ティアナの正面、次の角から先ほどと同じ灰色の機体が二機、姿を現す。
相手が発砲する前に右のクロスミラージュで魔力弾を二発発砲。長い直線、正面の目標、誘導は必要無し。
向かいあう二体も射撃開始。主武装であるガトリングガンが弾幕を張る。
「邪魔!!」
飛んでくる魔力弾をスライディングとシールドで回避。
相手の数が判らない以上、暴露面積を少なくし無駄な魔力の消費は避けたい。
打ち出した二発は多重弾殻を利用した対装甲目標用。
二発はティアナが操作する必要もなく一機の膝関節を二本撃ち抜く。
一機がその場で各坐、もう一機は射角を調整し、ティアナを捕捉しようとする。
だがティアナも然る者、スライディング中にもう二発を右のクロスミラージュの銃身兼カートリッジより
魔力弾を一発生成、弾種は最初の二発と同じ、多重弾殻。
狙いは四本の足の関節が集まる腰部、多脚兵器の弱点。
「シュート!!」
命中、貫通し機体の向こう側まで抜けた魔力弾は壁にぶつかり消滅。
被弾した機体は重量を支えきれず崩れ落ちた。
「よっと・・・」
ティアナはスライディングから態勢を立て直す。
<機種識別、ナースホルンです>
「えーと、警備・市街地戦用の機体だったかしら?」
<はい、装備はガトリングガンのみです>
「施設内にピッタリ・・・」
ティアナがクロスミラージュに返答した瞬間、右脚を打ち抜かれたナースホルンが左足のみで旋回、
砲をティアナに向ける。
「タガーモード!!」
すかさず右手側のクロスミラージュに魔力刃を形成。
さらにナースホルンの懐に潜り込み射撃できない位置へ、そしてそのまま勢いで向けられた砲身を刃部で切断する。
だが、相手はそのまま旋回、ティアナは懐に潜り込んだため、脚の旋回コースに乗っていた。
「あー、もう!!」
左手側のクロスミラージュもタガーモードへ変更。
迫る左前脚を切断し、切り飛ばした足を蹴り飛ばし、勢いを乗せたまま旋回する左後脚も斬り飛ばす。
「おとなしく・・・」
「畜生!!」
ティアナの投降勧告、だがナースホルンのハッチから搭乗員が脱出する。手にはアサルトライフルタイプのデバイス。
抵抗する気は満々、おとなしく手を上げる積もりは無いようだ。
「手間を・・・」
ティアナはナースホルンの車体を使ってステップ。搭乗員の真後ろへ回り込む。
「・・・取らせない!!」
「・・・が!!」
クロスミラージュの握把を首に叩き付け一撃で気絶させる。
「おい!!てめぇ!!」
各坐させたもう一機からも搭乗員が出る。こちらもライフルデバイスを所持。
今度はティアナは落ち着いてクロスミラージュを向け発砲。弾種はスタン弾。
「ぐ・・・、まだぁ!!」
命中、一瞬バランスを崩す。だが搭乗員は気絶することなくライフルデバイスを向ける。
「抵抗するなら!!」
呪いの言葉を吐きながら今度は強めのスタン弾を発砲しつつ回避運動。
「ぎゃ!!」
今度も命中。ティアナが遮蔽物代わりの機体からゆっくりと顔を出す。今回は確実に気絶させた。
「やれやれだわ・・・」
<まったくです>
珍しくクロスミラージュが同意する。気を取り直し気絶させた相手を検分。
「武装はライフルデバイス。ボディアーマーも出回ってる対魔力・対破片用・・・、レベルⅡぐらい?」
それに戦車サイズの多脚機動兵器。
「只のテロリストじゃない・・・かな?」
<ナースホルンは旧式で火力も貧弱とはいえ広く使われています>
「火力が貧弱でも・・・、結構な数がいそうね・・・?」
<確かに。センサーに感、同じく二機>
閉鎖空間の為、音はよく響く。
敵性戦力の存在を目視する前にティアナは走り出す。次の角を曲がればおそらくは接敵する。
角を曲がる。予想道理正面に先ほどと同じように二機。
今度は走りつつ正面から、小技抜きで両手のクロスミラージュを発砲。さらに周囲に射撃用のスフィアを形成、
二機を弾幕で包む。
だが相手も発砲、それをシールドで防御。シャワーの如く打ち出される敵弾の中を突っ切る。
弾数なら負ける、だが、威力と精度で押せば負けはしない!!
ティアナの放った魔力弾は前部装甲で弾ける。だがその中の本命は砲身の基部と腰部に命中。
命中を確認後、炸裂させる。だが搭乗員の戦意を奪ってはいない。
案の定ハッチの開く音が聞こえた。今回はそれを折込み済み。予めスタン弾を射出・誘導。
ハッチから出ようとした搭乗員も確実に気絶させたことを確認。ティアナは一息つく。
「フェイトさん、敵性機体を四機撃破。搭乗員はスタン弾で気絶させてあります」
『こっちは六機撃破。地上のトーレ達から連絡があってあっちも小隊規模の敵性勢力と交戦中だって・・・』
一瞬、通信が途切れる。
『七と八機目!!』
<敵機撃破>
雑音が混じる通信、フェイトは交戦しながら通信、その中でバルディッシュの撃破報告が聞こえた。
あちらは交戦開始の時間を考慮してももう八機撃破している。自分は四機と搭乗員四人に手間がかかった。
これが努力した凡人と天才の差かな・・・?ティアナが自嘲する。
「こちらは撃破するのには時間がかかります」
『ティアナはそのまま施設内の掃討を続けて。相手は集団で戦闘に来ないから、分散してるうちに交戦、大丈夫?』
「大丈夫です。行けます」
少しぐらい無理をしても問題はない。
『敵の数は判らない。だから十分注意して』
「了解!!」

