魔法少女リリカルなのは ULTRA SEVEN story
第三話 招かざる異邦人

地上本部から脱出を図ったはやて達が向かった聖王教会はミッドチルダ北部、ベルカ自治領
にある。次元世界最大規模の宗教組織でもあり、その影響力は管理局と並ぶほどである。
はやて達が聖王教会本部へと到着したのが約二時間、不思議と本部からの追撃は無く、
はやて達は戦闘を行うことも無く、無事たどり着くことが出来た。さらに教会本部ははやて達
が訪れることを知っていたのか彼女達はすんなりと教会へと入ることが出来た。出迎えに現れた騎士は彼女達も知る人物であった。

「騎士はやて、ヴォルケンリッターの皆様、お待ちしておりました」
「シスターシャッハ!」

出迎えの名はシャッハ・ヌエラ、聖王教会の修道女であり、はやて達の目当ての人物、カリム・グラシアの
護衛兼秘書でもある。はやて達を出迎えたシャッハの姿は普段の修道着ではなく、軽装のバリアジャケット姿
であった。彼女のデバイスであるヴィンデルシャフトは待機状態であったが、その姿を見る限り、教会も地上本部同様ただ事ではない様子だった。
そしてシャッハのすぐ横を小さな影が飛んでくる。

「シグナーム!」

影は真っ先にシグナムの下へと駆け寄り、周囲を飛び回る。影の正体は約30cmの人型、リインとは
正反対の赤い髪の少女だった。管理局の制服を軽く崩しているところを見ると、真面目なリインよりも幾分か軽い性格であることがわかる。

「アギトか」
「心配したんだぜ! 昼過ぎくらいから連絡が取れなくてさ、シスターの授業なんか受けてる場合じゃなかったよ! 皆も無事みたいだな!」

アギトははやてや他のヴォルケンリッターの面々の顔を確認すると最後にはやての肩の上に飛んでいたリインの姿を見て、意地悪な笑みを浮かべた。

「バッテンチビも無事だったみたいだな!」
「なっ! いつまでバッテンチビ呼ばわりする気ですか! 大体、アギトちゃんと私の身長は変わらないはずです!」
「そうかぁ? アタシの方がちょっと高いと思うけどな?」
「変わらないです!」
「い~や、アタシの方が高いね」
「ンンッ!」

出会って早々にくだらないことで喧嘩を始める二人だったが、シャッハの咳払いによって
すぐに仲裁された。しかし、咳払いだけでなく、シャッハから発せられる妙な威圧感も二人
の喧嘩が止まったことに関係あるだろう。それだけ今の現状が重大かつ緊急を要する事なのだろう。

「とにかく、騎士カリムがお待ちです」

その後、シャッハに案内され、はやて達はやっとお目当ての人物の下にたどり着くこと
が出来た。シャッハが扉を開けると、そこには一人の女性が神妙な面持ちで座っていた。
その女性こそがカリム・グラシアである。カリムは、はやて達が入室したことに気がつくと、笑みを浮かべて対応した。

「待っていたわ、はやて」
「カリム、着いて早々悪いけど、一体何がおきているのか、わかる?」
「えぇ、私もそのことについて話そうとしてた所よ」

カリムはそういいながら、一枚の紙をとりだした。そこには難解な詩が書かれており、
それはまるで預言書の一文のようだった。カリムはその文章を読み上げる。

「遠く時空の彼方、闇が支配する混沌の海よりいでし者共
 数多の海は侵され、正義の砦はその意味を失う
 光星は墜ち、陽は陰にかき消される
 星のエトランゼは嘲笑い、民は傀儡へと姿を変え
 大地の法はすでに無く、残るは不可視の支配のみ」
「これは……」
「今回もまた解釈が難しい文があるけど、ある程度は二年前と同じように解釈できるわ。数多の海は周辺次元世界の事、正義の砦、大地の法は恐らく管理局全体を現していると思うわ」

