「魔法……だと?」
「うん。それが僕達、時空管理局が在るミッドチルダでの主な技術だ。」

眼の前で自分に情報を提供してくれた少年の言葉にギロロは信じられないと言うように呟く。
今、彼が居るのは次元航行艦「アースラ」のレクリエーションルーム。
医務室で眼を覚まし、目の前でギロロの容態を看てくれていたリンディと互いを知り。
彼女から自分がこの艦にいる経緯を聞かされる。そして、自身がミッドチルダに侵略にやってきたことを明かすと「もっと、お話を聞かせてもらいます。」と時空管理局の提督として厳格な表情と声で言われ、ギロロは話さなくては殺られると怯え。
場所を移し、この場所で詳しい話をすることになった。事細かに話しては軍人として失格以上であるため大まかなことしか説明していない。
そして、今度は彼女達から自分の置かれている状況を聞かされ今に至る。

第3話「ギロロ、魔導師の資格あり。であります!」


「信じてもらえますか?」
リンディからの尋ねにギロロはどう答えれば良いか思考が追い付かず、呆然と白いテーブルを見下ろす。

魔法か、信じられない……ことではないな。
転移してしまい、こんな未知なる場所に存在を置くことになったきっかけを思い起こす。
『すっげーかっけぇ!』
とブリッジのモニターに映しだされた画像のペコポン人に心を奪われていたケロロやタママとは違い、彼らの傍で彼は熱心に文面を眼でなぞっていた。
そこには確かに”魔法”や”魔導師”という単語あり、ギロロの頭には色濃く印象づいた映像として残っている。
ならば彼女達の言った『時空管理局』という役職は次元世界での警察や軍人の変わりを果たしているのだ。事はソレでだいたい理解出来た。

が、彼は今1番聞きたいことがあった。
それは自分の身柄がどうなるか……
「……で、俺はどうなるんだ。」

腕を組み、二人からの言葉を待つ。
軍人であることで解答はおおよそ推察出来る。
銃殺か労働か、侵略者と言ったんだ拘束だけでは済むはずはない。なら、ここで暴れてケロロ達と合流するのが得策だ。
が、ギロロの考えは掠ることも無く。
先程、ミッドチルダにおける魔法の有り様を説明してくれた少年から予想を外れた答えが返ってきた。

「君はしばらく僕らの監視下で生活してもらうことになる。まあ、名目上としてだからかなり自由だね」
「だろうな。侵略側とされる側……って、なんだと!?」
耳を疑う答えが返ってくる。ギロロは眼を白黒とさせ思わず声を荒げて聞き返してしまう。

「だから、君は僕らの監視下というよりは一緒に行動または生活してもらうことになる。ってことだ」
「待て!少し優遇し過ぎるんじゃないのか?俺は侵略者だぞ」
舐めているのか……くそ、ペコポン人め!
その結果はありがたいが、軍人としてはどうしても自分が甘く見られているように感じられる。
たまらずギロロの感情は沸騰し始めた。

そんなギロロの心中をリンディは表情からみえた動揺から察し、彼の質問に静かに答える。
「確かにそうかもしれません。ですが、今まで時空管理局は色んな事件に関わって来ましたが、実は一度も宇宙人が関わった記録は無いのです」
「何?本当なのか?」
「ああ、僕も聞いたことはない」
彼女の息子であり、管理局に身を置くこの少年……クロノからも同意の言葉を返されギロロは勘違いした自分が少し恥ずかしく思え、感情が下降していく。
「それを踏まえての判断がこのようになりました。それに……」
「?」

何だ?と言うようなギロロの反応にリンディは微笑んで言葉を繋げた。
「何だか他人のように思えなくて」
彼女の言ったことにギロロとクロノはどういう意味か解らなかった。が、何か深いなにかが込められているとその優しげな母性溢れる女性の笑顔から思わせる。
魔法という技術が発展していても宇宙人との交信はまだ無い。俺が侵略者だと説明した時も驚いていたが……そう言うことか。
「本当であっても貴様らペコポン人の言うことは聞くわけにはいかん……だが介抱してもらったからな、こんな事になったのも俺達の自業自得だ。
大人しく捕虜になろう。」
水色の結った髪を揺らし、ひと息ついて決定の意図を説明してくれたリンディやクロノ。
捕虜に対して優しすぎる。と言えるこんな待遇になんとも複雑な思いを抱きながらギロロは頭が下がる思いで答えて抵抗しないという意志を表すためにリンクしていたデータ倉庫からあるだけの武器、弾薬を出す。

