デジモン・ザ・リリカルS&F
第二話
「少女と龍」

キャロとアグモン、フリードは、ジャングルの中を歩いていた。一番近い街でも十数キロ先という場所に何故いるかというとそこしか、街に行く道はなかっただけであった。

「ハァハァ疲れたね」
「オイラもキツイよ、姉御ぉ」
「もう少し、頑張ろう。日が暮れるまでにジャングルを抜けなきゃ」

とは言ったものの、たかだか、10歳の少女の体力である。既に限界は越えている。それに食料などもなく、三日間飲まず食わずだったのだ。数百メートルいくと倒れてしまった。
「姉御!」

アグモンはそう言うとキャロに駆けよった。フリードも心配そうにキャロを見つめる。アグモンが額に触れると呟いた。

「凄い熱だ、どうしよう…、近くに街はないし…」
「キュウゥ~!」
「え、なになに、『近くに洞窟がある』だって!でかした、フリード!」

そう言うとアグモンはキャロをおぶって、その洞窟へと歩いていった。数十メートル行くと、そこには、フリードの言った通り、洞窟があった。アグモンは恐る恐る中に入っていった。
そこは、誰か住んでいるようで、洞窟の壁には服と見れるものがあり、また大量の果物やキノコなどが置いてあり床にはベッドのような物があった。
その脇には、良くは見えないが写真があった。とにかく、キャロを寝かせようと思った時、後ろから声が響いた。

「あなた達は、だ~れ?」
「誰だろうね?」

振り向くとそこには赤い龍型デジモンと幼い少女がいた。
少女はライトブラウンの髪にリボンを二つ結び、その右目は翡翠のごとく輝く緑、左目は夕暮れのごとく透き通った真紅の瞳を持っており、体には質素なワンピース風の服を纏っていた。

「え~っと、オイラはアグモン。」
「フ~ン、アグモンかぁ!私は高町ヴィヴィオ!で、この子がお友達のギルちゃん!」
「僕、ギルモン!よろしくぅ」
「ねぇねぇ、どうして、こんな所にいるの?」
「街まで行こうと旅をしていたら姉御が熱を出して、倒れたから運び込んだだけなんだ。」
「姉御ってだぁれ?」
「オイラを庇ってくれたりする心の強い人でオイラの自慢の姉御、キャロ・ル・ルシエってんだ」
「キャロお姉ちゃん!?本当なの。」
「当たり前だよ!此処に居るじゃないか」


それから一時間してキャロは目を覚ました。
「姉御!しっかりして姉御!!」
「う、う~ん…。アグモン?それにフリード?そっか私、倒れちゃったんだ」
「良かったぁ!あ、そうだ姉御、これ着替え!姉御の服は今、洗ってるんだ」

言われて見ると確かに今まで着ていた服はなく、半裸だった。

「え、あ、ありがとう!」

そう言うとキャロは渡された服を着た。どうやらそれは男物を仕立て直した物らしく少し大きめだったが何とか着ることが出来た。

「姉御、似合ってるよ!」
「そ、そうかな?」

その格好はTシャツの様な上着と短いスカートを履きマントを纏うというものだった。

「お兄ちゃんの服似合ってるね!」
「嘘!?ヴィヴィオちゃん!?」
「うん、そうだよ!」
「良かったぁ、無事だったんだ~。ところでさっきから言ってるお兄ちゃんって?」
「えっとねぇ、ヴィヴィオとずっと暮らしてたの。で、今は南の方にお出かけしてるの」
「お兄ちゃんの名前は?」
「イクトって言うんだよ。野口イクト!」
「ヴィヴィオ~洗濯終わったよ~。今持ってくねぇ」
「分かったぁ。ありがとうギルちゃん!」
「ギルちゃん?」
「ギルモンって言うデジモンらしいですよ、姉御!」
「持って来たよぉ。とっ、とっ、とっ、うわっ」

