闘うための力……。
次元世界には別けて二つの特性の力が存在する。
一つは『魔法』。
かつて次元世界では質量兵器が主な武装ではあったが強力な反面誰にでも簡単に扱えるデメリットがあり禁止とされて。新たに魔法による力を獲得した。
杖とも言われる『デバイス』を手に力を振るう。
そして、もうひとつの力が。
『無双』である。
無双は魔法を使わず。魔法を越え、他に並び立たない力。
魔法文明が始まってから発見された力でこれは生まれ持った素質で扱えるかが問われる。
それは簡単でいて難しかしい。
一対多数での戦闘に置いてどう闘えるか。で判断される。
それゆえ、無双を扱う者は100人居るか居ないか。魔導師に比べれば数が少ない。
時空管理局にはその半分以上の無双達が在職し、今日いたって陸・空ともに活躍している。
山岳区画無双部隊『蜀』部隊長 劉備玄徳 一等陸佐。
湾岸区画無双部隊『呉』部隊長 孫堅文台 ニ等空佐。
陸士003部隊隊長 徳川家康 三等陸佐
本局混成部隊『魏』総指揮 曹操孟徳 提督
次元航行部隊 織田信長 執務官とその補佐、豊臣秀吉と明智光秀。
陸士103機動部隊部隊長 武田信玄 二等陸佐
第005航空機動部隊部隊長 上杉謙信 一等空佐
これらが管理局でその場所を手に入れた無双達だ。
……そんなある日、最近創設されたばかりの部隊『機動六課』が新たに分隊を作る為に部隊長・八神はやてが魏呉蜀、秀吉、陸士103それぞれに人員貸与の話を持ち掛ける。
無双の部隊長は快く承諾し。無双を送りだし、彼らが今日機動六課にたどり着く。
そして八神はやてはこの日、最強の傾奇者であり、大切な家族である一人の無双のを迎えるために彼の元へ赴いていた。
無双NANOHA 魔王再臨 第1章「集いし無双の者達」
「機動六課ねぇ……。」
※ミッドチルダ北部のとある屋敷。
長い金髪をだらしなくおろしている男性が畳敷きの床でキセルを吹かしながら呟く。
「そうや……管理局はいつもいつも後手になってしまうから。今度は先手を打てるような精鋭部隊を創ろうって思って。今、出来たばっかり。」
「むー慶次さん、タバコばっかり吸ってないでちゃんと聞いて下さい!」
そう告げるのは管理局の制服をきた栗色の髪の少女と彼女のユニゾンデバイス。聞けばその新設部隊の部隊長になったらしい。
えらくなったもんだ。
「わりいリイン、つい癖でな。ふー」
「けほっけほっ」
妖精のような大きさの彼女に慶次は微笑みながら煙を吹き出し、近くにあった火鉢の縁にキセルをカンカンと叩いて灰を捨て。男はキセルを懐にしまう。
「で、一介の傾奇者の俺になんの用なのかね?はやて」
むっ……。
その言葉にはやてとリインは途端に眉を吊り上げて彼に詰め寄る。
「ミッドチルダに来てから急に出てったん誰やったっけ。心配してたんやで?」
「そうです、リインを騙して水のお風呂に入れさせたこと忘れたなんて言わせませんですよ!」
だが、その反応は慶次にとって逆に彼女らへの親しみさから笑って答えてしまう。
「ハーハッハッハ、そういえば、そうだったねえ。ま、家族に何も言わず出てって悪かったな。」
「もう……。今日は慶次のスカウトに来たんや。みんなも会いたがってるし。慶次以外にも無双の人もおるし。どうかな?」
「そりゃ面白い御仁がいそうだねぇ……。」
親しい知り合いへ笑顔を見せてそう述べたはやてに慶次は顎に手をそえて呟く。
なんだか必死だねぇ。
さっきから彼女の目を見るたびにそんな印象が隠れているように見える。
「まあ、色んな部隊に雇われてあちこち行ってきたしな……。今度は、他でもない家族の八神はやてやってるって部隊で傾かせてもらうぜ。」
彼女の本質を再び見極めたくなった……。
惚れた主人が今、何を見て何の為に闘っているのか。慶次はそう思いながら嬉しそうにしている彼女らに微笑む。
「またよろしくな。お二人さん。」
「うん、よろしくな。また松風に乗せてな。」
「あ、リインも乗りたいですー♪」
「うっし。じゃあ、その六課に行くついでだ。今松風に乗せてってやるぜ。」
「今って、部屋の中で呼ぶ気なん!?」
「えぇっ!?」
血相を変え、慌てて聞くが既に遅く慶次はピュイッと口笛を吹き--。
ドカーンッ!!
