第2話 使命、そして迷宮
「『グラヴィオン』。正確な名前は『ゴッドグラヴィオン』です」
「ちょっと待て。あれは質量兵器ではないのか?」
レジアスが合神したグラヴィオンの姿を見てヴェロッサを問い詰める。
「ご心配には及びません。あれは魔導機械です。質量兵器ではありません」
「だったら何故先ほどのミサイルやバルカンなどが出た! どう説明する!?」
レジアスはヴェロッサに突っかかるが、ヴェロッサをそれを受け流すように答える。
「あれはグランディーヴァが魔力を具現化させ、ゼラバイアに対して有効な攻撃を行うのに適した形を取ったに過ぎません。それにあれは完全独立権を持つ聖王教会のものです。これ以上難癖をつけないでいただきたい」
「くっ!」
聖王教会の力は絶大であり、時空管理局から完全独立権を手に入れており、基本的に何をしても問題はないのだ。
レジアスはその事に怒り、歯切りしを立ててモニターを見つめる。
「何がどうなってんの~~~~!?」
スバルは突然ロボットに乗せられた上に合体までさせられて混乱し、思わず操縦席を離れてしまう。
「危ないから、ちゃんと席に戻って……」
「え~~~、キャア!」
スバルはシャーリーに文句を言おうとしたらゼラバイアの攻撃を避けようとしたためにグラヴィオンが揺れてしまい、スバルはコックピット内で転んでしまう。
「いててて…」
「だから言ったのに…」
「もう~、わかりましたよ」
スバルはまた転ぶのが嫌なので言われるがままに再び操縦席に座りレバーを握る。
「スバルだっけ?」
ドゥーエがスバルに通信を入れる。スバルは先ほど出会ったシスターだと気付くがドゥーエの姿は先ほどのシスターの格好ではなく、戦闘スーツのようなものを着ている事を尋ねようとする。
「あなたは確かシスターの…」
「ドゥーエよ。スバル、あんたのGアタッカーからバルカンを発射させて、ちなみにGアタッカーは今はグラヴィオンの右脚だからね」
「でもどうやって武器を出すんですか?」
「あんたから見て右の方にボタンが二つあるでしょ。その右側のボタンよ」
スバルはドゥーエの言うとおりにボタンを押そうとしたが、間違って左側のボタンを押してしまう。
するとグラヴィオンの右脚からはミサイルが発射されるが、それはゼラバイアではなくグラヴィオンに被弾してしまう。
「馬鹿スバル! ミサイル出してどうすんの!」
スバルの失敗に思わずティアナが怒鳴り声を上げてスバルに通信する。
「ごめん、ティア。こっちだね」
スバルは気を取り直して、今度こそ右側のボタンを押してバルカンを発射させて、グラヴィオンに近づいてくるゼラバイアに当てて周りに煙が立ちまる。
「やった!?」
スバルは確認しようとするが煙でよくわからない。スバルの予想とは逆にゼラバイアは無傷であった。
「そんな~」
「まあ、バルカンはけいせいみたいなものだからね」
スバルとは反対にティアナは予想通りの展開だと考える。
「でもそのおかげで距離が取れた。グラヴィトン、アーーーーーーーク!!」
グラヴィオンの額から高エネルギー波が発射され、ゼラバイアに命中。外傷は見当たらないがゼラバイアはよろけているところから見るとダメージは通っている。
なのははこれを好機と見て、ティアナに指示を送る。
「いくよ! ティアナ! グラヴィトントルネードパンチ!」
「はい!」
グラヴィオンの左手の先端にGドリラーのドリルが展開される。それにあわせてグラヴィオンの両足の踵からはアンカーが現れ、地面に食い込む。これはパンチの反動を抑えるためである。
「「グラヴィトン、トルネーーーードパーーーーンチ!!」」
グラヴィオンの左手はティアナを乗せたまま発射され、ゼラバイアは両腕を使ってパンチを防ぐが、