「な……し、質量兵器とかあるじゃないか……。」
ゲームのように空間から数々の武器が突然姿を表した……
実体弾ライフル、小型大型ミサイルポッド等。ミッドチルダでは禁止されているものばかりがごろごろとテーブルの上に所狭しと列び……リンディとクロノはその光景に絶句した。
「こ、こんなに…………。」
「常に武装出来るように心掛けるのが軍人だからな。」
誇らしげに胸を張り、ギロロは当然のように肯定する。

そんな彼……いや、異文化の差にリンディは、しかたないのかもしれない。と理解してテーブルの上に置かれた武器を自分の手元に手繰り寄せて確認した。
「じゃあ、これで全部なんですね?」
「ああ……ん?なんだコレは。」

一応データ倉庫に何もないことを確認するため詳細を小さなモニターで表示すると一つ見慣れない厚いカードが眼に映る。
手元に引き寄せ、データから実現した小さなカードは自分の肌よりも明るい赤と白で色染められていてまるで自分専用のような不思議な感覚があった。
よく見ればの真ん中には黄色いカラーのスカルマーク……自身の帽子についているものと同じマークがその感覚の正体を裏付けているようでもある。
しかし。
武器通販で購入した覚えはなかった……。
じっとそのカードを見下ろし、ギロロはクロノに尋ねる。
「すまん、データ倉庫を確認したら未確認のモノが出てきたんだが……俺は全く知らない。何だか解るか?」
どれ。とクロノは彼が手に持っていたカードを受け取った。だが、途端に彼は驚いた表情を浮かべる。
すると傍でそのカードを眼にした彼の母がギロロにとって予想外の言葉を返した。

「これは……デバイスかしら。」
「デバイス?」
先に受けた説明が正しければデバイスとは魔導師が持つ得物……。
何故俺のデータ倉庫にそれが?
首を傾げて心当たりを探るが。よくよく思い出してみてもそんな代物はケロン星には無く、武器の通販カタログにも無く。やはり購入した覚えはなかった。

そこであることを思い出す。それは自分の標準装備のビームライフルとビームサーベル、バルカンポッド、ハイパーバズーカ、メガ・ビームランチャー……それに特殊兵装のフィンファンネル×2とデンドロギロロが無かった事。
これらは大手武器メーカーが発売したC.A.チップとバイオセンサーチップが搭載されているために特に高価なもの。
恐らく次元転移でデータ倉庫にトラブルが起き、どこかに飛んでしまったのかもしれない。

きゅ、給料十五ヶ月分をはたいて買ったものを……。
血の涙が溢れてきそうな軽いショックを受けながらも「関係は無いな。」とギロロは震える身体を抑えて判断した。
「や、ややや。やはりこんな代物、俺は知らん。」
「そう……なら試してみる必要があるかもしれないわ。」
(なんで震えてるのかしら)
腕を組んで断言した彼を引き締めた表情で見据えながら渡されたカードを片手にそう述べる。

「試すだと?」
「ええ」

「クロノ。彼を訓練室に。私はフェイトさんを迎えに行くから」
「了解です提督。ギロロ伍長、来てくれ。」
「あ、ああ。」
艦長である彼女の下した言葉に意を介し、クロノはカードを受け取ってギロロへ同行を促し。レクリエーションルームを退出する。

自動ドアが閉まり、二人が部屋を跡にし。リンディは腕時計の刻む時間を確認してから改めてテーブルに列んだ武器、弾薬を見て苦笑を漏らす。

それは安堵とこれからのことへの不安が入り交じった複雑な思いから……。

「本当によくこれだけ……。彼と彼が言う友達が侵略活動を出来ていたらミッドチルダは大騒ぎになっていたわね。」
そして、ある思いが頭に浮かんでいた。

似ていたな……。と
耳に残るギロロの声に懐かしさを感じてしまう心にリンディは自然と苦笑いを零してしまう。

…………

レクリエーションルームから退出し、宇宙人はクロノの足に合わせながら廊下を歩いく。
無機質でいて近未来的な造りは自分達の船や施設と似ており安堵する自分と資料にあった情報以上に技術力を持つ彼らを侮れない存在だと改めて警戒させられる……。