突如として三人が居た部屋の天井が音を立てて崩れて、荒々しい髦の馬が現れる。
「ブルッ!!」
「へ、部屋壊してますよ慶次さん!?」
「タァハッハ。なあに帰る家が出来たんだ。構わねぇさ。」
「はう……〃〃」
あわわとうろたえているリインの頭を慶次が指先で撫でて落ち着かせているのをはやては少し羨ましく思っていた。
良いなぁ。
私も昔みたく頭撫でてほしいけど。
「何やってんだい。はやて、さっさと捕まりな。」
「えっ!?」
慶次の声にハッと気が付くといつの間にか彼は金髪を後で纏め。既に松風に跨がって自分に手を差し延べている。
リインも慶次の肩に捕まっているのが見えた。
先程、松風により破壊されて天井には大きな穴が開いており蒼い空がそこから広がっているため、慶次の金髪がより輝かしく見え、はやてにはそれが彼らしく格好よく感じさせていた。
「う、うん……うわっ!!」
恥ずかしそうに慶次の手を取ると彼は勢いよくはやての手を引き、抱き上げる。いわゆるお姫様だっこの形で慶次ははやてを松風に乗せていたのだ。
「さぁて、その六課ってのはどっちかね?」
「ちゅ、中央区画の海の近くです〃〃」
「ほう、海の近くかい。粋だねぇ」
二人の状態に呆然としながらリインが答えると慶次は面白そうな笑みで唸る。
「うーし、松風。ひとっ走り駆けようかね?」
慶次の尋ねに「ああ」と頷いたかのように鼻を鳴らす松風。
「け、慶次……その。まさかこのままで空走るん?」
嫌な予感と今の状態が嬉しくもあるが複雑な気持ちで尋ねると
「天下御免の傾奇者と名馬。前田慶次と松風。これより機動六課へと馳せ参じるぜ!はやて、リイン。振り落とされんなよ!!」
そう叫んだ瞬間、松風は畳を踏み締め。果てしなく広がる蒼い天空へ高く跳び、走り出した。
「やっぱりいいぃぃぃぃぃ--」
「きゃあぁぁぁぁ--」
※ミッドチルダ中央区画湾岸地区。 時空管理局 遺失物管理部対策部隊 機動六課。
松風が空を走っているころ、この隊舎のロビーに一人の青年が姿を表す。
「今日から着任だな……。」
肩まである長い髪を後ろで留めるその青年は玄関を見回しながら呟く。
ここで皆と闘うことになるのだな……。
新設された隊舎ということもあり、真新しい壁や床の照明を反射する輝きで青年は身を引き締め、不備のないように制服のネクタイを締め直し、整える。
「趙雲?」
聞き慣れた声を掛けられて、声の聞こえた方に視線を向けると、制服を着た赤毛の少女がこちらへと歩み寄ってきた。
「お、やっぱ。趙雲だ。」
目の前まで来て確認した彼女に趙雲は敬礼する。
「ああ、失礼いたす。本日から。遊撃として「ちょうど今ひよっこ達の訓練終わったところだ。陸遜も来てるぞ」
ひよっこ達?
