ここは街のとあるドーム。普段はここで野球の試合やイベントが開催されたりしている。
「俺は絶対に頂点に君臨してやるんだ!」
茶髪の男が大きな声で叫び、力強く手摺りを殴り付ける。
「うおああああああああああああッッ!!」
そして大声で咆哮した。
彼の名前は小林義雄。ラビットオルフェノクとして覚醒し、ラッキークローバーに入るチャンスを手に入れた男だ。
コツッ コツッ コツッ コツッ
そんな義雄の耳に聞こえてくる足音。
「(なんだ!?)」
義雄は足音の方向を見る。
そこに立っていたのは以前戦った事がある、黒いライダー。
漆黒のボディに黄色いダブルストリームが印象的なライダー、カイザだ。
義雄はカイザを見るなりすぐに右手をパチンッ!と鳴らし、ラビットオルフェノクに変身。
カイザのベルトを奪えば、ラッキークローバーに入れる確率が上がるかもしれない。
すぐにカイザへと走っていくラビット。
この時、カイザは自分の右足に『カイザポインター』をセットしていたが、ラビットはそれを特に気にしなかった。
「(俺は……なんとしても頂点に立たなくちゃいけないんだ!)」
ラビットはカイザに攻撃を仕掛けるが、カイザには当たらない。
「…………!」
それどころかカイザは黙って何発もラビットを殴り付ける。
「うわッ……!」
反動で吹っ飛ぶ。だが、何としても負けたくない。絶対に……
ラビットはもう一度カイザに突進するが……
「せやッ!!」
カイザに攻撃が届く事は無く、右足で腹部に重たい蹴りを入れられる。
「ぐ……」
蹴りの重みに悶えるラビット。しかし、カイザがオルフェノク相手に容赦するはずが無い。
『Exceed Charge(エクシードチャージ)』
次の瞬間、カイザの右足から放たれた光弾を零距離で受けたラビットは
そのまま数メートル飛ばされ、さらに全身に黄色い光が現れる。
「(う、動け無い……!)」
動きを封じられたラビット。
そして目の前には黄色く光り輝く円錐と、飛び上がったカイザの姿。しかも足が光り輝いている。
まずい、殺される。
ラビットが最期に見た物は、自分の体にカイザごと円錐が減り込んでいく姿だった。
こうして、義雄は若くして二度目の人生を終えた。彼は人間を誰一人として殺しはしなかった。
だが、そんな事はカイザの知った事では無い。オルフェノクである事自体が罪なのだ。
義雄の体は、浮かび上がった「Χ(カイ)」の紋章と共に灰化し、消滅していった。
そして彼が願った、「ビッグになりたい」という夢も永遠に叶う事は無くなったのであった……
Extra ACT.02「エゴイスト」
「……兄貴。」
「起きたか、相棒。」
影山瞬は今日も路地裏で目を覚ました。
目の前にいるのはこの世界の誰よりも信用がおける男、矢車想だ。
「悪い夢でも見てたのか、相棒?うなされてたぞ」
「ううん……何でも無いよ、兄貴。」
元気そうに立ち上がる影山。
「……そうか。行くぞ。」
「うん、兄貴!」
「フ……」と笑い歩き始める矢車。影山も嬉しそうに矢車の後をついていく。
草加雅人は今日も店先で愛車、『サイドバッシャー』を洗う事に専念していた。
毎日草加に洗車され、サイドバッシャーもピカピカと美しく輝いている。
「草加さん、ちょっとこっち手伝って貰いたいんだけどいいかな?……たっくんも真理ちゃんもまたどっか行っちゃって……」
そうしていると、店から出てきた啓太郎が困った顔をしながら草加に話し掛けてくる。
「ああ、分かった。これが終わったらすぐ行くよ」
草加は爽やかな笑顔で啓太郎の肩を叩く。
「ありがとう、草加さん!」
「気にする事は無い。……それにしても本当に困った奴だな、乾君は。今度俺から言っておくよ」
草加はそのままニコッと微笑んだ。典型的ないい人の笑いだ。
啓太郎も「助かるよ」などと言いながら笑顔で店へ戻っていく。
「…………。」
そして啓太郎が店に入って見えなくなってから、草加は黙って振り向いた。
「真理が乾と……二人でだとぉ……!?」