「はぁぁ!!」
フェイトが弾幕を正面から受け、最短距離を高速で近接。ハーケンフォームのバルディッシュを振るう。
バルディッシュの魔力刃は一機のナースホルンの腰間接を勢いのまま斬り飛ばし行動不能に追い込む。
僚機に対してはバルディッシュの石突を同じく腰部に打ち込み自身の魔力変換資質を使い電撃を放電、内部の電子機器を焼く。
放電された機体は緊急機構が作動ハッチが開くが搭乗員は中で気絶している。
「はっ!!」
だが最初の一機の搭乗員はまだ“起きて”いる。
もう一機には手甲に覆われた手を押し付け放電。これでこちらも緊急機構が作動するが内部の搭乗員は気絶中。
「バルディッシュ、これで何機目?」
<ナースホルンを十機、イーゲルを二機です>
「搭乗員は?」
<死者無し>
自身にとって半身とも言うべきバルディッシュの簡潔な報告を聞く。
明確な殺意を持って襲撃してくる相手をいなし、気絶させるのは骨が折れる。
「ティアナとのリンクは?」
<室内なので厳しいです。さらに薄いですがジャミングがかかっています。近距離であれば可能です>
ティアナは現在執務官の下、執務官補の地位にある。
この立場は執務官補佐と違い、限定的ながら執務官の権限を行使できる地位として設置されたもので、
人数の不足している執務官を補助するものとして導入された。なおティアナはその一号。
執務官への階段、その一段下に位置する地位。それなりの才能と経験が要る。
「バルディッシュ、地図は?」
忠実なデバイスはすぐさまフェイトの正面にマップを表示。
「ここが資材の保管区画だとして、この下り坂は・・・」
下り坂の終わりの先は見えない。
<Sir>
「どうかした?」
<不明瞭ですが生体反応が確認できます>
表示したマップに反応を重ねて表示。反応はまだマッピングされていない奥側に固まっていた。
「・・・じゃあ、この先が正解、って言うことだね」
眼前の表示を消し、フェイトが先を見据える。
「いくよ」
<Yes sir>

