「・・・お前が持っていたデバイス、確かランスロット、とか言ったな・・・
あれを一体どのようにして手に入れたのだ?あれに搭載されている”ユグドラシル・ドライブ”は
その強大すぎる出力と危険性故に現在ではそれの開発と使用を禁じられているはずだが・・・」

同じ頃・・・
八神朱雀の尋問を続けていたルルーシュであったが、突如入ってきたリンディの
連絡を受け、尋問を中断するのだった

「・・・はい、ルルーシュです・・・・・・はい・・・現在も・・・!?・・・それは確かですか?
・・・ええ・・・ええ・・・解りました、お待ちしています、では・・・」
「ルルーシュ、何かあったの?」
彼の反応に疑問を抱きカレンが先程の連絡の内容を聞き出そうとしたが
ルルーシュはそれを無視し朱雀にこう伝える・・・

「・・・お前に直接会って話をしたい人物がいるそうだ。尋問を中断し
その者が到着し次第、その者を交えた上で尋問を再開させる。いいな?」
ルルーシュの言葉に一瞬驚いた表情を見せる朱雀。直ぐに冷静さを取り戻す彼であったが
ルルーシュはその彼の動揺を見逃さなかった
(・・・どうやらこの男も気付いている様だな・・・先程の連絡の内容も
あながち嘘ではないのかも知れんな・・・)
ルルーシュがそう考えていると、カレンが先程と同様の問いを繰り返し尋ねて来たので
カレンに耳打ちし、先程の連絡の内容を伝える

(・・・本当なの!?でもそれじゃこちらのデータと矛盾が・・・)
(いや、これは彼から情報を引き出すチャンスだ。やらせてみる価値はある)
連絡の内容に驚くカレンではあったが、ルルーシュはそれを押しのけ
なのはと朱雀の面会を彼女に容認させるのだった
それから程無くしてリンディ、エイミィの二人がなのはを引き連れて
朱雀の捕らえられていた部屋に入室し、そしてなのはを朱雀の横たわる
ベッドの前に引き入れ、座らせる
朱雀となのはは互いの瞳を向き合わせ、微動だにしなかったが
二人は意外な程冷静な態度を崩さなかった。まるで悟ったかの様に・・・
やがてなのはは意を決し朱雀に尋ねる

「朱雀さん、ですよね・・・?」
「・・・ああ、そうだ・・・」
「・・・どうして・・・、どうしてなんですか?何で闇の書の復活なんかに関わっているんですか・・・?
朱雀さん、前に言ってましたよね・・・?はやてちゃんの病気が重くなってるって・・・
あの時は病院に行っていたって・・・。あの話は嘘だったんですか・・・?
答えて・・・!朱雀さん・・・!!」
なのはは今にも泣きそうな表情で朱雀に尋ねる。だが・・・
「はやての症状が重くなっているのは事実だ・・・闇の書による干渉によって・・・」
朱雀の意外な答えになのはは衝撃を受ける・・・
「闇の書による干渉に、って・・・それは一体・・・」
狼狽しながらもなのはは質問を続けるが、朱雀が逆に彼女に質問を投げかける
「・・・君こそ、どうしてこんな事をしているんだい?君はこんな事をするような子じゃ・・・」
「・・・私の事なんかどうでもいいんです!!それよりも何ではやてちゃんが
そんな事になっているんですか!?答えて下さい、朱雀さんっ!!」
なのはが声を荒げて朱雀を問いただす様を見兼ねて、リンディとエイミィが
彼女を落ち着かせようと宥める。そんな彼女の悲痛な叫びを受け遂に朱雀は・・・
「・・・解った。話そう・・・。僕やはやてに何が起こったか、その全てを・・・」

そして朱雀は全てを打ち明けた・・・
闇の書とシグナム達との出会い、彼女達との共同生活、はやての容態の急変
そして何故彼やシグナム達が闇の書の纂集を行っているのか、その本当の理由を・・・
ただ、彼やはやてをを助け支えてきたグレイおじさんの事だけは
彼に迷惑をかけまいと、その事を伏せていた・・・

彼の証言はその場に居た者達全てに衝撃を与えた・・・
そしてなのははその余りの事態の深刻さに堪えきれず、遂に泣き崩れてしまう・・・
「・・・そんな・・・どうして・・・どうして、そんな事に・・・!」
「エイミィさん、なのはさんを救護室へ。もう、これ以上は・・・
ルルーシュさんも、いいですね・・・?」
リンディの提案に頷くエイミィとルルーシュ
「・・・カレン、お前もだ。容態が落ち着き次第彼女から可能な限りの情報を引き出せ。
後でこちらもデータの再検証を行う。いいな?」
「・・・分かったわ・・・」

