第1話 巨神の棲む教会



 新暦0075年、ミッドチルダにあるとある教会では時空管理局の上官達を集めてパーティが開かれ、そこには地上本部のトップ「レジアス・ゲイズ」も姿もあった。

「…しかしまだですかな。我々をここに呼んだ者は……」
「もう少しお待ち下さい。もうまもなく準備が整いますので…」

 レジアスは痺れを切らしたかのように自分達を待たせている人物に対して怒り、黒い仮面を付けた男性クロノ・ハラオウンが怒るレジアスをなだめる。
 その怒るレジアスの傍らには、同じく地上本部所属でレジアスの部下であるヴァイス・グランセニックは女性をナンパしていた。

「そこのお嬢さん。俺と踊らないかい?」

 ヴァイスにナンパされた女性はロングヘアーで清楚な水色のドレスと大人の雰囲気をかもし出しており、男ならナンパしたくなるのも無理はないくらいである。しかしドレスの上になぜかグレーのぶかぶかなブルゾンを着ておりかなりチグハグな格好だ。

 ナンパされた女性はヴァイスをうっとおしく思ったのかブルゾンのポケットに突っ込んでいた両手を出して笑顔のまま右手の拳を握り締めながらヴァイスに答える。

「……結構です!」

 その女性は握っていた拳をヴァイスの顔面目掛けて拳を当て、ヴァイスは鼻血をたらして倒れて女性は怒った状態でその場を去る。

「まったく、貴様は何をやってるんだ! 貴様は帰ってグラナガンの警備に戻れ!」
「わかりましたよ…」

 ヴァイスはしぶしぶレジアスに言われるがままに教会を出て行く。
 ヴァイスが出て行って数十分後、ヴァイスにナンパされた女性は人知れず壁に隠れるように姿を隠し教会の奥へ向かう通路にいた。
 女性はブルゾンの胸ポケットを留めているボタンを指先で引きちぎると、小さな双眼鏡を取り出し通路に異常や人の気配がないのを念入りにチェックする。
 安全そうだと判断した彼女は双眼鏡をポケットには戻さず思い切り投げ捨てると突然ブルゾンの胸元を両手で掴み一気にバリッとその前を広げた。
留めていたボタンが引きちぎられ足下に転がり更にブルゾンの中に隠していたらしい重そうな装備がいくつか飛び出した。

「ふぅ…変なのにナンパはされたけど何とかここまで入れた。ブルゾンもドレスも動きづらいし大っっ嫌い!もう要らないよね?」

 そう言って女性はボタンのなくなったブルゾンの肩部分を右手でグッと掴み力任せに引っ張った。すぐにその生地が裂ける音が響くが気にした様子もなく一気に身体から引き剥がした。
 ボロ切れとなったブルゾンとドレスを投げ捨て現れた姿は先ほどまでのロングヘアーの大人な女性ではなくショートヘアーでまだ15、16歳くらいの少女であった。
 その少女は変装をしていたのだ。ドレスの下にはバリアジャケットを羽織った姿で先ほどブルゾンの中に隠していたローラーブーツと籠手を装着すればいつ戦闘に入ってもいいような体勢であった。
 ブルゾンもドレスだけでは隠しきれないバリアジャケットを誤魔化すのと懐に装備を隠すただそのためだけにわざとぶかぶかな男物を着込んでいたのだ。

「よーし、いくぞ!」

 少女は小さい声で意気込み、教会の奥へと入っていく。その様子をモニターされている事に気付かずに……。


 モニター越しには三人のシスターの格好をした女性三人がそのモニターに映る少女を監視する。

「えーと、あの子は確か……」

 メガネをかけたシスターの一人シャリオ・フィニーノ(通称シャーリー)がモニターに映る少女の身元を割り出す。
 その少女の身元データがもう一つのモニターに現れ、オペレーターシスターの一人のアルト・クラエッタが読み上げる。

「スバル・ナカジマ。15歳。所属は陸上警備隊第386部隊の災害担当。魔導師ランクB。階級は二等陸士…」
「どうしますか?」

 もう一人のオペレータールキノ・リリエがそのオペレーターシスターの他にこの部屋にいる緑色で長い髪をした男性に尋ねる。

「彼女をとりあえずあそこまで誘導したいのですが…、うまく行ってくれますかな?」

 その男性は薄ら笑いをしながら教会の奥へと向かうスバルを見る。

「とりあえず君達はこのまま彼女をモニターしてくれ。僕はそろそろ…。客人達を待たせているのでね…」
「わかりました」

 男性はオペレーターシスター達に後を任せて部屋から出た。
 そしてその男性は教会の大広間に姿を現した。

「管理局の皆様。大変長らくお待たせしました。私がこの聖王教会の現責任者のヴェロッサ・アコースです」


 ヴェロッサが大広間に姿を現す少し前、スバルは教会の奥へとこっそりと進んでいく。

(どこにいるの? ギン姉……)