「ここだ」

腕を組みながら考えごとをしていたギロロにクロノは立ち止まってそう告げた。

自分達の眼の前には先程のレクリエーションルームと同じタイプのドアがあり。二人分の体重を床が感知して排気をするような音を発して動いて部屋の中が視界に入った。そこからはだだっ広い空間が存在し。
訓練するなら不備は無いぐらいにスペースはある。訓練校時代にも似たような密室でのサーベル戦に射撃訓練を経験しているから何となくそう思う。
「中に入れば良いのか?」
ギロロの尋ねにクロノは「ああ」と頷き、言葉を繋げてデバイスを彼に渡して説明する。

「僕はブリッジに戻ってこのデバイスと君の実力を見る。」
「デバイスとやらはともかく、軍人を舐めているのか貴様……」

軍人相手に「実力を見る」とはかなり好戦的な発言だが、意味合いとしては「デバイスを扱うギロロの実力」があった。
「カエルのことなんかは表面上しかしらないからね。とりあえず僕は行くから中に入ってオペレーターの指示を待っててくれ」
「か、カエルだと!?」

察してくれない頭の固い宇宙人にため息をつくようにクロノはカエルの言うことを流してその場から離れる。
残されたギロロはとりあえず彼の言うように従って部屋へと踏みいった。
ひょこっひょこっ。と体重の軽さが判断出来る足音が壁や天井に反響して自分の耳に帰ってくる。
いったいどんなことをするのだろう……。
生粋の軍人となった彼は期待と不安が入り交じり、感情が高ぶっていた。
『はじめまして』
部屋に響く女の声と共に正面にモニターが現れ、そこには今の声の主らしき少女が椅子に腰掛けている姿があった。
『私はエイミィ・リミエッタ通信士です。ギロロ伍長、よろしくお願いします』

敬礼と自己紹介をしてきたエイミィという少女に敬礼を返し、尋ねる。
「よろしくたのむ。早速なんだが、一体何をやれば良いんだ?」

「まず、そのデバイスでバリアジャケットに着替えてもらいます。」
「これか……」
デバイスと呼ぶ手元のカードを眼の前で裏、表、裏、表とひっくり返す。真空パックされた衣服や食料にしてはサイズが大きいな。
やはりペコポンの技術力は、まだまだ。だな。

『思い描いて下さい。あらゆる場所に適した服のイメージを。そして、デバイスの名前を呼んで見て下さい。』
「こいつの名……」

ともかく、魔法などの力は未知である自分はただ現地の者の指示に従うしかない。
『星に入っては星に従え。』という諺もあるしな……。
それに資料の画像に映っていたペコポン人は変わった服装をしていたし、あらゆる場所とは恐らく戦場ということだろう。
エイミィ通信士が言ったようにデバイスを掲げて思い浮かべる。
こ、こんなチャンスは滅多にないしな。贅沢言っても問題はないはずだ。
すぐに心の内に候補があがってくる。それはかつて古代の宇宙戦争においてサナリーと火星独立軍、両陣営において使われていたプレミア戦闘服……。
そのうちの火星独立軍仕様を色濃くイメージした。
「よし……F90、発進準備だ!」
イメージが浮かび上がったと同時に見えた自分のコードネーム。それを叫んだ瞬間。
身体が……熱い!?
爪先から頭の先まで熱く……赤い光が全てを覆い。身体が何かに包まれていく感じを覚える。
だが、違和感はない。こう……フィットしていて、不安は感じない、むしろ安らぎを感じさせる。これがデバイスの暖かさだというのか……。
すぐに光が晴れ渡り、何事もなかったかのようにギロロは佇んでいた。

しかし、ふと自分の身体を見下ろすと赤を基調に白が所々に置かれたアーマーが装着されてその上からトレードマークにもなっているベルトが左肩からかけている。まさに思い描いたとおりのF90をこの身に纏っていた。
「こ、これは……」
そして、自然と右手に握っていたライフル。見るとそれは喪失したはずのビームライフル(RX78の2型)が。そこに存在していた。
無くしたんじゃなかったのか……。