こうしてエイミィとカレンがなのはを引き連れ部屋を後にし、
部屋にはルルーシュ、リンディ、そして朱雀の三人だけが残された
「あの、質問をしてもいいですか・・・?」
「ん?何だ・・・?」
朱雀の問いにルルーシュが応答する
「虫の良い話とは僕も考えていますが・・・貴方達は妹を救える他の手段を
何かご存知無いでしょうか・・・」
「御免なさい・・・それは私達でも・・・」
朱雀の問いに対しリンディが謝罪する
「闇の書はその性質上、我々も的確な対処が出来ずにいるのが現状だからな。それに・・・
そもそもお前やお前の妹が闇の書に選ばれたのはお前達の持つ”ある特殊能力”が
あるからこそだ。それがこの問題に対する難度を更に高めている・・・」
「特殊能力?」
ルルーシュの発言に疑問を持ち、朱雀は更に質問を投げかける

「我々は、自らが持つ内なる魔力をそのまま使う事が出来ない・・・」
「えっ・・・?一体、何を・・・」
朱雀の発言をルルーシュが制止する
「話は最後まで聞け。それ故に我々は気の遠くなる様な長い時を掛けて
魔力を変換、そして運用する術を編み出してきた・・・
音声魔術や方陣魔術に代表される様々な魔術様式・・・
使い魔やゴーレム等といった魔導生命体・・・
そしてデバイスやお前達が所持していた闇の書といった我々が魔術を行使するのを
補佐し、その性質を高める為の魔導器具・・・
今の我々でもそれら無くして魔力というモノを実際に運用出来ないのが実情だ。だが・・・
そういったプロセスを一切必要とせず、自分の魔力はおろか他人の魔力さえも
吸収、同調、変換、そして転用できる者達がごく稀に現れる・・・」

「そんな・・・それはランスロット、いやデバイスが行うんじゃ・・・」
朱雀は自分がこれまでやってきた事を思い出し、ルルーシュを問いただす
「・・・それはお前自身の力だ。魔力という存在を発見し、魔術という概念を生み出した
一握りの天才達・・・始祖の力・・・レアスキル・・・我々はその者達を
”デヴァイサー”と呼んでいる・・・」
「”デヴァイサー”・・・」
朱雀はルルーシュの言葉を反芻した
「我々の持つデバイスも、元はその者達の名称を語源としているからな・・・
そしてその力は、闇の書が活動する為に必要不可欠なものでもある・・・」

「闇の書に?それは一体・・・」
「闇の書は元々は魔術を行使する為に生み出された触媒だ。他人の魔力を吸収する
機能、というより意思を持ち合わせてはいるが、それを実際に行使する力は
備わっていない、いやその性質上それは不可能だ・・・」

「じゃあ何で闇の書は纂集という行為が・・・!?まさかっ・・・!?」
「そういう事だ。実際に纂集を行っているのは闇の書本体では無い・・・
”デヴァイサー”、つまりお前の妹の魔力がそれを行っているのだ・・・」
朱雀はその事実に驚愕する。
「・・・待ってくれ。じゃあ今妹が苦しんでいるのは・・・でも、纂集を行う事でシグナムさん達の分の
魔力の負担が無くなるって・・・!」
「纂集を行えば守護騎士達の魔力負担が無くなる、か・・・。それは事実かも知れない・・・
だが、纂集を行えば行う程、”デヴァイサー”、つまりお前の妹の魔力が消費され失われる。
となれば、それを補う為に闇の書が取るべき行動は一つだ」

「そんな・・・じゃあ、俺達のやってきたことは・・・」
「そうだ・・・闇の書の纂集は結果的に逆にお前の妹の首を絞めている、という事だ・・・」

自分の信じていた事が崩され、朱雀は恐怖でブルブルと震えだす
「それに闇の書が完全に覚醒すれば、やがてその主である”デヴァイサー”を取り込み、
それをコアとして”デヴァイサー”が絶命するまでその魔力を吸い尽くし
その魔力を用いて無尽蔵に周囲にある物を吸収、変質し続けていく・・・
その後に待っているのは総ての滅びだ。お前が先程居た世界の様にな・・・
闇の書を復活させても結局お前の妹は”モノ”として扱われ、酷使される
それは生き地獄だ・・・分かるか?お前達のやってきた事は何もかもが無意味、且つ
愚かであった、という事が・・・」

「そんな・・・それじゃあ妹はこのまま死ぬしか無いって・・・!!そういう事なのかっ!!
貴方達はそれを知っていながら何で今までそれを止められなかたんだっ・・・!!」
「落ち着きなさいっ!!」
半ば錯乱状態になりバインドを強引に引き千切ろうした朱雀を
リンディは身体を張って止める
「・・・自分達のしてきた事を棚に上げよく言う・・・我々が何もせず闇の書を放置してきたと、
そう思っているのならそれは間違いだ。実際そこにいるリンディさんも
闇の書の所為で11年前に夫を亡くしているだからな・・・」

