それは始まりにして、終わり。
入り口もない、出口もないメビウスのような物語。
どこから始まるのか、どこで終わるのかも分からない物語。
それはどこまでも続く過去と未来の間に抜け落ちたミッシングリンク。
消された物語。
誰かが塗り潰した過去であり、未来へと繋がっていたはずの現在。
そこで演じられるのは、描かれるのは果てのない、終わりの無い、物語の序章曲。
続くかもしれない。
途切れるかもしれない。
けれども、先の分からない未来を走りぬいた人物達の軌跡。
それは――
「未来が見えない、それは素晴らしいことではないのかね?」
降り注ぐ雨の中。
音も無い、光もない、真っ暗な廃墟の下で、黄金色の瞳を浮かべた男は呟いた。
永遠の渇望を。
永遠に満たされない欲望を抱いた男。
「黙れ」
それに答えるのは生気を失った青年。
未来を失った瞳。
闇しか見えぬ、血塗られた手で鋼の銃器を携えた青年。
幾多の傷に血を流し、幾多の絶望に嘔吐し、ただ一つ見えた希望にすがりつく亡者。
彼には希望なんて見えない。
彼には明日なんて見えない。
彼は壊れながら、彼は狂いながら、彼は毒を孕む。
痛め、痛め、痛めと自分を呪う。
「なるほど、中々に重症だな」
黄金色の怪人は嗤う。
嗤いながらも、それは馬鹿にしない。
ただ青年を見つめ、憐れんだ。
「まあいい。彼から紹介されたのだ、未来を貫くための刃として」
それは宣言。
「100年の平和、残される業を貫くための弾丸として」
それは世界への敵対宣言。
「君は戦う覚悟があるかね?」
彼は問う。
汚名を被りて、己の正義を信じることが出来るかと。
そのためならば、世界すらも敵に回す覚悟があるのかと。
ただただ壊れ続ける覚悟があるのかと。
彼はたった一個で無数に問いた。
「あるさ」
そして、返ってきたのは無数の、無限にも近い問いを全て両断するたった一つの答え。
生気を失いながらも、歪まない瞳。
雨に濡れながらも、揺らがない声。
幾多の血に手を染めながらも、ただそれだけは、と誓い続ける決意。
それらをたった一言の言葉に篭めて、叩きつけた。
「なるほど、なるほど」
それに怪人は笑う。
楽しげに、嬉しげに、そして祝福するように笑う。
「ならば認めよう」
手を鳴らす。
「ならば称えよう」
手を鳴らす。
「君の覚悟を、君の意志を、私は尊重する」
手を叩いて――彼は見る。
青年の瞳を“視た”。
「けれど、私は興味がある」
怪人は手を振り上げる。
ゆっくりと、手を伸ばし、虚ろな瞳の青年に手を掲げた。
「少しだけ、見せてもらおう」
始まりを。
始まりを。
「私が信じるに足りるか、君が何故その決意をしたのか」
全ての始まりを。
「君の旅を見せてくれたまえ」
そうして、青年は見る。
青年は抉られる。
刻まれる。
己の過去を、傷を、痛みを、そして――過去を。
それは一人の男の登場から始まった。
「ティーダ。ティーダ・ランスターだ! これからよろしく!」
それはニコリと笑い、珍しい変則型デバイスを使う青年。
それは青年の友となる人物。
類稀なるデバイス使いだった青年。
――これから死に逝く人。
「まだまだ修行が足らんな。もっと努力しろ、ヴァイス……お前は私のパートナーなのだから」
それは厳しい言葉を告げる女性。
同僚であり、先輩で有り続けた一人の騎士。
憧れていた人。
決して挫けない誇り高き女性。
――いつか戦う人。
「面白いな。君は、私を撃つのかね?」
それは出会ったことすら忘れていた怪人の笑み。
対峙したはずの敵。
悪を自称する偽悪者。
底知れぬ渇望を抱えた男。
――いつか交わる人。
「戦わねばならん。この地上の安堵を手に入れるために、我らは血を流しながら、刃を振り下ろさねばならんのだ!!」
そして、それは己が尊敬する人物。
平和を願い、そのための己を犠牲に、立ち上がり続ける人。
――いつか尊敬する人。
そして。
そして。
「護ってやるさ。お前も、姐さんも、全部、俺が護ってやるよ!」
未来を知らない。
光しか知らない若者の言葉。
いつかの自分。
それはいずれ来たる世界の敵との始まり。
もう一人の世界の敵の敵の物語。
対峙するは【反逆】
地上が終わらぬ闘争に明け暮れていた時。
人の目に知らぬ場所で混沌が渦巻いていた時代。
そこで、語られぬ物語があった。
この物語に魔法少女は現われない。
ただ戦いが、願いが、希望が、闇が、敵が、入り混じるだけ。
戦乱の時代に、三人の戦士が駆け抜けた。
闇が踊り、欲望が笑い声を上げた。
悪夢が踊り、反逆の狼煙が上げられた。
これはそんな戦いの記録。
【アンリミテッド・エンドライン】
『アナザーレコード・ミッシングスタート』
最終更新:2008年04月27日 22:24