訓練という名前の退屈な日々が続いていく。
ひよっこは相変わらずひよっこで、それを見るたび空虚な思いは加速度を増して、
どうにかしてしまいそうな心を蘇ったアルファにすがりついて必死に繋ぎとめる日々。
毎日毎日夜中の訓練所の使用許可を申請しては、不満だらけの虚しい戦いを1人続ける。
そんな日が繰り返されて、気がどうにかなりそうだったとき、
機動六課に響き渡ったのは日常を侵す警報だった。
魔法少女リリカルなのはStrikerS―砂塵の鎖―始めようか。

第4話 開幕

父さん、ギン姉、お元気ですか?スバルです。
あたしとティアがここ、機動六課の所属になってからもう2週間になります。
本出動はまだ無くて、同期の陸上フォワード4人と、
変わった人、本人はハンターとか言っていました、1人は朝から晩までずーっと訓練付け。
理由をつけてハンターのはんたさんはよく私達との訓練から抜けてしまうのだけど。
それは置いておいて、あたし達はまだ一番最初の第一段階です。
部隊の戦技教官なのはさんの訓練はかなり厳しいのですが、
しっかりついていけばもっともっと強くなれそうな気がします。
当分の間は24時間勤務なので前みたいにちょくちょく帰ったりできないのですが、
母さんの命日にはお休みをもらって帰ろうと思います。
じゃぁ、またメールしますね。
―――――スバルより。
追伸となるのですが、機動六課に幽霊がでるそうです。
なんでも夜の訓練所が勝手に動き出して、
誰もいないのに物音がしたりビルが真っ二つになったり爆音が響き渡ったり
なんだかとてもすごいことになっているらしく怖くてとても近づけません。
なにかご存知ですか?

「今日もやるぞー!!」
「「おーっ!!」」

父さん達のところにそんなメールを出して、訓練着に着替えたあたしは
隊舎の前で声を上げた。
あたしの声に合わせて元気よくエリオとキャロが声を上げてくれる。
ティアはどこか恥ずかしそうな顔でこっちを見ていたから、
あたしはティアに向けてにこっと笑ってみた。
そういえばはんたさん、正直まだ怖くって呼び捨てにするなんて恐れ多くて『さん』付け
にしてしまう、はいつも早起き、というよりも隊舎で見かけたことあったっけ?、で
いつも私達よりはるかに早くから訓練場にいる。
デバイスを不思議な円柱状の巨大な容器、ドラム缶というらしい、の形にして
右へ左へと押しては往復するのを繰り返して待っていることが多いのだけど。
『横にして転がしたほうが楽なのに』とあたしが尋ねたら、
はんたさんに『ドラム缶は押すに決まっているだろ!』なんて力いっぱい答えられたけど。
その作業をしているはんたさんがどこか満足げな雰囲気で・・・・・・。
いったいなにが面白いんだろう?
今度あたしもやらせてもらおうかな。

「はい、せいれーつ。」

純白のバリアジャケットに身を包んだなのはさんの声に足を止める。
今日の訓練も大変だった。
あたし達みんな、息を切らせ汗を滴らせ土塗れになっている。
あたしは深く息を吸い込んで呼吸を整える。

「じゃぁ、本日の早朝訓練ラスト1本。みんな、まだがんばれる?」
「「「「はい。」」」」
「じゃあ、シュートイベーションやるよ。レイジングハート。」
「All right. Axel Shooter.」

返事を返したあたし達の前で、なのはさんの周りにたくさんの魔力弾が作られていく。
それらが高速でなのはさんの周囲を飛び交い始めた。

「わたしの攻撃を5分間、被弾なしで回避しきるか、わたしにクリーンヒットを入れればクリアー。誰か1人でも被弾したらまた最初からやりなおしだよ。がんばっていこう!!」

