爆弾集め
1人の少女が鉄の船を見上げる。
少女というよりは、むしろ幼女と形容した方がしっくり来るような容貌。幼い顔立ちには、それに釣り合わぬ黒い眼帯。
「よし…」
呟くと、戦闘機人ナンバー5・チンクは、飛行要塞アヴァロンへと足を踏み入れた。
かつり、かつりと足音を鳴らし、薄暗い廊下を歩いていく。
これが空を飛ぶ船だと思える人間は、かなり限られてくるだろう。
普通の常識では、飛行可能な乗り物といったら、航空機か飛行船ぐらいしか浮かばない。
しかし、ミッドチルダでは、こういう乗り物が空を飛ぶのが常識なのだ。
そしてこういった形の物は、航空機よりはむしろ艦艇の役割をなす物の方が多い。それも軍用の。
故に、少し離れたスタート地点からこのアヴァロンを認めたチンクは、ここにある施設があると確信し、足を運んだのだ。
(…あった)
そして、お目当ての部屋へとたどり着く。
すなわち、格納庫。
なにもその格納庫自体を探していたわけではない。これが質量兵器を禁止するミッドの船なら、大規模な格納庫はない方が自然だろう。
彼女が探していたのは、つまり工具がある部屋だった。
支給品のデバイスである、レイジングハート・エクセリオン――魔法の心得のないチンクには無用の長物だ――を爆破したことで、
触れた金属を爆弾に変えるIS・ランブルデトネイターが健在であることは確認済だ。
であれば、弾薬を稼いでおくに越したことはない。
スパナやドライバーなどの工具は、投擲武器として扱うには適したサイズだ。
この格納庫は、刃舞う爆撃手にとって、まさにおあつらえ向きの爆薬庫。
(これで武器は調達できる…)
チンクは格納庫へと入り、ひとまず工具箱を探し始めた。
そう。
彼女はこのゲームに乗っている。
名簿に見つけた2人の家族が死なないようにするには、他の
参加者を殺すのが手っ取り早いからだ。
その2人を思い返す。
まず、あの死人兵士――グレイヴは放っておいても平気だろう。彼が負ける姿はまず想像できない。
血液交換が必要になる頃には、近場の敵は粗方掃討しているだろう。
問題はもう1人――ディードの方だ。
このゲームには、高町なのはやフェイト=T=ハラオウンなどの強敵が何人か存在している。
否、ゲームの公平性を保つために、顔も知らぬ無数の参加者達の中にも、彼女らに匹敵する実力者を用意していてもおかしくないだろう。
そしてそれらの強敵達は、ディードの手に負える相手ではない。自分ですら怪しいくらいだ。
故に、自分が助けなければならなかった。
もっとも、ここにいる彼女が自分の世界とは別世界の住人であり、
そしてそのディードが、鬼食らう鬼――復讐を胸に誓う羅刹であることなど、チンクには知る由もないのだが。
「ん…?」
ふと、奥の方に何やら大きな影を見い出す。
近寄ってみると、そこにあったのは、人型の巨大な機動兵器だった。
漆黒の機体に黄金のラインを走らせ、背中には6枚の翼を有している。
さながら神話の魔王のごとき、雄大さと禍々しさ。
ナイトメアフレーム・ガウェイン。
それがこの人形の名前。
(あそこから人が乗る造りになっているのか…)
ハッチの開け放たれた背中を見て、チンクはさぞ残念そうにため息をつく。
ガジェットのように、外部から入力した敵を自動攻撃する機体ならば戦力になったろうが、
操縦の必要があるなら話は別だった。
(あんなデカブツ、いきなりどうやって動かせと言うのだ。私はそんなに器用じゃない。)
しかし、それにしても大きい。
ナイトメアの中でも大型機の部類に入るそれは、身長6メートル級のまさに巨人だ。
ガジェットのⅢ型ですら、こんなに大きくはない。せいぜい背中のコックピットブロックほどのサイズではないか。
そして、その巨体を見たことで、ふと、チンクの中にある1つの想いが芽生える。
「…これ…吹っ飛ばしたら、気持ちいいかな…」
人間誰しも、思いっきり派手に物をぶちまけたいという願望があって然るべきである。
そしてそれは、チンクも例外ではなかったようだ。
これだけ巨大な金属の塊は滅多にない。一体どれほどの爆発を起こせるだろう。
「…はっ、いかんいかん」
しかし、今は緊迫のバトルロワイアルの真っ只中。
そんな私情に気を取られている場合ではない。
というより何だ、このいかにも子供っぽい思考は。私らしくない。
ほんのり顔を赤く染めて首を振ると、チンクは再び工具を漁る作業に戻った。
そして、遡ること数分。
「ほぅ…」
チンクがアヴァロンへ入るのを、目撃していた者がいた。
銀の髪を後ろになでつけ、異様に長い日本刀を腰に差して。
1人の女性を引き連れた男が、その様子を見ていたのだ。
そして今。
半魔の剣士は獲物を求め、鋼鉄の船の中をさ迷っている。
【一日目 現時刻AM2:14】
【C-1 アヴァロン内部】
【チンク@魔法戦屍リリカル・グレイヴ Brother Of Numbers】
[参戦時間軸]第五話中。地上本部襲撃直前。
[状態]健康
[装備]特になし
[道具]支給品一式、ランダム支給品0~2個、無数の工具(具体的な数は続きを書かれる職人様にお任せします)
[思考・状況]
基本 グレイヴとディード以外の参加者を殺す
1.現在地で武器を調達。医療品も手に入れておくべきだろう
2.ディードを捜して合流する
3.あれは是非とも一思いに爆破させてみたかっ…って何を考えているんだ私は…
[備考]
※支給されたレイジングハート・エクセリオン@リリカルなのはStrikerSを爆破しています
【バージル@魔法少女リリカルなのはStrikerS Strikers May Cry】
[状態]健康
[装備]正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
[道具]支給品一式、ランダム支給品0~1個、リインフォース@魔法少女リリカルなのはA's
[思考・状況]
基本 目についた参加者は一人の例外なく殺す、もしくは利用する
1.周辺を警戒しつつ索敵。今のところは派手に動くつもりはない
2.あの小娘(=チンク)を見つけ出して殺す。その後はまたしばらく様子見に戻る
最終更新:2008年02月28日 23:18