デジモン・ザ・リリカルS&Fsideofspirit 第一話
「光、導く者。」
そこはキャロが降り立った場所より海を挟んだもう一つの大陸。そこには多数のデジモンが暮らしていた。そして、その中にデジモンまた違う生命、そう人間の男が一人紛れ込んでいた。
その男の風貌はボロボロの茶色のマントにボサボサの髪という感じで顔は一見女のようにも見える。しかし、周りとは違うものがあった。それはその身の周りに纏う凄まじき覇気、そしてその手にある白と紺の《ディースキャナ》であった。

「時は満ちたか…」

その男ユーノ・スクライアはそう呟き、その場を後にした。

「ハァッ、ハァッ」

同時刻、エリオ・モンディアルは、深き谷の底にいた。
何故ここに彼がいるのか、理由は簡単だ。キャロと一緒に飛ばされた時、彼だけがこの場所に降り立ったのだ。何かから導かれるように。
そして、仲間を探す為に散策をしていた。しかし10歳の少年にはこの道はさすがに厳しく、既に息は上がっていた。

「さすがにキツイなぁでも、朝練に比べたら!」

そう言って先に進もうとする。ふと、ストラーダを見る。するとどうだろう、ストラーダは赤き光を放ち、赤と黒のディースキャナとなったのだ。
「な、ストラーダが…どうなってるんだろう」

エリオは疑問に思いながらも、先を急いだ。しかし、エリオは気付かなかった、自らを狙う影に。

「キシャアァ!お前かぁ、人間!俺様の縄張りを荒らす奴はぁ!」
「な、誰ですか!」

そこには、赤き色の体をもつクワガタデジモン、クワガーモンの姿があった。

「お前なんだなぁ!死ねぇ!」
「な、クッ、セット!」

そう言ってセットアップしようとするエリオ。そこで気付く、今、ストラーダは使えないことを。となれば取る選択は一つ、全力疾走での逃亡である。
犬死にと勇敢さは違うことをエリオはこの一年で学んだのだから。

「待てぇ、逃がすかぁ!」

そう言って物凄いスピードで追いかけてくるクワガーモン。
エリオは、必死に逃げるが一向に差が開く気配がない。それどころか、差は段々縮まっていくばかりである。
必死に逃げるエリオをクワガーモンはまるで楽しむように追いかけていた。
しかし、その先に出口はなく、行き止まりであった。そして、エリオはとうとう追い詰められてしまった。

「もう、逃げられないぞぉ~、大人しく死ねぇ!」
そう言い迫るクワガーモン。

(キャロ、フェイトさん、ごめんなさい。)

しかしその鋏がエリオに届くことはなかった。

「ハアァァッ!」
「グハァッ!」

叫びと共に煙が舞いそれが晴れると、そこにはマントを纏った一人の男がいた。そして、その前には地面に頭を突っ込んだクワガーモンの姿が、それにそこには靴の跡。どうやら、このマントの男がクワガーモンに飛び蹴りをくらわせ、地面に突っ込ませたのだろう。
「逃げるぞ!エリオ」

そう言うと男はエリオを抱き抱え、数十メートルはある崖を駆け上がっていった。

「こいつはオマケだ!」
そう言って青いボールをクワガーモンへと投げた。そして、突然、破裂したかと思うと目映い光を放った。閃光弾である。

「効果は薄いけど、逃げるには充分だ」
「あの、あなたは?」
「後で話すよ」

そう言うとエリオを抱えたまま信じられない速度で走り続けた。そして十数キロはある荒野を抜けた先にある、洞窟に足を止めた。(この間僅か三十分)

「ここで休もう。ここなら安全だ」
「あの助けてもらってありがとうございます!」
「いいよ気にしないで同じ世界の人間だしね」
「えっどういうことですか?」

エリオがそう聞くと、男はフードを脱いだ。

「どうして、僕の名前を」
「いつもフェイトやなのはから聴いてるよ」「じゃあフェイトさんとお知り会い何ですか」
「十年程かな」
「あ、あと名前。名前を教えてください」
「僕は、ユーノ・スクライア。時空管理局無限書庫司書長さ」
「ユーノさん?最初に失踪した!?」
「その通り、どうやら僕が最初らしいね僕が此処に来たのは半年前さ」

それを聞いてエリオは驚いた。なんたって失踪事件が始まったのは1ヶ月前なのだ。

「待ってください、失踪してまだ1ヶ月しか経っていませんよ。」「やはり、そうか」
「やはり、て、知ってたんですか」
「ああ。僕が初めてここに来て、疲労で倒れたんだ。その時、救ってくれた、デジモンが言ったんだ。『この世界とリアルワールドには歪みが生じているそのせいで時間の流れが向こうの六分の一の割合になり、擦れてしまった』とね」
「だから、ここでの半年はミッドチルダでの1ヶ月という訳なんですね!」
「そう言う訳だけど、どうやら、これ以上悠長に話している時間はないらしい、来たぞ!走れ!」

ユーノはそう言うと洞窟をエリオと共に急いで脱出した。
二人が出た瞬間、洞窟は崩れ去った。そして、その場には二人を追ってきた、クワガーモンの姿があった。

「もう逃がさねぇぞ!死ね!」
「仕方ない、エリオは下がってて。戦いは避けたかったけど今は戦うしかないから。」
「人間ごときがぁ!」「人間ごときの底力見せてあげるよ。」

そう言ったユーノの右手にはディースキャナが握られ、左手には、《デジコード》が集まっていた。そして、デジコードをディースキャナに滑らすようにスキャンさせた。
「スピリット・エボリューション!」
途端にユーノは光に包まれた。
古代十闘士において、光を司るエンシェントガルルモンの力を受け継ぎし光のヒューマンスピリット、それがユーノの持つ力!

『ヴォルフモン!』

それはまさしく狼のような姿であった。

「さあ、来るなら来い!」
「ハッタリに決まってる!シザーアームズ!」

そう言うと強靭な鋏でヴォルフモンを鋏みきろうとした。すると、ヴォルフモンは二本ある光の剣『リヒト・シュベーアト』を二本共抜くと軽々と受け止めたのだ。

「この程度か…」

そう言い、左手を構えた。そして、光のエネルギーが集まると放った。

「リヒト・クーゲル」
放たれた光の弾はクワガーモンに直撃し、吹き飛ばした。

「グゥッ、まだ」
「これで終わらせる。リヒト・ズィーガー」
その声と共に光の剣を振るい、クワガーモンを真っ二つにした。
するとどうだろう、クワガーモンは光に包まれ、大量のデジコードとデジタマと変わった。そして、ディースキャナを向け、言葉を紡ぎながらスキャンした。

「闇にうごめく魂を、聖なる光で浄化する!」

するとデジコードは光と共に広がっていった。

「浄化完了!これでよし。じゃあ行こうかエリオ」
「行くってどこへ?」
「君専用のスピリット《火のスピリット》の所にね」
君は選ばれし者の一人。このデジタルワールドとリアルワールドを救う力がある、どうするかは君しだいだ」
「僕の力で何かが救えるんだったら、行きます!」
「分かった。行こう!火のスピリットの待つ『炎の街』へ!」


次回
デジモン・ザ・リリカルS&Fsideofspirit 第二話
「炎の闘士」
お楽しみに。

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最終更新:2008年02月08日 21:02