第一話 潜む陰

「ご苦労、交代の時間だ」
「あぁ、ありがとう。眠たくってしょうがないよ」
「はは、まさか本当に寝てなかっただろうな?」
「よせよ、減給どころじゃなくなる」

深夜の管理局本部は昼間以上に厳重な警備体制が敷かれている。最新鋭の警備システムはもちろんのこと、人による見回りなども行っている。平和を守る砦としてまさに恥ずかしくない警備体制であった。
若い局員はあくびをしながら、交代にやってきた同僚に警備を任せると、見回りがてら警備室へと戻ってゆく。デバイス片手に口笛を吹きながら、巡回する彼に油断が無かったとはいえない。だからこそ、
彼は自分に迫る影に気がつくのが遅れたのだろう。不意に肩を掴まれた彼は普段出すことはない奇怪な悲鳴を上げて振り返った。

「ひゃぁ! あぁ? なんだ、お前か……どうしたんだ、忘れ物か?」

 振り返った先にいたのは先ほど勤務交代をした同僚だった。同僚は彼の質問に答えるわけでもなく、ただ虚ろな視線を向けているだけだった。それを不振に思った彼は同僚が寝ぼけているのではと重い、肩を軽く叩いた。

「おい、寝ぼけるには早い……! がっ……」

彼は何が起きたのか、理解出来なかっただろう。薄れ行く意識の中、彼が最後に目にしたのは、淡く光るデバイスを片手に持つ同僚と『もう一人』の自分だった。
 誰一人と通ることの無い廊下に静寂が訪れ、二人の男は倒れた若い局員を見下ろしながらポツポツと呟くように言葉を発した。

「警備員は全て完了した」
「システムの把握も時間の問題だろう。しかし、作戦進行が遅れている」
「無理を言うな、我々は数が少ない」
「聖王教会、本局にはまだ手を出せん。だからこそ、土台を固める必要がある。その為にはこの地上本部、周辺世界の制圧を急がねばならん。奴も現れている、手遅れになる前に対処すべきだ」
「囮を使う。目を逸らすことも出来、奴はそれを放っておくことはせんだろう。その間に出来る限り、この地上本部を制圧する。邪魔者には消えてもらう」


月日が経つのは意外と早いもので、ミッドチルダ及び周辺世界を大いに騒がせたJ・S事件から早二年、世界はある程度平和を保っていた。とは言え、犯罪者がいなくなるわけでもなく、管理局は休む暇もない。J・S事件
にて多大なる被害を受けた管理局ではあるが、二年でその機能を完全に回復できたのは局員たちや協力者たちの並ならぬ努力の賜物だろう。
自然保護隊の期待のルーキー、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエはその歳に似合わぬほどの実力を持っている。それが二人の努力でもあり事件を乗り越えたからこその成果である。巨大化したフリードの背に乗り、
猛スピードで飛行する彼らの目の前には巨大なコンテナを積んだ、飛行船が飛んでいた。密猟者の船である。以前から指名手配されていたグループであり、遂に尻尾を掴んだのだ。そしてエリオら自然保護隊に密猟されている生物の保護と密猟者の逮捕という指令が下されたのだ。

「第一、第二小隊は船の前へ出ろ! 第三小隊はルーキーと共に船内へ突入、制圧せよ!」
『了解!』

隊長らしき男の命令の下、何十人もの魔導師たちは飛行船の周りを飛び、次々と魔弾を放ってゆく。それらは命中させるのではなく、飛行船の進行を妨害するためのもの、案の定、スピードを緩めた飛行船には数人の
魔導師とエリオが降り立った。そこからの行動は素早いものであった。エリオはデバイス・ストラーダで船体に穴を開け突入、船内に突入後、エリオたちの侵入に気がついた密猟者たちは武器を手に抵抗を試みたが、
魔導師たちのバインドによって抵抗する間もなく、取り押さえられてしまう。船の操縦者もまたバインドを掛けられ、突入から三分、見事に船内を制圧、密猟者の逮捕に成功という結果に終わったのだった。
呆気ないものだったが、彼らの任務はまだ終わってはいない。逮捕には成功したが、次は密猟されていた生物の確認、保護しなければならないのだ。船を操縦し着陸されると同時にコンテナの中身を確認する。コンテナ
の数は三つ、そのどれもが巨大であり、40mから60m程の大きさがあった。中身を確認する際には十分に注意しなければいけない。中身が陸上生物などならばよいが、鳥や竜など飛行可能な生物であった場合はあけた瞬間
に逃げてしまう恐れがあるからだ。その為、シールドなどを展開し、逃亡を防ぐのである。