トルネードパンチのパワーに耐え切れず、そのドリルパンチはゼラバイアの体の真ん中を両腕ごと突き抜け、ゼラバイアは爆発、消滅する。
ティアナを乗せた左手はコードみたいなもの現れてグラヴィオンの左手部分に戻る。
「ふ~う」
「ティアナ、お疲れ様。後、スバルもね…」
「………、あ、はい!」
スバルはほっと一息ついていてなのはの言葉をうまく聞けていなかったが、少し遅れて返事を返す。
その戦いの様子を聖王教会で見ていたレジアス達は色々な事をヴェロッサやクロノに尋ねる。
「何であんなものがこのミッドチルダに現れる!?」
「君はあれが現れるのを知っていたようだったけど何故だ!?」
「詳しく聞かせてもらいたい!」
「皆さん落ち着いてください」
ヴェロッサが興奮している上官達に落ち着くように指示する。
「詳しい事は言えませんが、ゼラバイアはまたミッドチルダに現れます。人類を滅ぼすために…」
「何だ(って)と!?」
ヴェロッサの発言に皆が驚きを隠せない。
「そしてその話などは後日にでも……。今日のところはお引取り願います」
ヴェロッサがそう言いながら指を鳴らすとシスター達は正門を開けて、管理局の上官達にお辞儀をしながら待っている。
上官達はヴェロッサの言われるがままに聖王教会を後にするが、レジアスは帰り際にヴェロッサに言う。
「必ずだ! 必ず、お前達の知ってる事は話してもらうぞ!」
「はい…」
レジアス達が帰り、聖王教会の門が閉じる。ヴェロッサとクロノは広間を後にして司令室の方へと向かう中、クロノがヴェロッサに聞く。
「本当にいいのか? あんな事を言って…」
「構わないよ。いずれはわかることだ。それより今は……」
「ああ、Gアタッカーのパイロットの事だな」
ヴェロッサとクロノが司令室に着く。そこにはオペレーターのシャーリー、アルト、ルキノだけでなく、先ほどの戦闘から帰ってきたなのは、フェイト、ティアナ、ドゥーエ、そしてスバルが待っていた。
スバルはヴェロッサを待っていたかのように急いでヴェロッサの元に近づき、ヴェロッサに聞く。
「何なんですか!? あの敵! あのグラヴィオンって! それになんであたしが? それにギン姉は!?」
「落ち着いて下さい。とりあえずこれでも…」
ヴェロッサは自分の手を握り締めながら、スバルの前で手を開くとケーキが現れる。
「あ、どうも……って誤魔化さないで下さい!」
「ごめん、ごめん。それじゃあまずはゼラバイアの事から話そう…」
ヴェロッサはまずはゼラバイアの事からスバルに説明し始めた。
ゼラバイアはどこの世界か宇宙かわからない。どこからからともなくやって来た機械生命体であり、目的は人類抹殺であり、すでにいくつもの世界や星が滅ぼされてしまった事。
ヴェロッサは次にグラヴィオンの事を話す。
グラヴィオンとはグランカイザーと4つのグランディーヴァが合体して出来る巨大ロボットの名前であり、正式名称は『ゴッドグラヴィオン』。
グランカイザー及びグランディーヴァを動かすにはリンカーコアの中にあるG因子と言う特別なものが必要であり、スバルをGアタッカーに乗せたのはそのG因子があった為である。
「じゃあ、最後にギン姉はどこですか!? ギンガ・ナカジマ。あたしの姉はここにいたってギン姉から連絡があったけど…」
ギンガの名前を出されて、ヴェロッサとクロノの表情が重くなる。
「彼女は……、彼女はいないんだ」
「え?」
「彼女は行方不明。正確には消えてしまったんだ」
その発言にスバルはつっかかる。
「消えたって……、ギン姉が消えたってどういうことですか!?」
「すまないけど、これ以上は言えない」
