魔神が生まれた日
「殺し合いなんて、絶対止めないと・・・・・・!!」
高町なのはは、この殺し合いを止めようとしていた。
時空管理局の局員として一人の人間として、こんな惨劇を許す訳にはいかない。
既に殺し合いをしている人間も、犠牲になった人もいるかもしれない。
いや、既に死んでいるのだ。
天上院明日香という少女と一文字隼人という青年。
少女は十代という男と知り合いだったようだが・・・・・・、あの男は何の感情もなしに殺し、
突然姿を変えた青年も、同じ様に首輪を爆発させて殺した。
「機動六課のみんなも、アーカードさんもいる。
みんな、こんな殺し合いをする様な人たちじゃない。。
早くみんなと合流して、これ以上犠牲がでるのを止めないと!」
そう口には出してみたものの、不安はある。
先ほどいた場所で見た、過去の自分の姿。
それが幻覚でないことは、
参加者名簿が証明していた。
・・・・・・なぜか、高町なのはとフェイト・T・テスタロッサの名前だけが二つある。
あの少女は過去の自分だとでも言うのだろうか?
だが、自分がこんな殺し合いに参加した記憶などあるはずがない。
かつての自分の姿をした少女が誰なのか、そしてその少女はこの殺し合いでどう動くのか。
あの少女が本当に自分自身なら、この殺し合いを止めようとするはずだ。
・・・・・・だが、あの"高町なのは"が主催者の手で用意されたものだったら?
人造魔導師。
プレシア・テスタロッサの手で、フェイト・テスタロッサは誕生した。
それと同じように、高町なのはを基に作られたとしたら?
あの人間とは思えないような瞳を持った男、十代と呼ばれたあの男なら、
その程度の禁忌、平然とやってのけるのではないだろうか。
そして、自分と同じ顔をした少女が暴れ回れば、当然自分は警戒されるだろう。
いや、それどころか高町なのはである事を利用して、油断した機動六課のみんなを・・・・・・、
「ううん、考えすぎだよね。
幾らなんでも、10歳位の私が現れれば警戒するに決まってる。
ここに集められた人の内、6人に1人位は、私の事を知ってるのに。」
ただ、そうなるとあれは誰なのか・・・・・・。
とりあえず、答えが出ない疑問は後回しにして、もう一つの不安について考える。
何故か、この場所では魔法を行使するたびに、強い疲労感があるのだ。
それだけではなく、魔法の効果自体も格段に落ちている。
アクセル・シューターは、全力でも10個程度しか同時に発動できず、
防御魔法の効果は、本来の半分もあるかどうか程度だ。
そして、それが最も激しいのはエリア・サーチだった。
精々、半径50m程度の範囲しか把握する事ができない。
これでは、他の参加者と合流することはかなり難しいだろう。
魔法をサポートしてくれるレイジング・ハートがないとはいえ、
ここまで魔法を使えないはずがない。
「他の人達と、早く合流するには、やっぱりこれを使わなければ駄目なのかな?」
そう言って、取り出した物、それは拡声器であった。
これを使えば、自分の居場所をはっきりと示す事が出来る。
そうして集まった人達と共に、この殺し合いを終わらせる。
だが、当然ながら集まってくる人々が善良だとは限らない。
集まってきた人を殺そうとする者、集団の中に潜伏し、
他人を盾にしながら優勝を狙おうとする者もいるかもしれない。
それでも、合流できるというメリットは大きい。
どんな人物が集まってくるか、警戒は必要だが対処する手段はある。
拡声器と別の支給品、それは魔力を宿す剣だった。
永遠神剣"求め"。
強力な魔力を持つこの剣があれば、近接戦闘がそこまで
優れていない自分でも危険人物でも鎮圧できる。
慎重な彼女がそう思える程の力をそれは持っていた。
そして、剣を片手に拡声器を口に持ってくる。
この殺し合いを終わらせるため、彼女は語り始めた。
「ちくしょう、何が殺し合いだ!