さっきまでとは別人のような恐ろしい表情で洗車に使っていたホースを握りしめる。そうすることで水が飛び散る……。
「こうしてショ・ミーンの生活に馴染むというのもいいものだな!」
「あはは……そうだね。」
剣はショ・ミーンと同じ生活をするために、フェイトと一緒に下校していた。
ちなみにもう太陽も落ち始めており、なのは達とはすでに別れた後だ。
しかし……
『ワームの出現を確認しました』
「え!?」
バルディッシュの声に反応するフェイト。またワームが現れたというのだ。
そして地面からサソードゼクターが現れ、剣はそれを掴みとる。
「ワームか……行くぞ!」
「うん!」
二人は同時に走り出す。
「坊ちゃま……」
そんな二人を影から心配そうに見守るじいや。じいやには剣のことで色々と心配な事があったからだ……。
「はぁ!ふん!てやぁっ!」
数分後、海鳴市の公園でサリスを片っ端から斬り付けていくサソード。斬られたワームは爆発してゆく。
一方、この群れのボスである赤いワームの相手はソニックフォーム・フェイトが引き受ける。
『Haken Saber.』
「はぁッ!」
バルディッシュの魔力刃を飛ばし、敵の『キュレックスワーム』にぶつける。
飛ばした魔力刃は全弾命中。のけぞるキュレックスワーム。
「まだまだッ!」
キュレックスワームが怯んだ隙に、姿を消すフェイト。ソニックムーブだ。
「死神様のお通りだぁッ!」
「……!?」
次の瞬間、キュレックスワームの目の前に現れたフェイトは力一杯に光り輝く鎌を振るう。
そしてまた消え、今度はキュレックスワームの背後に現れ、また斬り付ける。
一瞬現れ、夕闇に輝くバルディッシュが黒い死神を彷彿とさせる。
フェイトはあらゆる角度からワームを斬りまくる。斬って斬って斬りまくる!
「これで……!」
そしてフェイトは距離をとり、左手を構えた。これで最期にするつもりだ。
しかし……
「や、止めてくれ!」
「……え!?」
キュレックスワームは人間の姿に戻り、命乞いを始めたのだ。フェイトもとバルディッシュを降ろしかけるが……
「騙されるな、フェ・イート!!」
「……!?」
サリスを斬りながら叫ぶサソード。にしても、また変な呼び方しやがって……
「そいつらは殺した人間の記憶を利用するんだ!その命乞いもタチの悪い演技に過ぎん!」
「……そんな!?」
驚くフェイト。しかし、油断した隙に既にキュレックスワームはフェイトに接近していた。
「……な!」
「そうさ。俺達ワームに殺された人間は永遠に俺達の中で生き続けるんだ。」
フェイトの首をつかむキュレックスワーム。ワームは演技でフェイトを油断させ、その隙にトドメを刺すつもりだったらしい。
「……な!?」
「死ねぇ……!」
フェイトの首を掴む手に力を入れるキュレックスワーム。
「許さ……ない」
「……何!?」
しかし次の瞬間、キュレックスワームの手の力が弱まる。怒りの篭った目でワームを睨むフェイト。
キュレックスワームの腹にバルディッシュ・ザンバーの刃が突き刺さっているのだ。
そして手が離されると、もう一度距離をとり、バルディッシュはカートリッジを3発ロード。
『Trident Smasher.』
「トライデントスマッシャー!」
フェイトの左手から現れた魔法陣から三本の閃光が放たれ、キュレックスワームを飲み込んだ。
「(死んだ人は、帰ってこないんだよ……)」
爆発した緑の炎を眺めながら、フェイトは悲しげな表情をする。
「って、あれ……剣……?」
そしてフェイトは周囲を見回すが、既にサソードの姿は無かった。先に帰ったのだろうか。
「……帰ろうか、バルディッシュ」
『Yes,Sir』
人通りの少ない夜道を、サイドバッシャーが駆け抜ける。乗っているのは言うまでもない、雅人だ。
「…………!?」
するとサイドバッシャーの目の前に突然白い怪人が現れる。
「……オルフェノクか。」
サイドバッシャーを止め、ヘルメットを外す雅人。相手は白い体に、サソリのような姿をしている。
配色はオルフェノクに似ているが……?