『では。ギロロ伍長、今からターゲットを表示して行きます。ターゲットは擬似攻撃と移動をするので気をつけて下さい。』
「あ、ああ。」

エイミィがそう告げた瞬間、辺りには的がついたロボット兵が出現し始める。
その光景にギロロは直ぐに軍人としての鋭い表情へと変わり。肘を前方に伸ばしてビームライフルを構え。球体の銃口から距離のある的にビームを放ち、直撃させた。
間違いない……こいつだ!と触り心地や重さから理解出来る。
大切な武器が無事なことに安堵し、自然と頬が緩む。が、ビームライフルに気を取られていたギロロは自分の身体が大きな陰に覆われていたのを暗くなった足元の床を見て気付く。
振り向くと今撃墜した的よりも大きなターゲットが背後に接近していたのだった。
武器は……ビームサーベル!
身体に鈍りは感じない、やれる!
反応は速く……咄嗟に左手を振りかぶっていた。しまった--なくしたんだ!?

しかしその瞬間、接近していたターゲットは何かに切断され見事に真っ二つになり。離散していく。
何が起きたのか頭が一瞬、混乱する。
俺は一体何をしたんだ。と切り倒されたターゲットを見下ろすとその断面は何かに焼き切られたのか赤く染まり、熱気を発して小さな蜃気楼を生み出していた。
こ、この切れ方は……。
困惑する思考の中で確信に変わる手掛かりに左手を見遣れば。そこにはいつの間にかグリーンのフレームが握られており、直ぐに実体化して配色がなされた。
白いグリップ。そこからピンク色の光が発し、刃を形成している……。その姿はまさに自身が愛用していた、ビームサーベル。
それがロボット兵を真っ二つに切り裂いたんだ。と解答してくれた。
だが、何故ビームサーベルが?それに心なしかパワーが上がっているような--いや、考えている場合ではない!!
刃の出力にいささかの違和感があった。だが、直ぐに頭を切り替えギロロはビームライフルとビームサーベルを持ったまま。ターゲット群に突撃していく。
「えぇぃ、迷うなど俺らしくない!!」
以前ケロロがヒーロー物のフィギュア2体、金もそのうちの1体しか買えない程しか持ってなく。そのことでどちらにするか3時間も迷っていた。
その時に自分は……
「ええぃ軍人が悩むな!戦場での迷いは自分達を殺すんだぞ!……こっちのボサツマンレオにしとけ」と言った。それを言った俺が今更迷いを断ち切れなくてどうする!!

自分への叱咤で頭に渦巻く暗雲を振り払い。一つ、二つ、三つとターゲットを次々にライフルから放つピンクの光弾で風穴をあけ。光刃で切断していった。
だがそんな中、彼は違和感と憶測があった。
やはりビームサーベルを……いや、ビームライフルを使用してから自分の身体のうちに熱くたぎる何かの力が感じられるのだ。
血がたぎっているんだ。と最初の一発を消費した時はそう考えたが生理現象とは違う。
反応も今までよりも向上しており、反射神経の速度が上がったのははチップによるものだけじゃない。と勘で解る。
そして無くしたと思っていた武器はこのデバイスを起動してから、使いたい。と強く願うと出てきた。
もしかしたら、デバイスに融合されているのかもしれない……。そうなら、今ここで試してみるか。
ギロロは今一度、最低限で良い自分の力と武器の有無を知り尽くす為に。なくした武器の中から1番値段の高いものをイメージした。
フィンファンネル!
すると、イメージしたとおり。フィンファンネルはグリーンフレームで描かれ、数秒で色がつき。
機械状の放熱板が白い翼を象り、彼の背中の左側に姿を現す。
俺の推測も少しは役に立つんだな……。
大事な武器は融合し、デバイスと化した。だから自分が必要と思った時に現れてくれる事に安堵して胸を撫で下ろす。
なぜ融合したか疑問も残るが……先ずは。
眼の前のコレを終わらせる。

辺りを見回せばターゲットはのこりわずか。ビームライフルですぐに片付くことが出来る。
だが……。

「行け!フィンファンネル!」
これで一気に落とす!