「とにかく、君はグラヴィオンに選ばれ、『機動六課』の『グランナイツ』に入ってもらうよ」
「『機動六課』? 『グランナイツ』?」
スバルは聞きなれない言葉を聞いて頭に「?」マークをつける。
「『グランナイツ』、このグラヴィオンを動かす者達の名称だよ。そして『グランナイツ』を含むこの聖王教会が持つ組織の名前は『機動六課』」
「君にはそこにいてもらいたいけどいいかな?」
ヴェロッサがスバルに尋ねるとスバルは考えながらヴェロッサに聞いてみる。
「『機動六課』。ここにいたらギン姉のことがわかるの?」
「ああ、それは約束できる」
「……だったら、残ります。ここに。ティアもいるみたいだし、ミッドチルダ、ううん。あたしは皆を守りたい。そしてギン姉を見つける」
「じゃあ話は決まりだね。すぐにでも君をここの配属にするよう手配しよう。その前にグランナイツメンバーの自己紹介をしておいてくれ」
スバルはヴェロッサの言われたとおり自己紹介をする。
「改めまして、こんにちは。スバル・ナカジマ、15歳です!」
「こちらこそ改めまして、高町なのはだよ」
「フェイト・テスタロッサです」
「ドゥーエよ」
「まあ、あたしはいっか…」
ティアナはすでにスバルとは知り合いなため、自己紹介をはぶく。
「明日から君にもグランナイツとしての訓練をしてもらいたい…」
「あの、その事で私から提案があります」
ヴェロッサがスバルに説明をしようとするとなのはが横槍を入れるようにヴェロッサに提案する。
「何か?」
「スバルをグランカイザーのパイロットにしてください」
「?!」
「本気か!? なのは!」
なのはの発言に皆が驚き、クロノがなのはに真意を聞く。
「本気だよ。私は遠距離砲撃型の魔導師。だけど聞いた話だと、スバルは私と違ってれっきとした接近戦で格闘系の魔導師。私よりグランカイザーをうまく動かせれると思う」
「しかし、グランカイザーは他のグランディーヴァと違って、操縦法が難しい。それはなのはも知ってるだろ…」
クロノがなのはを説得しようとするが、なのははクロノの静止を聞かない。
「知ってる。けど、スバルなら出来る。私はそう信じてる」
「なのはさん…」
「けど、決めるのはスバルだよ。どうする? スバル…」
なのはがスバルの方を向いて、スバルに尋ねる。
スバルは少し考えて、数分後ようやく答えを出す。
「私、乗ります! グランカイザーに!」
「それはなのはのためか?」
クロノがスバルに尋ねる。
「そうじゃないと言えば嘘になります。けどなのはさんだけのためじゃないんです。私自身のため、ギン姉を見つけるため、そして皆のためにもです」
スバルの決意は固い。ヴェロッサとクロノはそれを悟り、納得する。
「わかった。だったら明日からはグランカイザーに乗れるための訓練に変更しよう。言っておくけど、一番きつい訓練だから覚悟しておいてよ」
「はい!」
スバルは元気よく返事をする。
「それでは、解散! 皆、今日はゆっくり休んでくれ。それとスバルの部屋を案内しないとね……」
ヴェロッサがそう言うと、まだ(5~10歳くらいの)幼いシスターが3人現れる。
「金髪でオッドアイの子はヴィヴィオ。こっちの紫色の髪の子はルーテシア。ピンク色の子がキャロだよ。三人ともしばらくはスバルの世話をしてやってね」
「「「はい!」」」
三人は元気よく返事をして、スバルの腕を引っ張りながらスバルを部屋へと案内する。
そしてスバルは三人と別れて、部屋で一人っきりになる。
スバルは部屋の電気を消して一人ベッドで寝そべりながら考える。
(今日は色々あったな…。ゼラバイアにグラヴィオンか……。そんでティアがここにいて、ギン姉はいなくなってる…。ギン姉、絶対見つけるからね!)