「このぼろぼろ状態でなのはさんの攻撃を捌ききる自身ある?」
「ない!!」
「同じくです。」

ティアの言葉に躊躇いもせず即答したあたしにエリオが同意する。
ティアならなにかいい考えがあるんだろう。
あたしはティアを信じている。

「じゃぁ、なんとか1発いれよう。」
「はい。」
「よーし、行くよエリオ!!」
「はいっ!!スバルさん!!」

ティアの言葉に返事を返し、同じ前衛のエリオへ声をかけながら、
あたしは右腕につけた母さんの形見のアームドデバイスであるリボルバーナックルを
左手でうちならし、エリオがストラーダを構える。

「準備はOKだね。それじゃ、Ready Go!」
「全員絶対回避。2分以内で決めるわよー!!」

なのはさんのアクセルシューターが開始の合図と共に撃ちだされると同時に、
ティアが早口であたし達にそう告げる。
ティアの言葉に掛け声1つで返事を返したあたし達は飛来するアクセルシューターを
各自で避けながら散開した。
回避してすぐにあたしはウイングロードを展開する。

「アクセル」
「Snipe-Shot」

なのはさんの声に合わせて、なのはさんのデバイスのレイジングハートが
周囲を飛んでいた魔力弾をあたしとティアに向けて飛ばす。
物凄い速さの魔力弾。
だけど、そっちはティアが作ってくれた幻。
本命はこっち。

「うぅぅぅぅっりゃぁぁぁぁーー!!!!!!」

ウイングロードで道を作り、なのはさんの上からリボルバーナックルで殴りかかる。
だけど、なのはさんのシールドに簡単に止められる。
加速して押し切れるか。
しかしそれよりも早く、どこかに置かれていたなのはさんの魔力弾があたし目掛けて
高速で飛んでくる。
慌ててローラーブーツに急制動をかけさせて、後ろに飛びのいたあたしの目の前を
魔力弾が飛びぬけていった。

「うん、いい反応・・・・・・。」

なのはさんはそう言ってくれたけど、自分で展開したウイングロードについた傾斜と
咄嗟に飛びのいたせいできちんと着地できなかったことから、
ローラーブーツから火花を散らせてウイングロードを駆け下りるハメになる。
なんとか体勢を立て直したけれど、後ろからはなのはさんの魔力弾が物凄い速度で
追いかけてくる。

「バカ。スバル。危ないでしょ!!」
「ごめん・・・・・・。」
「待ってなさい。今撃ち落すから・・・・・・。」


「アルファ、先ほどの幻への対応策は?」
「幻影魔法と言うようです。新規情報として登録します。
対応策は飽和攻撃を始め、無数に存在します。マスターの思うとおりで問題ありません。
ティアナ、デバイスよりミスファイア。新規情報として保存します。」
「こちらでもカートリッジにミスファイアが起こるのか。」

ビルの上でドラム缶になったアルファを押す手を止めて、
アルファが送り続ける様々な情報を視界に走らせながら
スターズとライトニング4人の通信と動きを観察していた。
事前にやることを言うようになったティアナは少しはましになったみたいが、
それでも一番肝心な『どうやって』を省いているあたり殺したくなる。
それが無ければ行き当たりばったりと変わらないだろう。
『ご丁寧に』『わざわざ』なのはが待っていてくれたというのに。
スバルのほうもウイングロードとかいうあれは便利だが、
あれではブルズ・アイの前に殺してくれと全力で叫んでいるようなものだ。
もう少し幅広くや密集させるなど展開方法を変えれば戦略が増えるだろうに。
ただ、思ったよりもスバルの格闘技能は高い。
そこに彼女の師か目標とする者の存在を感じる。
やはり明確な目標があると上達が早くなるのか。

