妄想戦士リリカル・ヤマモト 第三話「萌えっ娘のためならば……捨ててくれようこの命!!」
先日の八神家の面々との接触を経て山本一行は事件への介入を控えるようになった。
別に遠慮してるとかではなく、ただ単に萌える対象を愛でる変態的な理由からだがアースラスタッフには喜ばしい事だった。
そして彼らは今海鳴で有名な喫茶店、翠屋に来ていた。
もちろんコーヒーやスイーツを楽しむ為ではない。
「うっひょおおおお!!! 見ろあのめがねっ娘を!! なんという萌えっぷり!! ドジっ娘要素を持った天然系で声が白石涼○なんて素晴らしすぎじゃあああああ!!!」
喫茶店にあるまじき奇声を上げて狂喜乱舞するのはめがねっ娘教団教祖である南雲鏡二。
そして、そんな彼に
その他の変態達も雄叫びを上げる。
「うむ! 正にめがねを掛ける為に生まれたような逸材だ!! 100モエー(萌えの単位)は軽く超えるな!!」
「あんまり声を出すんじゃねえ! フィギュアの原型が上手く作れねえだろうが!!」
山本と渡辺が南雲に応えるように吼える、その3人と席を同じくする松下は涙を流しながら嘆いていた。
「なんで俺まで、付き合わされてんだよ…」
嘆く松下をよそに変態萌え集団3人はウェイトレスのめがねっ娘でなのはの姉である美由希に生あったか~い視線と奇声を送り続ける。
「萌えるめがねっ娘のウェイトレスさん! めがねコーヒー御代わり!!」
「フィギュアの原型作るから、1ミリも動くんじゃねえ!!」
「とにかく萌える恥じらいとセリフ追加あああああ!!!!」
3人の凄まじい迫力に美由希は涙目になって怯えまくる。
無理もない、彼女は生まれてこの方、こんな変態的で萌え至上主義の珍生物を見たことは無いのだから。
「なんかこの人達こわいよ~!」
数分後、山本達が翠屋から追い出された事は説明するまでもない。
ちなみに松下は店長の高町夫妻にひたすら頭を下げて、常識人故の苦悩を味わった。
「さてこれからどうする?」
「もちろん素晴らしいめがねっ娘を探すのですよ、山本殿」
「フィギュアの原型にふさわしい女を見つける」
「黙って帰るって話は無いんかい!!!!」
もちろんだが松下の意見は全力で無視されて、山本一行は海鳴萌えっ娘探索へと移る。
ただの散歩と言う事なかれ、山本の萌えセンサー(原理不明、まあ鬼太郎の妖怪アンテナみたいなもんである)を頼りにしての探索であるが故に彼らは正確に萌えへと向かうのだ。
「むう!! 萌えセンサーが急反応しているぞ、これは良い萌えがあるな。では行くぞ者共!!!」
そしてセンサーが急激に反応、山本に引き連れられた一行は二人の少女に出会う。
美しい金髪に気の強そうなハーフの少女、そして軽くウェーブのかかった黒髪の少女である。
二人の少女は正に美少女といって差し支えない逸材であり、これに反応しない山本一行ではない。
「おおっ! 正にこの金髪っ娘はツンデレだな!! 二人合わせて240モエー!!!」
「めがねの似合いそうなお淑やか系のお嬢さんだ~♪ さあめがねを掛けなさい!!」
「今からフィギュアの原型つくるぞ! 一歩も動くな! 息もするな!!」
周囲の冷ややかな視線も何のその、山本・南雲・渡辺は一瞬で不審者街道まっしぐらな発言をぶちかます。
もちろんだが松下が涙を流しながら制止しようとムダに突っ込んだりもしたがそれは何の意味も無かったりした。
「ひいっ!! 何、この人達っ!?」
「ア、アリサちゃん…何か恐いよぉ」
「すずか、眼を合わせちゃダメよ……こういうのはいつ襲ってくるか分からないんだから」
二人の少女の名はアリサとすずかは山本達の異様な様に今まで感じた事のない恐怖を感じて震える。
その様子に常識人松下はさっそく助け舟を出す。
「ああ、もう! 恐がってるだろうが、これくらいにして帰るぞ!!」
「うっせええぞ松下あぁっ! 貧弱な坊やは黙ってな!!」
いつもの珍騒動を繰り広げる山本達、そんな時突如として周囲の空間が異様な沈黙を呈して人影か消える。
突然の事に驚く山本一行にアリサとすずか。
「ア、アリサちゃん…」
「な、何なのこれ?」
「これはまさか、結界?」
周囲の急変に思わず声を漏ら松下、そんな時彼らに聞き慣れた声がかけられた。
「そこの人…って! や、山本さん!?」
「おう、なのは。こんな所でどうした? また魔法少女の仕事か?」