スバルは仰向けの状態で、右手を大きく天井に振り上げて拳を握り締めながら決意を固め、そして眠りについた。
翌日、スバルは目を覚まして洗面所に行って顔を洗おうとするが、洗面所にセンサーがないことに気付く。
「あれ? どこだろ? と言うかこれは何?」
スバルは洗面所の水道管についてるものが何なのかわからず、思いっきり回してみたら回した途端に水が大量に溢れ出し、
水道管の出口はスバルの顔を向いていために大量の水がスバルの顔を目掛けて流れ出す。
「うわああああああ!!」
「「どうしたの!? スバル!」」
スバルの悲鳴を聞いたなのはとティアナが急いでスバルの部屋に入ろうと閉じた扉を開けると、スバルが出した大量の水がなのはとティアナにも襲いかかる。
「「きゃああああ!!」」
数分後、何とかスバルとティアナとなのはは大量の水を止めるが、スバル、ティアナ、なのははびしょ濡れ。ティアナはスバルに対して怒る。
「スバル! あんたどうしてくれるの! 服がびしょびしょじゃない!」
「ごめん、ティア…。あたしその蛇口って言うの知らなくて……」
スバルはティアナに蛇口についての説明を受けた後、懸命にティアナ向かって両手を合わせて頭を下げて謝る。
ティアナはスバルのドジっぷりを知っているので、スバルの謝罪を受けてようやく怒りを静める。
「ふん! まあいいわ。あんたのドジは今になって始まったばかりじゃないしね…。でもこれじゃあ風邪を引いちゃうわ。お風呂に入らないと…」
「ねえ、だったら、ティア…」
スバルがティアナの発言した「お風呂」と言う言葉に反応をしめす。
「何って…、まさか……」
「一緒に入ろうよ。お風呂…」
スバルの発言にティアナは再び怒りを顕わにし、スバルの体をしがみつくように技を決める。
「馬鹿スバル! 何でそうなるの!」
「痛い。痛い。ちょっとした触れ合いをしようとしたのに…」
「でもいいんじゃない。一緒にお風呂入るのも…。だからティアナ、スバルを離してあげて…」
「わかりました」
「そうですよね……」
なのはがスバルをフォローするような発言し、ティアナもしぶしぶなのはとスバルの言うとおりにした。
それからまた数分後、なのはとスバルとティアナは一緒にお風呂に入って体を温めた。
お風呂から上がり、新しい着替えを着るとスバルは教会を見て回ると言い出す。
スバルはヴェロッサとクロノがギンガの消息不明について何か隠し事をしているのだとにらみ、探し出そうと考える。
なのはは10年以上もこの教会にいるので道案内としてついていき、ティアナは自分のかつてのパートナーにあきれながらもついていくことになった。
聖王教会は大きく5つに分けられており、北館、南館、西館、東館、中央館があり、スバル達グランナイツは東館で暮らしており、西館は現在立ち入り禁止状態である。
スバル達は西館が怪しいと踏んで、西館へと続く廊下を歩いていると突然、床が抜け落ち、スバル達はどこかの部屋へと落ちてしまう。
「スバル、ティアナ。大丈夫?」
うまく着地できたなのはが着地に失敗して転んだスバルとティアナに声をかける。
「いたたたた。何とか…」
「もう少し用心して進みなさいよ。スバル」
「ごめん、ティア……」
スバルとティアナが立ち上がると突然部屋の電気がつく。そして明るくなった部屋を見るとそこには何やら小型の機械兵器が10体近く置いてあった。
「何ですか? これ…」
スバルがなのはに尋ねる。
「これはね…。私が昔訓練で使ってた魔導機械。ガジェットって言うんだよ」
「そう言えば少し聞いたことがあります。なのはさんは昔ここでグランカイザーに乗るための特訓をしてたとか…」
ティアナは昔聞いた話を思い出そうとすると、突如ガジェット達が動き出す。
