Ririkaru無双 第壱章「嵐が来る前」


次元世界にてルーテシアの母メガーヌが風魔に囚われる数日間前の事……。
第359管理世界、この世界はある人物の政策によって國が三つ分かたれている。

それは当初、『漢』という一つの國家が世界を統べていた。が、それも盛者必衰の理。栄華を誇った漢帝國も永きに渡り綻びが生じ、滅ぶと全土で動乱が始まった。
その混乱の中、数多の男達が頭角を現しようやく乱を平定した。彼らの中でも抜きん出た政治力や魅力を持つ三人が居た。世界を三つの國に分けて統治に務めば乱が起きるのは少なくなる。と一人の男が提案し。
事後処理で三人は彼の提案の通りに、分けられた國の長にそれぞれ着き。第一国家を魏、第二国家を呉、第三国家を蜀と名を変えたのであった。

そして今、第三・国家『蜀』の首都である成都の地に一人の特別捜査官とその守護騎士であり家族にあたる五人がやってきていた。


「にぎやかやなぁ♪」

建物なども独特の造りで立ち並び、人々の生き生きとした表情に特別捜査官・八神はやては自然と微笑む。

次第に進んで行くと屋台や食事処が軒を連ねる通りに入り、守護騎士の一人であるヴィータが鼻を鳴らしては、辺りの店を眼を輝かせてで見回している。

「んー♪良い匂いがするな。なあ、はやて」

「あはは、そうやなぁ。シャマルや皆にお土産買って帰ろうか」

「はい、そうした方がシャマルもすねないかと」

シグナムの意見にはやてとヴィータは彼女が「お土産は?」と期待の表情で聞いてくる姿を想像し笑ってしまう。
シャマルが今居ないのはなのはの主任医務に就いているからだ。

「なあ、シグナム」

「なんだ?」

しばらくして、アギトから声をかけられシグナムは聞き返す。

「これから何処に行くんだよ?」

「ああ、まだ言っていなかったな。この地の政堂だ。そこにこの國の政務官が居る。今日はその政務官に挨拶に来たんだ」

「へぇ、なんで?」

「実は--」

頭の上に疑問符を浮かべるとシグナムの代わりにリインが彼女に説明し始める。

「政務官さんはレリックの事件の時、ミッドチルダや管理局員の心配をしてて。駆け付けて協力したかったんデスけど、こちらでの政治が忙しくて来れなかったんデス」

「それで、一度様子など詳しくが聞きたいって言ってくれて。今日はこっちから来たわけや」

リインとはやての言葉にアギトは少し納得いかないといった表情で告げる。

「にしても偉そうだなぁ、こっちから来させるなんて」

「仕方ねーだろ、向こうは一人の政治家なんだから」

ヴィータの言葉にアギトは複雑な表情を浮かべるが渋々と頷く。
当初、政務官の方がミッドチルダに来ると言っていたのだが。本局がこちらでの政治もあるだろうからと考え、フリーの特別捜査官であるはやてに出向かせたのだ。

「あれは……?」

ザフィーラの眼に止まったのは商店の通りが途切れ、補整された道が広がる門の前に白を基調とした動きやすい民族衣装を着こなしている長身の男性が居た。
こちらに気付くと、男性は歩み寄って来て、はやて達の眼の前まで近づくと会釈をする。

「貴方が時空管理局の特別捜査官の方達ですね。お待ちしていました、私は皆さんのご案内をさせて頂く『臥龍』と申します」



「これはご丁寧にありがとうございます。私は八神はやてと言います。この子達は私の守護騎士です」

臥龍がはやての紹介した家族に視線を移すと。

「時空管理局、シグナム二等空尉であります」

「同じく、ヴィータ三等空尉だ」

「はやての守護をしている。ザフィーラ」

「私はリインフォース空曹長デス」

「私はアギト。最近入ったばっかだからわかんねぇ。」

「いいえ、急な事を言ったのはこちらです。お気になさらないで下さい。それに今日会えないのなら……次に会う楽しみも増えます。
それにしても良いご家族を持たれていますね」