「プロテクトを解除しました、あけますよ」

若い保護隊がコンテナの上部ハッチを開くと同時に何重ものシールドが展開される。何かが飛び立つ気配は無く、生物が飛行可能なものではないことが判明した。しかし、彼らは安心どころか、衝撃を受けてしまう。
保護隊を驚かせたもの、それは……俗に言う怪獣であった。


巨大怪獣を保護したという知らせはミッドチルダの八神はやての下へすぐに届けられた。特別捜査官として、逮捕された密猟者及び保護された怪獣を元いた世界への送還など、次々と仕事が入ってくるのだった。

「また、えらい金ぴかやなぁ」

送られてきた資料に目を通しながら、はやてはそう呟いた。送られてきた資料には密猟者たちの情報の他にも保護された怪獣たちの詳細なデータもあった。そこで彼女の特に気を引いたのは、保護された三体の怪獣の内
に一体、全身が金色に輝く怪獣であった。

「どうやら体の殆どが純金みたいです」

はやてのデスクのすぐ横の小さなデスクに座っているのはリインフォースⅡである。リインの言うとおり、その黄金の怪獣はまさに金で出来ていた。内臓器官を除く殆どは純金であり、円単位で換算すれば推定10兆は超えるといわれている。

「世の中には不思議な生物もおるもんやなぁ。大方、金だけ採って後は捨てるだけやったんやろうな。保護できて良かったわ」
「そうですね、みすみす犯罪のための資金にもならなかったし、なにより怪獣さんが無事でよかったです」
「うん。せやけど、さすがにミッドチルダで預かるわけにもいかんやろうし……元の次元が判明するまでは現地で預かってもらわんとなぁ……犯人たちはいつこっちへ?」
「それが、手続きとかで明日まで待って欲しいと……」
「またかいな……」

はやてはため息をつきながら言った。彼女が呆れるのも無理はない。ここ最近の管理局はどうも対応が遅く、以前ほどの素早い手続きが滞っている場合が多かった。見直されたといっても全てが改善できたわけでなく、
今なお人手不足という事態に悩まされている管理局ではあったが、最近は明らかに怠慢であった。半ば諦めかけているはやては犯人のことは後回しにし、過去に似たようなケースが無いかを調べ始める。端末を操作して、
過去の事件記録を閲覧しようとするが、何故か中々繋がらない。

「……」

何度も指でデスクを叩きながら、ページが開かれるのを待つ。そして、アクセスできたかと思うと、何故かエラーが発生する。軽く舌打ちをしたい気分であったが、堪えてページを更新する。
しかし、またもやエラーが続く。何度も何度も繰り返していく内に遂に温厚なはやても我慢の限界であった。

「あー、もう、イラつく!」
「わー! 落ち着いてください~!」

いくらか声は抑えていたが、髪をかきむしるなど相当な怒りが見え隠れするはやてとそんな彼女を怯えながらもなだめるリイン。そう時間も経たないうちに落ち着いたはやてだったが、
これでは仕事にならないと判断し、端末の電源を落とすと椅子にもたれかかった。

「なんや、最近おかしいわ。ここまで対応が遅れるなんて事はなかったんやけどなぁ」
「そうですねぇ、他の部署でも色々と問題がおきている見たいです。ヴィータちゃんたちも文句を言ってたですよ」
「日に日に対応が遅れてる気がするなぁ。あの事件の教訓を生かさなあかんのに、上の連中は一体何を考えてるんやろうか」

