番外編その一「馬鹿騒ぎのレディーズ’バス」
機動六課隊舎内 大浴場
ここは、はやての要望により建設され、つい最近完成したばかりの設備である。
ちなみにその経費は、はやてがクロノを脅s…ゲフンゲフン、説得して捻出したとかしないとか。
まぁそれはさておき――
「いっちばーん!」
夜九時、訓練と仕事を終えたスバル達が浴場に入ってきた。
「スバル、お風呂場で走るんじゃないの!転ぶわよ!」
「へーきへーき…ってあ痛ぁっ!?」
濡れたタイルに足を取られ、スバルは派手に後頭部を打った。
「言ってる側から…」
「あはは…」
呆れ返るティアナと苦笑するキャロ。
「う~、頭がバカになったらど~しよ~。」
涙目で頭を押さえているスバル。
「心配ないわよ、もうなってるから。」
歯に衣着せず言うティアナ。
「ひどいよティア~…」
「いーから早く入んなさいよ。いつまでそこにいる気?」
「う~…」
体を流した後、湯船に浸かる3人。
「「「ほ~~~~。」」」
のんびりと湯に浸かり、同じ声を出す。
「お風呂って良いですね~。」
キャロが緩みきった表情で言う。
「ホントね。最初は慣れなかったけど、シャワーよりずっと良いわね~。」
「仕事とか訓練の疲れを取るにはもってこいだよね~。…ところでティア。」
急に隣りにいるティアナに話かけるスバル。
「何よ?」
「思うんだけどさ…」
そして素早くティアナの背後に回り
「またおっきくなったでしょ?」
その胸を揉みまくるスバル。
「何やってんのよアンタはーー!!」
「やっぱりそうだ。前より柔らかい。」
「シカトすんなっ!早く離れなさいよ!」
「んーこれはD、もしくはそれ以上かな?」
「離れなさいっての、このバカスバル!!」
誰もいないのを良いことに騒ぎ立てるティアナ達。
だが彼女達は、物陰から自分達を見詰める視線に気付いていない…
(ぐふふふ。いいねいいね~、眼福だぜこりゃ。)
その視線を放つのはもちろんあの男、希代のエロ男にして歩くワイセツ物、クルツ・ウェーバーである。
何故コイツが全くバレずにここにいるのかというと、M9にセットされている魔法の一つ“ECS”(電磁迷彩)を使用して透明化しているからだ。
しかもクルツはスナイパーという仕事柄、気配を消す術に長けているので尚更バレないのだ。
(大浴場の完成を待ち続けた甲斐があったな。俺は今日、この光景を一生、目に焼き付ける!!)
間違った方向に情熱を燃やす男だった。
カラカラカラ
大浴場の扉が開き、隊長組が入ってきた。
「二人とも何を暴れている。風呂では静かにするのがマナーだぞ。」
シグナムが二人の様子を見て咎める。
「「すいません…」」
ショボンとうなだれる二人。
「まぁまぁシグナム、そう怒らなくても。二人も悪気があった訳じゃないだろうし。」
フェイトがフォローを入れる。
「お前は部下に甘すぎるな、テスタロッサ。
まぁいい、我々も入るとしよう。」
「はやてちゃん、後でリインが背中を流してあげますです~。」
「うん。お願いするで、リイン。」
「はいです♪」
「ヴィータちゃん、後で頭洗ってあげるよ。」
「別にいいよ。一人でやるからよ。」
「そう言わずに♪」
「あたしの髪をいじくるな!」
そんなヴィータを見てくすくすと笑うなのは。
(うひょっ!!部隊長達のナイスバディまで!
今日は人生最高の日か!?)
