第15話「ウルトラマンの資格」



「デュアッ!!」

話は一時間と数十分ほど遡り、ヴィータが双子怪獣に敗れ去ったのと、丁度同時刻。
彼女が向かったのとは別の世界において、ダイナもまた蒐集活動を行っていた。
彼の目前に立っているのは、巨大な原住生物。
その生物は、大きさに見合うだけの戦闘能力は持ち合わせており、その分魔力も期待できそうな相手であった。
それだけに……ダイナは、少々梃子摺っていた。

(思ったより、長引いちまった……一気に勝負をかけないと!!)

既にカラータイマーは点灯し始めている……残る時間は少ない。
早急に勝負をつけるべきだと判断し、ダイナは一度相手との間合いを開いた。
その直後、ダイナの体色が真紅へと変わり、そして全身の筋肉が増強される。
高い火力とパワーを以て、敵を一気に殲滅する。
そう判断して、ストロングスタイルへとタイプチェンジをしたのだ。

「オォォォォォッ!!」

ダイナは身を屈めた後、力強く地を蹴る。
その体勢のまま、相手へと勢いよく急接近し……相手の下腹部へと、強烈なショルダータックルをぶちかました。
人間で言う鳩尾に直撃したのだろうか。
原住生物は悲痛な叫び声を上げ、下腹部を押さえたまま前のめりになる。
相手に対して無防備な姿を晒す事となったその決定的な隙を、ダイナは見逃さない。
素早く、相手の両脇から胴体へと両腕を伸ばし、しっかりと抱きしめる。
そして、そのまま全力を込めて相手を持ち上げ……

「デュアアアァァァァァッ!!」

勢いよく、脳天から地面へと叩きつけた。
豪快かつ強力な、必殺のパイルドライバー。
その衝撃により、周囲の土砂が上空へと舞い上がる。
それからしばしして、土砂が降り止んだ後。
ダイナはゆっくりと両腕を解放し……それと同時に、原住生物は地面にグッタリと倒れこんだ。
勝負は着いた……ダイナの勝利である。

『ふぅ……シャマルさん、今大丈夫?』
『あ、はい。
今、病院を出る所だから……もうちょっと待っててくださいね』

ダイナはシャマルへと念話を飛ばし、自分の元にこれないかと連絡を入れる。
ヴォルケンリッター達と違って、今のダイナにはリンカーコアを摘出する能力は無い。
いや、厳密に言えばあるにはあるのだが……『ストロングスタイルである今のダイナ』には、それが出来ないのだ。
一回の変身に着き、タイプチェンジは一度だけ……もう一つの、蒐集が可能なスタイルには今はなれない。
その為、他のヴォルケンリッターに頼る以外に蒐集の手段は無く、こうしてシャマルを頼ったわけである。
一度、変身を解いた後にすぐ再変身という手段もあるにはあるのだが……それは出来ればしたくなかった。
変身は体力をそれなりに消耗する為、短期間にそう何度も変身していれば、それだけであっという間に力を使い果たしてしまう。
最悪、その所為で不測の事態に対応出来なくなるという事態も起こりうる……それだけは避けたかった。
ちなみにシャマルに連絡を入れたのは、単純に一人だけ手が空いてそうだったからである。

『じゃあ、変身解いて待ってますから。
着いたら連絡お願いしますよ』
『分かりました』

シャマルとの連絡を終え、ダイナはすぐに変身を解こうとする。
普段ならば、変身を解く際には姿を見られない様注意を払ってからするのだが、今はそうする必要は一切無い。
そもそもこの世界には、人が一人もいないからだ。
その為、今のダイナには警戒心など全く無かった訳なのだが……

「!?」

人間へ戻ろうとしていたその最中、ダイナは何者かの視線を感じ背後へと振り返る。
人はいないから、別に変身を解いても問題は無い……その、筈だった。
しかし……現実は違った。
何故なら……振り返った先には、確かに人がいたからだ。

(何で、こんな所に人が!?
いや、それよりも……見られた!?)


