第八話「第二ラウンド」
12月12日 1916時
時空管理局医療ブロック
蒐集されたことでリンカーコアに悪影響が出てないか調べる為の検査も
異常がなければ今日で最後となるはずだ。他にもエイミィさんがカートリッジの適性検査とか
魔力の限界圧縮率検査とか云々言っていたが何の事なのかよく分からなかったので
とりあえず黙って受けることにした。
「体は健康そのもの、リンカーコアも異常なし。これで通院も終了だね。」
担当医がカルテを見ながら満足そうに頷き、目の前のなのはに言った。
「ありがとうございました。」
「まあ、『闇の書』の蒐集行為は過去にも何度かあったから
医療データだけはたくさんあるんだよね。」
「そうなんですか。」
「ああ、前回は11年前だったかな。あの時も多くの人が運ばれてきたよ。
『闇の書』は厳重に封印されてここに護送される予定だったんだけど途中事故がおきてね。
L級巡航艦が轟沈したよ。タカ派の連中が騒いで当時はすごくもめたものさ。
自分達に一任させていればこういう事態は起きなかったって・・・
そういえば、そのとき沈んだ船の艦長は、今回の捜査の指揮を取ってるリンディ提督の旦那さんだったな。」
「え?」
なのはは耳を疑う。クロノ君もリンディさんもそんなこと一言も言ってくれなかった。
「あれ、もしかして知らなかった?あちゃー、僕から聞いたってのは内緒にしてくれよ?」
担当医は額に手を当て、やってしまったという感じに首を振った。
どうやら聞いてはいけない類の話だったようだ。
まずいことを話したと思ったらしく担当医の口数は明らかに減り、検査はそのまま終了し
なのはは医務室から出る。部屋の前で待っていたフェイト達が診察結果を聞いてくる。
「なのは、結果はどうだった?」
「うん、ばっちりだよ。健康そのものだって」
「レイジングハートとバルディッシュの修理もちょうど終わったところだよ。」
自分たちの変わりに傷ついた相棒の修理も終了したとのことだ。
これでなぜあの人達が『闇の書』の完成を目指すのかを確かめることが出来る。
クロノ君は動機は後で取り調べればいいと思っているようだが自分にとってそれは重要なことだ。
「じゃあ、帰ろうか」
ユーノ君がそう言ってみんなで転送ポート向かう。
本局から海鳴までおよそ1時間といった所である中継ポートを
複数回乗り継ぎようやく到着する距離である。
それなら支部を作ればいいのにと思ったりもするが管理局の陸上部隊との
予算ぶん取り合戦でなかなか実現できないそうだ。
さらに言えば次元航行部隊は巡航艦など専門性の強い装備を使っているので
これらを扱える人材を育成するのも大変なお金と時間がかかるのだ。
それからしばらくして最後の中継ポートに乗り継ごうとしたときエイミィさんから通信が入った。
「みんな、今どこ!?」
「最後の中継ポートですけど、どうしたんですか?」
「武装隊が守護騎士二名を発見したんだよ!今、12人がかりで包囲してる。
クロノ君がもうすぐ向かってるけど、残り2人の騎士と『闇の書』の主のことを
考えるとどうなるか分からないんだ。
4人は、そのまま海鳴の現場に向かって!」
遂に来た。このときの為になのはとフェイトは魔法の訓練を自らに課してきた。
今回は戦っても負けない。
なのは、フェイト、ユーノ、アルフは転送先を変え中継ポートに乗る。
早ければ10分後に現場に到着するはずだ。
同日 1920時
海鳴市 市街地上空
「君達は包囲されている。おとなしく武装を解除して投降せよ。
投降した場合、君達には弁護の機会が与えられる。」
いつものお約束の言葉である。
包囲している武装隊員は12人、これからもっと増える可能性もある。
「ザフィーラ・・・」
「心得ている」
どうやらザフィーラも同じことを考えてたらしい。
お互いに背中を預け、戦闘態勢に入る
だがヴィータ達が仕掛けるために踏み出そうとしたとき、武装隊員は急に散開しだした。
「なんだ?」
その行動を不審に思い警戒を強めるが、奴らは何かしてくるわけでもなかった
「ヴィータ!上だ!」
ザフィーラの声と共に上を見上げると黒衣の執務官が百を超える魔力刃を発現させている
離れたのはこのためか、武装隊員12人程度では自分達の相手には役者不足だ。
12人は足止めが目的で、執務官の到着を待っていた。そんなとこだろう
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」