朱雀はハッとし、身体の動きを止めた
「ルルーシュさん!!」
「いえっ!彼にも知ってもらうべきでしょう!!11年前に起きた惨劇をっ!!」
自分の過去を知られるのを恐れたリンディだったが、ルルーシュはそれを諌め、発言を続けた
「・・・11年前、我々は多くの犠牲を払い、前の闇の書の主を殺して闇の書の奪取に成功、
特異領域に封印しようと闇の書をその為の施設に護送中だった・・・
だが、自らが滅されるのを恐れた闇の書がそれまでに溜め込んでいた魔力を開放し
それを護送していた艦船”エスティア”を侵食し出したのだ・・・」
朱雀はそれを黙って聞き入れていた・・・

「闇の書によって”エスティア”の制御システムが完全に破壊され、艦に乗っていた
多くの者達が脱出出来ずに闇の書の侵食を受け命を落とした・・・
そしてその艦の艦長だったクライド・ハラオウン提督が、別の艦を指揮していた
ギル・グレアム提督に自身ごと”エスティア”を破壊しろと進言し、そして・・・
広範囲大量殲滅兵器”アルカンシェル”を用いて闇の書ごと”エスティア”を撃ち抜き
クライド提督共々”エスティア”は海の藻屑と消えたのだ・・・」

「それなら、どうして、闇の書は・・・?」
朱雀は震えながらもルルーシュに質問する

「・・・闇の書は自身がその存在の危機に晒された時、自身の判断で主の権利を剥奪し
転移、逃亡するという”転生機能”が備わっている・・・大方アルカンシェルが命中する直前に
転移逃亡し、今度はお前達の前に現れた・・・そんな所だろう・・・」

朱雀は呆然と、ただ真上の風景を見上げていた・・・

「ふぅっ、今日の尋問はここまでにしよう・・・構いませんね・・・?」
ルルーシュの言葉にリンディは頷く
「・・・あの、僕はこれから一体どうなるのでしょうか・・・?」
朱雀は二人に尋ねる
「・・・申し訳ないけど・・・貴方も”デヴァイサー”の資質を持っている以上このまま
元の世界に還す事は出来ません・・・詳しくは上層部の判断待ちになりますが、
恐らく、時空管理局・・・つまりこちらの世界の特殊保護管理施設で監視付の生活を
強いられる事となるでしょう・・・」
「そう、ですか・・・」
「ですが、理解して欲しいんです・・・貴方達がこのまま闇の書の纂集を続ければ
貴方の妹はおろか、なのはさんや貴方の世界の人達が危険に晒される、という事を・・・」
「ええ、分かってます・・・」

朱雀が落ち着きを取り戻しルルーシュとリンディが部屋を立ち去ろうとしたその時・・・
「・・・済みません・・・」
と、朱雀はそう謝罪した
「いいのよ、今はゆっくり休んで。後の事はこれから考えましょう。ね?」
「・・・はい・・・」
リンディはそう朱雀に言い残し、部屋を後にした
アースラのブリッジに向かう廊下でルルーシュとリンディは歩きながら
今後の事について話し合っていた
「・・・彼は本当は優しい子なのに・・・なのはさんにはどう説明したらいいか・・・」
「・・・事実を打ち明けるべきでしょう。下手な嘘はかえって命取りになります。」
「ルルーシュさんって本当にリアリストね・・・女の子の心って繊細なのよ?
ナナリーさんにはあんなに優しいのに貴方ってばもう・・・」
「・・・ナナリーは関係無いでしょう。それよりも彼の証言とこちらのデータの食い違い・・・
その件についての再調査を公安部に要請したいのですが、よろしいですね?」
「・・・ええ、御願いするわ・・・はぁっ・・・」
リンディは溜息をつきながらルルーシュの提案を受け入れた
「リンディさん」
「はい?」
「恐らく、今回の一件は只闇の書を捕獲するだけでは済まなくなると思います。もしかする・・・」
ルルーシュが自分の考えをリンディに伝えようとした、正にその時・・・、

「キャアッ・・・!」
「くっ・・・!」

突如として響く轟音と激しい振動。二人は思わずその場に座り込む

「ブリッジ!何があったの!?応答して!!」
リンディが個人用の通信端末でブリッジと連絡を取ろうとしたが、
一向に連絡が付かなかった・・・
「ダメ!!つながらない!!」
「こっちもです!!リンディさん、ともかく今はブリッジへ!!」
「ええ、行きましょう!!」
こうして二人はブリッジへと走り出していくのだった・・・

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最終更新:2007年08月14日 09:31