「何なのは? この変態達と知り合いなの? っていうか何よ魔法少女って?」
「えっと…それは説明すると長くなるんだけど……ってもう追いつかれた!!」
なのはは後ろを振り返り、後方の敵を見据える。
そこには黒い羽根を持った銀髪紅眼の女性が宙を飛んでこちらに接近していた。
「なんだ? あのいかにも神話系なファンタジック美少女は!?」
「おお! 縁無しめがねが似合いそうですな!」
「っていうかフィギュア作らせろ!!」
お構い無しでいつもの変態発言をぶちかます山本一行、だがその女性は唐突に攻撃魔法を放ってきた。
「ブラッディダガー」
短い呪文と共に赤い魔力の剣が飛来する、その衝撃に爆音と煙が立ち込める。
だが煙が晴れて姿を現したのはボロボロの松下を掲げた山本の姿であった。
「“松下シールド”……役に立ったぜ松下、お前の死はムダにはしねえぜ」
「ま…まだ死んでない…」
あろう事か山本は近くにいた松下を盾にして攻撃を防いだのだ、正に悪魔の如き所業である。
「おい、なのはよアイツはなんだ?」
「えっと…闇の書っていう魔道書なんですけど、はやてちゃんって女の子と融合して…」
「はやて? 八神はやてって子か?」
「はい、そうです……知ってるんですか?」
なのはの質問に答える間もなく、山本は次の瞬間には闇の書の意思の下に跳躍した。
ちなみに20メートルくらいの高さがあったがこの男に常識は通用しない。
「こんのバカたれがあああ!!!」
「ぐわああ!」
そしてあろう事かぶん殴った、闇の書の意思を、グーパンチで。
恐らくは闇の書にこんな事をしたのは後にも先にもこの男だけであろう、常識で測れない妄想戦士それが山本一番星である。
「き、貴様…何をする…」
「“何をする”じゃねえええ!!!」
「はぐうう!!」
間髪入れずに2発目のグーパンチが唸りを上げて闇の書の意思に決まる、ちなみに瞬間的に張られえていた防御障壁は無理矢理ぶち抜いた。
殴られた闇の書の意思は鼻血までだして涙目になる、っていうか殴られたのなんて初めてだ。
「に、二度も殴ったな……主にも殴られたことないのに…」
「じゃかしいわいボケナス!! あの関西弁系、病弱属性な萌えっ娘を踏み台にして登場するなんてけしからん奴にはこれでもまだ足りねえっつうの!!!」
「訳の分からん事を!!」
さしもの闇の書も、この山本の理不尽っぷりに怒りを感じたのか表情を歪めて怒気を放つ。
そして山本の周囲に無数の雷撃の刃が出現する、それはフェイトの使う魔法フォトンランサーを蒐集したデータから応用したフォトンランサー・ジェノサイドシフトである。
即座に放たれた攻撃に爆炎が上がり、一寸の逃げ場もない攻撃を受けて山本が地に落ちた。
「山本さん!」
落下する山本になのはは悲鳴を上げる、だが彼女の心配は」杞憂に終わる。
「渡辺ブーメラン!!」
技名の雄叫びと共に渡辺がブーメランの如く旋回して山本をキャッチした、着地した山本は服こそ汚れていたが大事は無いようだった(あの攻撃で煤だけで済むところは異常だが)。
「大丈夫か?」
「ああ、大したことねえぜ」
渡辺の言葉にそう答えながら山本は上空の闇の書の意思を睨み付ける。
「おい闇の書とやら!!」
「お前もその名前で私を呼ぶのか?」
「それじゃあお前の名前はジョセフィーヌ! 設定年齢19歳の堕天使見習いでちょっぴりシャイな無表情系キャラだ!!」
「なっ……なんだその名前は!? 勝手に付けるな!!」
「俺の脳内設定だ! 文句あっか!?」
「あるに決まってるだろうが!」
「まあ、それは置いといてだ。早くはやてを解放しな、じゃないとかなり切ない目に合うぜ?」
「それは出来ない、私には主の願いを叶えなければならない…」
「暴れるのがはやての望みかよ? なら力ずくで止めさせてもらうぜ」
「……お前は何故戦うのだ? 魔道師でもないお前に勝ち目は無いぞ?」
憂いと悲しみに満ちた瞳で山本を見つめる闇の書の意思、覆しがたい戦力差だが山本は不敵な笑みを見せる。
「ふっ……俺を誰だと思ってやがる!! 萌えの申し子、山本一番星!! 萌えっ娘を守るためならば命なんぞいくらでも捨ててやるぜ!!!!」
こうして妄想戦士達と闇の書との壮絶な戦いが始まった。
続く。
最終更新:2008年02月13日 19:27