そんな事、俺が絶対に食い止めてやるぜ!」
マサキ=アンドーは、走り続けていた。
こんな殺し合いを許す訳にはいかない。
殺人を犯すものを無力化し、脱出に協力してくれる者を作る。
そのためには、とにかく人の集まる街へと向かうのが一番だ。
そう彼は考えたのだ。
幸い、彼に与えられた支給品はレヴァンティン。
その性能はシグナムとの模擬戦把握しているし、使用に十分なだけの魔力も持っている。
魔装化のためのネックレスが無いのは痛いが、並大抵の相手なら負けはしない。
待機フォルムのそれを握り締め、彼は走り続ける。
────後ろにある町を置き去りにして。
しょうがないのだ。彼の方向音痴は、並大抵の物ではない。
闇夜の中、道も目印も無しに目指した方向に進むのは、確かに難しいかもしれない。
だが彼は、地図とコンパスを持っているにも関わらず目指している町とは逆方向に進んでいた。
目の前に高々と聳える山を、彼はひたすら走り続ける。
「よし、この山を越えれば街か?」
地図を見れば明らかにおかしいと気付きそうなものだが、
実際に見ながら走っているのにこれである。
マップの端まで走り抜きそうな勢いだったが、突如聞こえた声に中断せざるをえなかった。
「あー、あー。聞こえますか?」
「な、何だ!?」
突如聞こえた声、ハウリングが混ざって聞き取りずらいものの、
どうやら、その声は女性のもののようだった。
突然の事態に足を止めた彼は、次の言葉に愕然とする。
「私は、時空管理局機動六課に所属している高町なのはです。
この声が聞こえているみなさん、どうか私の話を聞いてください。」
「な!? 馬鹿野郎! シュウの野郎にやられて、歩けなくなる位の大怪我をしたんだろ!?
そんな状態で、何て無茶をしてるんだよ!?」
高町なのは、その少女をマサキは知っている。
南極でシュウと戦い、そしてその身に重傷を負ったはずだ。
ブラックホールクラスターの直撃を受け、歩く事すらできない程の重体。
そんな状態で、誰かに襲われたら一溜りもない。
早く彼女のところに向かわなければならない。
「レヴァンティン、力を貸してくれ!」
「Jawohl!」
アクセサリから剣へと姿を変え、同時にバリアジャケットを身に纏う。
バリアジャケットの仕様を変更する時間等ないため、
登録されているシグナムのものそのままだ。
彼は飛ぶ。一刻も早く彼女のもとへと向かう為に。
「突然こんな場所で殺し合いをしろなんていわれて、
怯えている方もいると思います。」
「畜生っ、何時もよりスピードが出ねえ!
早くなのはの所に行かなきゃならないってのに!」
飛行魔法を使い、彼は疾走する。
それは、並みの空戦魔導士を遥かに凌駕する速さだったが、
本来のスピードとは程遠かった。
「殺さなければ殺される、そう思っている方もいるかもしれません。
ですが、それで本当に良いのでしょうか!?」
更に、マサキは加速する。
いかにマサキが方向音痴であろうと、声のする方向を目指せば、
高町なのはの元へと辿り着ける。
「私達が互いに信じあい、十代と神崎、あの二人を倒して、
みんなで生きて帰る事だってできるはずです!」
「見えた! よし、他の奴らはまだ来てない!」
ついに、高町なのはの姿を目にする事ができた。
あとは、早くここから離れさせなきゃいけない。
「で、でかい。あんなにでかかったか!?」
その目に移る少女は、どう見ても少女と呼べる背丈ではないのだ。
だが、その姿は間違いなく高町なのはだ。南極では遠目に見ただけだが、それは間違いないはずだ。
そして、考える時間もない。向こうもこちらに気付き、放送をやめ剣を握っている。
───どうするべきか。
慌ててきたため、レヴァンティンを握りっ放しというのがまずかった。
向こうが警戒してるのは、こちらの警戒に気付いたからだろう。
向こうから攻撃してくる様子はない。
とにかく、ここは危険だと伝えなければならない。
「俺はマサキ、マサキ=アンドーだ。管理局でアンノウン01って呼ばれてた奴だ。
大怪我負った状態で無茶しすぎだ! 危険な奴が来る前に、とっととここを離れるぞ!」
早く彼女をつれてここから離れなければいけない、そう判断し、
必要最低限の事を告げ、彼女を抱えて飛んでいくため近づく。
だが、彼女から返ってきたのは意外な言葉だ。
「アンノウン01・・・・・・?