この預言書こそがカリム・グラシアの持つレアスキル・『プロフェーティン・シュリフテン』またの名を『預言者の著書』、最短で半年、
最長で数年先の未来を、詩文形式で書き出した預言書の作成を行う技能である。そして、今回の予言は内容からして、とても良いものとは思えない。

「最初の文の意味は恐らく他次元からの侵略者のことね。恐らく管理外世界、管理局がまだ把握できていない次元世界、二行目の意味
を考えると、幾つかの次元世界はすでに敵の手に墜ちていると考えてもいいわ。そして……」
「正義の砦はその意味を失う……これは管理局が制圧されたことやね?」

カリムの言葉をはやてが変わりに紡いだ。はやては腕を組んで、ため息をついて、「どうしようか?」と呟きながら、頭を悩ませる。

「すでに二行目の予言が的中してしまったんか……」
「いえ、まだよ」
「え?」

カリムの言葉にはやてはすっとんきょな声を上げる。唖然とするはやてとは対象的にカリムは目を伏せて、そしておもむろに言葉を口にした。

「まだ二行目の予言は終わってないの……正義の砦、それはこの聖王教会も含まれているわ」
「ど、どういうことやの?」
「ロッサからの伝言よ……」
「ロッサからの?」
「港が閉鎖される直前に、本局にいるロッサから緊急通信で連絡があったの。本局が墜ちるのも時間の問題、次は教会だ……と」

ロッサとはヴェロッサ・アコース、カリムの義理の弟のことである。本局の査察官である彼からそのような連絡が届いたということは、
敵の侵攻は思ったより早かったようだった。
港の閉鎖、地上本部局員の変貌を見たときからうすうすとは警戒はしていた。なるほど、教会の重苦しい雰囲気やシャッハがバリア
ジャケットを展開していたのはこの為だったのかと改めて理解した。

「まだこの教会は墜ちていない……時間はあるわ。はやて、来て早々悪いけど、貴女達はここからすぐに離れなさい」
「そんな! 狙われることが分かったんのやったら、私達も戦う!」
「駄目よ、二つの本部が墜ちたとなれば、ここも同じ……それに敵が正攻法で攻めてくるとは限らないわ。事実、私達は地上本部の
豹変に気がついていた? 仮にも局と教会は指揮系統が違う……教会のメンバーを犯罪者として告発したり、とにかく正面きっての
方法は取らないはずよ。貴女達をここで失うわけにはいないわ。それにまだ希望は残されているわ」

そういいながら、カリムは始めにだした預言書以外にもう一枚の預言書を取り出した。そこには同じように詩文形式の予言が書かれていた。それを
カリムが読み上げる。

「陰迫りし時、光と闇が混ざり合う
咎人が再三の罪を背負いし時、新たなる希望は生まれる
大いなる法に背きし咎人、太陽の如く海を照らし、光を与えるだろう」
「咎人って……犯罪者のこと……やね?」
「ハッキリ言って、この二つ目の予言の意味は分からないわ……ただ、この事態に対して犯罪者が貴女達の力になるということは確かよ」
「犯罪者が……」

正直なところ、俄かには信じられない話であった。はやてに限らず、多くの人にとって犯罪者が善行を行うのは稀な事だと思っている。それが
犯罪者というフィルターを掛けてみているとしてもだ、一度、犯罪を犯した人物を信頼できるものではない。とは言え、現状が猫の手でも借りたい
状況なのも事実で、ある程度妥協しなければいけないことは分かっているつもりだ。

「カリム、私はカリムたちを見捨てることなんて出来へん……本当ならここに残って戦いたい……」
「はやて、それは……」
「わかっとるよ。私は自分に出来ることをやる。カリムの予言通りなら、私らがここにいても結果は変わらない……けど、咎人と協力すれば、皆を助けられるんやろ?」

はやては笑みを浮かべながらカリムに向き直った。不安もあり、それを見せまいとした強がりでもあるが、逆に自信の現れでもあった。そして、
次にはやては後ろを振り向いた。ヴォルケンリッターの面々も真剣な表情であった。