地下施設内でフェイト・ティアナ組が交戦していた頃、地上にいる二組と二個小隊も戦火を開いていた。
「・・・意外と動きがいい」
敵はうまく散開し、お互いに援護できるポジションを維持し、隊形はジグザク、ツーマン・ターセルで近づいてくる。
「誘導弾、第四波来ます」
セッテの警告。トーレはさっきから飛んでくる誘導弾を視認。先ほどからほとんど同じ方向から飛んでくる。
「セッテ、迎撃しろ。飛び回るのは暫く私が相手をする」
大して問題ではない。だが迎撃のためセッテが手一杯になるのは痛い。
「判りました」
「管理局の航空隊よりは手強いだろう」
セッテが迫る巡航誘導弾へ迎撃のためEO四基を連れ、さらに上空へ上がる。
迎撃が終わるまでここに展開する敵性戦力を相手にするのは自分だけだ。
陸の局員は二人の高速戦闘には向いていない。進入口の防衛に徹して貰う。
「はっ!!」
戦闘機人の持つ策敵機能を利用し周囲を策敵。敵影は十四、探知範囲を広げると誘導弾の発射源と思われる反応を感知。
だが、今は発射源より手近な相手を減らすこと。近い位置にいた一組・二機に目標を定めて加速。
相手の機種はスーパーシミターが中心。セッテの索敵では支援機と思われるイーゲルが二機いるとの事。
案の定、狙った組の両翼の組の射線につかまる。狙われた組はバルカン砲を撃ちながら推力を生かし跳躍、
地面スレスレを飛ぶトーレの頭上を取る。
両翼下のハードポイントに装備されたロケット弾ポッドから無誘導の魔力推進ロケットが飛び出る。
ロケット弾が指向されたのはトーレの進行方向。
本来なら左右どちらかに回避するべき状況。だがトーレはさらに加速、着弾の前に相手の後ろを取る。
トーレを撃つ本命とも言うべき左右の二組はさらに前進したトーレの動きに面食らった。
目標が左右どちらかに避ければ動いたほうの組が同じように進行方向にプラズマランチャーもしくはロケットを打ち込む筈であった。
彼らにとっての目算が崩れる。だがトーレが考えたとおり、すぐに態勢を立て直す。
トーレの見立て通り相手は分散した。自身が陣形に突入したほうは四個組が、他の組はトーレを無視し前進する。
彼らに与えられた任務は出来る限りこちらの戦力を減らすことらしい。
それを迎撃すべきセッテは以前向かってくる誘導弾の迎撃に手をとられている。
『セッテ、急げ』
『次ので最後です。すぐにでも迎撃します』
『イーゲルに注意しろ。下手に射線に捕まればすぐに削られる』
『承知しています』
『フェイトお嬢様の指示もだ。誰一人殺すなよ』
『それも承知しております』
通信終わり。一々喚いたり文句を垂れるたの妹達より手がかからない事は良い事だ。トーレはそう思った。
自身の置かれた状況はスーパーシミターが地上に二組・四機、上空にも同数。
三次元機動は可能。まずは相手の数を減らすのが肝要。
目標を定める。まずは地上にいる一組。
自身のIS“ランドインパルス”を発動、加速するだけがこのISの能力ではない。
まずは前進、案の定、相手の射線に捉る。ここであえてキル・ゾーンに入り相手の射撃を誘う。
相手はこちらの高速・加速性能を考慮にいれ射撃を開始する。
見事な連携と射撃方向の設定・・・。
戦闘中であるがトーレは感心した。それも一瞬で次の動きに移る。
機動力を生かした直角ターン。勿論それを見越して射撃を受ける。
今度は後方にバックを行い、距離をとる。
一瞬で自身の高速機動によって出来るはずの相手の火網の穴を探る。
(見つけた!!)
高速機動に対応するため面制圧を重視し広く満遍なく撃ちこんだ為、どうしても薄くなる場所が出来る。
それを狙ったのだ。
まず地上の四機に再び目標を定める。四機からは自分達の射撃で舞い上がった雪等でこちらが見えていない。
一気に接近、トーレが突撃してきた事に驚愕したのか一瞬、彼らの判断が遅れる。
「はっ!!」
すかさず一機の懐に潜り込んだトーレが左拳を打ち込む。

『絶対に殺したら駄目だからね?』

フェイトの指示が脳裏を掠める。その言付け通り拳は搭乗員の体を突き抜ける事は無く打ち込まれた。
機体の機能のみを奪う。
「一機目!!次!!」
すばやく次の獲物へトーレが動く。

