不意に声を掛けられ、後ろを振り向くと二人の青年が立っていた。
「あなた達誰? 普通声掛ける時自分の名前を名乗らなくて?」
「あぁ、ごめん僕は結城蛍、それで彼が僕の友人の沢木直保」
「どうも」
「私はアリサ・バニングスよ、よろしく」
「私は、月村すずか、よろしくお願いします」
「ねぇ、君達も樹先生の所に行くなら僕達と一緒に行かない」
蛍が切り出す。
「あなた達、樹さんの研究室の場所知ってるの」
「えぇ、さっき先輩から近道を教えてもらってね」アリサは少し思案し、この提案を了承した。
暫くして、近道である林道へ着いた。
「け・・・蛍」
「ん?」
「そっち行くの?」
「うん、ここが抜け道だからね」
「なんかさ・・・菌共が、わんさかいるみたいなんだけど」
「えっ?」
アリサが突然驚いた声を出した。
「いや、何でもな・・・」
「あなたも、菌が見えるの!?」
「えっ?」
今度は沢木が驚いた。
まさか自分と同じ能力を持っている人物が目の前にいるのである。
「もしかしてお前も?」
まさかまさかのそのまさかである。
その事に付いて来れないすずかと蛍はもはや蚊帳の外である。
「先行ってみる?」
蛍が驚きあってる二人に質問した。
「えぇ、行きましょ 普通の所よりは多いけど、大した量じゃないし」
「沢木は?」
「あぁ、別にいいぜ」
そして、彼女達は林を抜け、ちょっとした広場に出た。
Σ(゚д゚)
沢木とアリサは上のようになった。
「どうしたの?沢木、アリサちゃん」
「いや・・・なんか菌がわんさかわいてるんだけど」
それにアリサが相槌をうつ。
「そうそう・・・何て言うか、菌柱?」
菌が見えないすずかや蛍にとって彼女達がどんな風に見えているか想像し難い。
「すずか・・・大体広場の中央辺りなんだけど、どうなってる?」
「どうなってるって言っても土だよ、何か埋まってる感じかな」
「1.5mから2m位って所か人間と同じ大きさ位?」
沢木の言ったふと言った一言が全員に共通の考えを持たせた。
「「「「人間?」」」」

「ほら、部外者はどいて」
警察の人たちが、立ち入り禁止のテープを張り、辺りは騒然としていた。
この事を大学に報告したアリサ達は、入学初日で一躍失踪事件のど真ん中に踊り出たのである。
「えッ、菌がどうしたってェ?」
「いぇ・・・だから、その」
「彼女、鼻が良いんです だから、変な臭いがするから来てみたらあんなのが有って」
すずかが言葉に詰るアリサに助け舟を出した。
「サンキュー すずか」
一応警察に聞かれない様にすずかに礼を言った。
「そこは立ち入り禁止ですからやめて下さい」
振り向くと、スコップを持ち白衣を着た老人がいた。
「あ、チワっス 樹先生」学生の誰かが言ったあった。
樹は、徐に持っていたスコップを地面に突き刺した。
「あッ コラ、現場を荒らしちゃいかん」
捜査員が焦って止めようとする。しかし、樹は動じない。
掘り起こした所から、様々な菌が吹き出す。
「・・・くさっ!!」
「何? この臭い?!」
アリサは、強烈な臭いに鼻を覆った。
「君達この臭いが何か分かるかな?」
「何って、死臭じゃないんですか」
臭いと菌で答えることが出来ないアリサに変わって、すずかが答えた。
「残念だな 君達も乳酸発酵臭と腐敗臭の違いが分からんのか」
「これ、唯のアザラシの死体じゃないスか 発酵って事は、食い物?」
「如何にも これはキビヤックって言ってね、カナディアンイヌイットの発酵食品なんだ
これは、アザラシの中に海鳥を7~80羽を入れ土の中に2、3年発酵させるんだ まぁ、日本なら半年で出来るけどね」
ここから、樹のキビヤックの歴史を語るが、メモ帳関係上省略させていただく。
「沢木惣右衛門直保君、アリサ・バニングス君 樹慶蔵です」
「沢木君の御祖父さんとは知り合って20年位になるかな アリサ君のお父上から話を聞いてるよ」
「あー先生 何であたしを待たずにキビヤック掘ったんです?」
後ろから、声がした。
「あっ、長谷川君おかえり 出掛けたら連絡つかないからさ、勝手に掘たよ」
何と言うかボンデージの様な服を着た彼女こそ警察が探していた長谷川遥である。
「まァでもゴメンね 丁度君が戻ってくれて良かった 例の子がここに居るし研究室に戻ろうか」
「あっ、あのー」
すずかが勇気を出して遥に声を掛けた。
「なに?」
「警察の方があなたのこと探してるんですけどー」
「あァ・・・うちの親過保護だから ここ来るついでに、寄ってきたから大丈夫よ」
「は、はァ」
「ほら、早く来なさい 置いて行くわよ」

こうして、怒涛の入学式を終え
アリサ達の大学生活が始まったのである。
次回に続くのか?

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最終更新:2008年02月08日 20:18