「皆、行こ……」

はやてが言葉を発する途中、耳をつんざくような轟音が響いた。恐らく爆発音であろう轟音は二、三度ほど続き、まもなくして都市の
警報と住人の悲鳴、教会騎士団たちの怒号が聞こえてくる。この事態に何事かと思い、窓の外を確認するはやて達。するとそこには彼女達の想像を絶する光景が広がっていた。

「怪獣……!?」

窓から見えたのはミッドチルダ北部の都市を蹂躙する巨大な生物、怪獣の姿であった。怪獣が一歩前に進むたびに都市の建造物は破壊
されてゆき、街は炎上してゆく。

「始まった……」

呟くカリム。
同時に慌しかった教会がさらに慌しくなる。教会にも爆発音が響いたのだ。とは言え、小規模な音ではあったが、彼女達はそれが敵の
侵攻であることに気がついてた。さらにそれを明確なものとする通信が警備に当たっていた騎士から届く。

『地上……部の航空部隊が……不意をつかれ団員の……分が……』

ノイズが混ざり、しまいには通信が途絶してしまう。

「はやて、時間がないわ! ここから早く脱出を! アギト、貴女もはやて達についていきなさい」
「わかってるって! はやて、時間が無いんだ。行こうぜ!」
「わ、わかった……皆、いくで!」
『はっ!』

カリムとアギトに促され、少々戸惑いながらも、はやてはヴォルケンリッターに指示を与え、自分もまた騎士甲冑を展開する。
後ろ髪を引かれる思いではあったが、はやてはヴォルケンリッターを率いて、窓から飛び立つ。それを見計らっていたかのように一人
の航空魔導師がはやて達の眼前に立ちふさがる。

「どけぇ!」

しかし、ヴィータの一撃が魔導師を吹き飛ばす。それを合図として、本来なら味方であるはずの魔導師達が続々と教会及びはやて達
に攻め寄る。中には陸士の姿も確認でき、教会を制圧するには十分な戦力であることが分かる。

「全速力でこの場から離れる!」
『了解!』

はやて達は一気にその場を離脱した。悪い言い方をすれば仲間を見捨てて逃げたともいえる行動ではあるが、その屈辱をかみ締め、
はやては飛ぶ。騎士団と局員の戦闘音が聞こえるが、振り向きはしなかった。


「頼むわ、はやて」

飛び去ってゆくはやてとヴォルケンリッターを見守るカリム。自分の役目はこれで終わり、他力本願ではあるが、後のことははやて達に任せるしかない。
はやて達の姿が見えなくなると、カリムは傍らにいたシャッハに振り向く。

「シャッハ、貴女も行ってよかったのよ?」
「いえ、私は騎士カリムの護衛です。自らの使命を捨てるわけにはいけません」
「そう、ありがとう……」

カリムは微笑みながらシャッハに礼を述べる。シャッハもまたそれに答えるかのように笑みを返してデバイスを起動させ、扉の前に立つ。

「シャッハ・ヌエラ、参る!」

掛け声と共にシャッハは扉を跳躍し、一瞬にして大広間へとたどり着く。大広間は無人であったが、断続的に聞こえてくる戦闘音が静けさを強調させて
いた。シャッハは教会の入り口である大門に前に立つと深く深呼吸をする。

「烈風一迅!」

双剣型のデバイスであるヴィンデルシャフトに高密度の魔力を乗せ、大門と周りの壁を粉砕する。粉塵が晴れるとそこには多くの魔導師達が瓦礫に埋もれ
ていた。しかし、辛うじて被害を免れた魔導師、大半は陸士だがその数は脅威である。だが、シャッハはそれに怯まず、ヴィンデルシャフトを力強く握り
直す。そして、腰を低く構え、突撃の態勢を取るのだが……

「……?」

陸士たちはデバイスをおろすと次々と道を開け、二手に分かれて行った。シャッハは警戒しながら、その先を見据える。視線の先には異様な風体の騎士が
立っていた。全身灰色の甲冑で覆われた騎士は陸士たちが完全に分かれるとその間を通ってゆっくりと歩みだす。まるでどこかの将軍の様に堂々とした姿であった。
ガシャ、ガシャと金属同士がこすれる鈍い音が甲冑の重圧感を感じさせる。全身を甲冑に包み、頭部を包み込む兜は視界を確保できるのかどうか疑わしい。