宣言と共に大量の青白い刃がヴィータとザフィーラに殺到する
ザフィーラはヴィータを庇うとようにバリアを展開するが、いくらかは貫通しザフィーラたちを襲った。
「ザフィーラ!?」
「大丈夫だ。この程度でどうにかなるほど軟ではない」
「へ、上等!」
幾分かのダメージはあるようだが、ザフィーラの言葉に少し安心した
この守護獣は基本的に正直者だ。どんなにやばいときでも顔色一つ変えずに淡々と事実のみを言うのだ
「どうやら他の連中は、結界に集中するみたいだな。
あの執務官は相当信頼されてるらしいな」
集団戦法に優れたミッドチルダ式で個人戦を最も得意とするベルカ式に挑むとは腕に自信のある証拠だ
だが、相手がこちらの流儀にあわせてくれるならやり易い
1対1でベルカの騎士に負けはないと自負している
「ザフィーラは手を出すんじゃねーぞ」
「それはいいが、新手だ」
馬鹿でかい魔力反応が転移してくるのを感じ、その方向に目を向けると見知った連中がビルの屋上にいた。
一人は亜麻色の髪の少女、紅い宝玉を握り締めまっすぐこちらを見ている
一人は金髪赤眼の少女、ザフィーラと同じような使い魔を従えている
「あいつらは・・・!」
同日 1926時
海鳴市 強装型捕縛結界外
「ヴィータ達はあの中か」
包囲された直後ザフィーラがすぐに思念通話でそのことを伝えてきた
管理局武装隊の強装型捕縛結界・・・・外6人、内6人で結界の維持を行っているのか
『行動を!』
自らの半身とも言うべき相棒が行動を促す
外にいる連中を倒し結界破壊を優先すべきか、それとも結界内に入りヴィータ達の援護に回るべきか
『私の主ならあらゆる困難を食い破ってくれるものと信じています』
そう付け加える炎の魔剣はどうやら先日着け損ねたテスタロッサとの決着をつけたいようだ。
「そうだな。お前の期待に応えるとするか」
『Ja(承知)!』
レヴァンティンから薬莢が排出され、圧縮された魔力が炎に変換される
シグナムはそのまま加速し強装結界に己の魔力を衝突させた。
上空の騎士達を見つめるなのはとフェイト
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
「「セットアップ!!」」
その言葉と共に巻き起こる桜色と金色の魔力
だが、何かいつもと違う。それは力強く、活力に満ちていた。
『二人とも、よく聞いて。今日帰ってきてから説明するつもりだったけど
その子たちには新しいシステムが組み込まれてるの』
エイミィさんから通信が入る。今日受けた検査と何か関係があるのだろうか?
「新しいシステム?」
『その子達が望んだの。主である貴女たちを守る為に・・・・
ベルカ式カートリッジ・システムの搭載を・・・
呼んであげて、レイジングハートとバルディッシュの新しい名前を!』
心に流れ込んでくる新しい名前と守りたいという願い。
その願いは自分のものでもあり、手の中の相棒のものでもあった。
「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディッシュ・アサルト!」
『『System all green, Set Up!』』
魔力が最高潮に高まり、新たな力が起動する。
なのは達は一応武装はしたがこれはあくまで保険に過ぎない
本当の目的はお話を聞いてもらうことだ。
「私達はあなた達と戦いに来たんじゃない」
「『闇の書』の完成を目指す本当の目的を教えて」
「あのさあ、言うと思うのかよ?」
予想はしたことである。もし話し合いの余地があるのなら
最初から問答無用で襲ったりはしないだろう。
「それでも私達は知りたいの」
強固な意志が宿った瞳がヴィータ達を見る
一瞬だけヴィータはたじろいだがすぐにこちらを睨み返した。
「うっせーな、言うわけにはいかねーんだよ
どうしても聞きたいのなら、あたしらを捕まえてからにしな」
そう言って武器を構えるヴィータ
どうやら話し合いの余地はないようだ
「じゃあ、約束だよ。私が勝ったら事情を聞かせてもらうよ」
そういって、なのはは周りの人に念を押すように言う。
「フェイトちゃん、みんな、手を出さないで。私、あの子と1対1だから」
「うん、分かった。それに私も・・・」
フェイトはヴィータやザフィーラがいるより先を見る
突如、凄まじい音と共に何かが落ちてくる。
それはビルの屋上に着地しこちらを見る。
