新暦75年9月

この月、71年より発生した『レリック回収事件』は『聖王のゆりかご』の破壊と首謀者・ジェイル・スカリエッティをはじめに彼の生み出したナンバーズの11人の逮捕により終結した。

この事件の後。この事件を経験した機動六課は期日により解散。六課のメンバーはそれぞれの道を歩む事となった。

だが、彼女らは新たな嵐が迫っている事をまだ知らなかった…………。




闇が広がる世界……そこにはまがまがしい巨大な施設があった。辺りには赤い熔岩が流れている堀が二重に儲けられている。

その施設の中。一人の男が水晶玉をほくそ笑みながら眺めている。

水晶に映るのは高いビルが立ち並ぶ異世界。

「このような世界にも強者達が居ようとはな……」

次々に切り替わる映像はかつての時空管理局、機動六課のメンバーやナンバーズの姿。
そして、数十年前に管理局員であった第359管理世界、第1590管理世界の実力者達の姿。

男は彼らに告げる。

「人界の強者達よ……その力を我に見せよ。小太郎、動け」

「クク……承知した」

男の傍らにいた小太郎はそう答え、つむじ風と共にその場から姿を消す。


「さあ、どう出る? 強者達よ!」


小太郎が行った事を確認すると男はある女性を呼び出す。

「妲己、プレシアはどうか?」

「まだ、何処に居るかさーっぱりです」

「そうか……」


新暦76年5月10日


時空管理局が保護をしている次元世界。

そこは豊かな自然が広がる平穏な世界。

木々が立ち並び、緑が生い茂り、川の流れの音、生命の音が聞こえる。


ここには、先の『レリック回収事件』に大きく関与したルーテシア・アルピーノとスカリエッティに囚われていた彼女の母、メガーヌ・アルピーノが暮らしている。


「お母さん」

草原を歩いているルーテシアは振り返り、母を笑顔で見遣る。

娘の声にメガーヌは微笑んで傍に寄り添う。


「エリオとキャロにまた会いたい」

「そうね、また会いに来てくれるわ」

友達をこいしがり、母に甘えるルーテシア。

その表情はあの時には見られない幸福に満ち溢れている。

「ガリュー」

母娘の声にルーテシアの召喚虫であるガリューが歩み寄る。


「お前がメガーヌか……」

「!?」

突然、聞こえた男性の冷たい声にメガーヌは庇うようにルーテシアの前に立つ。

「我は風魔。来たる混沌の為に来てもらうぞ」

「何を言っているの?貴方は……」

突然現れたにも関わらず風魔にメガーヌは毅然と立つ。

「ガリュー!!」

ルーテシアの声にガリューは頷き、風魔へと飛び掛かり右の拳を放つ。

だが、風魔は拳を流しガリューを掴み上げる。

「クク、お前の狗は中々に忠孝だな。遊んでやる」


「!!」

その言葉に激昂したガリューは、自身を掴み上げる風魔の腕を掴み彼の頭部へと神速とも感じられる蹴りを放つ。
紙一重で頭を動かして避ける。空を切り裂くような音が耳に響くと再び風魔へと拳が放たれる。
だが、風魔は拳を掌で受けると口の端をつりあげてほくそ笑む。


「クク、刹那の瞬間に我に当てるとはな……。時間だ」

そう言い放つと、風魔はガリューの前から姿を消し。

一瞬の間にメガーヌとルーテシアの前に現れる。

「ルーテシア、お前の母。預からせてもらうぞ」

「っ!? 嫌だ!!」

「駄目、危ないわ!!」

母を守らんと前に出るルーテシアにメガーヌは庇うように押し退ける。

そうはさせんと言うようにガリューは再び、風魔へと背後から飛び掛かる。だが……

「!?」

「お前とはいずれ闘う。待っていろ」

風魔は背後へと右手を翳した瞬間、腕は長く伸びてガリューを掴み遠くへと投げ、一瞬で作り上げた火球を放つ。

「何ていう事っ!? かはっ!」

「クク、なんとも美しい母娘の愛よなぁ」


そう告げると風魔はメガーヌに当て身を放ち、彼女を抱え上げる。

「駄目ぇ、お母さんっ!」

怒りと哀しみが混ざった表情で風魔に飛び掛かる。だが……風魔と母の姿はそこに居なかった。

「母を返して欲しくば……これから来る試練に勝つと良い。クククク」



言葉だけが残り……ルーテシアは涙を滲ませて泣き叫ぶ。

「うわぁぁぁぁぁっ」

どうして……どうして!! やっと、やっとお母さんと!!



風魔に投げ飛ばされたガリューも悔しそうに戻ってくるが辺りに彼の存在は感じられなかった。

「お母さん……おかぁ……さん」

鳴咽混じりの声が虚しく草原に響き渡るだけであった。


そして、この事態は直ぐに管理局に察知される事なる。


無双の嵐が……やってくる。

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最終更新:2008年05月12日 18:05