「え? 動き出した?」
「スバル、ティアナ。動かないで。これは近づいて来るものを感知すると攻撃してくるからね…」
「だったらあたしもやります!」
スバルがなのはの横に並ぶ。
「スバル…」
「これがなのはさんの通った道なら、あたしも通ります。グランカイザーに乗るのなら尚更です」
「…、わかった。でも無理はなしないでね」
「はい!」
スバルは元気よく返事をし、なのはとスバルは分かれてガジェットの殲滅に入る。
この部屋に置かれているガジェットは2種類有り、一つは細長いもので、もう一つは真ん丸い形をしている。
細長いものは砲撃系しかないが、丸いのは砲撃の他にコンベアーのような手を持っている。なのははその事を知っているが、スバルはその事を知らない。
なのははうまくガジェットの攻撃を巧みに交わして、魔力弾や魔力で高めた拳でガジェットを破壊する。
スバルはガジェットの攻撃に苦戦を強いられながらも、何とか1体、2体と倒す。なのははスバルの戦い方を見て改めて思う。
(まだ戦い方は不慣れみたいだけど、やっぱり私よりグランカイザーをうまく乗りこなせれるかも…)
スバルが3体目を破壊した時に、突然教会全体に緊急警報が鳴り響く。
「え? 今度は何?」
「まさか……、なのはさん!」
「ゼラバイア……」
そうこの警報はゼラバイア襲撃を知らせるものだったのだ。
警報と同時に残っていたガジェットは全機機能を停止し、その部屋の扉が開き、ヴィヴィオとルーテシアとキャロが迎えに来る。
「皆さん、ゼラバイアです」
「早く行って……」
「頑張って!」
なのはとスバルとティアナは急いで部屋を出て、ティアナはGドリラーの方に行き、スバルはグランカイザー、なのははGアタッカーに乗り込む。
出撃する前に、ヴェロッサがスバルに通信を入れる。
「スバル、もしこちらの方で無理だと判断したらすぐになのはと交代してもらう。いいね」
「はい!」
「それでは…、グランナイツ発進せよ!」
ヴェロッサの言葉により、グランナイツ全員が発進する。
グランカイザーとグランディーヴァは教会近くにある山の中から現れ、ゼラバイアの元に飛んでいく。
「スバル、無理しないでね」
なのはがスバルに念を押すように言う。
そんななのはにスバルは笑顔で答える。
「大丈夫ですよ。さてこのままGO!」
ゼラバイアはまたグラナガンを襲っていて、今度のゼラバイアはさっきまでなのは達が相手をしていた細長いガジェットのような姿をしている。
ゼラバイアの装甲は当然の事ながらあまりに厚いゆえに魔力弾は愚か、他の魔法攻撃でも通用しない。
「くそ! 俺達は無能だってのかよ!?」
ヴァイスは自分達の非力さを怨む。するとそこにグランカイザーとグランディーヴァがやって来た。
「へ、真のエース達の登場か…。頼んだぜ!」
ヴァイスはゼラバイアをグランナイツに任せて自分達は撤退をする。
グランカイザーに乗るスバルはまだ試運転すらやっていない状態の為に、腕などを動かすのにも体力を消耗していた。
「はあ、はあ………」
「スバル、大丈夫? やっぱり私と変わろうか」
なのはがスバルの状態を見て、交代を勧めるがスバルはその勧めを断る。
「大丈夫ですよ。これくらい訓練校にいた時はもっとつらかったですから……」
「そう。ならいいけど…」
「スバル。敵は進化していて昨日の奴より強い。一気に合神してくれ」
ヴェロッサがスバルに指示を送るが、スバルは合神方法を知らない。
「あの、合神ってどうやるのですか?」
「前のパネルに向かって『エルゴフォーム!』って言いながら押してくれ。そしてその後に『超重合神!』と言えば出来る。やってみてくれ」
「わかりました…。エルゴフォーーーーーーーーーーーム!!」