それに私は今、大怪我なんてしていませんよ!?」
叫びながら、彼女は武器を構えバックステップで後方に下がる。
拡声器は地面に落ちた物の、その機能は生きている。
嘘を言っている様な気配はなく、大怪我を負っているとは思えない動きだ。
・・・・・・どういうことなのか。
直接は見ていない物の、ボロボロになって倒れふした姿は見ている。
フェイト達の話だと、そうとう酷い状態のはずだ。
いや、そもそもアンノウン01を知らないという事がありえない?
そんな事を言えば、わざわざ自分はなのはではないと言っているようなもののはずだ。
さっきから、拡声器は全ての言葉を垂れ流している。
(ここには、なのはや自分の事を知ってる人間はかなりいるはずだ。
なのに、知らないと言ったのはなぜだ?)
(・・・・・・分からない。
だが、拡声器から声が流れている以上、急に攻撃してくる事はないはずだ。)
「レヴァンティン、待機状態に戻ってくれ。」
「Jawohl!」
武器を戻し、こちらから攻撃の意思がないことを示す、それが彼の取った行動だった。
バリアジャケットが消え、本来の姿に戻る。
武器を手放した事に相手も驚いたのだろう、目を見開いていた。
だが、少なくとも攻撃してくるようなそぶりは見えない。
「さっきも言ったが、俺はマサキ。
あんたが南極で戦ったシュウって奴を追ってる奴だ。
歩けなくなる程の怪我を負ったって聞いたが・・・・・・、違うのか?」
「・・・・・・確かに大怪我を負った事はありますが、
南極なんて行った事はありませんし、大怪我をしたのは数年前・・・・・・、っ!
まさか、それがあそこにいて、名簿にあるもう一人の高町なのは!?」
途中まで警戒していた様だが、何かに気付いたのか唐突に叫ぶ。
(なる程、確かに名簿には高町なのは、そしてフェイト・T・ハラウオンの名が二つあった。
ただの表記ミスだと思ってたが、こいつは未来の高町なのはだってのか!?
・・・・・・いや、こいつは俺の事を知らないって言ってたし、南極なんて行った事がないとまで断言した。
どういう事だ?)
何がどうなっているのか分からない。
再び、辺りを静寂が満たす。
「ああ、ここにいたんですか、なのはさん。」
それを崩した物、それは一人の乱入者だった。
ばかでかい2丁の拳銃を持った赤髪の少年だ。
・・・・・・だが、その姿を見て彼と断定するのは難しいだろう。
両手はダラリとぶらさがり、本来持っていた活気はまるで見られない。
何より、その目。まさに、どろりと澱んだそれは、死んだような目としか言いようがなかった。
「え、エリオ? 無事だったの!? どこも怪我してない!?」
(知り合い、か? 殺意も無いし、高町なのはの知り合いみたいだ。
やけに元気がないが・・・・・・、この年でこんな事に巻き込まれれば無理も無い、か?)
誰かに襲われたのかもしれないと思ったなのはと、
幼さ故に怯えていると考えたマサキだが、すぐにそうではないと気付かされる。
「えぇ、大丈夫ですよ。なのはさん。
・・・・・・それよりも、はやく戦いましょう?」
相変わらずだらりとした右手を上げ、その銃を構える。
殺気もなく、当然というように構えられたそれは、正確になのはの心臓を狙っていた。
「え、エリオ? 何を言って、「何を言ってやがるんだてめぇ!?
なのはの知り合いなんだろ! 殺し合いをしろと言われたからって、本当に殺すってのか!?
他の知り合いを殺して、自分だけ生き残ろうってのか!? それで良いって本気で思ってるのかよ!」・・・・・・」
突然のエリオの言葉にマサキは叫ぶ。
・・・・・・だが、内心の思いは別だ。
(殺気は無い。第一、殺すんなら俺と喋ってる間に撃てば良かったんだ。
名前も放送で広がっちまった。わざわざ自分が不利になるようなことをして何になるんだ?)
