あの後合流した高町なのはを交え、お互い簡単な自己紹介とここであった
大まかな経緯だけを話し終ると、
なのはから「えっと、詳しい事はもう少し落ち着いた場所で話しませんか?」
と提案され、「構わない」とうなずくとなのはは通信を入れる。
ヘリを呼ぶのと、ついでにオーフェンの事をはやてに報告しておいたのだ。
しばらくすると何かが自分達の所に降りてきた。
どうやら乗り物らしい…が。
「…何だ、こりゃ」
「何って、見りゃ分かんだろ?ヘリだよ。ヘリコプター」
(…………)
まるで阿呆でも見るような眼つきでヴィータが
(どういう事だ…。大陸の外は女神に荒らしつくされて人間は文明を築くどころか滅ぼされる寸前の筈だぞ)
それがなぜ結界に守られていたキエサルヒマ大陸以上の、空を飛んで移動するなんて規格外の文明を有しているのか。
そういえば黄塵も舞っていない。女神が破壊した土地に舞い続けるという死の灰もここには見られない。
(なんだ?何かが違う気がする。俺は何かを間違えてる?)
「オーフェンさん、こっちです」
なのはが促してくる。乗れってことか?
「どこへ行くんだ?」
「とりあえず機動六課の本部だな。あんたの身元の確認とかしなきゃなんねぇし」
(・・・身元、ね。)
その言葉にしばし躊躇するが結局黙って乗り込んだ。
相手の素性も全くと言っていい程分かっていないのに
迂闊すぎる行動だとは自分でも思うが仕方無い。
今はとにかく情報が欲しい。
「で?」
ヘリに乗り込んでから真っ先に口を開いたのはオーフェンだった。
「え?」
「ん?」
突然の質問に二人がキョトンとなる。
オーフェンは苦笑しながら先を続けた。
「いや、何か聞きたい事があるんだろ?一応そっちの、あ~と、ヴィータだっけか?に約束しちまったからな。
俺に答えられる事なら答える」
こっちからも聞きたい事は山ほどあったが、急がば回れという言葉もある。
まずは向こうの信用を得た方がいいだろう。
「約束…ですか?」
なのはが横目でヴィータを窺う。
するとヴィータが、思い出した様に「おぉ!」と声を上げた。
「そうだそうだ!忘れて…あ~、じゃなくて。え~と、そう!
き、聞くタイミングが無かったんだった!
べ、別に忘れてたわけじゃないからな!」
わたわたと手を振りながら
なにやら言い訳がましい事言ってくるヴィータを オーフェンは半眼で、なのはは苦笑いで迎えていた。
それから十数分、ヘリが基地に着くまでの間話は続いた。
その話の中でなのは達が最も興味を引いたのはやはり魔術の話だった。
魔力もデバイスも必要とせず、ただ声を発するだけで力を行使する。
正直信じられない。…が、もしそれが本当ならAMFが効かなかった事も
頷ける。
『おい、なのは。どう思う?』
ヘリから降りながらヴィータが念話でなのはに話しかける。
『う~ん、つじつまは合ってると思うよ。
確かに魔力がこもらない攻撃ならAMFなんて関係ないからね』
『いや、そっちも気になるけどよ。アタシが言ってんのはオーフェンの
出身の事だよ。聞いたことねぇだろ、キエサルマワシ大陸なんて』
『キエサルヒマ大陸だよ、ヴィータちゃん』
『あ?そうだっけか?まぁいいやなんでも』
『もう、とにかくはやてちゃんに報告だよ。 もし管理外世界からの次元漂流者なら大変だし』
ヴィータを諌めながらヘリポートに降りる。と、
「なのは、ヴィータ、お疲れ様。大丈夫だった?」
そこで待っていたのか、フェイト・T・ハラオウンが三人を出迎えていた。
「ただいま、フェイトちゃん。うん大丈夫、怪我なんてないよ」
「余裕だっての、あんくらい。フォワードの連中は?」
「うん、みんなちゃんと自主トレしてるよ。それで、なのは―――その人が?」
そう言うとフェイトは声を落として問いかけてきた。その視線はヘリの方を向いている。