着任の挨拶として取った敬礼の手を握っていた。
ひよっことは。フォワードの四人の事か……。
蜀から離れる時に六課について聞いていた話を思い出しながら趙雲は黙ってヴィータについて行く。
「他の遊撃はあと何人なんですか。」
そう尋ねているのは趙雲よりも早く、機動六課に来ていた無双の少年。
名は陸遜伯言。
年はフォワードメンバーの年長二人と同じ。
湾岸無双部隊『呉』に所属していたが、今回の八神はやての要請に孫堅は戦略に長け、さらに六課のメンバーとも親交があったこの少年を送って応えた。
「あとは……六人でしたよね?」
陸遜の質問を受けた無双メンバーの人数を右手の指を折り曲げて数を確認するシャーリーになのははコクリと頷く。
「うん。そろそろ来るころだと思うんだけど。」
「おーい。」
そこにヴィータの声が掛かり、振り向くと彼女達にとって懐かしい青年が彼女に連れられてやってくる姿が目に入り自然となのはは微笑む。
「あ、久しぶりだね趙雲くん。」
嬉しそうに言葉をかけてくれた彼女に趙雲も「ああ」と頷く。
「懐かしい顔触れとまた同じ任務に就けることを嬉しく感じるよ。」
「趙雲さんは何時こっちに来られたんですか?」
シャーリーの尋ねにヴィータは「さっきだよな?」と重ねて聞き、趙雲は頷く。
「先程、ロビーに着いたばかりのところで彼女と会ったんだ。」
「……そっか。よろしくね。趙雲くん」
ニコリと優しい微笑みを趙雲に向け、なのはは手を差し延べ。
握手に応じ、趙雲も彼女に微笑んで返事をする。
「また、よろしくお頼みもうす。なのは」
「呉蜀から一人づつ、という事は魏からも無双を呼んでいるのですか?」
趙雲が居て、自分が居ることでふと思ったことを陸遜はヴィータに尋ねる。
「ああ、惇兄と淵が来るんだって。今日、シグナムが空港まで迎えに行ってて。はやても大事な知り合いを連れて来るんだ。」
「大事なお知り合い、ですか?」
彼女の言葉で含みのある言い方をした言葉が気になった陸遜に聞き返され、ヴィータは前まで一緒に居た男の姿を懐かしむ。
知り合いっちゃ、知り合いだよな。一緒に住んでたんだし……。
「まあな、前田慶次って派手な奴なんだよ。」
「な……慶次殿とお知り合いなんですか?」
陸遜は意外な名前に少し驚きを見せる。
すごいな……。
彼は以前、陸遜が呉として任務に赴いた時に突如として現れて苦境に立たされていた自分を助けたことがあり。他にも遊撃として神出鬼没の働きを見せる為に管理局で彼の名は知れ渡っていたのだ。
その為に慶次を部隊に引き入れたいという者が何人も彼を説得に行くが「俺は俺の惚れた人以外に仕える気は無いんでね。」と言い、首を縦には振らないと聞く。
「慶次殿と同じ部隊になれるなんて凄いですね。」
「まあ、そりゃ。アイツは家族だからな♪」
誇らしくそう答えるヴィータに陸遜は改めて敵わないなと悟る。
同じ頃。
「機動六課か……」
聳えたつ建物を見上げる少年が二人居た。
「今日からの任務。がんばりましょう三成殿。」
傍に居た少年からそう言われ、三成は少し呆れたように双肩を浮かす。
「上官に会う前から意気込んでいてどうする幸村。」
「それが、こんな良い場所で。そのうえ親しい方々と同じ任務に就けるのが嬉しくて。」
ニッコリと微笑んで、隊舎や辺りの風景を見て言う彼とは対象的に三成はどこか良い表情をしていなかった。
俺にはその気持ちが理解しがたいな。
なんであの上官とまた同じ部隊に就かなくてはならんのだ。正直頭が痛い。
「秀吉様とねね様の薦めだから仕方なく話は受けたが……。」
はぁ、とため息を付き頭を抑える三成。
この新設された機動六課のことはたいして悪く考えてはいない。彼が快く思っていないのは別のことであった。
「あのー……」
背後から声をかけられ、振り返るとショートカットの青い髪の少女が恐る恐るといった感じで立っており、傍にはツインテールのオレンジ髪の少女や子供が二人居る。
「六課に御用なんですよね?」
「知らない人間が居るのだからそれぐらい察したらどうなのだ。」
「あ、すいません……。」
「み、三成殿。」
「ふん、今日から一応はこの部隊に入る。石田三成二等空士だ。」
「同じく、今日から参入する真田幸村二等陸士です。」
二人からのその返事に蒼い髪の少女は嬉しそうに三成と幸村の手を取って微笑む。
「私スバル・ナカジマ。スバルって呼んで下さい♪」