殺気も無しに戦いを申し込み、拡声器を通じて自分が危険人物だと思わせる。
それに何か意味があるのではないか。そう考えた瞬間だった。
「うるさいですよ。僕は、今からなのはさんと戦うんですから。」
────一瞬だった。
予備動作もなく左手が構えられ、そこから放たれた魔力弾は──、
マサキの脇腹を吹き飛ばしていた。
「がっ!?───あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
(いてえいてえいてえいてえいてえいてえっ!?
なん、で、撃てる!?殺気も、なしに、こんな魔力、弾を!?
た、だ、引き金を、引くだけ、じゃ・・・・・・、ないってのに。
なん、で。ちくしょ、ぅ、すまねぇ、りぃ・・・・・・)
視界が消えていく。抉られた箇所からの猛烈な熱さと激痛。
それとは逆に、全身から熱が奪われてゆく。
零れ落ちた血は地面に広がり、彼も倒れ臥す。
なぜこんな事になったのか、それを考える中、彼の意識は消えていった。
「エリオ・・・・・・? 何で・・・・・・、何でこんなことを!? なんでその人を殺したの!?」
死、突然起きたそれをなのはは理解しきれなかった。
確かに既に二人の死を目の当たりにした・・・・・・が、
それは人の死を見ても平然としていたあの十代がやったものだ。
自分の仲間、起動六課のメンバーであり、フェイトの義理の息子、
エリオが平然と人を殺すなど、想定すらしていなかった。
・・・・・・いや、心の奥底では思っていたのかもしれない。
はやてのためにヴォルケンリッターが殺人を犯すのではないか、そんな思いが心の奥底にあった。
しかし、今のエリオが誰かの為に殺しているようには見えない。
なら、ただ生き残りたい為だとてもいうのか。
あの優しいエリオが、自分が優勝を目指すなどと言う事がありえるのか?
「ああ、この人ですか? 大丈夫ですよ、死んでません。
デバイスもデュエルディスクも持ってないし、邪魔でしたから。。
そんなことより、早く戦いましょう? 戦えば、そんな事も気にならなくなりますよ。」
だが、そんな疑問を嘲笑うようにエリオは平然と言ってのけた。
(邪魔ってどういう事? 死んでいない? あれだけの血が流れていて?
・・・・・・死んでないなら、まだ間に合うのなら助けないと!)
とにかく、まずは倒れた青年を救い出そう。
生きていれば、何だってできる。
傷口を止血して、治療の魔法を使えばまだ間に合うのかもしれない。
倒れた男に近づこうと、一歩踏み出した瞬間だった。
「っ!?」
再び、エリオの構えた銃口から弾が放たれる。
足元へと放たれたその牽制により、動きを止めざるをえなかった。
「駄目ですよ、なのはさん・・・・・・。
僕と戦ってくれなきゃぁ。ずっと、ず~っと、戦いたかったんですから。
・・・・・・そっか、僕が弱いから戦っても面白くないですよね。大丈夫、心配いりませんよ。
なのはさんを驚かせる凄い物持ってるんですから。さあ、いきますよ?
────マジンカイザー、セットアップ!!」
首からかけていたキーホルダーから光が溢れ、エリオの姿を変えていく。
作り上げた兜十蔵博士をして、"神をも越えられる悪魔も倒せる"といわしめた力。
究極の魔神がその姿をあらわす。
「いきますよーっ、なのはさん! 僕の攻撃、受けて下さい!!