バリアジャケットを象ったようにターゲットを撃墜するイメージを浮かべて指示を出すと六つの放熱板は背中から射出され、コの字に折れ曲がってそれぞれターゲットの頭上に高速機動して光弾を放つ。

と同じに身体の内に感じたあの何かが熱く燃え上がってファンネルの動きを補助してくれている。
何だ、何が起きているんだ!?
ギロロはただ驚きながらファンネルにターゲットを撃つ姿を伝えるだけだった。


「凄い……」
ギロロの試験が始まってからおよそ1分が過ぎ、ターゲットは全部落とされ。
モニターをずっと見ていたエイミィはただ率直に感想を述べ。彼女の隣に立つクロノは予想以上のギロロの実力にア然とするしかなかった。

軍人って自称するからターゲットに攻撃行動の設定させてみたけど……たしかに凄い。
そういえば、侵略に来たって言っていたな。
彼からその言葉を聞いた時はそのかわいらしいと言ってしまいそうな赤いダルマのような姿から、たいしたことはないと思った。しかし……今見た動きはまさに軍人と言うのに相応しく、機敏だ。
あんなのがあと四匹も居て、侵略を始めたらどうなるかなんて考えたら頭が痛いな。
状況に応じて武装を引き出す。あのデバイスはミッドチルダ式……とは違うようだし。それにあのコの字……あらゆる角度にそれぞれ動いて魔力砲撃するなんて数こそ少ないがなのはのアクセルシューターに近い。
「エイミィ、データは?」
ようやく言葉が出た。とは考えてる暇はなく、ギロロの能力がどれほどのものなのか。
それが1番気にかかった。
そして身体データを眼にし。エイミィは苦笑いを浮かべて口評する。
「-A。軍人だっけ?」
「ああ」
「流石って言うしかないよコレ」

「とりあえず、赤ダルマもといギロロを迎えに行ってくる。
この結果をどうするかは母さんの帰りを待つか……。」

…………

「そうか……」
デバイス起動が見事に成功したことで用意されたターゲットも倒せることが出来たことで実験は終了し。
ギロロはクロノに促されてブリッジまでやってきて先程の実験での自身の能力とデバイスの性能のことを説明された。
デバイスには杖型が基本としたミッドチルダ式と武器型が基本のベルカ式に別けられる、しかし自分の使ったものはライフルが基本で状況の変化に臨機応変に武装を出現させる。
言うなれば見た目はベルカ、中身はミッドチルダ。というのが内容だ。
「つまり、俺のデバイスは特殊なんだな?」
聞き返すギロロにクロノは「そういうことだ」と返答しエイミィが言葉を繋げる。
「どちらも魔力を使用するのに違いはないけどね。」
「……その事で聞きたいことがある」
二人を見遣ってギロロはターゲットを撃墜している時。常にあった違和感のことを話す。
熱くたぎる力……、血潮の鼓動とは違って今までの戦いで感じなかったと。
「いや、それが魔力だ。最初の銃も、途中で使っていた剣の刃と最後のコの字全て補助していたじゃないか」
「なに?」

予想外にもあっさりと診断され。ギロロは三つの武器を使った時を思いだす。
ビームライフルを使った時は、触り心地に酔いしれて深く考えなかったが撃つ度に。
ビームサーベルを使った時から常に。
フィンファンネルに指示を発して飛ばした時。
クロノの言うことがそうだったのなら、自分は自然と魔力を使用していたのだ。
「な、なんともないのならそれで良いんだ!」
無駄に何か身体に起きたのではないか?と思って少しハラハラしたことが無償に恥ずかしくなり、思わず吃って言葉を発する。
「ああ、魔導師に相応しい力だギロロ」
「デバイスはマガジンタイプでもリボルバータイプでもないから魔力切れするかも……デバイスの改良が必要になるね。」
ライフル、サーベル、フィンファンネルを使用して戦っているギロロの映像を入念にチェックして問題点を述べるエイミィにクロノもコクンと頷く。
「前の二つはまだ少ないけど、コの字は多そうだな。」
彼の気分も聞いておいた方が良いな。
そう思い、クロノは自分の一歩後ろに立つ小さな宇宙人へと視線を合わせ声をかけようした。
しかし、話題の主役たる赤い彼の顔色は陰が入っている。それが今の自分が聞きたかったことの答えになって。
「ギロロ、仮眠したらどうだ?」
小さなため息をつき、身体を休ませることを促す。
無理もない、転移してここに来て無傷とはいえ。脳震盪を起こし、医務室で休んだとはいえ一時間程度。
母たる艦長とでレクリエーションで詳しい話を聞いて、そのまま実験シュミレートで燃費の激しい魔法の使用は忙しいと感じる。
「いらん、軍人の体力を舐めるな。と言いたいが……何処だ」
この質問の仕方は、場所を聞いて自分で行くつもりだね……。
ギロロの言葉から彼の心理をエイミィは察して、傍に立つ馴染みの少年にアイコンタクトをとる。
任されてOK?と。
突然、瞼を開いたり閉じたりする仕種をする彼女にクロノは意を介することが出来ずに頭に?が浮かぶ。
〔〔眼にゴミでも入ったのか?〕〕
念話で聞き返された言葉にエイミィはガクッ。とうなだれ、苦笑を零しながら答える。
〔〔違う違う……ギロロ伍長を仮眠室に私が連れて行くからここを任せて良い?〕〕
〔〔ああ、母さんもそろそろ戻ってくるだろうしな。彼を休ませてやってくれ〕〕
〔〔うん、了解〕〕