予想外のハプニングに大興奮のクルツだが、その思考は冴え渡っていた。
(シグナム姉さん、フェイトちゃん、ティアナちゃんは予想通りのデカさだな。
なのはちゃんとはやてちゃん、スバルは次点だが形が良いな。
ヴィータとキャロ、リインは…まあ今後かな。しかしああいうスレンダーもまた…)
エロオヤジ思考全開で品定めするクルツ。
人として末期だった。
「それにしても、さっきはなんで騒いどったん?」
何気なくティアナに質問するはやて。
「スバルがまーたセクハラしてきたんですよ。人の胸を揉んで…」
そこまで言ってティアナはハッと気付く。
はやてが黒い笑顔を浮かべている事に。
「ほ~~。そういや私、最近は忙しくてそーゆー事しとらんかったな~。」
意味ありげな発言を聞いたなのは、フェイト、シグナム、ヴィータは瞬時に危険を察知してその場から離れようとするが、はやてはそれを上回る速度で接近し、
「きゃっ!」
「ひゃっ!」
「あうっ!」
「うひっ!」
瞬く間に四人の胸を揉み終えた。
「ふむふむ、なのはちゃんとフェイトちゃんは前よりええ感じや。
シグナムのゴージャス感とヴィータのぺったり感は相変わらずやけどグッドやで。」
「あの速さで四人の胸を揉んで、さらには評価まで下すなんて…!」
「感心してる場合じゃないですよスバルさん!このままじゃ次の標的になるのは…」
「さ~て、今度はフォワード陣やな~。今日は特別にリインも揉んだげるで~。」
「え、遠慮しますです~~~!!」
そして響き渡る乙女達の悲鳴。
セクハラ魔人はやての独壇場だった。
(ぬおおおーー!!もうたまんねえーー!!!)鼻血を流しながらそれを見るクルツ。
だが、彼の幸運はここまでだった。
ECSは非常に魔力を食う魔法なのでクルツから直にではなく、デバイス内のコンデンサに貯めた魔力を使用するのだが、長時間の使用により残量が僅かになってきたのだ。
(ちっ、もう時間か。それじゃ最後に至近距離から…)
しかし、湯船に近付くクルツの足下には先程の騒ぎで湯と一緒に流れてきた石鹸が。
(都合良すぎと言いたければ言ってくれ)
クルツは当然それを踏んでしまい、思いきりすっ転ぶ。
「ぐおっ!?」
「何?誰かいるの!?」
クルツの上げた声に反応し、全員がこっちを向く。
(やばい!急いで撤退を…)
立ち上がり出口へ向かおうとするクルツだったが、丁度その時M9が
『コンデンサ内の魔力、エンプティ。ECSを強制解除します。』と告げた。
そして露わになクルツの姿。
「…クルツ君?」
やけに低い声で言うなのは。
「ふーん、クルツ君覗きしてたんや~。」
目が笑ってない笑顔で言うはやて。
「これはちょっと、許せないね…」
怒気を含んだ声で言うフェイト。
「覚悟の上での行動だろうな、クルツ?」
修羅の形相で言うヴィータ。
そしていつの間にか、全員がデバイスを起動し、包囲網を狭めてくる。
「ち、違うんだ!これはその…そう!魔法の使用テストで…」
「へー、魔法のテスト?ほな皆、私らも攻撃魔法のテストしよや。
内容は『非殺傷設定の威力限界を知る』で、的にはクルツ君がなってくれるそうや。」
「りょうかーい。」(×8)
その言葉に戦慄を感じたクルツは逃亡を試みるが、踏み出そうとした足は氷で固定されていた。
「何っ!?」
「逃がしませんですよー♪」
リインフォースⅡの「凍て付く足枷」だ。
「さてウェーバー、制裁を下す前に、何か言い残す事があれば聞いてやるぞ?」
レヴァンテインをシュツルムファルケンの形態にしてシグナムが言う。その顔には一片の憐れみもない。
他のメンバーもすでに魔力チャージが完了している。
処刑の準備は出来ている、といった感じだ。
「…出来ることなら…」
観念したように俯いていたクルツが、ぽつりと言う。
「ん?」
「出来ることなら、俺がこの手で皆の胸を触りたかったあーーーーっ!!!!」
絶叫するクルツ。
「「「「「「「「「死ね!!」」」」」」」」」
ドゴォォォーーーン!!!
発射された色とりどりの魔力の奔流はクルツを飲み込み、壁をブチ破って突き進む。
「エロスは正義だぁぁーー・・・・」
そしてクルツは夜空の星の一つとなった。
「ふぅ、これで悪は滅んだね。」
なのはの言葉に一息つく一同。
だがその直後
ガシャーン!
出入口の扉が蹴破られ、そこから飛び出す影が一つ。
「全員無事か!!敵はどこだ!?」
ショットガンを構えた宗介が言う。
その場の空気が数秒間停止する。
しかし、すぐに自分への殺気の篭った視線を感じ取り、脂汗を流す宗介。(いかん…良くない…。この状況は非常に良くない…)
「主、いかがなさいますか?」
シグナムがはやてに尋ねる。
「状況はどうあれ、見た事に変わりないしな。おしおき決定や。」
そして再チャージされる魔力。
「待て!俺は…」
「「「「「「「「「問答無用!!」」」」」」」」」
ズドォーーーン!!
クルツ同様に吹き飛ばされる宗介であった。
ああ、この哀れな軍曹に幸あれ…
終わり
最終更新:2008年01月18日 20:17