スバルは強く叫びながら、正面のパネルに向かって拳を当てる。
するとグランカイザーを包み込む重力子が現れ、グランディーヴァがそれに引き寄せられていくようにグランカイザーに近づく。
「グランナイツの諸君、合神せよ!」
「超重、合神!!」
ヴェロッサの承認、スバルの叫びと共に、グランカイザーの手には二つに分かれたGドリラー、右脚にはGアタッカー、左脚にはGストライカー、そしてGシャドウが胸に合神する。
スバルを乗せたグランカイザーはゴッドグラヴィオンへと合神した。
「ち、かっこいいぜ! 俺もあんなのに乗ってみてえな……。頼んだぜ、グラヴィオン!」
ヴァイスはグラヴィオンの姿を見て羨ましさと憧れを抱く。
「スバル、言っておくけどさっきのグランカイザーとグラヴィオンはフィードバックシステムだからね」
「フィードバックシステム? 何ですか? それ…」
なのはがスバルに説明をするが、スバルはイマイチわかっていないようなので簡潔に言う。
「簡単に言うと、グラヴィオンもグランカイザーもスバルの動きに合わせて動いてくれる。でもダメージを受けたらスバルにもダメージが来るから注意してね」
「わかりました。頑張ります!」
「あと、それと『重力子臨界数』には気をつけて」
「え?」
「昨日の戦闘は問題なかったけど、実はゴッドグラヴィオンは常にエルゴフォームを纏ってるの」
「あれって合体の時だけじゃなくて今も何ですか?」
「そうだよ。それでグランカイザー以外のグランディーヴァはエルゴフォームに耐えられる限界値があるの。
それでその『重力子臨界数』がゼロになると強制的に分離してしまうの」
「つまり、それって……」
「簡単に言うと、強い武器を使ったり、敵からダメージを受けると強制分離されるってことだよ。だから本当に気をつけてね……」
「はい!」
スバルはなのはの忠告を受けながら戦闘に入る。
「グラヴィトンバスターーーーー!!」
スバルの叫びと共にグラヴィオンの両手を合わせて、両手からバスターが連射されるが、ゼラバイアは後ずさりする様子もなく、グラヴィオンに体当たりをする。
「うわあ!」
スバルは体当たりの反動で、後ろに倒れてしりもちをつく。
「いてててて、どうして?」
「あのゼラバイアは進化しているみたいですね。グラヴィトンバスターに耐えれるように…」
ヴェロッサが冷静に状況を分析する。
「進化って何でですか~?」
「相手は機械だけど同時に生命もある。生物なら進化をする事ができる。それはゼラバイアも同じなんだ。
そしてあのゼラバイアは進化して、この前受けたグラヴィトンアークに耐えれるように進化しているからグラヴィトンバスターに耐えられるんだ。多分グラヴィトントルネードパンチも効かないだろうね…」
「大変です。重力安定指数30%。今の攻撃で重力子臨界数が2978ポイントを切りました」
「え!?」
「早い! でも、な、何で!? なのはさんの時は問題なかったのに…」
「恐らく、スバルが不慣れなためにうまくG因子との結合が出来てないからだと思われます」
オペレーター達は冷静に状況分析をする。
その間にゼラバイアは体から触手を出して、グラヴィオンの体に突き刺さり、触手から電流が流れ出す。
「ああああああああああ!!」
スバルやティアナは電流に苦しむ。なのはは電流で苦しみながらもGアタッカーからミサイルを発射させようと頑張ってスイッチを押そうとする。
「グラヴィトンミサイル、フルバースト。発射!!」
なのはの指はミサイルのボタンに届き、Gアタッカーからミサイルが大量に発射され、ミサイルは触手を破壊する。
「ありがとうございます。なのはさん」
「別に…。それより今は……」