『Standing by(スタンディングバイ)』
「変身。」
雅人は携帯型変身ツール『カイザフォン』をカイザドライバーに差し込み、押し倒す。
『Complete(コンプリート)』
雅人が両手を広げると同時にベルトから全身に黄色のフォトンストリームが伸びる。
『Ready』
そして次にカイザブレイガンにミッションメモリーをスロットイン。ブレイガンから黄色く輝くフォトンの刃が現れる。
「お前……オルフェノクか?」
攻撃する前に相手に確認するカイザ。もちろん返事が返ってくる事は無いが……
「ま、どうでもいいか……ッ!」
一気に接近、相手を斬り付けるカイザ。だが並のオルフェノクとは違うらしく、あまり効いていないようだ。
この相手の名前はスコルピオワームというが、カイザにとってはどうでもいい。どうせ倒すのだから。
そしてスコルピオワームを斬りまくるカイザ。
「これで終わりにしてやるよ」
言いながらスコルピオワームに向けたブレイガンのレバーを引く。
「……ッ!?」
しかし、ロックオンする前にカイザの手に何かがぶつかり、ロックオンは失敗。さらにワームには逃げられてしまう。
「……誰かな?」
怒りの込もった声で振り向くカイザ。そこにいるのはホームレスのような姿をした二人。
二人のうち、髪の毛が長い方の男-影山-が一歩前に出る。
「ねぇ兄貴……あいつは俺にやらせてよ」
「…………。」
黙って影山を見る矢車。
「何だかわかんないけど、あいつは俺が倒さなくちゃならない気がするんだ……」
「……いいだろう。笑って貰おうぜ?」
「ああ、兄貴……!」
笑いながら言う矢車。影山はホッパーゼクターを持ってゆっくりとカイザに接近。
「変身……。」
『Change PunchHopper(チェンジ、パンチホッパー)』
影山はパンチホッパーに変身完了し、大きな溜め息をつく。
一方カイザも溜め息をつきながら自分の首を触る。
「キミ……何のつもりかな?」
「ムカつくんだよ……」
「はぁ?」
訳もわからずに首をかしげるカイザ。一方パンチホッパーは既にカイザに向かって走り出していた。
「おりゃあッ!!」
「……ッ!」
パンチホッパーの重たいパンチをブレイガンで受けるカイザ。ちなみに既にミッションメモリーは抜いている。
「クソ……!」
カイザはすぐにパンチホッパーの手を払い、ブレイガンのレバーを引く。
『Burst Mode(バーストモード)』
「チッ……!」
近距離でブレイガンから放たれた光弾に命中し、ガードの姿勢をとりながら後退していくパンチホッパー。
見た所パンチホッパーは接近戦重視のライダーだ。ならば近付けさせなければいい。
『Burst Mode(バーストモード)』
今度はカイザフォンを外し、コード「1→0→6→Enter」を入力。ブレイガンとフォンブラスターを構え、交互に撃ちまくる。
「う……ぐ……!」
それなりの威力を誇るカイザの銃撃に防戦一方となるパンチホッパー。
カイザは連射しながらゆっくりと接近してくる。
しかし……
カチッ カチッ
「チッ……弾切れか」
ブレイガンもカイザフォンも総弾数は12発。さらにバーストモードのカイザフォンが一発で発射する
弾数は3発。つまり、カイザフォンの方は4回発射すれば弾切れを起こす事になる。
「今だ……!」
『Ready』
これを好機とみたパンチホッパーは一気に走り出し、カイザとの距離をつめる。
カイザの方はそれに対抗する為、再びミッションメモリーをスロットイン。ブレイガンをブレードモードにする。
「うおおおおッ!!」
カイザに殴り掛かるパンチホッパー。カイザはパンチホッパーの左フックをブレイガンで受けるが……
「(な……軽い!?)」
予想していた程の威力が無い。
「……まさか!」
次の瞬間、カイザは顔面に凄まじい威力の右ストレートを受けていた。左はフェイントだったということだ。
「クソ……!」
よろよろと立ち上がるカイザ。一発のパンチが重い。あまり受け続ける訳には行かない。
「……はぁっ!」
再びブレイガンを構え、パンチホッパーに振り下ろす。
「……ぐぁッ!」
パンチホッパーの左肩に振り降ろされたブレイガン。カイザはやったかと思ったが……
「おおりゃああああッ!!」
「ぐぁ……!?」
その状態のままカイザの頭と腹にパンチホッパーのパンチが直撃する。
腹の方は空いた左腕で少しはクリーンヒットを避ける事ができたが、顔面に入ったパンチは相当な威力だ。
「(コイツ……戦い方が目茶苦茶だ……!)」
カイザは今までこんな相手と戦った事が無かった。自分のダメージを気にせずに攻撃を続けるとは。