「シグナム・・・」
フェイトはどうやら彼女が来るのは予期していたようだ
この強装型の結界は念話を遮断する能力は備わっていない
包囲された時点で他の騎士たちに連絡が行っていても不思議ではない
そして、フェイトの読みどおりシグナムは現れた。
無言で剣を構えるシグナム、それに呼応するようにヴィータ、なのは、フェイトも構える。
アルフもすでにザフィーラと臨戦態勢に入ってる
「ユーノ、僕と君で結界の外側と内側を調べる」
「残りの騎士と主がいるかもしれないってこと?」
「ああ、主はいないかもしれないが残りの緑の騎士がどこかに隠れているはずだ。
君は結界の内側、僕は外側だ。」
緊張が高まり空間が軋みだす。二人の会話が終了したのと同時に8人は空へと躍り出す。
「約束は守ってもらうよ。私が勝ったら事情を聞かせてもらうから」
「へ、やってみろよ」
『Master. Please call me load cartridge.(カートリッジロードを命じてください)』
レイジングハートが搭載されたばかりのシステムを起動するように言う
なのはも同じ考えだった。
古来より相手が自分より優れた武器を持ったときに行う対抗策は
新たな戦術を作るか、相手と同じ武器を持つかのどちらかだ。
自分達は後者を取った、戦術を作るには時間が足りないし
武装隊の人たちと連携を取る訓練を受けてない自分はただ足手まといになるだけだ
「レイジングハート、カートリッジロード!」
『Yes,load cartridge! Drive ignition!』
カートリッジに圧縮された魔力が解放され、なのはの膨大な魔力がさらに膨れ上がる。
魔力の扱いには慣れていたつもりだがこれはこれで応える。
体中の血管が膨れ上がるような感覚に襲われた
「でも、制御してみせるよ」
前方の見ると赤熱する4つの鉄球が飛んでくる
距離があるので余裕を持って回避することが出来た。
しかし、相手はすでに次の手をうっていた。
相手もカートリッジを使いデバイスを変形させる時間を稼ぐ為の行動だ。
紅い髪の女の子は自分を倒した、あのスパイク付きのロケットハンマーで一撃必殺を狙ってくる
『Protection powered(プロテクションパワード)』
それに反応し、バリアを展開する。
波紋状の光の壁と相手のハンマーが衝突し、辺りに火花を撒き散らす。
今までのバリアならば3秒とたたずに叩き割られただろう
だが―――
「く、かてぇ・・・!」
カートリッジから供給された魔力によってバリアの硬度は今までの比にないほど上がっていた
しかしこのまま攻撃を受けているだけでは勝てない
反撃に移る為、レイジングハートはある魔法を発動させた。
『Barrier Burst(バリアバースト)』
相手のハンマーが接触している所にバリアの光が集まり点滅していき
その間隔が次第に短くなり限界まで点滅した途端バリアが爆発した。
だが、爆発したといってもなのははダメージを受けてはいない
指向性の爆風が攻撃側のみにダメージを与え、相手を吹き飛ばす
それがこのプロテクション・パワードの派生魔法の効果である。
『Let's shoot it, Accel Shooter.(アクセルシューターを撃ってください)』
距離を取り直したところでレイジングハートはもうすでに次の魔法を用意していてくれた
「アクセルシューター、シューート!」
魔力が水増しされたことで弾数は増えるだろうと思っていたが、それでも6発くらいだと思っていた
しかし、発射されたのは予想を大きく上回る12発
制御が行き渡っていないアクセルシューターはそのまま直進していくが
このままだとただの花火になってしまう。
『Control, please.(コントロールをお願いします)』
制御に集中し12個の弾丸がヴィータの周りをぐるぐると飛ぶがひとつも当たらない
相手はそれを見て先ほど飛ばした鉄球をこちらに放ってくる
これほど多くの弾丸を精密にしかも同時制御するのは無理だろうと判断したのだろう。
自分もそう思った、12個同時制御なんて出来ない
『It can be done, as for my master.(出来ます。私のマスターなら)』
その言葉と共にある考えが浮かんだ。
この方法ならできる。なのはは目を閉じ集中する
飛んでくる四つの鉄球を迎撃する為こちらも4つのアクセルシューターに意識を集中する
1・・2・・3・・4!
