魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~

第十三話「第六天魔王VS究極戦国最強」

「ヴィヴィオ…ヴィヴィオ…!」
「こないで…!」
「!」
忠勝がチンクと戦っている間、こちらの戦いも決着がついていた。
スターライトブレイカーを撃ったことにより部屋の中には大きなクレーターができていた。真ん中に倒れているのは少女の姿へと戻ったヴィヴィオ。
「う…く…一人で…立てるよ…強くなるって……約束したから…。」
よろめきながら、それでも確かに立ち、なのはの元へと歩むヴィヴィオ。なのはの頭にはヴィヴィオとの思い出が廻る。
その光景になのはの目には涙が溜り、溢れる。なのははヴィヴィオに駆け寄り、もう離すまいと必死の想いで抱きしめた。
突然サイレンが鳴り出すと同時に駆けつけたはやて。ゆりかご内に響くアナウンス。
『聖王陛下、反応ロスト システムダウン。全ての魔力リンクをキャンセルします。』
「うっ!?」
部屋全体が桃色に染まり、なのはの足元に浮いていた羽をはじめ、魔力はすべて消された。
「どうするなのはちゃん!?徒歩で脱出するのは…!」
「くっ…どうしよう…。」
その瞬間、壁が爆発して中から白銀の巨人、本多忠勝が現れた。肩には結局ほおっておけず、連れてきた傷だらけのチンクが乗っている。
他の戦闘機人は他の管理局員が捕まえたらしい。手を伸ばしてこちらに来るように指示をする忠勝。
近づくと身をかがめ背中を指差す。乗れ、ということらしい。
「そうか!忠勝さんなら…いける!!」
そういえば忠勝は全身質量兵器。だとしたら魔力を使わないで一気に脱出できる。
なのはとはやては忠勝の肩に捕まる。全員乗せたと確認すると忠勝は機動形態を発動。
槍を前に突き出して鉄の鎧を纏っていたときとは比べ物にならない速度でゆりかごの中を駆け抜ける。
「!!」
肩に捕まっている全員に風圧がかかる。生身で受けているからそれはものすごいものであった。
しかしこの速度でやらなければ自分達もゆりかごの墜落に巻き込まれてしまう。壁が見えるが忠勝は速度を緩めない。
チンクがナイフを投げてランブルデトネイターを発動。爆発が起こる。
「伏せろ!!」
チンクがそう叫ぶと皆頭を伏せ、なるべく瓦礫に当たらないように身を掲げる。
ついに壁に激突。それでも忠勝は止まることはなく、ロケットを最大出力で点火。ランブルデトネイターの爆発でもろくなっていた壁を突き抜けていく。
刹那、視界に光が差した。目を開けると果てしない青空。雲ひとつない晴天。脱出は成功したのだ。ある程度離れてからゆっくりと地面に降りていく忠勝。
着地すると皆を降ろした。目の前にはスバル達フォワード陣や蒼い騎士甲冑に炎の翼という容姿になっているシグナム。瓦礫に腰掛けている元親と秀吉。
大怪我を途中で負いながらもなんとか意識を取り戻しているヴィータ。スバルとの戦いでベットに担架の上で寝ているギンガ。何より驚いたのは幸村や政宗の存在。
忠勝はどことなく安心したようで歩み出した。

直後に響く銃声。

気付くと自分の左肩の装甲が完全に壊れている。後ろを向くと辺りを己の邪気で染めながら歩み寄る魔王、織田信長。
「うつけが……貴様等の罪、万死に値する。」
皆が構えるが信長は両手を広げ、邪気を飛ばす。その邪気に纏われた瞬間次々と倒れていく。
これは確か、信長だからこそできる業。

死ニ至ル病。

この技を発動させている最中に信長の邪気を吸うと体にかなりの重力が襲い、胸がひどく締め付けられるような苦痛が襲う。
あたかも相手を病に罹っている状態にさせることから先ほどのような名がついた。
技を防ぐ方法は以外にも簡単。邪気を吸わなければいいのだ。だが皆吸ってしまっている。
つまり動けるのは機械だから呼吸を必要としない本多忠勝、ただ一人。
槍を振り下ろすが刀で軽くあしらわれ、顔面にショットガンの弾丸を受ける。左目の光が消える。見えなくなったという証拠だ。
ボコボコになった顔面の左半分。だがまだ右目がある。見えないわけじゃない。再び向くとショットガンをリロードもなしに五発連続で胴体に放つ。
胴体から流れ出るオイル。これは人間にとっての血液。
「戦国最強…片腹痛し。滅せよ。」
マントを翻し、忠勝に当てる。マントのはずなのに鋼鉄で殴られたような衝撃が襲う。
忠勝はまた立ち上がる。
(何百回…いや、何万回倒されても…負けない!!)
目は赤く光り、まだ自分に戦意はあるということを示している。
信長はその戦意をあざ笑うかの如く、マントを翻してそこから何本もの針を生み出して忠勝に容赦なく突き刺していく。
そして忠勝は槍を地面に刺す。いきなりの衝撃に浮く信長の体。紋章から飛び出す漢字の描かれた円陣。
少し浮き、大の字に。円陣に描かれた漢字が一文字ずつ光り出す。