意思疎通を終え、エイミィは通信士の席から立ってギロロの元に歩み寄って言葉をかける。
身長差があるためか、まるで道に迷った子供に声をかけるお姉さんの構図が出来た。それがツボに入ったのかクロノの表情は歪み、口から飛び出しそうな自分の反応を手で抑えて堪える。
「ギロロ伍長、今から仮眠室に案内しますね」
「いや、場所を教えてむぐっ……」
自分が推察した通りのことを言おうとしたギロロにエイミィは彼の口元を人差し指を立てた手で塞ぎ、それ以上は喋らせない。と示す。
そのまま小さな両手から脇に自分の両手を這わせて持ち上げる。
「き、貴様!何を!?」
真っ赤な顔にさらに赤みがさし、小さな彼は騒ぎたてるがエイミィは無視してクロノに向き直り。
「じゃあ、クロノ君。行ってくるね」
「ああ。ぷっ…くくっ」
「き、きちゃま今笑っただろ!!」
「はいはい、行くよ~」
はにかんでエイミィはばたばたと足を動かすギロロを抱えて部屋を退出して行った。
「止めろ~恥ずかしい~~~
〔ずかしい~〕
〔かしぃ~〕
〔しぃ~〕
〔ぃ~……

ブリッジに兒玉するギロロの情けない声。クロノは辺りを見回して誰もいないことを確かめて口から手を離す、そして……。
「あっはははははは!」
思いっきり笑い飛ばす。

が、思いっきり廊下のギロロに笑い声は聞き届き。顔に赤い陰が入っていた。
「くぅ……」
言葉にならない恥ずかしさで貧血を起こしてしまいそうだがエイミィに抱き抱えられたまま気を失ったらまさにぬいぐるみ状態……「生きてられない」と思い、何とか気を保っていた。
エイミィも何を言えば良いか解らずにただ苦笑を零すしかなかったがそこでデバイスのことを思いだす。
そうだ。ここでデバイスを借りておこっかな。
「ギロロ伍長。改良の為に調べておきたいのでデバイスを貰っても良いですか?」
「俺は……軍人で……ぬいぐるみみたいな扱いで……笑われて……そもそもこんなはめになったのは--」
エイミィの尋ねに赤みの入った赤い顔の彼はぶつぶつと何か物騒なこと言いながら『F90』をその小さな手で差し出す。
あー、ちょっと本人壊れちゃってるなぁ……。
再び、苦笑が零れながらもF90を受け取りエイミィは彼を優しくしてあげようと小さな決心を抱いたのであった。

