人がいれば部屋の雰囲気は変わって見えるものだ。
さっきは不気味さも感じたこの部屋も、はやてとリィンがいてニコニコしていればそれだけで華やいで見える。
「はい、コーヒーですよ。どうぞ」
「ははは。はぁ、どうも」
リィンの大きさへのつっこみはとりあえず引っ込めておくことにした。
ハレは不安でびくびくしていたからだ。
「ごめんな。居眠りなんかしてしもうて。それにしても、ええ夢やったなぁ。なーんも、考えずにぼーーっとできるところでな、ふわふわー、としとったんよ。またあの夢見たいなぁ」
「あ、私も同じ夢見てました。はやてちゃんと一緒にぼーーっとしてました」
うっとりしているはやて。
ハレは横目でなのはの目を見て視線で伝える。。
(なんか、みんな覚えてないみたいですね)
なのはもハレの目を横目でちらっと見る。
(そうみたい。それでよかったかも)
声を出していないし、念話も使ってないが特定案件に関わることについてだけは視線で伝わるようになっていた。
ようやく、うっとりしていたはやてが戻ってくる。
「あ、またぼーっとしとった。いけんなぁ。で、ハレ君とグゥちゃんの見学やったな。予約なしやけどOKや。しっかり見ていったてな」
「ありがとう」
ハレの声は弾む。
「土産がある」
いきなりグゥが立ち上がる。
「おみやげぇ?」
首を縦に振るグゥ。
(へぇ、グゥもちゃんと気をつかってんだな)
グゥは胸に巻いている布の中から大きめの篭を取り出し、後ろを振り向く。
篭を体の前に持って行って口を開く。
金属がこすれるような音がしてグゥの口から色とりどりのなにかが出てきて篭の中に積み上がっていく。
「どこから出してんだよ」
その高さがグゥの身長の二倍になったとき、グゥは振り向いて篭を机の上に置いた。
「土産だ」
「ありがとなぁ。なんやろ」
「いや、何もなかったように受け取られても」
はやては篭の中のものを一つ取り出して・・・凍った。
何と言ったらいい物か形容しがたい代物だった。
「ああ。それ、ポクテだよ」
「ぽく・・・・て?」
リィンは1mほど引いている。
「えーと、これ、どうやってつかうんかな?」
「食べるんだ」
「食べ・・・る?」
「うん、ポリフェノールやカロチンを含んで体にいいんだ。ジャングルではよく食べるよ」
「これが・・・」
はやてはポクテの耳を持ってぶら下げてしげしげと観察した。
「ポクテ・・・鳥にはみえんし、牛や豚でもなさそうやし・・・なんなんやろなぁ」
扉が開いた
「はやてー、持ってきたぞ」
ちょうどヴィータが書類の束を持って来た。
「うさぎだよ」
「え?うさぎ?」
「そうなんですか?」
「うん」
紙の束が落ちる音がした。
ハレ達がそちらを向く。
ヴィータが持っていた書類の束をまき散らしてすごい形相で迫ってきていた。
「嘘だ!それがうさぎなわけねーだろ」
「でも、ジャングルでうさぎっていったらこれだし」
「いいや、うさぎなわけがねー。うさぎってのはな、もっとかわいいんだよ。こういう風に」
ハレにのろいうさぎを見せつける。
「それも、かわいいという基準からは外れているような」
「お前はわかってねーんだよ。いいか、よく聞け。うさぎってはな・・・」
横からヴィータにまとめられた書類が渡された。
「ありがとよ・・・・ん?」
書類を私のは青色のポクテだった。
「うあぁあああああああああああああああああああ」
周りを見る。
動いているのは青色のポクテだけではない。
篭はもう空になっていてポクテは部屋中にいる。
「お前、生きたまま持ってきたのか?」
「活きがいい方がいいとおもってな」
「よすぎだああああ」
さらに、全てのポクテがヴィータを凝視している。
「な、なんだお前ら・・・おい、いったい何なんだ」
数歩後ずさる。
ポクテもヴィータに数歩近づく。
扉に向かって全力疾走するヴィータ。
無数のポクテがそれを追う。
あまりの量の多さで扉でポクテ達は扉でつまるが、すぐに外に出てヴィータを追いかける。
「来るな、こっち来るなーーーー」
ドップラー効果でヴィータの叫び声が聞こえた。
「もしかして、ポクテに嫌われた?」
「いや、あれはポクテに気に入られたな」
「うちのヴィータが?でも、なんできにいられ・・・・あ」
「あ・・・そうか」
「あれですね」
「あれね」
全員がヴィータのバリアジャケットの帽子側面についているのろいうさぎを思い出して納得していた。
数日後。
ヴィータの部屋と机は絶えずきれいに整頓され、制服にもアイロンが丁寧にかけられるようになったという。
局員達はそれを小人さん達の仕業だと噂した。
「まさか・・・二人目のポクテ少女?」
最終更新:2007年08月14日 14:33