「なのはも大変だな。完膚なきまで叩きのめすわけにもいかないなんて。
理由をつけて抜けておいて正解だったか。」
「はい。マスター。最初の1撃目の時点で回避せずに全弾迎撃後、なのはを撃墜可能です。」
「俺がなのはの代わりにあそこにいたら?」
「スターズ及びライトニングを10秒以内に撃墜可能です。」
「『やってみせ、言ってきかせて、させてみて、褒めてやらねば人は育たじ』とか
言ったのは大破壊前の誰の言葉だったか。さて、キャロとエリオがなにかするみたいだ。」
「ブーストアップアクセラレイション。機動力強化のようです。」
「スバルのほうにブーストしなかったのは経験不足のせいか、
それともライトニングというチームで戦略を考えたせいか・・・・・・。
いずれにせよ、キャロにもう少し判断力がつけばいいハンターとなるだろう。
エリオのほうもまだまだ伸びそうだ。
『スピードだけが取り柄だから』とか言ってなのは目掛けて突っ込んでいったが、
あの速度を維持したまま戦えるようにさえなれば、
相手が動く前に全てを終わらせられるだろう。
さて、これで訓練も終わりだな。なのはが加減してエリオの攻撃を受け止めて、
先端が突き抜けてかすったとでもして終了だろう。アルファ、G3A3。」
「了解しました、マスター。」

ドラム缶になったアルファの上に手を置きながらそう宣言すると、
重厚な金属音を響かせながら稼動と変形を繰返し、
慣れ親しんだ形となって右手に収まった。
なのは達も予想通りの結末で終わったようだ。

「それじゃ今朝はここまで、いったん集合しよ。」
「アルファ、サディスト設定でここからあそこの5人を狙うなんてどうだろう?」

なのはの言葉にふっと頭をよぎった提案をアルファにしてみた。
バトー博士の言葉を信じるなら、サディスト設定である限り死なないようだし、
たいした怪我にもならないそうだ。
油断しすぎの彼らにちょっとした教育というものをしてあげる。
実にいい考えに思えた。

「マスターが言うところの『面倒』が増えると考えられるためお勧めしかねます。」
「そうか。ならばやめておこう。しかし、いつまでこんな退屈な日が続くんだろうな。」
「分かりません。マスター。また、スバルの装備ローラーブーツが大破したようです。
同時に、なのはが実戦用新デバイスに切り替えかとスターズおよびライトニングへ
告げています。」

淡々としたアルファの言葉を聞きながら、足早になのは達のところへ歩を進める。
大破。
ろくに揺れ動かなくなりつつある心をひどく郷愁的にする懐かしい言葉だ。
数えることもできないくらい幾度と戦車のCユニットに表示されては、
機械油塗れになって付き合ってきた言葉だ。
破損も大破も無縁にしてくれたバトー博士に感謝したい。
特にそれがアルファの身体であるだけに・・・・・・。
さて、大破した以上、機動六課としても自作させるなんてことはせず、
デバイスとして新たに作り直すだろう。
しかし、スバルの性格じゃバトー博士のトモダチになれる可能性は低いだろう。
ティアナならなおさらに。
案外、エリオとキャロは普通にトモダチになりそうだ。
あの世界に言葉の意味が分からないくらいの幼子が溢れていたなら、
バトー博士はトモダチに囲まれることができたのかもしれない。
未練がましくて、今更で、絶対にありえない想像をして思わず笑っていた。
そもそもあの世界に弱者たる子供が溢れられるはずがないだろうに。


「どうして女はシャワーを長々と浴びていられるんだろうな?どう思う?」
「そ、それは・・・・・・その・・・・・・・いろいろ・・・・・・あるんじゃないでしょうか。はんたさん。」
「例えば?」
「そ、それは・・・・・・・。」
「冗談だよ。エリオ。ペット君もキャロ達に告げ口しないでくれよ。」
「キュクルルルゥ。」