本多忠勝、バサラ技発動。

天空から降り注ぐ何本もの蒼白い光の柱は信長を襲い、鎧を砕いていく。
数秒、その光景が続き、終わった。動きを止めた忠勝。
しかし信長はまだ、立ち上がる。目は黒みを帯びた赤に染まり邪気は増す。
「うつけがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
刀を逆手に持ってマントと刀の連続攻撃を繰出していく。攻撃がひどく重く、速い。信長もバサラ技を発動したようだ。
吹き飛んでもまだ接近してマントを何度も翻し、装甲を砕いていく。
最後に邪気をショットガンにこめて放つと忠勝の胸を貫通。忠勝は膝を突いて首をガクン、と下ろす。皆が自分の名前を呼ぶ。だが暗くなっていく視界。
まだ、相手を倒していない。もしここで倒れたら後ろにいる皆はどうなるのだ。倒れるべきではないのに、薄れていく意識。

「立ってぇぇぇ!!!」

頭と耳に響く幼い少女、ヴィヴィオの声。ふと見ると体には虹色のオーラが浮かんでいる。
「今戦えるのは…忠勝さん!貴方だけなんや!」
「戦って…そして…勝って!!」
「私達の魔力を貴方に…!!」
「貴方は、わたし達の居場所を!」
「大切な人たちを!!」
「命をかけて守ってくれた!!」
「だから今度は私達が貴方のために命をかける番です!!」
続いて流れてくるのは自分を想う皆の声と、力と。自分は機械のはずなのに、胸が熱くなる。ボロボロになったはずなのに、まだ立てる。
そうだ、自分はまだ立てる。戦える。皆がいるから。
ブーストを最大出力。信長はショットガンを撃ち、忠勝の装甲を撃ち抜き、傷つけているが止まらない。むしろ速度は速まっていく。
「ぐぬぉっ!?」
「!!!」
信長の首を掴んで上空へと舞い上がる。まだ飛んでいるゆりかごへと突っ込んでいく。
何個もの床や天井をぶち抜いていく忠勝。まだ残っていた動力炉だったクリスタルの残骸に信長を叩きつける。
忠勝はまだ使ってなかった赤色の宝石を取り出して具現化を始める。現れたのは予想通りなのはのレイジングハートに似た杖。
だとしたら使い方は同じなはず。先端に神経を集中。溜まったのはプラズマではなく自分の周りに浮かぶ虹色の魔力。それでもいい。忠勝は溜まった特大の魔力を放つ。
体を揺るがすほどの衝撃。反動で今までぶち抜いてきた床を通り過ぎて外に投げ出される。自分の放った魔力はゆりかごを見事貫通していた。
しかし、信長は生きている。鎧は打ち砕けて直撃したはずなのになんという生命力だ。
「ぶるぅおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
向けた銃口からはおびただしい量の赤い邪気。邪気は自分の身を包み、地面に衝突。
ぽっかりと空いたクレーター。だか忠勝は立ち上がる。間接はガタガタ、でもまだ、戦える。槍を再び構えて、祈る。
(力だ…。この魔王を打ち破る程の力だ!!)
槍に自分の纏っていた虹色の魔力を全て流し込む。槍のドリルの部分が魔力で巨大化。まだだ、これだけじゃ足りない。
その時だった。桃色、金色、白色、それだけじゃない。さまざまな色の魔力や気が忠勝の槍に集まっていく。
(ありがとう…。)
槍はいつの間にか自分の身の丈を超えるほど巨大になっていた。信長が落下してくる方向に巨大な槍を向ける。魔力で巨大になった先端が回転。魔力が螺旋状に形を変えた。
ブーストを再び点火。それだけじゃない。背中に鳳凰の如く美しく、雄雄しき翼が舞う。

名付けて、戦国最強本多忠勝、究極形態。


放ってくる邪気を切り裂いて忠勝は飛ぶ。魔王を貫き、戦いを終わらせるために。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

皆の雄叫びが響く。その声を背に受け、目が赤く光り輝いた。
溢れんばかりの邪気で突撃が遮られる。だが、今の自分達の想いに貫けないものはない。
空かないはずの忠勝の口が開き、咆哮にもよく似た鋼を唸らせる音が響く。次第に邪気に穴が開く。
「ウゴアァァァァァァァァァァァァァ…!!」
「ぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ…!!」
響く究極戦国最強の咆哮、響く第六天魔王の絶叫。音を立てて邪気は割れる。眩い光が魔王を滅するべく身を包む。
皆の想いを乗せた巨大な槍は信長どころか、聖王のゆりかごまでをも巻き込み、爆発。
爆発は広がることはなく一点に集中。一本の光の柱となって天を突く。空に落下してくる魔王の姿は、ない。
静寂。勝利したのにその場の支配していたのは静寂だった。忠勝は心配そうに見つめる皆のほうへ向き、拳を天に掲げる。

直後、割れんばかりの歓声が響き渡る。体が思うように動かないが自分はちゃんと、生き残った。

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最終更新:2007年12月31日 16:15