今、ちょうどヘリから降りてきた男へ
「うん。オーフェンさんだよ」
「そう…話、聞けた?」
「色々とね。ちょっと長くなりそうだからみんな揃ってから話すよ」
「そっちはどうだ?アタシが送った映像ちゃんと見たか?」
横からヴィータが口を挟む。
「もちろん。さっきみんなで見たよ。今、下でシャーリーが―――」
「なぁ」
「「「うわぁ!!」」」
いつの間にかヒソヒソと三人固まっていた所に いきなり声をかけられ
三人は一斉にそんな声を上げた。
その反応に驚いたのか、ややバツが悪そうに言ってくる。
「え~と、何だ、「いつまでここにいるつもりなんだ」と聞きたかったんだが…
それと、そっちの女性は?」
「あ、す、すいません。申し遅れました。
時空管理局・機動六課ライトニングス分隊長フェイト・T・ハラオウンです。」
「ああ、オーフェンだ。よろしくな」
敬礼しつつ(若干赤くなりながら)言ってくる彼女に簡単な自己紹介を返す。
「で、どうするんだ?」
なのはに向き直り問いかける。
「そ、そうですね、とりあえず中に入りましょう」
こちらも若干赤くなりながらそそくさと入り口へと向かって歩き出した。
機動六課作戦室にて―――
大型の画面に黒ずくめの男が映っている。
「どうやシャーリー?反応は」
画面から目を離さずはやてがメガネの少女に声をかける。
「やっぱり何度やっても同じですね。魔力反応、感知できません」
手を世話しなく動かしながら彼女自身納得がいかないような声をあげる。
「つまり、この男の技には一切魔力は使われていないという事か」
はやての傍に控えていたシグナムが口を開く。
「一応、彼自身には魔力は備わっているみたいですが…」
「でもそれとこの人の使う魔法には無関係なんやね?」
「はい…」
「フム…」
それきり室内が静まり返る。
と、その静寂を断つように通信音が鳴った。
シャーリーが慌てて応答に入る。と、
「なのはさんとヴィータさんが帰還しました。…例の人も一緒です」
ざわざわと室内がどよめく。
「…主はやて。いかがいたしますか?」
はやての隣に控えているシグナムが低い声音で問いかける。
はやては立ち上がりながらそうやなぁ、と呟くと、
「まぁ…向こうの出方次第って所やね」
時を同じくしてスカリエッティ・ラボにて―――
ガジェットから回収した映像を見て感嘆の声を上げている男がいた。
「ほぉぉ、本当だ。完全に無効化されてるねぇ。」
「えぇ、何故なのかは分かりませんが…。」
男の名はジェイル・スカリエッティ。
傍に控えている女性はウーノ。
そして、もう一人―――
「君にならわかるのかな?ダミアン・ルーウ君」
そう、無表情で画面を見下ろしている男にスカリエッティは問いかけた。
白いローブを纏った壮年の男は厳かな声音で呟いた。
「驚いたな。私はこの男を知っている。」
極めて無感情な声だった。
「ふぅん?ということは彼もこの次元の住人じゃないようだねぇ。何者なんだい?」
「さぁな?」
「んん?」
「覚えがあるというだけで詳しい事はわからんよ。
私はしょせんダミアンのバックアップだからな。大陸最強の白魔術師の……残骸だ。」
そういうとダミアンは幽霊の様に消えた。
「……そういえば聞いてなかったねぇ。君はなぜ私に手を貸してくれるのかな?」
虚空に問いかける。返事はやはり虚空から返ってきた。
「……教えてやりたいからさ。この世界の人々にも」
「何をだい?」
「―――絶望を、さ」
更にとある森にて―――
「あなた達…誰?」
紫の少女が尋ねる。
「この俺様に誰だと尋ねる貴様こそ誰だ紫娘!!
この民族の英雄たるボルカノ・ボルカン様に先に名乗らせようとは無礼千万!!
夕日の海辺で追いかけ殺すぞ!!」
「名乗ってるし…」
そんな出会いがあったそうな―――
第三話 終
最終更新:2009年03月29日 21:41