早々にシャワーを終えた僕とはんたさんがロビーで時間が過ぎるのを待ち続ける。
僕が『みんなまだかな』と無意識に呟きかけたとき、
不意にはんたさんからそんな声をかけられた。
僕にしてみれば降って湧いたような問いかけに慌てるしかできない。
冗談だと言ってくれたけれど、かけらも変わらない表情に本当に冗談なのか聞きたくなる。
藪蛇になりそうで躊躇われるのだけど。
フリードにまで釘を刺しているところを見ると、
僕の退屈な様子に気を使ってくれたのかもしれない。
そうだ。
今まで聞きたかったことをこの機会に聞いておこう。

「そういえばはんたさん。いつも僕達の訓練の間、なにをしているんですか?」
「ドラム缶を押してるのさ。」
「ドラム缶?」
「そう、ドラム缶。」
「お、押す?」
「押すんだ。」
「どうして?」
「どうしてドラム缶を押すのか?という意味か?
それともどうして訓練に参加しないかという意味か?」
「その両方です。」
「訓練が訓練にならなくなるから。」
「それはいったい・・・・・・。」
「エリオ達ー!!お待たせー!!」

スバルさんの声に一番聞きたかった部分が聞けずじまいだった。
『どうしてもっと遅く来てくれないんだ』と思わず言いかけて気がついた。
最初と考えが逆になってるよ、僕。


「うわぁ・・・・・・これが・・・・・・。」
「あたし達の・・・・・・新デバイス・・・・・・・?」
「そうでーす。設計主任、私。協力、なのはさん、フェイトさん、レイジングハート
およびリイン曹長、それと本当にちょっとだけバトー博士。」

物凄く感動したような、驚いたようなスバルとティアナに私がそんな声をかけてあげる。
文句なしにバトー博士は天才だけど、さすがにあれは渡せないもんねぇ。
そんなことを考えていた傍らでエリオ君とキャロちゃんが疑問を口にする。

「ストラーダとケリュケイオンは変化なしかな?」
「うん・・・・・・そうなのかな・・・・・・。」
「違いまーす!!変化なしは外見だけですよ。」
「リインさん。」
「はいですー。」
「2人はちゃんとしたデバイスの使用経験がなかったですからー、
感触になれてもらうために基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです。」
「あ・・・・・・あれで最低限・・・・・・?」
「本当に?」

ああ、リイン曹長。
お願いだから本当のことを話せない雰囲気にしないで。
誰かとこのやるせない思いを共有したいのに・・・・・・。
そんな私の思いも知らず、リイン曹長が言葉を続ける。

「みんなが扱うことになる4機は、六課の前線メンバーとメカニックスタッフが技術と
経験の粋を集めて完成させた最新型。部隊の目的に合わせて、そしてエリオやキャロ、
スバルにティア。個性に合わせて作られた文句なしに最高の機体です。
この子達はみんなまだ生まれたばかりですが、いろんな人の思いや願いが込められてて、
いっぱい時間をかけてやっと完成したです。ただの道具や武器と思わないで大切に、でも性能の限界まで思いっきり全開で使ってあげて欲しいですー。」
「うん。この子たちはね。きっとそれを望んでいるから・・・・・・。」

そんな言葉を口にできた私、よくがんばったわ。
でも、どうしよう。
こんな雰囲気じゃ絶対に言えないよー。
山のように酷いスラングを絶叫するけど重量と魔力効率が同じで2倍強の性能のものを
バトー博士がたった2時間程度で作りかけていたなんて・・・・・・。
メカニックスタッフ全員が卒倒しかけたし・・・・・・。
どんな干渉をしているのかスラングを言わないようにすると性能ガタ落ちするし!!
構造理解がメカニックスタッフ全員で考えても1割さえ理解できなかったし!!
ふと、思い出したように周囲を見回してエリオ君が口を開いた。

「あれ?はんたさんは?」
「彼のデバイスはかなり特殊だから、バトー博士が付きっ切りで説明しているとこよ。
物凄く物凄く本当に物凄く難しくて聞いても絶対にわからないから、絶対に絶対に絶対に
ぜっっっっっっっったいにバトー博士の研究室に行って説明してもらおうなんて
考えちゃだめよ。わかった?わかったよね?わかったはずよね?エ・リ・オ・く・ん。」
「は、はい・・・・・・。」

よし。
これだけ念入りに釘をさしておけば大丈夫だろう。
バトー博士の説明を聞いたらこの子達卒倒しちゃうんじゃないかしら?