影山もザビー時代は正統派ボクシングスタイルで戦っていたが、今は違う。力任せに殴りつける。殴って殴って殴りまくる。
それがパンチホッパーの戦い方だ。
カイザはミッションメモリーを抜き、ブレイガンを腰に戻す。こいつ相手にブレイガンは役に立たない。かえって邪魔だ。
カイザもアウトボクシングスタイルをとり、パンチホッパーに接近、そのままパンチを放つ。
雅人は大学ではボクシングの部を任された事もあった。それなりの自信はある。
「おりゃあッ!!」
「……フン!」
パンチホッパーはまた力強く右ストレートを放つが、カイザはそれを受け流し、カウンターを入れる。
「クッ……!」
負けじと再びパンチを放つホッパー。
二人はしばらく殴り合う。お互いにパンチが入ったり弾かれたりと、一歩も引かない。
「楽しそうだな……相棒」
矢車もパンチホッパーを見て「フ……」と笑いながら言う。この笑いにどんな意味が込められているかは不明だが……
「(そろそろか……)」
カイザは最後にパンチホッパーのパンチを受け流し、距離を取る。そして腰から取り出したのはカイザポインターだ。
『Ready』
そしてそれを右足にセットする。
「(そうだ……アレだ!あの黄色いキック!)」
パンチホッパーもカイザポインターの意味に気付き、一気にカイザへと走り出す。
「せやぁッ!」
『Exceed Charge(エクシードチャージ)』
パンチホッパーは自らカイザの蹴りを受け、カイザポインターから発射された光弾に拘束される。
「はあぁッ!!」
飛び上がるカイザ。パンチホッパーの目の前に現れた円錐。黄色く輝くカイザの両足。
「うおおおおおおおッ!!」
パンチホッパーは全力で右腕の拘束を解き放ち、赤く輝くパンチを円錐に撃ち込む。
「……何!?」
「うおおおおッッ!!」
そしてカイザは円錐の中に入り、両足でのゴルドスマッシュとパンチホッパーの赤く輝く右ストレートがぶつかり合う。
凄まじい衝撃だ。周囲も赤と黄色の光に照らされる。そして……
「「うわぁッ……!!」」
二人はお互いに吹っ飛び、地面に転がる。
「大丈夫か、相棒?」
「うん。これで……決める!」
『Rider Jump(ライダージャンプ)』
ゼクターレバーを倒し、飛び上がるパンチホッパー。矢車も最初は少しだけ心配した顔をするが、すぐに元の表情に戻る。
「チッ……!」
『Ready』
飛び上がるパンチホッパーを見たカイザは、対抗するために今度は右手にカイザショットを装着する。
『Rider Punch(ライダーパンチ)』
『Exceed Charge(エクシードチャージ)』
パンチホッパーは再びゼクターレバーを押し倒し、カイザはカイザフォンのEnterボタンを押す。
そしてパンチホッパーの右腕は再び赤く光り輝き、カイザはベルトからフォトンストリームを通してカイザショットへと光を送る。
「うおおおおおおッ!!」
「せやぁッ!!!」
ぶつかり合うライダーパンチとグランインパクト。再び凄まじい衝撃がお互いの体を走る。
しかし、仮面の下で笑ったのはカイザの方だった。僅かにこちらが押している。
そして、カイザの思惑通りパンチホッパーは押し返されてしまう。
……はずだった。
「何ッ!?」
パンチホッパーはカイザと拳をぶつけ合ったままもう一度飛び上がったのだ。
そして右腕に装備されたアンカージャッキがガシャンと音をたてて作動。
「落ぉおおおちろおおおおッッ!!!」
次の瞬間、パンチホッパーは何発ものライダーパンチをカイザに打ち込んだ。
カイザは一回のエクシードチャージにつき一発のグランインパクトしか打てない。
対してパンチホッパーのライダーパンチは一回タキオン粒子をチャージすれば
アンカージャッキの効果により何発もライダーパンチが打てるのだ。
「うわぁああああああああッッ!!」
大きな声と共に吹っ飛んだカイザは、近くの壁にたたき付けられ、地面に落下。
同時に腹に巻いたカイザドライバーも外れ、強制的に変身は解除される。
「クッ……貴様……!」
地面を這いつくばり、悔しそうな目でパンチホッパーを睨む雅人。
パンチホッパーは「はぁはぁ」と息を切らしながらも雅人を見下ろし、同時にホッパーゼクターがベルトから離れる。
「相棒……やっぱりお前は最高だ……」
「兄貴こそ……」
そう言い、矢車は息を切らした影山に肩を貸し、歩き始める。
雅人はなんとかカイザのベルトを掴み、ボロボロになりながらも二人を睨む。
だが二人がこちらに振り向く事は無く、そのまま黙って夜の闇に消えていった……。
最終更新:2007年08月14日 11:44