スバルはなのはに礼を言うが、なのははスバルにゼラバイアに気をやるように呼びかける。
「こうなったら、グラヴィトンアークで…」
「ダメ。さっきヴェロッサも言ってたけど、グラヴィトンアークに耐えられるように進化してる。ただ単に重力子臨界に近くなるだけだよ」
ティアナが提案するが、なのははその提案を却下する。そこにヴェロッサが別の提案を出す。
「まだ手はあります。『グラヴィトンソード』を使いましょう。スバル、グラヴィトンソードと名前を呼んでください」
「……、わかりました。グラヴィトン、ソーーーーーーーーーーーード!!」
スバルの叫びに反応して、グラヴィオンの胸のパーツが一部外れ、それは剣の柄のようなものになり、スバルが腕を伸ばすとグラヴィオンも腕を伸ばして柄をとる。
「そして、ブレイズアップと言ってください」
「ブレイズアップ!」
スバルが「ブレイズアップ」と言うのと同時に柄から剣が現れる。
「はあああああああ!!」
グラヴィオンは勢い高く、飛び上がりグラヴィトンソードをゼラバイアに向けて振り下ろす。
その剣はゼラバイアを切り裂く。
「エルゴ、エーーーーーーーーーーンド!!」
そしてゼラバイアは大爆発を起こし消滅した。
スバルは敵を倒したとコックピット内で一息つこうと座ろうとする。
「ふう、終わった~~」
「スバル、危ないから座らない!」
「え?」
スバルはティアナの言葉で座ろうとするのをやめる。そしてほんの少しの間をおいてスバルは気付く。
スバル自身が座ろうとしたらグラヴィオンもそれに反応して地面に座ろうとしたのだ。
今グラヴィオンの回りには人や物は存在しないが、もしも何かあったら大惨事である。
「スバル、もう少し気をつけようね」
「…ごめんなさい」
スバルはなのはや他の皆に対して謝った。
聖王教会に戻ったスバルは自分の部屋のベッドで一息ついているとなのはが部屋にやって来る。
「スバル、今いいかな?」
「なのはさん…、いいですよ」
スバルのOKをもらい、なのはは部屋のドアを開けてスバルの部屋に入る。
スバルはベッドに横たわっていたが、なのはに失礼だと判断してベッドから起き上がり、ベッドに座る。
なのはそのスバルの隣に座る。
「あの…、なのはさん……」
「スバル、どうだった? グランカイザーに初めて乗った感想は……」
なのはがいつもの明るい顔でスバルに尋ねるとスバルもいつもの明るい表情で答える。
「正直、少しきつかったです。なのはさんはいつもあんなきつい機体に乗ってたんですね」
「訓練とか模擬戦でなら何度も乗ってるけど、初戦闘は昨日が初めてだったんだよ」
「そうですか……」
スバルはその言葉を聞いて少し落胆したような顔をするが、なのはは救いの手を差し伸べるように語る。
「でも今日のスバルの動きは私が初めてグランカイザーに乗った時以上にいい動きだったよ。私が初めて動かした時は手足を少し動かすのがやっとだったんだよ。
でもスバルは手足だけじゃなくて、体全体を動かしてたし、グラヴィトンソードもうまく使いこなせた。すごい事だよ。やっぱり私の見込んだとおりだよ」
「えへへ、そうですか……」
スバルはなのはに褒められて、片手を頭の後ろにやって頭をかいて照れる。
「でも油断はいけないよ。今日みたいに落ち着こうとして座ろうとしてもしも人がいたらその人に迷惑がかかるからね」
「はい…、ごめんなさい」
スバルはションボリする。
「でも動きとかはよかったよ。もっと訓練すれば私以上になるよ。きっと……」
「なのはさん…。はい! もっと頑張ります!」
スバルはなのはの言葉を胸に秘め、翌日からの訓練に一生懸命取り組むのであった。
最終更新:2008年04月29日 09:23