 スバルが心の中でそう考えているとスバルは廊下で一人のシスターと鉢合わせてしまう。

(綺麗……)

 そのシスターの顔や長い金髪は美しいものであり、一瞬スバルは見惚れてしまう。
 そのシスターはスバルを見てすぐに不審者だと判断して助けを呼ぼうとして、スバルは慌ててその場を去る。
 シスターの声を来てオレンジ色の髪でツインテールをした16,17歳くらいの少女が駆けつける。

「どうしたのドゥーエさん?」
「今そこに青のショートヘアーで右手に変わったデバイスをしていた女の子がいたのよ…」
(それってまさか…、スバル?)

 ティアナ・ランスターはドゥーエの話を聞いて、侵入者が自分の親しい友人のスバルではないかと考え始める。
 スバルとティアナは魔導師の訓練校にいた時のパートナーであり、ティアナのある事情により今は二人ともコンビを解消し離れていたのだ。

(でも何でスバルが……?)


 ドゥーエの行動で慌ててその場を離れたスバルは急いで走ったので少しへばってしまう。

「はあ、はあ。ビックリした…」

 スバルが壁にもたれかかろうとした時、壁が突然開き、スバルは壁の中にと消えてしまう。

「へ? へ? あああああああああ!!」

 スバルは壁の中にあったパイプ型の通路をさかさまに滑り落ちながら出口から出る直前にスバルは何とか体勢を立て直して、自身の先天魔法「ウイングロード」を展開する。

「ウイングロード!」

 スバルの右手をパイプの淵に当てて「ウイングロード」を発動させ、ウイングロードの上に立つ。

「危なかった…。うん?」

 スバルの入った部屋は少し薄暗かったが目が暗さに慣れてきて、その部屋を見てみると自分の前には何やら大きなロボットがあることに気付く。

「何あれ!?」

 スバルはそのロボットの姿を見て驚く。スバルはウイングロードを延ばして着地できる場所を探して着地する。

「すっご~~い!」
「これを褒めてくれるの?」

 突然声がして明かりがつく。突然の明かりにスバルの目は思わず眩んでしまい、次にスバルが目を開けると目の前にはその声の主がスバルの目の前にいた。
 その声の主はちょうど19、20歳くらいの女性であるがシスターの格好をしていない。スバルは先ほどばったり出会ったシスターにも見とれたが目の前にいる女性はそのシスター以上だとスバルは考えた。
 髪は茶色のサイドポニーテールで、顔もスタイルも抜群の女性。

「初めまして。私、高町なのは」


 スバルがなのはと出会った同時刻。次元航行空間を通して宇宙から何かが多数、ミッドチルダの首都のグラナガンに落ちてきた。


 グラナガンに何かが落ちたのと同時刻。聖王教会ではヴェロッサ主催のパーティに本当の幕が開かれようとする。

「一体何故我々をここに呼んだのだ?」

 皆を代表して、レジアスが怒鳴りつけるようにヴェロッサに尋ねる。

「まあまあ、落ち着いてください。とにかくこれをご覧下さい」

 ヴェロッサがモニターを出して教会に来ている管理局の上官達にある映像を見せる。
 それに映し出されたのは次元航行空間、その空間には何かが存在する。それは機械の大群であった。

「何だこれは?」
「これは今このミッドチルダにとっての脅威。『ゼラバイア』です」
「『ゼラバイア』?」

 ヴェロッサの言った「ゼラバイア」と言う言葉に皆が戸惑い、上官の一人が怒鳴り散らす。

「ふざけるな! こんな作り物!」
「そうだそうだ」
「我々をおちょくっているのか!?」
「これだから聖王教会は………」

 一人の上官の言葉から端を発し、他の上官達もヴェロッサに向かって怒りの声を上げる。

「ですがこれは事実です。これをご覧下さい」

 クロノがヴェロッサの横に近づき、モニターを切り替える。するとそこには先ほどのゼラバイアの大群がグラナガンを襲っている映像であった。

「これはリアルタイム、つまり今現在のグラナガンの状況です」
「そんな馬鹿な…」

 グラナガンの様子を見てレジアスは絶句するが、すぐに首都防衛隊に連絡を入れる。

「おい、お前達! これはどういうことだ!?」

 レジアスの通信を聞いた防衛隊の一人が答える。

「レジアス中将。突然空から敵が現れたのです」
「だったら何故防衛戦を張らない!?」
「…それがほとんどの地上部隊があれらにやられたのです」

 隊員の言うとおりである。地上部隊のほとんどの武装局員がゼラバイアと戦ったがゼラバイアの装甲は厚く、魔法では歯が立たない。

「先ほどまでヴァイス陸曹も戦っておられたのですが、命は無事でしたがヴァイス陸曹もやられてしまいました」

 その報告にレジアスは驚く。ヴァイスの魔力量や魔導師ランクは低いが、総合能力においてはAAランク以上と言っても過言ではない。
 そのヴァイスまでやられたとなると地上部隊には打つ手がない。