洗濯物をばら蒔いてしまったギルモン。その中にはキャロの下着もあった為、さすがにキャロも慌てて片付けた。
アグモンはヴィヴィオと話をしていた。

「へぇ~、その写真の人はヴィヴィオのお母さんなんだ」
「うん、とっても大好きなんだ」
母親のことを思い出し少し落ち込んでしまいアグモンは狼狽えた。
「ゴメンね。気に触ること言ったかなぁ」
「ううん、大丈夫!今は、ギルちゃんも居るし寂しくないよ!」

そう言って笑うヴィヴィオ。アグモンにはそれが悲しげに見えたという。

「そう言えば、ギルモンのことあんまり聞いてないなぁ」

「じゃあ、教えてあげる」

ヴィヴィオは語り始めた、初めてギルモンとあった時のことを。
それは、嵐の晩のことだった。ヴィヴィオは、いつものように夕食をとり、眠りに就こうとした時だった。
外で、ドサッ、という物音がした。そして、ヴィヴィオが外に出てみるとそこには赤い騎士の様な影が見え、近づいて見るとそこには赤き龍が倒れていた。

「それが、ギルちゃんだったって訳なの」
「フ~ン。そんなふうに出会ったんだぁ!」「あ、そういえばギルちゃんとあった時、こんな声が聞こえたんだよ!『我が友のことを頼むぞ、幼き少女よ。我は影から見守って行こう。』て言う声がした後、白い鎧っていうのかな、左手が剣の人影が見えたんだ。」

そんなふうに喋っていたその時、茂みから唸り声が響いた。

「ウオォォ!」

そして茂みから出て来たのは、トータモンであった。

「力を試すには丁度いい。お前ら、死ねぇ!」
「ヴィヴィオちゃん下がって、ベビーバースト」

アグモンはベビーバーストを放つが全く効かなかった。

「堅い…、どうしよう。」

「待ってて、今、進化させ…」
「無茶だ!今の姉御じゃあチャージは出来ないよ」
「死ぬ覚悟は出来たなぁ。し、グオッ!」
「ヴィヴィオに手を出すなぁ!ファイアボール!」

トータモンがヴィヴィオを襲おうとした時、ギルモンが乱入し火球を放ち牽制した。

「えぇい邪魔だぁ!シェルファランクス!」
そう言うと甲羅のトゲが一斉に飛び、ギルモンを吹き飛ばした。

「ギルちゃん!」
「大丈夫だよぉ」
「私、私ギルちゃんの力になる!」

そう言ったヴィヴィオの周りを眩いほどの白銀のデジソウルが覆いい、その右手には、瞳の色と同じ、透き通った赤と緑のデジヴァイスicが握られていたのだ。

「ギルちゃんに力を!デジソウル、チャージ!」

その眩き銀のデジソウルはギルモンへと降り注いだ。

『ギルモン進化ぁ!グラウモン!』

そこには真紅の魔龍、グラウモンの姿があった。

「ヴィヴィオに指一本触れさせない!」
「ふざけるな!シェルファランクス!」

しかし、今度はシェルファランクスは届くことはなかった。

「プラズマブレイドォ!」
「な、なにぃ!?」

全てのトゲを真っ二つに斬られてしまったのだ。

「これで終わりだぁ!エキゾーストフレイムゥ!」

そう言って爆音と共にトータモンへと強力な火炎を放った。

「力を手に入れたばっかりなのにぃ…」

そう言い残しトータモンはデジタマへと戻ったのであった。

「ギルちゃん、凄い!」
「えへへ、褒められたぁ」

そう言いながらじゃれあう一人と一匹。
キャロは何かを決心したようにアグモンの方を向いた。

「決めた。ヴィヴィオちゃんを連れて行こう!」
「えぇ~!本当!」
「本当!」
「やったぁ!」

「大丈夫、姉御ぉ?」
「な、何とかなるよ」

前途多難な旅路に不安がる二人を見つめる影が二つ。

「やっぱり、ダメダメだな。私がしっかりしないと。な、ガオモン」
「イエス、マスター」

次回
デジモン・ザ・リリカルS&F
第三話
「疾風と鉄槌」

お楽しみに!

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最終更新:2008年02月08日 22:22