半年の訓練でシューター系の同時精密制御は4つが限界だった
それはこれから訓練すればもっと数を増やせるのだろうが今はこれが精一杯
しかし4つあれば十分だ。鉄球の迎撃に成功し、今度こそ相手は攻撃手段を失う。
「約束は守ってもらうからね!」
手を振り上げ、12個の弾丸を3つの編隊に分ける。その3つを入れ替わり精密制御していくなのは
編隊Aが攻撃し終わると編隊Bに制御を移し攻撃を始め、それが終わると編隊Cと入れ替わり
A→B→C→Aという感じでローテーション組んで攻撃してゆく。
こうして波状攻撃を加えることで12個の魔力弾をフル活用する
それこそが、なのはが考え出した制御方法だった。
『Panzerhindernis.(パンツァーヒンダーニス)』
ヴィータは12個の弾丸から逃げ切るのは無理だと判断したらしく防御壁を全方位に展開する
だがそれも完璧ではない。アクセルシューターの弾丸が当たるたびに防御壁は削られ、あっちこっちが軋み、ひびが入る。
もちろんぶつかるたびにアクセルシューターのエネルギーも消費されて入るのだが
カートリッジで供給された魔力のおかげでまだ余力がある。
「まだ、私の番は終わってないよ!」
先日の戦いと今日戦ってみて分かったが目の前の紅い娘は手数で勝負するタイプじゃない
最前線に出て防御の上からでも相手を叩き潰す一撃必殺を好むタイプのようである
そうであるならば、こちらにイニシアチブがあるうちに勝負を決めるのが一番だ
『Load cartridge, ”Buster Mode”』
レイジングハートからさらに薬莢が2発排出され、三日月だった形が音叉状に変わる。
体が焼け付くような感覚に襲われるが、それを気合で押さえ込むなのは。
なのはの足元に桜色の魔法陣が現れ周囲の魔力がレイジングハートの先端に集まっていく
アクセルシューターの数が減るが、それでもまだ2編隊ある
「チェックメイトだよ。この距離なら外すほうが難しいよ。」
照準は完璧、この距離で相手が動けないのならば外すことは100%ありえない
「私の勝ちだよね?事情を聞かせてもらえないかな?」
「まだ負けてねえ!鉄槌の騎士ヴィータを舐めんな!」
そうは言ったもののヴィータの顔には焦りの色があった。
なのはが言ったとおり、この状況を打破するのは難しい
下手に動けば砲撃の餌食、かと言ってアクセルシューターで削られた防御壁がいつまで持つか・・・
ヴィータは頭をフル回転させるが考えが纏まらず、相手を睨むことしか出来なかった。
一方、その頃フェイトは剣の騎士との壮絶な打ち合いの最中だった
シグナムの剣戟は長年蓄積され、裏打ちされた実に合理的なものだ。
どう打ち込まれたら相手が嫌がるか、どう相手の攻撃を払ったら次に繋げやすいか
打ち合う度に新しい発見があった。
「やるな、テスタロッサ。打ち合うわずかな一瞬で私の技術を盗んでいるようだな」
「私の手数じゃ、どうやっても貴女に及ばない。ならある所から持ってくるだけです。」
しかし、僅かの一瞬で盗めるほどシグナムの技術は簡単なものではない
「いいセンスだ。」
この少女は大きな器だ。後からどんどん物を継ぎ足せる。
シグナムはしばらくぶりに出会うことができた好敵手を見て
自分が興奮していることに気がつく。
「いい・・・センス?」
「そもそもお前のデバイスは斧型だ。しかし私の技は剣に最適化されている。
お前はそれを斧でも使えるようにとっさにアレンジしている。
・・・まさか無意識でしているのか?」
フェイトが気付いてなかったようだがシグナムはそれを看破した
その言葉にフェイトは一瞬照れてしまったが、すぐに気を取り直し武器を構える。
シグナムもそれに呼応しレヴァンティンを構える
「ハッ!」
気合と共にフェイトはシグナムに突進する
バルディッシュで脳天を狙うが、シグナムはレヴァンティンでそれを弾く。
攻守が入れ替り今度はレヴァンティンが閃き、袈裟切りが放たれる。
「シャッ!」
フェイトはシグナムの斬撃をシールドで受け止め相手の重心をずらそうとする。