マジンカイザー、ターボスマッシャーパンチ!」
「なっ!?」
腕のタービンが突如回転を始めた、そう思った次の瞬間、腕が前方へと飛ぶ。
バリアジャケットだけを飛ばしたのだろう、生身の腕がが見える。
だが、そんな事に気を取られている暇などなかった。
前方へと転がり込むなのは。
彼女が居た空間を、二つの魔力弾が襲う。
・・・・・・そう、エリオはヤクト・ミラージュを握ったまま腕を飛ばしていたのだ。
そして、マジンカイザーの武器はまだそれだけではない。
「流石なのはさん、ならこれならどうです!? 光子力ビーム!」
二筋の光線が、目から放たれる。
想定外の攻撃に反応しきれず、体勢を崩したなのはでは避ける事の出来ない必殺の一撃。
だが、なのははそれはあっさりと弾いていた。
防御魔法を使ったわけではない、ただ光線に剣をぶつけただけだ。
第四位永遠神剣の持つ圧倒的な力の前で、その程度の攻撃は無意味だ。
なのはの次の行動は早かった。
エリオが、この短期間で未知のデバイスを使いこなせているとは思えない。
彼本来の戦闘パターンと違う以上、攻撃の間の隙も大きい。
永遠神剣の力を借りて、肉体を強化する。
その恩恵は機動が重いはずのなのはですら、一瞬の内にエリオの懐へと潜り込める程だ。
そして放たれたのは斬撃、ではない。魔力を載せただけのただの蹴りだ。
永遠神剣の力は、強力過ぎる。
斬るのに使っても、神剣魔法に使っても、まず間違いなくエリオを殺してしまうだろう。
蹴り、ディバインバスター、バインド、この流れなら、殺さずに捕まえられる。
「エリオ、少し眠ってもらうよ!」
反応する事すらできない蹴りを腹に受け、エリオの体が浮く。
(よし、非殺傷設定のディバインバスターで・・・・・・!?)
それは、確かに意識を刈り取られるはずのものだ。
並大抵のバリアジャケットでは、衝撃を殺す所か耐え切れずに消滅してしまっただろう。
だが、マジンカイザーの防御はそんな物を遥かに超えている。
「ぐうっ、うおぉぉぉっ! ルストッ、トルネード!!」
殺し切れなかった衝撃に耐えながら、エリオは反撃に討って出る。
風が唸り、現れたのは幾つもの竜巻だ。
一つ一つが人体をバラバラに切り刻むだけの力をもったそれは、至近距離のなのはを襲う。
彼女の体を竜巻が切り裂こう、というぎりぎりだった。
「──オーラフォトンバリア!」
神剣により生み出されたオーラフォトンの壁が、それを受け止める。
なおも暴風は荒れ狂う。が、それも時間の問題だろう。
圧倒的な魔力量によって支えられたバリアは、小揺るぎもしない。
────やがて、竜巻も消えさる。
自らが生み出した風に乗ったのだろう、詰められていた筈の距離は、再び離されている。
更に、先ほどまで飛び回っていた両腕はいつの間にか元の場所に戻っていた。
「流石ですよ、なのはさん。こんなに楽しいなんて・・・・・・!!
でも、なんで本気を出してくれないんですか?
その剣の力を使って戦えば、もっと、もっと楽しいですよ?
早く、全力で戦いましょうよ?」
楽しそうに、本当に楽しそうにエリオは笑う。戦い以外何も無いように。
本気で戦いを楽しんでいるのだろう。
そこからは一片の殺意もない。
だが、戦いに付き合っている暇は無い。
マサキという青年は、見ただけでも重傷だと分かる。
エリオは死んでいないと言っているが、ならば急いで治療しなければならない。
「エリオ、あなたに何があったのかは分からない。何で、そんなに戦いたがっているのかも。
でも、せめてこの人を治療させて。このままじゃぁ、死んじゃうって分かるでしょ!?」
「駄目ですよ、なのはさん! 僕は、僕は戦いたくて堪らないんですから!
・・・・・・あぁ、そうだ。なのはさん、次は全力でいきますよ。
なのはさんも、本気を出して下さいよ。
じゃないと・・・・・・、その人まで黒焦げになっちゃいますから!」
エリオの持つ全魔力が、一点へと集中されていく。
後ろには倒れた青年、なのはが避ければ確実に巻き込まれてしまう。
────人質、そんな物を使ってまでエリオはなのはと本気で闘おうとしていた。
「エリオッ、あんな重傷の人を人質に使ってまで、そんなに私と戦いたいっていうの!?