「くそ! どうすればいいのだ!?」
「我々はこうやって黙って指を咥えていることしかできないのか!?」
「それなら大丈夫です」

 レジアスを初めとする上官達は慌て始めるが、ヴェロッサが皆に言う。

「我々聖王教会には切り札があります」


「じゃあスバルはギンガって言うお姉さんを探してるんだ」

 ヴェロッサがゼラバイアの事を説明するほんの少し前、なのはは落ちてきたスバルと自己紹介の後にスバルの事情を聞いた。
 スバルが聖王教会に潜入したのはスバルの姉のギンガ・ナカジマがこの聖王教会から姿を消したのを聞いて真相を確かめるのと同時にギンガの捜索に来たのだ。

「そうなんです。えーと…」
「なのはさんでいいよ」

 なのはが笑顔でスバルに答える。

「あ、はい。なのはさんはギン姉の事何か知ってますか?」

 スバルの質問になのはは首を横に振って答える。

「ごめんね。私ここには10年くらい前からいるけどギンガって人の事知らないんだ」
「…そうですか……」

 スバルが落胆するがなのははすぐにフォローの言葉を入れる。

「スバル。だったら私もギンガって人を探すの手伝ってあげる」
「え、本当ですか!?」

 なのはの申し入れにスバルは驚く。

「うん! 約束だよ」

 なのはが明るい顔でスバルと約束を交わす。
 するとそこに先ほどのシスターとは違う長い金髪の女性がやってくる。彼女もシスターの服を着ていない。

「なのは、ここにいたのって……その子誰?」
「フェイトちゃん…。この子はスバル・ナカジマ。ギンガって言うお姉さんを捜しに来たんだよ。ああ、スバル。こっちはフェイト・テスタロッサちゃんだよ」

 なのははスバルとやって来たフェイトに互いの事を紹介する。

「どうも、初めまして」
「こちらこそ………ってそういう場合じゃないよなのは!」

 フェイトが乗りツッコミを入れる。

「どうしたの? フェイトちゃん」
「ゼラバイアが来たって今報告があったの」
「ゼラバイア!」

 「ゼラバイア」と聞いた途端になのはの顔は険しくなる。スバルはそんななのは顔にの少しばかり恐怖を抱くが、「ゼラバイア」の事を知らないので何の事だがわからずに困惑する。

「あのゼラバイアって……」
「君は帰った方が……」
「フェイトちゃん、どうせだからこの子も乗せよう。グランディーヴァに…」

 なのはの提案にフェイトは驚愕した。

「本気なの!? なのは」
「この子のリンカーコアにはG因子があるのを感じる。この子なら今開いてるGアタッカーに乗れると思うよ」
「でも……」

 フェイトはおどおどする。スバルはさっきから何の事だがわからず話についていけない。そんなスバルはなのはに聞く。

「なのはさん、どういうことですか?」

 なのはがスバルの質問に答える

「簡単に言うと今ミッドチルダに悪の敵がやって来たの。それでその敵は人類抹殺を企んでる。私達は今からそれを阻止しに行くけど、スバルも行く?」

 スバルは信じられないと言う顔をするがなのはの目を見て思う。なのはは嘘をついていないと言うことを悟る。

「正直信じられませんけど、あたしでよければ協力します」
「ありがとう」
「それじゃあ、私はティアナとGドリラーで行くから…」
「ティアナ!? もしかしてティアの事ですか!?」

 スバルは「ティアナ」と言う名前に反応してフェイトの肩を掴む。

「教えてください! ティアはここにいるんですか!?」

 ティアナとは連絡はたまにとっているくらいできちんとした事は聞いていない。自分が3年近くもコンビを組んでいたティアナがここにいることにスバルは驚きフェイトに問い詰める。