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「さて……鉄槌の騎士の方は、これで準備が整ったな」

丁度同時刻。
異次元空間にて、ヤプールはギラススピン打倒の為に奮闘しているヴィータの姿を眺めていた。
これで自分の思惑通りに事が運べば、ヴィータの魔力は今よりも更に高まる。
闇の書の完成は、間近となるが……ヤプールには、一つだけ不安材料があった。
ヤプールは視線を隣へと移し、そこへ映し出されている風景を眺める。
その風景の中に立っているのは、ヤプールにとって最大のイレギュラー。
ヴォルケンリッター達と行動を共にしていながらも、魔力を持たぬ存在。
しかしその戦闘力は、確実にヴォルケンリッターを超えているであろう戦士……ウルトラマンダイナである。

「出来る事ならば、完成の前に葬り去りたいものだな。
完成した闇の書相手に、勝てるとも思えんが……」

ヤプールは、早急にダイナの始末を行いたかった。
メビウスと違って、彼は全く得体が知れない相手である。
完成した闇の書を倒せるとは思えないが、万が一という事もある。
ウルトラマンを侮る事は出来ない……無敵と思われていた究極超獣や暗黒皇帝とて、彼等には敵わなかったのだ。
総力を挙げ、早急に始末をつけておきたい。
ヤプールは早速、ダイナがいる世界へと怪獣を送り込もうとする……が。

「むっ……!?」

その直前に、彼の目の思わぬ人物の姿が飛び込んできた。
ダイナから少しばかり離れた位置に立つ、一人の男。
ヤプールは、その人物の正体を知っていた。
彼にとっての仇敵が一人。
自分達の存在を追ってきた、光の戦士の一人……ヤプールの表情が、より険しくなる。
よもやこの様なタイミングで介入されようとは、思ってもみなかった。

「いや、だが……ダイナは闇の書側。
光の国の者達とは……」

しかしヤプールは、すぐに冷静さを取り戻して状況を整理する。
ダイナが闇の書の完成を目指していると言う事実を考えれば、事態は完全に自分達の不利というわけではない。
寧ろこれは……一種のチャンスかもしれない。

「……消耗した所を一気に叩けるか……?」



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(やべぇ……思いっきり、こっち見てるぞ……)

アスカは額に冷や汗を浮かべながら、眼前の人物を見つめ続けていた……その男から、目を反らす事が出来ないでいた。
白髪頭で、少々皺の入った顔。
視力が悪いのだろうか、メガネをかけている。
その容姿から判断するに、初老と呼ぶには少し遅い年齢かもしれない。
しかし……彼には、老いを感じさせられない何かがあった。

(てか……そもそも、何でこの世界に人がいるんだ?
ここって、誰も人間はいないって聞いてたのに……どうする?
話しかけるか、それともこのまま逃げるか……)
「……参ったな、驚いたよ」
「っ……!?」

どう行動すべきかを考えている内に、男に先手を打たれてしまった。
それが、アスカの焦りに更なる拍車をかける。
額に浮かぶ冷や汗が、頬を伝い地面へと落ちていく。
アスカは己の心臓の鼓動を押さえ込むかのように、胸へと片手を押し付けた。
明らかに、普段の倍は心臓が高鳴っている。
このままの状況を保ち続けていては、どうにかなってしまいそうである……何でもいい。
兎に角、場の空気を変えなければならない……アスカはそう感じ、思い切って口を開いた。

「……驚いたってのは……見てたんすよね?」
「ああ……巨人が怪獣と戦っているかと思えば、その巨人がいきなり人間になったのだからな。
驚くなという方が無理な話だ」

やはり、完全に見られていた。
自分がダイナであるという事を、知られてしまった。
胸を押さえる手の力が、自然と強まってしまう。
もしも、目の前の人物が管理局の人間ならば、これは最悪のケースとしか言いようが無い。
しかし……すぐにアスカは、その可能性が無い事に気付いた。

(あれ、でもこの人……今、巨人って俺の事言ったよな?
管理局の人なら、ウルトラマンって普通は呼ぶはずだし……てか、ダイナの事知ってるよな?
それなのに、こんな風に何ともなさげにってことは……)