仕方なく、今は手元にある資料のみでやりくりしなければならない。事務作業を開始するも、やはり情報が少なすぎるため、手詰まりであった。結果、あまり作業は進まなかった。
途中、資料室へと足を運んだが、ここでもあまり情報は集まらなかった。必要としていた資料がすでに貸し出されていたのだ。 どうも妙な違和感を覚える。さっきから自分が行動するたびに、
行き詰ってしまい、どこか人為的な意図が感じられる。

「考えすぎですよ、はやてちゃん。どこも人手不足だから、こういう事態もありますよ。局の機能は完全に戻ってますし、いずれは……」
「せやけどな、機械を操作できる人間が揃わなんだら、意味がないねん」

深まる疑惑と不安、どこか信用のならない管理局の現体制をどうにかすることははやてには出来ない。それほど権力があるわけでもなく、さらに若くして出世、
功績を挙げた彼女には敵が多い。何か言えば、倍にして返されるだろう。
とにかく、今は目の前の事件の解決に尽力を尽くさねばならない。明日になれば密猟者の身柄を引き取り、事情聴取をして、保護された怪獣の処置を考えなければいけない。
余分なことを考えている暇はないのだ。はやては自分のデスクに戻ると明日の下準備を始めた。


無限書庫の司書長であるユーノ・スクライアが忽然と姿を消した事実が判明したのは、翌日の事であった。最初に気がついたのは
調べ者をしにやってきた局員であった。局員が無限書庫を訪れたときには、書庫には無数のプロテクトが掛けられ、人っ子一人存在しない状態であった。
すぐさま調査がなされたが、何の手がかりも無く、また書庫のプロテクトが尋常ではないほど強力なものであり、痕跡を調べようにもできない状態であった。
司書長の関係者たちにはもちろんのこと、彼の友人にも話を聞いたが有力な情報は得られないため、捜査は難航していた。

「ユーノ君がなぁ……確かに心配やけど、一体なんで急にこんなことが?」
「いなくなる前は変わった様子はないみたいですよ。昨日の夜、突然消えたとしか……」
「気になるけど、私らは密猟者の方を何とかせなならんからな。身柄はもう届いたん?」
「それが……」

顔を曇らせるリインに嫌な予感を感じたはやて。リインから帰ってきた言葉は彼女の予想通りのものであった。

「今回の事件でバタバタしているみたいで」
「なんやのそれ? ええ加減にしてほしいわ、ホンマ」
「それだけじゃないんです」
「え?」
「港が封鎖されているみたいなんです」

これは穏やかではない。他世界へと繋がる港が封鎖されるということはまずない。管理局の要とも言っても良い施設であり、
次元航行艦の出入りがなされるのはその施設だけである。それが封鎖されているということは、密猟者の身柄を引き取ることも出来ない。またもや、
仕事が進まないことになる。それ以外にも民間にも影響を与えてしまう。

「また突然やね……ん、ということはフェイトちゃんたち本局に勤めとる人たちは閉じ込められたことになるんやな。なんや、立て続けに問題が起こると怪しいな」
「そうですね。最近の対応の遅れなどと並行して考えれば、明らかに多すぎます」
「ただの思い込みで済んでくれればえぇんやけど」

二人で話しをしながらはやては自分の専用室の扉前まで来ていた。しかし、そこでふと気がつく。今日は廊下で
誰ともすれ違っていないのだ。人手不足とは言え、地上本部に勤めている局員の数は少なくはない。必ず誰かと
はすれ違うはずである。それが今日に限っては、廊下では誰ともすれ違っていない。嫌な予感が過ぎった。

「……ッ!」

何故か気が進まないが、はやては扉を開ける。すると、そこには散らかった部屋が目に入った。あまりにも露骨な警告、
大胆すぎるがこれはこれで十分だろう。
はやてはすぐさまその場から離れようと、走り出そうとするが……

