それは…忌まわしき、闇の書事件から1年後の冬の話
時空管理局…それは、様々な時空間で起こる犯罪を防止し、また起こしたものを見つけ出し逮捕することが仕事である。
そこでは時空間におけるありとあらゆるトラブルを見つけ出すことが可能とされている。
「あーあー、なんで新入りの私たちが留守番で、なのはたちが休暇なんだよ」
ヴィーダは足を机にのせて、管制塔の窓から外を見ている。
「仕方ないでしょ。あなた達のせいでずっとあの二人は働きづめだったんだから」
エィミィは文句を言っているヴィータにきたいして強くいってきかす。
それでもヴィータは文句をいい続けている。
他のシグナムやザフィーラたちは、今は他の業務にへと当たっていた。仕事に慣れるにはいいことだろう。
これは、早く仲間として打ち解けあうようにと考えた、はやてからの提案である。
突然、管内に音が鳴り響く。
「わぁ!!」
その音に思わず、イスから転げ落ちるヴィータ。
「なにがおきたの!?」
エィミィが画面を見る。そこには考えられない次元の乱れが生じている。
「なんなの?これ…」
一方その頃…。
「なのはは今年の冬はどうするの?」
「うーん。クリスマスパーティーが家のと管理局のでかぶっちゃってるんだよね」
寒い風が吹く夜の街を、フェイト・T・ハラオウンと高町なのはが歩いている。
学校と魔法世界での二重生活を始めてもうすぐ、二年がたとうとしていた。
まるで夢のような出来事が、ずっと続いている。
魔法を使えるようになり、そして恐ろしい怪物と戦って、フェイトちゃんや、はやてちゃんとであった…。
いろんな人に出会い、様々な経験をした。
今日も何事もなく時間だけがすぎていく。世界は平和に満ちている。
あたりはクリスマスの色に包まれていた。街路樹に光がともり、サンタさんが風船を配っている。
フェイトは、そんな町の風景が気になるのだろうか、目を輝かしている。
それもそうだろう。
まだフェイトちゃんにとってはすべてが目新しいはずだ。
今まで彼女の母親がフェイトちゃんを統制していたのだから。
「フェイトちゃん、ひとつもらっていこっか?」
「え…」
自分の珍しい視線が見られていたことを知って、恥ずかしさに頬を染めるフェイト。
だがそのフェイトの手をひいて、なのはは駆け出していた。
「あんな、かわいい子が…強力な力を持つ魔法少女ねー。人は見た目に寄らないもの…か」
白髪で狐目の鋭い瞳をした小柄な男子が二人の後ろを見ながら唱える。
その格好はどこにでもいる普通の学生のようだ。
彼が片手に持つ一つの本。
それは『蠅の王』である。
「人間って言うのは、自分達の世界だけじゃ飽きたりない傲慢な生き物だよね。まったく」
その少年は邪悪に満ちた笑みを浮かべ、頭上を見上げる。
…その黒い夜の闇の中。
月の輝きの隣に赤く禍々しい色をした星がそこにあることを誰も知らない。
「祭の邪魔は誰にもさせないよ…」
最終更新:2008年01月27日 18:08