相手が管理局の人間なら、この反応はおかしい。
自分の事を警戒していないどころか、ウルトラマンという呼称すら使わない。
これはつまり……自分の事を知らないという事ではなかろうか。
人のいないこの世界にいる理由に関しては、恐らく他世界からの旅行者か何かなのかもしれない。
そう考えると、辻褄は合う。
アスカは己のその推理に納得し、そして大きく溜息をついた。
相手が管理局の人間でないのならば、まだ大分気が楽になる。
ならば後は……適当に本当らしい嘘をついて、誤魔化すのみ。

「あ~……今のは、変身魔法の一種なんすよ。
ああいう巨大な奴を相手に戦うには、やっぱ同じサイズでいかないとって思って」
「成る程、そういう事だったのか。
しかし、なら何故あんな怪獣を相手に戦っていたんだ?」
「それは……」

変身については誤魔化せたが、別の疑問をぶつけられ沈黙する。
確かにその通りである……相手からすれば、こんな人のいない世界で孤軍奮闘する理由が分からない。
無理に戦わずとも、逃げるなり何なり出来るのだから。
アスカはこれに、どう答えていいか分からなくなる。
まさか、闇の書の事を言うわけにはいかない。
だとすれば……強くなる為の特訓だとでも言うべきだろうか。
強引ではあるかもしれないが、通らなくはない……アスカはそう思い、口を開こうとする。
しかし……その瞬間だった。

「アスカさ~ん」
「あ、シャマルさん……」
「む……?」

二人の上空から、シャマルがやってきた。
何とも、絶妙なタイミングで来てくれたものだ。
アスカは、大きく安堵のため息をついた。
これならば、念話で相談しつつ嘘を考えられる。
十分、場を凌ぐ事は可能である……そう思っていた。
しかし……この直後。
目の前の男が、予想外過ぎる言葉を口にしてしまった。

「闇の書の……守護騎士……?」
「えっ!?」

アスカの表情が一変し、シャマルは硬直し動きを止めてしまう。
無理もない反応である。
いきなり己の正体を当てられてしまったのだ……驚くなという方がおかしい。
ましてや、ウルトラマンに関する知識は全くない相手なのにも関わらずである。
アスカは、一体どういうことなのかと困惑するが、そんな彼に素早くシャマルが念話をする。

『アスカさん、この人……誰なんですか?
私の事を知ってるって事は、もしかして管理局の……』
『いや、それが俺の事は知らないみたいなんすよね。
だから、管理局の人じゃないと思うんだけど……俺も今会ったばっかで。
一体何者なんかは……』

途中まで答えておいて、アスカはある重大な事実に気がついた。
考えてみれば、一番大事なことを聞いていなかった。
本来ならば真っ先に聞くべき事を、忘れてしまっていたのだ。
すぐにアスカは、男に対し尋ねる。

「……あなたは、一体何者なんですか?」

相手は一体何者なのか。
そう尋ねた後、アスカはリーフラッシャーをすぐに抜ける様、ポケットに手を伸ばす。
シャマルも臨戦態勢を取り、すぐにでも行動に移せるようにする。
返答次第では、攻撃もやむをえない……二人は息を呑み、男の次の言葉を待つ。
そして、しばしした後……男は、ゆっくりと口を開いた。

「……私は、色々な異世界を旅している。
闇の書の事は、その最中に聞いたんだ。
完成すれば、主に莫大な力を与える禁断の魔道書であり、その主には四人の守護騎士が着くと……
それで、話に聞いたのと君の容姿とが同じだったから、もしかしたらと思ったのだが……」
「え……?」

男の返答を聞き、アスカとシャマルは互いに顔を見合わせた。
自分達の予想に反し、相手は敵でも何でもなかった。
ただ単に、シャマルの事を知っているだけだったのだ。
考えてみれば、守護騎士は全員、闇の書と共に転生と再生を延々と繰り返す存在である。
その最中で、こうして一般人にも知られる可能性は十分あるのだ。
しかし……そうだとすると、やはり問題が一つある。
この男のいう闇の書の守護騎士とは、はやて以前の持ち主達に仕えていた自分達の事。
つまり……この男は、自分達を危険な存在だと認識しているのではなかろうかという事である。
もしそうだとしたら、最悪攻撃される可能性だってある。
シャマルは以前警戒を続けたまま、男の様子を伺う……だが。
そんな彼女の考えを、男は見事に裏切る回答をした。