「ごめんごめん、お待たせー。」
「なのはさん。」
「ナイスタイミングです。ちょうどこれから機能説明をしようかと。」

本当にナイスタイミングです、なのはさん。
あなたは女神です。
みんなから問い詰められていたら私は耐え切れずに真実を話してしまうところでした。


一方その頃、バトー博士デバイス研究室と掲げられた部屋ではバトー博士の説明が
はんたに向けて行われている真っ最中。

「・・・・・・(中略:専門用語とその100倍以上のスラングが5分間飛び交ってます)・・・・・・
ということでオナニーを覚えたサルみたいにガチャコンガチャコンヤりまくって
いくらでも激しいプレイをしてくれていいというファッキンシットなゴキブリ専用の
クソッタレスペシャルダッチワイフデバイスから、アルチュウでヤクチュウのホーリー
シットでクサレビッチなアルティメットクソッタレスペシャルダッチワイフデバイスに
パワーアップしたんだ。少し早口だったかもしれないけどこんなに簡単にしたんだもの。
ゴキブチは当然分かったよね?」
「わからない。」
「ゴキブリーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!
やっぱりゴキブリは貧弱で脆弱でウジが湧いたクソッタレ脳味噌だよね。
まったく、3日はかかる説明をこんなに簡単にしてあげたのにわからないなんてさ。
でも大丈夫。なんたってボク達トモダチじゃないか。
例え何回わからないなんて言ったってゴキブリが理解できるまで
絶対に見捨てずにゴキブリの足りない脳味噌でもちゃんと理解しきるまで
ちゃんと説明してあげるからね。それじゃ貧弱で脆弱な脳味噌のタンショーで
ソーローでマザーファッカーなゴキブリでもわかるくらい簡単に1つ1つ説明するよ、
1.今までの機能はそのまま。
2.サポートデバイスというアルチュウでヤクチュウでクレイジーな仕様が追加。
3.ゴキブリが覚えているアルチュウでヤクチュウでデンジャラスな道具に変形可能。
4.宣言すれば変形してくれるけど相変わらず変形に4秒もかかる。
5.手榴弾なんかに変形して放り投げちゃったら拾いにいかないといけないマヌケ仕様。
6.錠剤にして飲んだらハラワタをえぐりだして取り出さないといけないマゾヒスト仕様。
7.大きさそのままだけどちょっぴり太ちゃって重さはたったの320kg。
8.お飾りに近かったバリアジャケットとかいうボロキレ装着機能を正式搭載。
9.それに伴い、ゴキブリらしい飛びっぷりに磨きが掛かるその場で羽ばたき機能搭載。
10.ゴキブリに理解できない空の飛び方は地面を這いずり回る感じで大丈夫な親切設計。
11.ボクの設計した不思議魔方陣MK.Ⅱでゴキブリ飛行+ヤクチュウを完全補助。
12.ボロキレにゴキブリのダッチワイフとおそろいの触覚をつけてあげた超気配り設計。
13.それに伴ってレーダーレンジ拡大など諸々のクソッタレ追加の親切設計。
14.ゴキブリが大好きなムチャに耐えうる虫の薄羽根ゴキブリボロキレ緑色仕様。
15.ゴキブリ以外に使ったら簡単にくたばっちゃう超絶ジャンキー設定。
16.ボロキレは『アルファ、セットアップ』というつまらない掛け声で展開。
17.今日のおやつはプリンが食べたい。
どうだい。言い足りない部分が物凄く物凄くものすっっっっっっっっごく
たくさんあるけど貧弱で脆弱でウジが湧いた脳味噌のマザーファッカーなゴキブリでも
分かるようにここまで簡単にしてみたんだ。これだけ簡単にしたんだもの。
今度こそ分かったよね?ねぇ、ゴキブリ?」
「わかった。」