何で、一体何で・・・・・・!?」
その叫びへの答えはない。
エリオから感じられるのは、ただ戦いへの期待だけだ。
「さあ、いきますよ! ファイヤーブラスター!」
魔法が放たれる。だが、その瞬間なのはは踏み込んでいた。
エリオまでの距離は離れ、魔法の発動を防ぐ事はもはや叶わない。
だが、彼女は駆ける。
あと数歩、そこまできてファイヤーブラスターは放たれた。
その圧倒的な熱量の前では、どんな人間だろうと消し炭になる以外ありえない。
・・・・・・はずだった。
「ぅああああぁぁっ! エリオオオオオォォォォォォッ!!」
主催者への、エリオへの、そして自分への怒り。
やり場のない怒りが、なのはの心から溢れてくる。
その怒りに呼応する様に、オーラフォトンが求めを覆う。
フレンジー、怒りを力へと変えるその技を使ったのだ。
神剣を纏うオーラフォトンが、ファイヤーブラスターとぶつかる。
二つの力は拮抗し────、
一瞬の内に勝負はついた。
・・・・・・結局の所、勝負を分けたのは圧倒的な魔力量の差だった。
ファイヤーブラスターを押し切ったその凶剣はそのまま振るわれ・・・・・・、
バリアジャケットごと、エリオ切り裂いたのだ。
だが、そんな中でもエリオは笑っていた。
全力で戦えた事に、そして、これだけの戦いがまたできる事に。
────何で、こんな事になってしまったんだろう?
倒れ伏す青年を前に、なのはは考える。
機動六課のみんなが殺し合いに乗るなんて思ってもみなかった。
なのに、エリオは殺し合いに乗ってて・・・・・・、私はそのエリオを殺した。
何で、何でこうなっちゃったんだろう・・・・・・。
────ここは、彼女がエリオと戦った場所ではない。
あの後、すぐにマサキという青年を抱え、移動を開始した。
自分が殺したエリオの傍にいる事が耐えられなかった。
抱えた青年がもう死んでいるなんて分かっていながら、
もう体が冷え切っている事に気付いていながら、
安全な場所でこの人を治療しなくちゃと、自分に言い聞かせた。
誰かに会いたい、けど、他のみんながエリオのように殺し合いに乗っているのではないか。
────そして、エリオの様に殺さなければならないのではないか。
焦りと不安が渦巻き、今は、ただ何も考えたくはなかった。
【一日目 AM2:26】
【現在地 F-7】
【マサキ=アンドー@スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL 死亡】
【高町なのは@NANOSING】
[時間軸]第八話終了後
[状態]精神的疲労 、魔力消費中、体力消費中
[装備]永遠神剣"求め"@リリカル×アセリア
[道具]支給品一式
[思考・状況]
基本 みんなで生きて帰る。
1、何で、こんな事に・・・・・・。
2、エリオ・・・・・・。
闇夜の下、一人の少年が動く。
彼、エリオ=モンディアルは生きていた。
別に不死身だから、などという理不尽な理由ではない。
その証拠に、高町なのはの求めによって切られた傷からは、血が流れていた。
・・・・・・そう結局の所、なのはは彼を殺せていなかったのだ。
オーラフォトンはバリアジャケットを破るのに使い尽くされ、
剣で切り裂かれる以上のダメージは受けていなかった。
決して軽傷とは言いがたいが、内蔵までは届いていない。
もっとも、人を斬った事のないなのはは気付かなかっただろうが。
──まだ闘うことができる、それだけで笑みがこぼれる。
今度は、最初から本気で戦いましょうね、なのはさん。
次こそ、負けませんから・・・・・・!!
レヴァンティンを手にし、新たなる敵を求めてエリオは立ち去る。
もっと、もっと戦いを楽しむために。
【一日目 AM2:26】
【現在地 F-7】
【エリオ=モンディアル@リリカル遊戯王GX】
[時間軸]第六話終了後
[状態]左胸上部から右脇腹への裂傷、デュエルゾンビ化 、魔力消費中、体力消費大
[装備]マジンカイザー@魔法少女リリカルマジンガーK's
ヤクトミラージュ@NANOSING
[道具]支給品一式
レヴァンティン@スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL
ローザミスティカ@ヴィータと不思議なお人形
[思考・状況]
基本 戦いを楽しむ。
1、また、なのはさんと本気で戦いたい。
※2時丁度に、F-7で高町なのはの放送がありました。
※周囲8マスまで、聞こえている可能性があります。
※F-7には、壊れた拡声器が転がっています。
最終更新:2008年02月28日 23:10