臥龍の言葉にはやては自分達の繋がりを理解してくれたんだと嬉しそうに笑顔を見せて頷く。

「……はい、ありがとうございます。」

「では、政堂にご案内致します。どうぞ」

「あ、はい。」

臥龍に促され、はやて達は彼と共に門を潜る。

------

石畳で補整された道を歩いて行く中、私達はこの地が険しい山に囲まれている事に気付いた。
岩肌が剥き出しになって、下手したら転げ落ちてしまいそうな……。
そう考えていると臥龍さんは私に声をかけてきた。

「街はどうでしたか?」

「あ、はい。皆生き生きしててええ顔してました。皆と帰りにお土産でも買って帰ろな。とか話してたぐらいで」

臥龍さんは「ありがとうございます」と嬉しそうに笑顔を零す。

「実はと言いますと、魏呉とはどちらが活気づく街づくりをしているかつい競ってしまうんです」

「なんか町興しみたいだな」

ヴィータの言葉に臥龍は微笑む。

「ふふ、そう言われれば似ていますね」

「この國は山に囲まれてるけどほかの國はどんな地域なんだ?」

アギトの質問に臥龍さんは丁寧に答える。
魏は平原が多く、國務官の方針から広く人材が集められ、今までのその人の略歴がどうであれ能力があれば仕事に就かせる。
呉は河や湖が多く、こちらは学力が重視されています。と


「元・時空管理局なんデスよね?劉備國務官さをは」

「はい、劉備殿や他の國務官殿もそうなります。この世界での動乱もあった為。彼らは管理局を辞職し平定に専念しました。その影響か曹國務官も孫國務官も自分達のやってきた仕事を人々に理解してもらいたく。魔法学院やミッドチルダに多く輩出しています」

その話を聞いていて私はミッドチルダでも有名なあの魔導師の名前を思い出す。
聖王教会に尽力してくれている一人で時空管理局本局の『知の魔導師』。
ロストロギア探索でも迅速に察知する判断力や犯罪者逮捕に携わる知略をフルに活用して有名になって……今じゃ数少ない古代ベルカ式の魔導師けど、政治家を取って辞職した。
『諸葛亮孔明』

私はどんな人なのか臥龍さんに尋ねてみる。

「あの、聖王教会で政務官さんの名前は知っているんですがまだ会った事ないんです。どんな人なんですか?」

「……そうですね、はやてさん。人に対する評価はそれぞれです。ここは、政堂に着いてからのお楽しみとなされては?」

やんわりとした口調で微笑む臥龍さんに私はつい頷いてしまう。
……優しいねんけど威厳があるなぁこの人。

「答えになってねー」

「ははは、申し訳ありません。私は問題の答えを簡単に教えたりしない考えでして。 ああ、着きました」

そう言って臥龍さんが止まった先には大きな石材を土台の上に建つ独特の造りの建物。
私にはまるでお寺みたいな印象がある……。

「ではどうぞ皆様、中にお入り下さい」

臥龍さんに促され私達は政堂の門を潜って中へと入っていくと。
臥龍さんみたいに民族衣装を着た様々な人が行き交って、バリアントジャケットを着込んでいる魔導師もおった。
皆の姿にここは正に政治を行う場所なんや。と納得する。

「ああ、馬良殿。趙雲殿は?」

近くにいた魔導師に臥龍さんは声をかける。けど馬良さんは顔横に振って答える。

「趙雲殿は自然保護隊に用があると、つい先程行かれました。そちらの方々は政務官が言われていた管理局の?」

「ええ。特別捜査官の八神はやてさんと彼女の守護騎士の方達です」

「はじめまして。八神はやてと言います」

私達が敬礼をすると馬良さんは軽く会釈を返しててくれた。

「そうでしたか、ごゆるりとなさって下さい。趙雲殿が帰ってこられましたら呼んでいたと言っておきますよ」

「ありがとうございます馬良殿。では、また後ほど。 参りましょう皆さん」


そう促され、私達は馬良さんに挨拶をしてその場を後にする。
次に案内されたのは子供達が均等に並んだ席に座っている大きな部屋やった。
教壇みたいな所に立ってる人の話を聞いて解ったのはあの子達が受けてるのは魔法学の授業。

