2話 南光太郎は砕けない
夜遅も遅いということで光太郎はなのはに寝床を紹介してもらった。
明日は自分についての事情聴取があるらしい。
ゴルゴムとの決戦、空港火災での救助を経て光太郎の体力は限界だった。
精神的にはゴルゴムの壊滅によって少し気が楽になったが、
信彦の事を考えると、シャドームーンの魂がまた何かをしてしまうのではないかと考えてしまう。
そして、ここは異世界。
やはり、光太郎に安心はおとずれなかった。
体力も限界に達している今、
意図せずとも瞼が落ち、光太郎は眠りに落ちていった。
ここはどこだろうか?
そこは、何もない真っ暗闇の空間。
光太郎が辺りを警戒しながら見渡すと、太陽のように輝く球体があった。
『光太郎、光太郎…』
脳に直接、声が響いてくる。どんな抵抗をしても聞こえてきそうだ。
「だれだ貴様は!?」
予期せず事態に、光太郎は反射的に構え、警戒をする。
『私はキングストーンお前の魂さ…』
「僕の魂・・・」
『光太郎・・・創世王の無茶な移転から、この世界に導くために我が体は傷つき
お前の変身が不完全になってしまった』
『おそらく、シャドームーンも同様だろう…』
『そしてお前はこの先、再びシャドームーンと戦うことになるだろう
それがお前の宿命でもある』
「そんな宿命なんて嫌だ!僕はみとめない!」
光太郎は即座に否定する。
(創世王との戦いの時、シャドームーン・・・いや、信彦に渡したシャドーサーベルが
僕が求めた時に確かにここへ来た!信彦が握っていたはずなのに!
あの時も、僕が信彦に敗れ死んでしまった時に
とどめを!キングストーンを取り出さなかった!!)
光太郎は信彦が人間の心にもどる可能性を信じ続ける。
・・・信じ続けたい・・・それは彼の願いかもしれない。
『やはり受け入れぬか・・・』
『光太郎、今のお前の力は不完全だ』
『だが、光太郎・・・ゴルゴムとの戦いは、お前に自身にも凄まじい力を与えた
力だけでない、経験、判断、機転、すべてを成長させた』
『その力を使えば初めは賞賛するだろうが
やがて人々はお前を恐れるだろう』
『賢き道をゆけ、光太郎・・・』
「……夢だったのか?……」
そう呟いた、朝を迎えた光太郎の首には
太陽の光を受けながら輝く、一つの赤い宝玉が掛かっていた…
「これから、いくつかの質問をしますので、それに答えてください」
金色の髪をした女性、フェイトがハキハキとした声で言う。
なのはのことといい、この世界ではこの年で働くのは当たり前なのだろうか?
そんなことを考えながら、光太郎はフェイトの事務的な声につられ、丁寧に返事をする。
まず聞かれたのは、出身世界のことだ。
出身世界という彼の常識ではまず聞かないような言葉だ。
幸い、なのはからは事前にこの世界の常識や管理局の仕事についてはある程度説明されている。
当然だが地球と答えた。
次は、デバイスの出所だ。
今確かに、光太郎はデバイスをもっている…ということにしている。
あれはキングストーンなのだが、今は同じようなものだ。
光太郎は、ゴルゴムという組織から逃げ出すために奪ったと答えた。
……あながち間違えでもないかもしれない。
そして自分は、ゴルゴムと戦い、滅ぼした時に道ずれにこの世界に飛ばされたと答える。
大まかな内容はこんなものだ。
光太郎は言っていないことがある。
一つ目は自分と信彦はゴルゴムによって改造された改造人間であること。
改造人間といっても、ゴルゴムの王、創生王になるために造られたもので
ゴルゴム脅威の技術力を結集させたものでもある。
そして、信彦はゴルゴムによって洗脳され、自分と戦っていたことだ。
自分は改造人間だ。
こんなことを言ったとしても、そう簡単には信じてもらえはしないだろう。
それに人間ではないなんて思いたくも、言いたくもない。
「それで光太郎さんって、どないひとやったの?」
茶髪の女性、八神はやてが目を輝かせながらなのはに質問をする。
「一言でいえば熱い人かな?
初対面の時に敵と勘違いされてね、その時の表情はすごく怖かったなぁ
でも、女の子を助けた時の表情はとても優しくて、とてもうれしそうだった…」
「まさか、なのはちゃんが敵と間違えられるなんてなあ
なのはちゃん、かぁいいのに」
「あはは…魔術師を初めて見たからかな?」
さすがになのはも初対面でいきなり敵扱いはショックだったみたいだ。
「でも、いいひとなんやろ?」
「うん、そうだと思うよ」
救助を終え、再び出会った時にみせた時の笑顔
それはなぜか、なのはにはその笑顔がなぜかさみしそうに見えた…
2回ドアをノックする軽快な音が響く。
「なのは、はやて、私だけど」
フェイトが光太郎の聴取を終えてきたらしい。
「フェイトちゃん、待って、今あけるから」
そういうとなのははドアの鍵を開ける。
「ありがとう」
そう一言いって、フェイトは公務用の服を脱ぐと
なのは達がいるベッドに、フゥと一息はいて腰をかけた。
「お疲れ様。どうだった?」
「まず、あの人はなのはとはやてと同じ地球出身、
それだけだったら、もう解決なんだけど…」
「なにかワケありみたいやね」
「彼、向こうの世界で、ある組織と戦って身寄りの人々を失ってしまったの」
フェイトの言葉に、なのはとはやての顔から笑みが消える。
「それに、転移の影響で兄弟同然の友達と離れ離れになってしまっていて
その人を見つけない限り、自分だけ帰ることなどできない
……そう、言っていたの」
なのは、フェイト、はやての3人は並々ならぬ親友である。
もし、誰か一人でもいなくなってしまったなら、どんなことをしてでも見つけたいと思うだろう。
その点、3人は親友を失ってしまうことの辛さがよくわかっていた。
自分にとって、大切な人がいなくなってしまったらどんなに辛いか、
そんな暗いことをだれもが思い、重い空気がながれる……
「す、少し、暗くなってしもうたな、光太郎さん実践経験はあるそうなんやろ?
なんやら、実力を見てみたいな、もちろん本人がよかったらやけど」
重い空気を変えようとはやてが、新しい話題を持ち出す。
「なら、私が相談してみる」
そうフェイトが言い、話を進める。
「じゃあ、フェイトちゃん、よろしく頼むな。
あと、もう一つ、聞いてもらいたいことがあるんやけど……」
そして、彼女は新部隊を造るというを夢を話し始めるのであった。
夢を語る彼女は、確かに輝いていた。
最終更新:2008年04月09日 00:03