「おい(ちょっとスバル)、いくら同じ部隊だからといって初対面から馴れ馴れしいぞ貴様。(わよアンタ。)」
偶然にもリンクしたツインテールの少女と三成の二人の注意にスバルは「ご、ごめ~ん。」と慌ただしく引っ込む。
「私は、ティアナ・ランスター。階級は今のスバルって子と同じ二等陸士。よろしくね。ティアナって呼んで。」
「では私も幸村と呼んで下さい。」
「ふん、好きに呼んでくれ。」
ムっ。
何よ、コイツ……。
礼儀正しい印象の幸村とは違い、先程から冷たく突き放す言い方の三成にティアナはムッとした表情になってしまう。が、まだ知り合ったばかりでいろいろ言い合うのはまずいと理性がストップをかけてくれた。
「あの、僕。エリオ・モンディアルと言います。階級は三等陸士です。」
「私はキャロ・ル・ルシエと言います。私も階級は三等陸士です。」
「ああ、よろしく。エリオ、キャロ。」
自分の前に出て、元気よく挨拶する年少二人の姿に笑顔で接する幸村にティアナはすこし苛立ちが解れていく。が
「まあ、一応よろしく頼む。」
とツンとした言い方をする三成に我慢出来なくなってしまう。
「ちょっと、アンタ。こっちはちゃんと挨拶してんのになんでこっち見てないのよ!」
「何を言ってるんだ、俺はちゃんと挨拶した。それで良いではないのか。それになんでそんな事で貴様にうるさく言われなくてはならない!」
「貴様って……アンタね!」
口論に発展し始めた二人をスバルと幸村がそれぞれ抑えるが、エリオとキャロはどうすればいいのかオロオロとしている。
「ティア~ダメだよ。」
「三成殿、抑えて下さい。」
「……。」
ふと、親友の抑えと年下二人のあたふたしている姿が目に入り、三成は自分が恥ずかしいことをしているとおもいしらされ。舌打ちをする。
何をしているんだ俺は……。嫌な気持ちを他人にぶつけるなど。これでは小物ではないか……。
眉を吊り上げて睨んでいる女はどうでも良いが悪いのは俺だ。
「その、気を悪くさせてしまった……別のことで苛立っていたのが表に出てしまった。スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。幸村。すまなかった。」
「え……」
突然、非を認めた三成にティアナは呆気に取られてしまう。
な、なんなのよ。いきなり謝るなんて……。よくわかんないわコイツ。
「な、なら良いわ。エリオ達がかわいそうだったから怒っただけだし。」
プイッと三成から顔を背けるティアナにスバルはホッとしていた。
正直、どうなるかなって思ったけど。
三成さん、良い人だ……なんとなくわかる。だって、最初に会った頃のティアナみたいだし。
仲良くなりたいな……。
何故か三成を見てそう思うスバルは場を切り換えようと最初の話題を持ち出す。
「今日、来たってことは三成さんと幸村さんこれからなのはさん達に会うんですよね。良かったら案内しますよ?」
願ってもなかった提案に幸村は直ぐに「お願いしたい。」と答え。
スバル達が隊舎へ案内しようとしたその時。
三成と幸村は何かが空からやってくるのを察知し。
「「来るぞ!!」」
「「「「へ?」」」」」
三成はティアナとスバルを。幸村はエリオとキャロを抱えてその場から跳び退く。
ドシンッ!!
そして二人が危惧したとおりに突如として衝撃と粉塵が辺りに巻き起こると共に猛々しい髦の大きな馬に跨がった大柄の男が居た。
「ハッハッハー、悪いねぇ。驚かせちまったかい……ん?どうした、鳩が豆鉄砲喰らっちまった顔して……」
しかし、一同は別の何かを見てア然としている……それは男の肩の上と腕の中でぐったりしている機動六課部隊長の八神はやてとロングアーチのリインフォースであった。
「ダーハッハッハ、本当に空飛んでやがるな。」
わ、笑ってごまかした?
目の前の大男に一同は何となくそう思った。
「政宗……」
機動六課に選ばれし無双が集結しつつあった時、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは今朝訪れたばかりの保護施設に赴いていた。
理由は車の中で突然聞かされた話を聞いたからだ。
なんで、いなくなったの政宗……。
部屋に踏み入る一歩一歩が重く、フェイトの悲しげな視線に映るのは政宗が自分に名前を教えてくれた時の彼の嬉しそうな顔だけであった。
『儂は伊達政宗。 フェイト、誘ってくれたこと感謝する。』
政宗……。
続く
最終更新:2008年05月17日 08:51