「貴様がリーダーか?」
「……」

シャッハの問いかけに騎士は答えず、ただひたすら歩き続けるだけだった。

「答えろ!」

声を荒げ、再度問いかけるが、騎士が返したのは兜から発射された閃光であった。突然の事ではあったが、シャッハは閃光をヴィンデルシャフトで
弾くと一瞬にして騎士との間を詰める。騎士はその迅速なシャッハの動きについていけないのか、歩みを止める以外の行動は取らなかった。全身を
包む甲冑、見た目どおり動きは鈍いようだった。シャッハはこれを好機と見て、一撃で仕留めようとヴィンデルシャフトに魔力を集中させる。

「烈風一迅!」

ヴィンデルシャフトから繰り出される必殺の一撃、双剣であるため二撃の攻撃が騎士に直撃する。攻撃の余波にて近くにいた陸士が吹き飛ばされ
ていく。しかし、直撃を受けたはずの騎士の甲冑には傷一つついていなかった。

「何……くぁっ!」

攻撃が通じない、それに怯んだ隙を狙われシャッハは騎士が繰り出したパンチを避けることが出来ず、ヴィンデルシャフトで防ぐ。だが、防御の
態勢を取ったのにも関わらず、シャッハの腕には重たい衝撃が伝わり、地面に叩き付けられる。再度、拳を振り上げる騎士の姿を確認したシャッハは身を翻して、拳を避ける。
金属が激突する鈍い音と共に地面が陥没する。避けて正解だったようだ。下手をすればデバイスごと貫かれていたかも知れない。シャッハはゾッとした。

「堅い……何という強度だ。だが!」

怯むわけには行かない。シャッハは素早く態勢を立て直すと持ち前のスピードを生かして、騎士の背後に回り、右肩に攻撃を加える。命中、
しかしダメージは見受けられない。それでもシャッハは騎士が反撃を加える前に行動を起こし、また同じ場所へと攻撃を繰り出す。それを何度も繰り返していく。

「いくら堅牢な鎧とは言え、いつまで耐えられる!」

一点集中攻撃を仕掛けるシャッハ、そのスピードに翻弄され防戦一方となる騎士。恐らくあと一撃でダメージを与えることが出来るはず、
シャッハは魔力を集中させ、ヴィンデルシャフトを振るう。仕留めた! 声には出さなかったが、シャッハは決定打を与えたと思った……が、
騎士との勝負に熱中しすぎたのか、突然の衝撃に彼女は対応できなかった。

「がぁっ!」

背部に衝撃が走り、シャッハの動きが一瞬鈍る。その隙を狙われ、必殺となるはずだった一撃は騎士の拳によって受け止められた。衝撃、そして片方の
ヴィンデルシャフトが砕け散る。シャッハにはそれがひどくスローに見えた。そして騎士の兜から閃光が発せられ、直撃を受けるシャッハ。

「あぁぁぁぁぁ!」

電撃や熱による肌が焼けるような激痛が走る。騎士甲冑を展開しているとは言え、シャッハのは軽装、一般のものより薄い。ダメージは相当なもの
になるだろう。意識が朦朧とする。激痛で今にも意識が飛んでしまいそうな状態でありながらも、辛うじて保てているのはシャッハだからこそだろう。

