない顔をして
(「ご先祖様ぁ、お助け~!」とむやみやたらに叫ぶ者の元で働くのはもう、御免こうむりたい…。)
こうなると、伝説の忍とやらも形無しだ。やっぱり四人は苦笑するしかなかった。
宿舎の屋上。
第六天魔王との激しい戦いを終えて忠勝は空を眺める。
「隣、ええかな?」
後ろからはやてに声をかけられる。特に断る理由もない。手で「どうぞ」という風にジェスチャーをする。
隣に座るとはやても空を眺め始めた。眺めながら忠勝に話しかける。
「忠勝さん、戦国時代に帰れるとしたら…どうする?」
いきなり答えにくい質問をされて忠勝は盛大に悩む。頭からは「キュイィィィィン」と何かが唸る音がするが、これは忠勝が悩んでいる証拠。
そんな様子を見てクス、とはやては笑う。
「冗談や。こんな質問してごめんな。そういえば…こう二人でじっくりと話すのは初めてとちゃう?」
そういえばそうだ。はやてと話をしたことは幾度となくあったが短かったり、または他の者がいたり…という感じの会話ばかりだ。
とはいっても自分は喋れないからこれは会話なのかという疑問が頭に浮かぶが、気にしないことにした。
「機動六課の運営続行、上の人が一人変わるだけでこんなにも世の中って変わるもんなんやなぁ…。」
あれからスカリエッティは牢獄の中だ。多分ナンバーズの何人かも中にいる。
社会に出るための養成プログラムを受けているナンバーズにはちょくちょく会いにいってるし、ルーテシアは母親とともに幸せに暮らしているそうだ。
ゼストとレジアス、ドゥーエなるものは死亡してしまったらしい。あとは戦火に巻き込まれて命を落とした者も数え切れないほどいるだろう。
輝かしい栄光の裏には尊い犠牲もある。忠勝はそのことを考えるとどうにもやりきれない気持ちになる。
「忠勝さん、一人で何抱え込んでるの?」
「悩んでばっかりじゃ、かえって体に毒だよ?」
はやての隣になのはとフェイトの姿が見えた。手には待機状態のレイジングハートとバルディッシュが握られている。
こういうときは何か問題が起こった時だ。
「何かあったん?」
はやてが立ち上がって二人に向き合うと二人は顔を見合わせて苦笑した。
「とりあえず、これを見てほしいの…。」
モニターを覗き込んだはやての顔がひきつり、苦笑に変わって二人と顔を合わせる。
忠勝も立ち上がり、モニターを覗き込むとインパクトがありすぎて忘れたくても忘れられない二人の男の姿があった。
『愛ユエニ~!命知ラズガ今日モ行ク~!!』
『濡れてに粟と~あぶく~銭~!!』
街の中でポスターをばらまきながら大砲を乱射する男と小判をばら撒く男の姿が。
忠勝は頭を抱えてしゃがみこんだ。あぁ、なんであいつらもここにいるんだよ。と思いながらまた頭に何かが唸る音がする。
「これの鎮圧…だってさ。」
「まぁ、最近起きた事件の中では結構派手なほうだね。」
「ま…まぁええわ。さ、行くで!忠勝さん!」
走り出す三人の後を追う忠勝。ふと立ち止まり空をもう一度眺め、迷いを捨て去るかのように力強く頷く。
自分の名を呼ぶ声を聞き、また急いで三人の元へと走る。
戦国最強、本多忠勝。
運営続行した機動六課のためにその力を振るう。
戦国時代に帰る道が出来てもミッドチルダに残り、力を振るい続けたという。
魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 完
最終更新:2008年01月01日 13:00