「へぇ、それじゃ社会科見学に来たの」
なのはの案内でハレとグゥは本局の廊下を歩いている。
前から本局の職員が来た。
なのはとハレは、小さく会釈。
グゥは右手を挙げて挨拶した。
「あははー、そうなんです。いきなり来てすいません」
「いいよ。ホントは事前に連絡しないといけないんだけど、ハレ君やグゥちゃんにはこの前助けてもらったし、私が手続きしておくよ」
「ははは、ありがとうございます」
愛想笑いをしながら、ハレはグゥを横目で見る。
「それにしてもグゥ、ここのどこが魔法の国なんだよ」
「なのはは自分は魔導士だと言っていたし魔法を使っていた。ならば、ここは魔法の国に違いあるまい」
「まぁ・・・・」
右の壁を見て、ぐるっと天井を見る。
「そうなんだけどさぁ」
今度は左の壁を見ながら前を見る。
別の職員が角を曲がるのが見える。
「魔法の国って言うより、都会って言うか、未来都市って言うかなんというか・・・」
また、別の職員とすれ違う。
頭を下げたなのはがハレのおかしな動きに気づいた。
「どうしたの?ハレ君」
「いえいえいえいえいえいえいえ。なんでもないです」
「そう?だったらいいけど・・・じゃあ、まずは隊長のはやてちゃんに会いに行きましょう」
「はい、わかりました」
二人は静かな誰もいない廊下を進んでいった。
はやての部屋は隊長の部屋だけあって広い。
部屋の主のはやてが見えないとなおさらだ。
「あれ?はやてちゃんどこに行ったんだろ?はやてちゃーーん?」
返事はない。
周りを見ていたハレは小さいミニチュアの机を見つけた。
「へー、小さい机ですね。これって、そのはやって人の趣味ですか?」
「ううん、ちがうの。リィンの机なの。後で紹介するね」
「え・・・・あんな机を使う人がいるのか」
ついたての後ろを見ていたなのはが戻ってきた。
「おかしいな。今日はここにいるはずなのに。ハレ君、お茶でも飲んでからまたこよっか」
二人は部屋を出て行った。
誰もいなくなった部屋には湯気の立つコーヒーカップがあった。
中では、ミルクが黒いコーヒーの中で渦を巻いて回っていた。
誰とも会うことなく来た食堂は明らかにおかしかった。
誰もいないのだ。
まだ食事時には遠いが誰もいないなんて事はないし食堂で働く調理員すらいない。
鍋は火をかけっぱなしで煙を噴いていてハレとなのはがあわてて消したくらいだ。
「おかしいな・・・みんなどこに行ったのかしら」
調理場以外の場所もよくよく見るとおかしい。
コーヒーカップやティーカップが置かれている机の上もあるし、そのカップから湯気も上がっている。
フォークの刺さったケーキがある皿もあれば、麺をつまんだまま落としたようなうどんもあった。
「はのはさん・・・俺、こういう話、聞いたことあるんですけど」
「私も聞いたことあるの」
「マリー・セレスト号でしたっけ」
「うん、それ」
二人は顔見合わせると、その場を走って飛び出した。
なのはとハレはそれからいくつかの部屋に飛び込んで行った。
だが、どの部屋にも誰もいない。
決して空にしてはいけないはずの部屋にさえ誰もいない。
誰1人としていない。
廊下で誰かに会うことさえない。
本局の部屋を半分ほど見たとき、
「うわー」「きゃーーー」「ひえええ」「ぐああああああ」
遠くから大勢の悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴の方に走るなのはとハレ。
その二人に、角のから飛び出してきた赤い少女がぶつかった。
「ヴィータちゃん!」
「なのはか!」
ころんでしまったヴィータとハレになのはが手を貸す。
「どうしたの?」
「みんな・・・みんなやられち待った。あいつに・・・シグナムも、シャマルも、ザフィーラも・・・それに・・・はやても」
ヴィータが飛び出してきた角から、ひたひたという足音がやけにおおきく聞こえてきた。
「ちっ、もう来やがったか。なのはは逃げろ!それから、戦力を整えてくるんだ。いいな!ここはあたしが引き受ける!」
角に全速力でダッシュするヴィータ。
「いくぜ。みんなの仇だ!ラケーテンハンマー!!「Jawohl」・・・なっ、やめろ、はなせ・・・はなせ、うわあーーーーーーー」
すぐに静かになった。
再び、ひたひたと足音が大きくなってくる。
足音は角に迫り・・・・
グラーフアイゼンをつかんだヴィータの手を口から出しているグゥが姿を現した。
「お前かぁあああああああ!!!!!!」
グゥが首をちょっと動かして、ちゅるんと手を飲み込もうとするのをハレがつかんで止める。
「グゥさん。一体何をやっているんですか?」
「ちょっとな」
「ちょっとな・・・じゃねええええ。吐け、全部吐き出せ」
ハレが手を引っ張るとヴィータが出てきて、次の手が出てくる。
さらにそれも引っ張るとシグナムが出てくる。
さらに引っ張る・・・・シャマルにザフィーラ
スバルにティアナにエリオにキャロ。
フェイトにヴァイスにシャーリー。
でるわでるわ、どんどん出る。
最後にリィンとはやてが出てきた。
「あーあ」
「あーあ、じゃねぇええええ。だいたい、いつからこんなことしてたんだ」
「それはな」
巻き戻し
再生
行をさかのぼって呼んでください。
「そう?だったらいいけど・・・じゃあ、まずは隊長のはやてちゃんに会いに行きましょう」
「はい、わかりました」
二人は静かな誰もいない廊下を進んでいった。
「その時からかぁあああ。どうするんだよ。これ」
廊下には、死屍累々とグゥに飲み込まれた人たちが横たわっている。
「そうね・・・みんな、元に戻しておくのがいいかな」
「二人でですか?」
「やだなぁ、なに言ってるんだい」
「私たちも手伝うわよ」
「ほれほれ、何ぐずぐずしとるん。早くせんと日が暮れるたい」
「ああ、そうだね・・・って、なんであんた達がいるんだぁあああ」
三人ほど起きている人間が増殖した。
「さっきハレハレが引っ張り出したんじゃないか」
「すごい勢いだったわね」
「ほんなこつ、びっくりしたたい」
「アンタラは戻れぇえーー」
「待って、ハレ君」
なのはがシグナムを引きずりながら言った。
「え?」
「その人達にも手伝ってもらいましょ」
「そうだよねー、人では多いほうがいいよね」
「じゃ、私はこの人」
「私はこっち」
三人はそれぞれ人を抱えて走っていった。
「なのはさん・・・」
「なに?」
「慣れてきてません?」
「すこし・・・かな」
その後なのは達6人は本局中をかけずり回る。
日誌に見学希望者により六課壊滅寸前の文字が記録されることはなかった。
最終更新:2007年08月14日 14:32