セッテは接近する巡航弾をブーメランブレードで迎撃すると急降下、地上の目標へと向かう。
まず狙うのはトーレに注意を促された二機のイーゲル。
一機の一機に標的を絞り急降下。
二機のイーゲルは待ち構えていたのか砲塔部を旋回、両腕部に装備された連装機関砲・合計四門をセッテに向け発砲する。
右へ左へ回避機動、だが目標からは目が離さない。
(もし・・・鷹の獲物が抵抗したら鷹もこのような光景を見るのでしょうか・・・?)
セッテは図鑑でしか見たことはない猛禽類達を思い浮かべた。
飛行し、獲物へと襲い掛かる。まさに自分らの用ではないか?
思考中断。今は眼前の敵を撃破すること。戦闘は先頭機人として生まれた自分にとって生きることと同義。
EOを散開させる。両手にブーメランブレードを実体化させる。
「斬る!!」
近付けば近づくほど濃密になる火網を物ともせずセッテは突入する。
狙うのは標的の胴体側の脚接続関節。
ブーメランブレードの刃が接触するかしないかの位置まで近接した瞬間、急制動をかける。通常やらないような急制動、
並の航空魔道士では命は助かっても肉体がが持たない。フェイトでもそんな非常識なことはしない。
戦闘機人であるセッテだから出来る高速機動。
そのまま後ろに向かって切り裂く。
「浅い?」
イーゲルは転倒しなかった。後ろに離脱したセッテに向けて砲塔を旋回、再び連装機関砲を発砲。
セッテはトーレと違い射撃系を織り交ぜたテクニックを使う。
回避しつつ塞がっている両手の代わりにブーメランブレードの刃先を向け、そこに射撃用スフィアを展開・収束。
「ファイヤ!!」
撃ち出したのは二線、狙いは胴体と脚の接続部と胴側の脚間接部。
射撃後、態勢の立て直しもかねて着地。速度がついていた為か新雪の上を滑る。
停止、その時にはセッテの両手にあった筈のブーメランブレードは無い。
セッテが止まるのと同時に二機のスーパーシミターも停止した。ブーメランブレードを突き刺されて・・・。
射撃後、着地する瞬間に投擲、自身のIS“スローターアームズ”で誘導、直撃させた。
「殺してはおりません」
撃破したイーゲルと二機のスーパーシミターを見てぼそりと一言。
「残り三機・・・、このセッテがお相手いたします」
再びブーメランブレードを実体化させ構える。残り三機。
「あまり時間はかけれない・・・」

地上の宿営地組、こちらも交戦中。エリオは宿営地から離れることなく支援を受けつつ遊撃戦を展開していた。
青い塗装をされた二機が交差しつつ右手で保持しているロケット弾発射機を撃ちながら接近、近接戦を挑む。
エリオは放たれたロケット弾を下がる事無く正面で回避、迎え撃つ。
「ふっ!!」
一瞬互いの間合いに入る。相手は左手を繰り出し接触する寸前、カートリッジをロード。
(ペレットパンチ!!)
あまり一般的な武装ではない。カートリッジに充填された魔力を直接収束、相手に叩きつける近接用兵器。
だがカートリッジの最大出力をそのまま叩きつけるので侮れない威力はある。
エリオは一機目のパンチをステップで回避、もう一機のパンチはジャンプで回避。
予想通り、後方にいた他の機体を確認、前方にいた味方機との同士討ちを避けるためこちらも接近戦を挑む。
<ソニックムーヴ>
機体同士の隙間を縫うようにしてジグザグ機動、無論手を出すのを忘れない。
ストラーダの刃部で斬りつける。確かな手ごたえを感じる。
エリオの駆け抜けた後、二機が背中のジェネレーターを突き刺され稼動不能に陥り各坐、
もう一機は左腕を切り飛ばされる。
「まだうまくいかないか・・・」
ソニックムーヴを利用した複数に対する一撃離脱、研鑽を重ねた技ではあるがまだ自分は未熟。
「ストラーダ、このまま誘導するよ、行けるね?」
<ヤボール>
戦闘不能の二機を残し、他の四機をエリオを追う。
エリオは不利とわかりつつ追撃を受ける。

『いいよガリュー、そのまま誘導して・・・』
ルーテシアが通信を送る。ガリューは了解という意味の短い信号を送ってくる。
具体的にわかるというわけではない。だが彼女にはわかる。ガリューと他の虫達の送ってくるコトバが。
ガリューは適当に相手をいなし誘導する。
今の所うまく言っている。予定通り・・・。

「キュー?」
「エリオ君なら心配ないよ、ルーちゃんやガリューも」
「キュー・・・」
キャロは廃ビルの二階にフリードと共に潜んでいた。
キャロの役目は一箇所に集めた相手を火力で持って動きを止めること。
「いつでも出来るように準備しておいてね、フーリド?」
「キュ!!」
「うん、がんばろう!!」