そう答えたとき、機動六課施設内に耳障りなまでの音が鳴り響く。
ディスプレイが赤くそまってALERTと表示されている。
無意識のうちに口の端がつりあがりはじめていた。


「機動六課フォワード部隊出動!!」
「それでどこまで壊していいんだ、八神はやて隊長どの?」

説明を終えた八神はやて部隊長に『はい』っと威勢よく答えた僕達の横から
そんなはんたさんの通信が入った。
はんたさんの言葉の意味がわからない。

「リニアレール自体、レールが無ければ止まらざるを得ない。
ポイントを選んでぶち壊せば強制的に足は止められる。
動けなくなったリニアを蜂の巣にすればいい。
わざわざ敵が密集しているとわかる場所に突っ込む必要もないだろう。」

言われてみて気がついた。たしかにはんたさんが言っている通りだ。
どこにも矛盾らしいものもないし、足場の制限を強く受ける僕達フォワード4人には
非常に魅力的な作戦に聞こえる。
こんな見方もあったんだ。
すぐにこんなことを考えられるはんたさんはすごい。

「せやな。けどな、壊したら金がかかるちゅうことを忘れんといてな。
リニア本体よりも運行が潰れるレールのほうが高くつくんよ。わかってもらえるな?」
「ああ、実にとってもわかりやすい俺好みの親しみ馴れた答えをありがとう。
なのは、ヘリに直接向かう。そっちで合流する。」

お金か。
たしかにリニアを止めちゃうと物凄い金額の請求書が来るっていうけど。
もしもレールを壊しちゃったらどこ宛に請求書が来るんだろう?
そんなことを考えながら、ヘリに向かって走りだしたなのはさん達の後ろを
ストラーダを手にしながら僕も駆け始めた。


「おっかなびっくりじゃなくて思いっきりやってみよう。」
「「「「はい!!」」」」

ヘリの中、なのはとリインフォース(でよかったか?紹介受けた記憶がない。)が
フォワード4人にアドバイスと激励をしている。
思ったよりも緊張していないところをみると案外・・・・・・って、
キャロがガチガチに緊張しているじゃないか。
ペットにまで心配されるほどに。
4人の中で一番マシなのだからドンと構えておけばいいだろうに。

「大丈夫?」
「ごめんなさい。大丈夫。」

そんな返事を返すキャロの口はこれ以上に無いほどに引き攣っている。
ティアナも手元のデバイスを見つめたまま動かない。
スバルも同様だ。
他人に気を使う余裕があるエリオはやはり伸びるな。
そういえば、このデバイスを渡されてぶっつけ本番になるのか。
それなら緊張するのも仕方ないで済ませたい。
だが、緊張を仕方ないで済ませられないのが実戦で、親しみなれた殺し合いだ。
到着するまでにどうにかなるかエリオがどうにかしてくれることを願っておくとしよう。
さて、この後を考えるとしよう。
まず、大前提として陸戦魔導師とかいうのはウイングロードのような
足場作りをしない限り、ろくに空が飛べないらしい。
その上で行うことができるひよっこ作戦の内容とすれば
4人がリニアに取り付いて前と後ろか外からと中で制圧といったところか。
モンスターも賞金首も空を飛ぶ増援を確実に入れてくる場面。
増援がきたらそっちの迎撃になのはとフェイトと間に合えばはやても追われるだろう。
帰りの足であるこのヘリは戦闘に参加できないと考えられる。
そうなると俺の役目は・・・・・・。

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最終更新:2008年01月20日 09:56