「はやてちゃん!」
「なっ!」

 すでに複数の魔導師たちによって退路は絶たれていた。そして、先頭の魔導師のデバイスに光が灯った。


『行方不明となったユーノ・スクライア氏は無限書庫の司書長であると同時に高名な考古学者としても……』

保護隊本部のテレビでもユーノの行方不明は放送されていた。それを見ていたエリオとキャロは一応、
顔見知りというのもあり心配にはなっていた。しかし、異なる次元にいる自分たちは心配することしか出来ず、
なにより管理局が捜索しているとの報道に安心もしていた。それ故にさほど気には留めていなかった。ニュース
を見ていた二人だが、パトロールの時間になり、出かけることにした。
自然保護隊の仕事は密猟者の摘発だけでなく、保護された生物の世話や周辺のパトロールというものがある。
保護隊というものは基本的に陸士が多い。そういう部隊で竜騎士であるエリオとそのパートナーであるキャロは
竜のフリードを駆って空からのパトロールが可能であり、重宝されていた。
いつもの巡回コースを回るのにさほど時間は掛からないが、これを二、三往復するのが普通である。

「パトロール、行ってきます!」
「あぁ、気をつけてな」
「はい!」

エリオが挨拶をすると隊長らしき男も笑顔で答えた。
その後、すぐにフリードの背に乗り、エリオとキャロは巡回コースを飛んでいった。先日のような密猟団を発見することはなく、いたって平和であった。

「この一帯に異常はないみたいですね」
「うん、次のポイントに移動しようか。フリード、おねがい」
「キュクルー」

旋回行動をとり、翼を羽ばたかせるフリード。山岳地帯を見下ろし、変わったことが無いかを確認する。すでに二年もたてばなれたものである。途中、定時連絡を
入れるため小型の通信機を起動させる。

「こちらエリオ・モンディアル二等陸士、本部、応答を……あれ?」
「どうしたの、エリオ君?」
「おかしいな、通信が繋がらない」
「そういえばこの一帯は磁場の影響で通信が繋がらない時があるって聞いたことがあります。もしかしたら、そのせいかも知れません」
「うん、一応念話の方で連絡を取ってみるよ」

念のためにと思い、エリオは意識を集中させる。しかし、一向に繋がる気配はない。念話が届かない距離でもなく、受け取れないということはまずない。定時連絡を
受け取る側に何か異常があったとしか考えられない。

「駄目だ……」
「何かあったんでしょうか?」
「気になるね、すぐに戻ろう!」

不振に思ったエリオはフリードの手綱を引いて、本部へと引き返そうとする。現地点から本部へ戻るのに掛かる時間はおよそ一時間。フリードが全力で飛べば
少しくらいは縮められるだろう。一直線に本部へと急行するが、突然エリオはキャロを抱き寄せ、フリードを急降下させた。

「きゃっ! エリオ君!」
「しっかりつかまってて! 狙われている!」

言うや否や、先ほどまで飛行していた場所へ無数の砲撃が飛んでくる。彼らの知る魔導師よりもかなり低ランクの砲撃だが、
数が多ければ撃墜されかねない。回避行動をとったエリオはすぐさま、砲撃がなされた場所へ目を向ける。するとそこには数人の局の魔導師が浮かんでいた。

「そんな、どうして管理局の人たちが!」
「わからない、だけど狙われていることは確かだよ!」

取り乱しはするが、二人がすぐに平常心を取り戻すことが出来るのはJ・S事件を乗り越えたからこそだろう。
何故局の人間が自分たちを狙うのかという疑問は残るが、黙ってやられるわけにもいかない。何とかして理由を聞き出したいが、
問答無用で攻撃魔法を繰り出す局員たちに近づくことが困難だった。無理して近づけば集中砲火を食らうことになる。


「クッ……もしかしたら、本部に通信が繋がらないのはあの人たちのせいかもしれない」
「もしかして、クーデター……とか?」
「わからない、なるべく避けるから、キャロ、もしものときはシールドをお願い!」
「うん! エリオ君もフリードも頑張って!」
「わかった!」
「キュクルー!」