「……話とは、どうも違うらしいな」
「え……?」
「闇の書の守護騎士とは、感情も何もない、ただ主の命令だけを忠実にこなす存在だと私は聞いていた。
だが……君は、話とは違う。
澄んだ良い目をしている……誰かを守りたいという思いを持った、優しい者だというのがよく分かるよ」

男は、シャマルが危険人物であるとは認識していなかった。
寧ろその逆……彼女がはやて以前の主の元にいた彼女とは、違うという事を見抜いていたのだ。
二人とも、開いた口が塞がらない。
先程からずっと、この目の前の男に考えを裏切られてばかりである。
それも、自分達にとって都合のいい方にばかり……

(一体、何なんだよ……?)
「……アスカと言ったな。
君が、今の闇の書の主なのか?」
「え、俺?
いやいや、俺は違いますよ」
「なら、どうして彼女達と一緒にいるんだ?}

闇の書の主でないのなら、何故守護騎士達と行動を共にしているのか。
それは、至極当然の疑問である。
シャマルはアスカを心配しつつ、その視線を向ける。
相手は闇の書に対する知識を、少なからず持っているようである。
下手な答え方は出来ない……妙な誤解を生むような結果にだけはなって欲しくない。
しかし念話でアドバイスをしようにも、自分にも良い答え方が思いつかない……全ては、アスカの返答次第。
そして、ホンの数秒程経った後……アスカは、真剣な顔つきをして口を開いた。

「……守りたい子がいるんです。
皆にとって……俺にとっても、本当に大切な家族の一人なんです。
だから……闇の書が完成すれば、きっと……俺は、助けたいんです」
「アスカさん……」

アスカは、素直に真実を言った。
今の自分には、助けたいと思える者がいる。
守りたいと思える、大切な者がいる……そしてその願いを遂げる為には、闇の書の力が必要であると。
男はアスカの真剣な眼差しを見て、言葉を失った。
そこに宿りしは、迷いの無い強い決意……絶対に成し遂げようという覚悟。
そして、視線を少し逸らしてみれば、傍らに立つシャマルからもまた同じものを感じる事が出来た。

「……優しいんだな、君達は」

男の顔に微笑が浮かぶ。
シャマルも……そしてアスカも、大切な者を守りたいからこそ戦っていたのだ。
その真っ直ぐな気持ちは、正しく自分達が抱えているものと同じである。
彼等がどの様な人物なのかは、これではっきりした。
ならば……もう、これ以上隠し事をする必要は無い。
男は、決意を固め……アスカへと視線を戻した後、静かに口を開いた。

「大切な者を守る為に、己が出来る全てを賭ける……住む世界の違いこそあれど、我々は同じだ。
君もまた……立派な、ウルトラマンだ」
「えっ……!?
ど、どうして……!!」

男の口から出た、予想外の一言……ウルトラマンという単語を聞き、アスカとシャマルは驚き目を見開いた。
ウルトラマンに関しては何も知らないとばかり思っていたのに……一体、どういう事なのか。
どうして、ウルトラマンの事を知っているのか。
アスカは男に対し、そう尋ねようとするが……寸での所で、その理由に気付いた。
考えてみれば、先程から自分達に都合がいいように予想を裏切られていたのは……こういう事である。

「……騙してたんすか?」
「……本当にすまない。
だが、どうしても確かめたかったんだ……果たして君達が、どの様な思いを抱いているのかを」

男は、アスカとシャマルに嘘をついていた。
ワザと、ウルトラマンの事を知らないかの様に振る舞い……彼等と話を出来る状況に持っていったのだ。
闇の書に関して口にしたことは、全て本当のことではあるのだが。
兎に角、話を出来た御蔭ではっきりと確認する事が出来た。
守護騎士やアスカ達の戦う理由を、その思いを。
そして……アスカが、ウルトラマンを名乗り戦う資格を持っているという事を。