「教えてください! ティアは………」

 スバルは突然意識を失う。それはなのはが後ろから手刀をスバルの後ろの首筋に向けて当てて、スバルを気絶させたのだ。

「ごめんね、スバル。スバルの話は後できちんと聞くから……。フェイトちゃん、スバルをお願い」
「わかった、それじゃあ、なのは」
「うん」

 なのははフェイトにスバルを預けて、その場にある巨大ロボット「グランカイザー」に乗り込む。フェイトはスバルを抱えてその場を去る。


「このままじゃ……、何だ!?」

 ゼラバイアにより壊滅的なダメージを与えられ、もはやここまでと思っていた地上部隊の局員達だったが突然5機もの謎の機体が現れ、次々にゼラバイアを倒していく。

「すごい…」
「なんだあれは?」

 一つは人型のロボットで、後の4機は戦闘機のようなものであるがそのうちの一つは戦車のようなものに先端部分にドリルが二つついてる。
 それらはバルカンやドリルやミサイル、そして人型ロボット「グランカイザー」は素手で敵を倒していく。
 彼らはそのロボットが「グランカイザー」とグランディーヴァである事を知らない。

「今の俺にはセンチメンタリズムの運命を感じずにはいられないな」

 グランカイザーの姿を見たヴァイスは人知れずそう呟いた。

 グランディーヴァの一つの「Gアタッカー」のコックピットには意識がないスバルが乗っており、スバルはようやく目を覚ます。

「う~ん、ここは……って、どこですか!?」
「落ち着いて……って、スバル!?」

 目を覚ましたスバルが慌てていると突然通信が入り、その通信モニターにはティアナが映る。

「え、ティア。本当にティアなの!?」
「あんた本当にスバルなの!?」

 スバルとティアナは突然の再会に互いに驚きを隠せない。

「スバル、あんたそんなとこで何してんの!?」
「ティアだって、何してたの!? あたしティアの事心配してたんだから……」

 スバルとティアナはお互いの意見をぶつけ合う。そこにフェイトが割り込み通信を入れる。

「とりあえず、そういう話は後でね。今は目の前の事に集中して…」
「わかりました」

 ティアナは先輩であるフェイトの言葉を素直に聞きいれ、戦いに集中する。しかしスバルは自分の乗っている機体がよくわからないので困り果ててしまう。

「とりあえず、あたしはどうすればいいんですか!?」
「それはひとまずはこちらで操作してますのでそのままレバーを握るだけで構いませんよ」

 困り果てるスバルにシャーリーが優しくオペレートする。

「そんな事言ったって~~~~~~」

 スバルは思わず握っているレバーのボタンを押してしまう。するとGアタッカーからバルカンが発射され、ゼラバイアの数体を倒していく。

「うわ~すご~~~~い」
「あんまり下手な事しないで下さい。味方に当たったたら困りますから……」
「あ、はい。すみません。うん?」

 すると突然空から何かがやって来る。それはゼラバイアだが先ほどまでのとは姿も大きさも違うものであった。
 大きさはグランカイザー以上であり、姿は剣を3つほど合わせたものだった。

「あれもゼラバイアなのか?」

 モニターでその様子を見るレジアスがヴェロッサに尋ねる。

「はい、さっきまでのはウォリアークラスのゼラバイア。そして今現れたのがデストロイヤークラスのゼラバイアです」

 そのヴェロッサの言葉に管理局の上官達は皆おどおどする。

「そんなものに勝てるのか?」
「勝てます。そのための機動六課です」

 クロノが皆にそう言うと、ヴェロッサは持っていた杖をマイク代わりにするように、グラナガンで戦っているなのは達に伝える。

「なのは、超重合神だ」
「わかりました。エルゴフォーム!!」

 ヴェロッサの指示に従い、なのはは自分の前にあるスイッチを根気よく拳で押し付ける。
 するとグランカイザーの体の回りから何かがグランカイザーを覆っていく。

「グランナイツの諸君。合身せよ!」
「超重合身!!」

 ヴェロッサの承認となのはの掛け声によりフェイトとティアナの乗るGドリラーが真ん中から二つに分かれ、
 グランカイザーの左手にはティアナ、右手にはフェイトの乗るGドリラーが合体しグランカイザーの新しい手となる。

「え? え? 何?」

 スバルは状況についていけないまま、スバルの乗るGアタッカーはグランカイザーの右脚となる。
 ドゥーエのGストライカーもGアタッカー同様、グランカイザーの左脚となり、誰が乗っているのかわからないGシャドウはグランカイザーの胸に合体する。
 ここに新たな巨大ロボットが誕生し、ヴェロッサはその巨大ロボットの名を言う。

「我らが機動六課の切り札、ミッドチルダを守る楯と矛、『グラヴィオン』です!」



 超魔法重神グラヴィオンStrikerS  始まります

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最終更新:2022年10月17日 10:14