「くっ……ぅぅ」

残った片方のヴィンデルシャフトを握ろうとするが、力が入らない。破損した片方も自動修復が働いてはいるが、粉々に粉砕されているため、
瞬時には修復できない。出来たとしても今のシャッハにはそれを扱うことは出来ないのだが。
そんな時だ。騎士がそばに寄ってくるのが分かった。ガシャ、ガシャという独特の金属音が聞こえた時にはシャッハは死を覚悟した。だが、
騎士はシャッハに止めを刺そうとはしなかった。ただ黙ってジッとシャッハを見下ろすだけだった。そして、もう一人、誰かが近づいてくる
気配がした。周りにいた陸士だろうか? シャッハが視線を向けるとそこには異形がいた。
異形、人の形をしてはいるが外見は人ではなく、むしろモンスター、亜人というべきだろうか? 縦に顔が長く、首がない。目は二つだが頭の
先端部分にあった。それがシャッハを見下ろす。腕から下は人間の様な手ではなく、蟹のハサミのような形をし、その先端からは硝煙と思われる
煙が吹き出ていた。真っ赤なベストを思わせる胸の皮膚、まるで着ぐるみのような容姿をしていた。恐らく自分を撃ったのはコイツだと判断した。
異形のそれはシャッハに近づくと、一瞬眩い光に包まれる。光が消えると同時にシャッハは信じられないものを目にする。

「私……?」

自分が自分を見下ろす。そんな奇妙な光景を最後にシャッハの意識は深く沈んでゆく。
シャッハが気を失うと騎士ともう一人のシャッハは互いに向き合い、言葉を交わした。

「聖王教会……手荒ではあるが、地上本部に比べれば楽に制圧できたというべきか」

未だ戦闘音の響く周囲を見回す。圧倒的な物量に押され、次第に劣勢になる教会騎士団を眺めながら、騎士ははき捨てるように言った。

「怪獣を使った陽動作戦、他の本部からの救援も無い状態ならば、簡単なのも当たり前だ」

騎士の言葉にもう一人のシャッハは不敵な笑みを浮かべながら答えた。

「早速、奴らには味方はいない。地上本部、そしてこの聖王教会を制圧できたとなれば、ミッドチルダの支配は完了したといってもいい。本局はまだ制圧できないのか?」
「こちらの船と奴らの船によるにらめっこの状態だ。だが、制圧するのも時間の問題だろう。通信妨害もかけてある、制圧していない世界の連中とも連絡はとれんさ」
「そうか……奴は?」
「囮に引っかかったようだ。まだあの世界にいるだろう。安心は出来ないがな」


戦闘音は聞こえなくなった。カリムは自室の椅子に座りながらそれを確認すると現れるであろう来訪者を待った。
さほど時間を掛けずに来訪者は現れた。甲冑の騎士とシャッハであった。

「……!」

シャッハの姿を見て、カリムは暫し顔を伏せた。
そんなカリムの姿を見て、もう一人のシャッハは顔を歪めて笑った。

「悲しんでいる所悪いが、カリム・グラシアだな?」
「えぇ、そうよ」

もう一人のシャッハに問いにカリムは気丈に振る舞いながら答えた。そして、サッと顔を上げ、対峙する。
その姿を見て、シャッハは感心したように「ほぉ」と小さく声を上げた。

「すでに覚悟は決めていたようだな。何、心配は要らない。誰一人として殺してはいない。貴重な人材だからね」
「あなたたちは……一体何が目的なの? 地上本部、本局、そしてこの聖王教会を狙って……世界征服でもするつもりかしら?」
「征服などではない。恒久平和だ」

カリムの問いに答えたのはシャッハではなく騎士の方だった。
その言葉の意味がカリムはよく分からなかった。平和を目指すのなら何故、自分達を襲うのか? 何故、シャッハと
入れ替わる必要があったのか。この様子を見る限り、ここを襲った局員達もこの者たちが入れ替わったものなのかも知れない。

「カリム・グラシア、恒久平和の為に、協力してもらう」
「どういう事かしら?」
「そのままの意味だよ」

その一瞬だった。ミッド式、ベルカ式両方のバインドが何重もカリムに掛けられる。体を締め付ける痛みはあったが、
耐えられないほどではなかった。

「今は大人しくしてもらおう。時期が来れば我々のリーダーから話があるはずだ」

シャッハなら絶対にしない笑みを浮かべながら、もう一人のシャッハは次々と現れる局員達を従えるように腕を組んだ。
聖王教会、墜つ。それは地上本部同様、人々には知られることも無く、完了された。
正義の砦、もはやそれを体現すべき組織の存在は風前の灯といったところであった。


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最終更新:2008年08月15日 19:12