…………

「すごいわね……」
宇宙からやってきた来客が溜まりに溜まった疲れにをとるためにエイミィに仮眠室へと案内をしてもらっていた頃。
彼女が退出してから少し経った後でブリッジに艦長たるリンディ・ハラオウンが裁判での用を済ませたフェイト・テスタロッサ達とを伴って帰還してきた。
そして、クロノはリンディに先の実験訓練の映像を見せ。さらに彼のデバイスが現在使われているミッドチルダ式、ベルカ式……両方の一部の特徴を持っているが、本質はどちらにも該当しないことも話し。
母は改めて映像に映る侵略者の姿を見遣って呟く。撃ってから斬る時の反応速度……。最初はそれの繰り返しだが闘い慣れているという印象は感じさせる。
最後に使っている『フィンファンネル』もそれぞれ独立し、ギロロさんの意思に反応して動くみたいだし……。初めてのデバイス使用でここまで闘えれば訓練校も短期間でプログラムを組めるわ。
ランクは-A、並の魔導師より確実に腕は良いし。まだ、他の四人が見つかったという話は聞かないけど。
もし、ギロロさん達が侵略を実行していたら……防衛するのは考えていた以上に難しいものになるのは確かね。
リンディがそう思案している中、フェイト達もまたフィンファンネルを飛ばすギロロの姿に見入っている。
『行け!フィンファンネル!』
「なのはのアクセルシューターみたいだねぇ、フェイト」
傍で頭に大きめの獣の耳を生やしている人化状態の使い魔の言葉に主はコクンと頷く。
「うん、突撃したりはしないみたい。こうゆう動きならそれぞれに回り込まれても返って墜とすこともできる。でも……彼の場合はこの、フィンファンネルって言う端末の反応が速い」
「軍人って自称するだけあって魔導師としての素質も充分にある。コレで分かったのは彼が知らないあいだにデータ倉庫にあったデバイス『F90』、カートリッジが無くて魔力はチャージしていくみたいで燃費が悪いんだ」
高い機動性、そしてディフェンダーレベルの高いターゲットを撃ち落とす攻撃力は申し分ない。
しかし、それを維持しての魔力使用は多いはず。
クロノの言葉にフェイトは納得し、改めて感心する。
ターゲットと言っても魔力の燃費が激しいデバイスを使ってよく此処まで動ける……。

「この子が、ギロロ」
鮮やかな赤を基調に潔い白のバリアジャケットをなんとも美しく見せる小さな宇宙人の名を口ずさむ。
裁判からの帰り、あたたかい笑顔で出迎えてくれたリンディ。彼女から『親しみが沸く宇宙からの侵略者』と知り合ったと聞いて思わず聞き返してしまった。
この子が……。
「それでこの赤まんじゅうはどこに居るんだい?」
「あ、アルフ!(たしかに赤くて丸いけど……)」
本人が居たら怒り叫んでいそうな呼び方をするアルフと。その流れにクロノも乗る。
「赤まんじゅうならエイミィが仮眠室で身体を休めている。転移してきた時の脳震盪とデバイス使用による魔力消費が堪えたみたいだ」
フェイトももう止める気力が無いのか苦笑いを浮かべるだけ。彼の母もまた、苦笑を零しながらギロロの身を案じていた。
こちらはまだしも、ギロロは事故で着艦し。さらにデバイスと彼の能力を確かめるとはいえかなり負担はあったはず……。
「あ、艦長。フェイトちゃん達お帰りなさい」
背後から扉が開かれ、エイミィが微笑んで帰艦を喜んでブリッジへと脚を踏み入れる。
「ただいま、エイミィ」
「ただいま~」
前の事件以来でこの二人とこうして挨拶出来て話も出来るようになるなんて全く考えていなかった。
そう思うと不思議なものかもしれないな。
言葉を交わし、和気あいあいと良い雰囲気を作ってくれる友人達の姿に自然と微笑みながらクロノはエイミィに尋ねる。
「ギロロ伍長はどうだった?」
「あ、うん。ベットに横になったらすぐに寝ちゃった。それと、デバイスも貰ってきたよ」

彼女からの報告にリンディは表情に陰りが入り、映像のギロロに手を伸ばすが。本人に触れることなく手は摺り抜けていく。
彼が起きたら謝らないと。と手をにぎりしめて決意を固め。息子であり執務官のクロノとデータの処分を相談し始める。
話題の本人が眼を覚ますのはそれから数時間ほどのこと……。


続く。

ケロロ「さーて次回のお話は?」
タママ「タママですぅ、次回はあの画像の魔導師と出会うんですぅ。
くっちゃ軍曹さん、くっちゃ。はやく、ずずっ!会いたいですぅ。
ぷはぁ、やっぱりケーキには角砂糖12個入りの紅茶ですぅ」

アリサ「タママてさ……そのケロロって友達よりお菓子が大事なんじゃ」
タママ「何言ってるですか!僕は4回の間食より軍曹さんが好ゲフゥ~」

すずか「げ、下品だよタママちゃん……それより画像の魔導師って誰?」
タママ「それは次回のお楽しみですぅ」
ケロロ「第4話「タママ、画像の魔導師と出会う。であります!」てことでどすか?ゲッゲーロ♪」

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最終更新:2008年10月17日 20:36