局員から繰り出される砲撃や誘導弾を次々と避けていく。二人はデバイスを起動させエリオはストラーダで誘導弾を弾き、キャロもシールドを展開し、見事なコンビネーションを見せた。しかし、中々攻勢に出れないのは、
相手もまたプロであり、何より自在に飛行できる航空魔導師だからだ。フリードに乗らなければ長時間の飛行が不可能な二人は変則的な攻撃に劣勢を強いられていく。なにより二人が攻勢に出れないのは、現在の戦闘フィールドに
原因があった。やりようによっては数の少ない航空魔導師を撃退することは可能である。しかしこの高高度で攻撃し気絶させてしまうと、かなり危険である。さらに局員たちはそれを理解しているのか、決して高度を下げることはせず、
またエリオたちを下に向かわせることもしなかった。彼らに出来るのは何とかして逃げ、助けを求めることにあった。本部に通信が繋がらないとすれば、すでに本部は制圧されていると見ていい。ならば、まだ無事な可能性のあるほかの施設へと向かうことであった。

「このままじゃ消耗戦だ……フリードがやられたら、僕たちも……」
「エリオ君、アレ!」
「え?」

焦るエリオにキャロの悲痛な叫びが響く。同時にエリオはキャロの指差す方角を見ると、そこには保護した怪獣の一体であった。茶色の体表を持ち、トカゲがそのまま二足歩行できるように進化したような姿をした怪獣は地響きならし、咆哮しながら向かってくる。
その一瞬の隙を狙った局員は砲撃を放つ。直撃こそしなかったが、近くを掠め、その衝撃で大きく体勢を崩してしまう。なんとか落下することは避けられたが、その一瞬で周りを局員に包囲されてしまう。
杖状のアームドデバイスをエリオたちに向ける局員、無慈悲にもその先端には魔力が収束されてゆき、四方から砲撃が発射される。

『……ッ!』

瞬時にキャロはバリアを展開させるが、数の多い砲撃を長時間防ぐことは出来ない。下手をすれば、突き破られるかもしれないのだ。一環のお終いかと目を瞑る二人。しかし、キャロの展開したバリアには衝撃はやってこない。だが、バリアと
砲撃がぶつかり合う衝撃音は響いていた。何事かと思い、目を開けると一人の青年が砲撃を防いでいたのだ。エリオとキャロはその青年の姿を視認すると驚きの声を上げた。

『ゆ、ユーノ先生!?』
「やぁ、間に合ってよかったよ」

そこには行方不明といわれていた、ユーノ・スクライアの姿があった。 
涼しい顔で砲撃の防ぐユーノ。幼い頃とは言え、管理局のエース・オブ・エース高町なのはの砲撃を防げるほどの実力を持ったユーノだからこそ出来る表情だろう。そして、局員たちの砲撃が終了すると同時に手早く一人にバインドを掛け、その場に固定させる。

「手加減はしなくてもいい。落ちていく奴は僕が拾うから!」
「え、あぁはい! キャロ、フリードをお願い」
「うん!」

エリオはストラーダで加速し、一直線に近くにいた局員に突撃する。一気に間合いをつめ、そのままストラーダでなぎ払う。気絶した局員はユーノのバインドを掛けられ、エリオはフリードに拾われ体勢を立て直す。
反撃してくる局員の攻撃は全てユーノが引き受けた。数が少なくなり、砲撃はおろか誘導弾ごときではユーノの障壁を破ることは出来ない。今度は局員が焦りを見せ、その隙をエリオが逃すはずもなく、呆気なく撃退されてしまう。

「よし、これでこっちは片付いた」
「だけど、まだ怪獣が!」

局員の撃退は成功したが、まだ怪獣が残っている。恐らく40m以上はある体躯は脅威そのものであり、彼らがどうこうできるものではない。恐らく、キャロのヴォルテールならば対応できるだろうが、大きさが違いすぎる。下手をしたら踏み潰されるか、
叩き落されるかのどちらかだ。

「大丈夫、彼が何とかしてくれる」

不安げな表情を浮かべる二人とは打って変わって、ユーノにはそんな気配はない。ただ怪獣を見つめ、何かを待ち望んでいるような表情だった。
そして、エリオとキャロは見た。どこからとも無く、真っ赤な巨人が現れる瞬間を……


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最終更新:2008年07月08日 12:08