「これは……学校か?」
ザフィーラの言葉に臥龍さんは頷いて説明する。

「政堂の中に魔法学院を設けているんです。ここで魔法学やいろん勉学を学んでから将来に役立ててほしいと劉備殿や皆さんの配慮なのです。
といっても我が國では模擬戦を重視する子供達が多いんですけどね」

苦笑いを浮かべているけど、臥龍さんはどこか嬉しそうやった。やっぱり小さい子達が育って行くんは誰でも嬉しいやなぁ。シグナムやヴィータもほほえましそうに授業を受けてる皆を見てる。

「それは将来が有望ですね。後で見学して良いですか?」

「ええ、お願いします、子供達の勉強にもなるでしょう」


「んー。内容はミッドチルダで学ぶものと変わりないデスね」

「ええ、ミッドチルダでの内容を参考に授業を組んでいますから。」



しばらくして私達は教室から出て、景色などが見渡せる渡り廊下の前までやってきた。
その先には抜けて案内されたのは今までとは造りが異なる離れのお屋敷でどこか幽玄な趣がある。

うーん、なんか文化遺産みたいやなぁ……。

そこで臥龍さんは私達に振り向いて頭を下げる。

「今から私は政務官を呼びに参りますので、この渡り廊下の奥の間でお待ち下さい」

「わかりました。臥龍さん、案内ありがとうございました」

「いえ、では」

立ち去る彼の姿を見送ってから私達は廊下に足を踏み入れて雄大な山を見渡す。その景色は最初に見た岩肌の山とは違った穏やかな表情を見せてる。

「綺麗な景色やなぁ……皆でピクニックしにきたいな」

「そうですね、その時はシャマルや皆を連れてきたいものです」

「あんな急な山は嫌だぞ」

アギトの意見に私達はつい吹き出してしまう。確かにここの山ではおちおちお茶を飲んでいられない。

「そやな、皆呼んで。やな♪」

廊下を渡りきって私達は臥龍さんに示されたお屋敷の前に辿り着く。
最初にあった緊張は景色や皆を誘う話で解れている。

「じゃあ、皆行こか」


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その頃
第一国家・『魏』
首都・許昌政堂にて一人の男が玉座に座り、使者の報告を聞いていた。

「ふむぅ…………報告大儀であった、下がれ」

使者を下がられ男は手元のモニターに二人の少女の姿を映す。
彼は曹操孟徳。この國の國務官である。

「ふむぅ、リインフォースにアギト……か。二「ほう、孟徳。二喬に劣らぬ愛らしいなぁ」

いきなりかけられた言葉に曹操は驚く事なく嬉しそうに答える。

「夏候惇か、ちょうど良いところに来たな。夏候淵、曹仁とでこの二人と二喬を連れてこい」

「断る」

きっぱりと答える夏候惇に曹操は額に筋を立てて彼に詰め寄る。

「ぐっ……貴様!儂の言う事が聞けんのか!」

「前にミッドチルダに行ってヴィヴィオとかいう少女に話し掛けててエースオブエースに撃たれた事忘れたか?変装してたからよかったバレてなかったものを」

「忘れてはいない。だがな夏候惇、今。あのエースオブエースは居ない。絶好の機会ではないか?」
エッヘンと答える曹操に夏候惇は青筋を浮かべ、呆れるように手をひらひらと振って答える。

「そんなに言うならもっぺん死んでこい」

「…………やはり今は政務に専念するべきだ。袁紹も侮れん」

「ああ、そうしとけ」



続く

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最終更新:2008年05月12日 18:05