「レヴァンティン、カートリッジロード!」
シグナムの魔力が高まり重心がずらされる前にシールドごと叩き斬ろうとする。
フェイトも負けじとバルディッシュのリボルバーからカートリッジを3発ロードさせる。
しかし矛と盾の競争は、えてして矛が有利なのだ
シールドは真っ二つにされ、フェイトは自分の企みが失敗したと判断し、すぐさまシグナムと距離を取る。
「やっぱり、まだ正面から向き合うには足りないかな?」
もう一度距離を取りながらカートリッジを1発消費し魔法を編む
「プラズマランサー、ファイヤ!」
力場に封入された4発のプラズマの弾丸がフェイトの前に出現する
それは高速でシグナムに殺到するが、スピード自慢のシグナムは余裕を持って上に回避する
だが、それは予想していた。自分の本当の目的はシグナムをあの場から動かすこと・・・
「かかった!」
フェイトは手を振ってバルディッシュに命令し、シグナムの剣を受け止めるときに
仕掛けておいた別の魔法を発現させる。
「なに!?」
突如シグナムの周りに現れる魔法陣、それが煌いたと思ったら
足に金色の丸い輪のようなものが絡みつく。
「これは設置型のバインド、いつの間に・・・!?」
すぐさまバインドを破壊しようとしたが、その一瞬で決着は着いた。
「私の勝ちです。投降してください、シグナム」
目の前に戦斧を突きつけ投降を促すフェイト
「3発もカートリッジを使ったわりにシールドが脆かったのはこのためか。
・・・・どうやらお前の策に嵌ったようだな」
「私では技量もパワーも貴女に勝てません。
だから、罠に掛けることにしました」
「久々の強敵に熱くなった私の未熟だな。
・・・いつぞやとは立場が逆になったな、テスタロッサ。それで我々はこれからどうなる?」
そうは言うがシグナムは不敵な面構えをしていた。
地上ではアルフ、ザフィーラがパワー勝負をしている
体格ならザフィーラが、しかし主の魔力量ならばアルフが上である故に
なかなか勝負が着かない。
「オラオラ、いい加減お前らの目的を吐いて楽になっちまいな」
アルフはワンインチパンチを繰り出しながら、悪役のような台詞を言う。
「言うわけがなかろう。管理局が『闇の書』をどういう風に処理してきたか知らんわけでもあるまい。」
ザフィーラが痛いところを突く様に返す。
アルフも聞いたことがある。闇の書が完成すれば手がつけられなくなる
故に被害が拡大する前に魔導砲で吹き飛ばしてしまうのだ。
もちろん主ごと・・・・
「貴様も使い魔なら主がそのような目に遭うことを我慢できるはずがなかろう」
「そうだけどさ、完成する前ならそんなことする必要なんてないんだよ」
「信用・・・・できん!!」
ザフィーラは力を込めアルフの胸倉を掴み全力で投げ飛ばす。
距離が出来たことで結界の外にいるシャマルに思念通話を入れる。
(シャマル、聞こえるか?)
(ザフィーラ?中の様子はどうなってるの?)
(ヴィータは防御壁の中から動けない、シグナムはバインドに捕まって動くことが出来ない
このままでは2人とも管理局に捕まる。)
(そんな・・・・どうにかできないの?)
(俺も相対している相手がいる。どうにかできるのはお前だけだ。
やはり『闇の書』の力の一部を解放して結界を破壊するしかない)
(でも、それじゃあページが・・・・)
(今、使わなかったら『闇の書』の完成自体が不可能だ。)
(・・・わかっ)
突如シャマルからの思念通話が途切れる。
不審がるザフィーラは何度も思念通話を送るが返事はない。
シャマルも見つかってしまったのか?そう思い結界の外の方に目をやるところである事に気がつく
あの臭いがする。
テスタロッサという魔導師の使い魔も臭いを感じ取っているようだが
その臭いが何の臭いかは分かってはいないようだ。
ドンドンドン!
どこからか聞こえる発砲音。ザフィーラは音のする方向に目を向けると
そこには注目を集めるように上空に発砲しているM9の姿があった。
最終更新:2007年08月14日 12:17