「……自己紹介が遅れたな。
私はウルトラマン……地球での名は、ハヤタだ」

男―――ハヤタ=シンは、己の名を二人へと名乗った。
彼こそが、地球で最初にその呼び名をつけられた光の巨人。
全ての発端といっても過言ではない存在……ウルトラマンである。

「……ハヤタさんは、ウルトラマンメビウスの仲間なんですか?」
「ああ……メビウスは、我々ウルトラ兄弟の大切な弟だ。
私達もまた、メビウスと同じく闇の書の完成を阻止する為に戦っている……ダイナ、シャマル。
君達が悪意を持って戦っているのではないということは、はっきりと分かった。
ならば……私達も、君達の思いを汲みたいと思う。
闇の書を完成させずとも、君達が助けたいと願う者を助ける手段は無いか……それを探す時間をくれないか?」

ハヤタは二人の思いを汲んで、平和的な解決方法を探したいと答えた。
闇の書の力に頼らなければならぬほどの事となると、簡単に片付けられる問題ではないのは明らかである。
しかし、何か他に方法があるかもしれない……闇の書に頼るにはまだ早い。
きっと何か、探せば方法はある筈である。
それに……二人には伏せているが、ヤプールの存在もある。
もしも自分達の思っている通り、ヤプールの狙いが完成した闇の書にあるとしたら……闇の書を完成させる訳にはいかない。
そう思っての言葉であったのだが……二人は、それを受け入れなかった。

「……すみません、ハヤタさん。
そう考えてくれる事は嬉しいのですけど……」
「……例え、闇の書の力を利用しようとしている者がいるとしてもか?」

ハヤタは、闇の書を狙う者がいると二人へと話す。
悪意ある者に闇の書が渡った時の恐ろしさは、その側でずっといた彼等ならば分かっている筈である。
だから、この事実を聞けば止まってくれるかもしれないと思い口にした。
しかし……この時ハヤタは知らなかったが、彼等は既にその事実を認識してしまっていた。
その相手は、ヤプールではなく謎の仮面の男ではあるが……どちらにせよ、彼等はその危険性を承知の上で戦っているのだ。
ハヤタの言葉を聞いたところで、最早今更なのである……いや。

「……俺達には時間がないんだ。
もう……いつ死んじまっても、おかしくない状況なんだ。
他の方法を探している時間なんて、もうない……だから!!」

例え今更で無かったとしても、彼等は止められなかっただろう。
それ程までに……彼等のはやてを守りたいという思いは、強いのだから。

「ハヤタさん……俺達は、ここで止まるわけにはいかないんだ!!」

ここで止められるわけにはいかない……勝って罷り通る以外に、道は無い。
アスカはポケットからリーフラッシャーを抜き、真っ直ぐに構える。
ハヤタもそれを見て、懐へと手を伸ばす。
彼等の気持ちは痛いほどに分かる。
己もまた、大切な者を守りたいと思ったからこそ戦い続けてきたのだから。
しかし……だからこそ、彼等は止めなければならない。
これ以上、誰かを傷つけない為にも……大切な者達を守る為にも。

「それでも……私はその者の最期の時が来るまで、ギリギリまで方法を探し続ける。
最後まで諦めず、信じる心の強さが不可能を可能にする……それが、ウルトラマンだ!!」

ハヤタは懐から、己の変身道具―――ベータカプセルを抜き、天高く掲げた。
そして、そのスイッチを入れると同時に……周囲に閃光が走った。
アスカとシャマルは、その眩さに一瞬瞳を閉じるが……アスカはすぐにハヤタへと向き直り、リーフラッシャーを起動させる。

「ダイナアアァァァァァァァァァッ!!!」

リーフラッシャーが光を発し、アスカの体を包み込む。
両者が放つ光は、辺り一面をこの上なく明るく照らし……やがて光が消え去った時。
その場には……二人の戦士が立っていた。
ウルトラマンダイナと……そして、ウルトラマンが。
シャマルがいる事に対する配慮だろうか、二人とも巨大化はしていない。
二対一という状況でこそあるが……正々堂々と戦いたいと思い、敢えてこうしたのだ。

「……いくぞ、ダイナ、シャマル!!」

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最終更新:2008年04月30日 16:46