「ガリュー、そっちはどう?」
『・・・・・・』
『ガリューがちょっと遅れるって・・・』
ルーテシアの通訳がつく。エリオは一瞬考える。このまま行くか?タイミングが命、少しでも息が合わなければ
ルーやキャロ達から同士討ちを受ける心配がある。だが時にはリスクを重ねなければ強くはなれない。
騎士道に於ける師匠、シグナムはそういっていた。
「このまま行こう、キャロ、竜魂召還を用意して!!」
『うん、まかせて!!』
予定通り角を曲がる、相手はそのまま追撃してくる。道路幅は変わっていない。
左右を遮蔽され、待ち伏せ向けの場所。
前方から一寸遅れたガリューが見えた。だが誤差の範囲、いける!!
エリオとガリュー、高速ですれ違う。
「キャロ、今!!」

『すばしっこいガキが!!』
『早い、射撃が当らん!!』
『全員落ち着け、そっちはどうだ?』
『すばしっこい虫野郎を追跡中、速度はそこまででもないがゴキブリ並みにすばやい』
『そのまま追い込めこっちの白衣のガキと一緒に挟撃する』
機会はすぐに来た。エリオを追跡する四機が角を曲がりきると遅れてもう一隊に追跡される虫野郎が見えた。
『よし全機、射撃開始!!同士討ちは気にしないで撃て!!』
しかし撃とうとした瞬間、白衣のガキと虫野郎が交差したと思った瞬間、二人は飛び上がった。
『馬鹿が!!いただ・・・』
右手の発射機を空に向けた瞬間だった。
大きなピンク色の光を視認、そこから現れたのは・・・。
白銀の飛竜!!

「フリード、ブラストフレア!!」
「キュクー!!」
通りを一瞬で埋め尽くす火炎の渦。
チビ竜モードではない、本物の竜の力。一応は手加減しているが・・・。
「ルーちゃん、次をお願い!!」

「うん・・・」
ルーテシアがベルカ式の三角の魔方陣を形成。
「トーデス・ドルヒ・・・」
周囲に形成されたのは無数の黒いタガー。
「ファイヤ・・・」
一斉に加速する無数のタガー、狙いは通り全体。
着弾し爆発。

「ストラーダ!!ロードカートリッジ!!」
締めはエリオ、地面に向かいデバイスを突き立てるように垂直降下。
自身の魔量変換資質を利用して大量の電力を発生させ蓄電する。
急制動をかける。
大きな衝撃を小さな体で受ける。凄まじい圧力。だがそんなもの気にしてはいられない。
「電撃開放!!」
止めで強力な電撃を流す。エリオは一回転して華麗に着地。
ストラーダについた汚れを一振りして落とす。
前後には各坐した機体が八体。
「やった・・・!!」
キャロがフリードの上で親指を立てている。
エリオはそれに同じく親指を立て返す。そしてルーテシアにもサインを送る。
ルーテシアも小さく親指を立てて返してきた。
本当はハイファイブをしたいが我慢しよう。エリオはそう思った。

施設内ではティアナが走る。角を曲がり、あらかじめ索敵しておいた方向へクロスミラージュを向ける。
『来た!!』
『射撃開始、撃て!!』
待ち構えていたナースホルン二機が発砲。ガトリングガンのショットガン現象も併せて二機は弾幕を張る。
打ち出された弾は壁を削り、あるいは天井で跳弾、床に空ける。
『やった!?』
いくらBJといえど回避の出来ない弾幕をこれだけ受ければ・・・。
『待て!!いないぞ!?』
『まさか?』
光学系電子系のセンサーを使用し探知、確かに倒れているはずの相手がいない。
『どうなって・・・、警報?至近に魔力反応って!?』
『位置は・・・、真横!?』
二人が同時に横を見る。
そこには両手を開き魔力弾用のスフィアを拳銃型デバイスの先に生成した少女がいた。

「シュート!!」
弱点である腰部を対装甲魔力弾で打ち抜く。脱出する搭乗員に対してはスタン弾で気絶させる。
崩れ落ちる二機。
ティアナの使える“渋い”幻影魔法を使った戦術。幻術系は使用者が少ないのでうまくやれば簡単な引っかけでも
効果は絶大だ。
「フェイトさんやエリオみたいに変換資質持ってれば苦労しなくて済むけどね・・・」
<全くです>
「・・・あなた最近、誰に似てきたの?」
<そうでしょうか?>
こんな性格してる人、周りに居るかしら・・・?
ティアナは疑問に思った。
もしこの性格が本当のクロスミラージュだとしたら・・・?ティアナは戦慄した・・・。
<何をお考えですか?マスター?>
「ん?い、いやなんでもないよ?さあ行こう?」
人差し指でクロスミラージュを回転させ握りなおし、ティアナ通路を再び駆け出した。

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最終更新:2008年01月07日 22:08