FIGHT.00『忍び寄る、異世界への魔手!!』(前編)
天体戦士『リリカルサンレッド』この物語は川崎にて繰り広げられる善と悪の壮絶な闘いの物語である。
~小田急線新百合ヶ丘駅ビル『ジョ○サン』~
「エェッ!!魔法の世界へ出張ですかっ!?」
ファミリーレストランの客席から良く通る年配の男性の声が響く。周囲の客が視線を向けるとそこには紫の服に大きな兜をかぶり、
特徴的な眉と唇をした小柄な男性?川崎支部のヴァンプ将軍がいた。
「ウム、その通りだヴァンプよ。期間としては半年から一年以内を想定している。我々フロシャイムは世界制服のみならず、異世界への侵略も視野に入れているのだ。」
そしてその向かいに座る軍服を纏い左手と一体化したハサミを持つ、細身だが長身の男性?東京支部のヘンゲル将軍が静かだが威厳のある声で答えた。
「で、ですがヘンゲル将軍。そんな重要な仕事でしたら、私よりもヘンゲル将軍の方が適任だと思うのですが…?」
ヴァンプ将軍は自身が感じている疑問を口にする。それに対してヘンゲル将軍は
「ウム、確かに本来なら私がやるべき事だろう…だが私には残念ながらどうしても外せない重要な案件があるのだ。そこで私は信頼、
実力共に期待できるお前に任せてみようとおもうのだ。」
と答えた。ヴァンプは話を聞き「う~ん」と唸り、額の汗をお絞りで拭う。
「この件はフロシャイムにおいて非公式に行われるものであり危険も伴う…無論、拒否をすることも可能だ。ヴァンプもすぐには決めかねるだろう…返事は別の日でも構わん。」
ヘンゲルはヴァンプの葛藤を読み取り、説明を付け加える。
その後は何気ない世間話やお互いの侵略状況の話に花が咲き、コーヒーとココアの会計を済ませ駅の改札に向かった。
「あぁ、ヘンゲル将軍。新宿方面でしたら私は登戸で南武線に乗り換えちゃいますけど、途中まで一緒に帰りましょうよ♪」
切符を買ったヴァンプはヘンゲルに声をかける。それに対してヘンゲルは…
「すまないが私はこれから町田の『とらのあ○』に向かわなければならん。待たせているもの(決して者にあらず)がおるのでな…」
と答え、別れ際に「いい返事を待っているぞヴァンプよ。」と言い小田原方面のホームへと去っていった。
ヴァンプも「う~ん用事があるんじゃ仕方ないですね。では、ヘンゲル将軍もお気をつけて…」と答え、新宿方面の電車に乗ったがその背中はどことなく寂しそそうだった…
~続く~
~おまけ~
「ヘンゲル将軍、お帰りなさいませ」
「留守の間ご苦労だった、サミエル」
大きな紙袋を右手に、フロシャイム東京支部アジトへと戻ったヘンゲルを迎えたのは彼の右腕とも言える怪人、サミエルだった。
「フム、町田店は中々の品揃えだな…贔屓にしている喫茶店の関連商品を揃える事が出来た。」
ヘンゲルは紙袋の戦利品をデスクに並べ、物色を始めた。そしてその様子を近くで見ていたサミエルは口を開く。
「あの、ヘンゲル将軍。2つほど質問があるのですが宜しいでしょうか?」
「何だ」
ヘンゲルは右手に持っていた戦利品を置きサミエルへと顔を向ける。
「は、まずは本日寄られた『とらの○な』についてです。新宿にも店舗があると記憶していますが何故わざわざ遠回りな町田店へ寄られたのですか?」
「目先の情報に踊らされるなサミエル。確かに距離的には新宿店のが近い…だがあそこは書籍を中心に
扱っているため、他の店舗と比べ偏りが激しいのだ。距離だけで無く、現地の規模も視野に入れる。これは戦いにおいても言えることだ…
してもうひとつの質問は何なのだ?」
ヘンゲルはハサミを鳴らし質問を促す。
「は、異世界への出張の件です。資料は幾つか拝見させて頂きました。そしてその中には『魔法少女』と呼ばれる人種も確認されています。
ですがヘンゲル将軍程の方がそれを見逃す筈がありません。
それらの情報を見ておきながら尚、将軍が辞退をする程の譲れない案件とはいったい?」
「……………サミエルよ、お前は私の事を良く理解しておるな。良いだろう、お前には事の真相を話すとしよう…私がどうしても譲れぬ案件を」
ヘンゲルはサミエルから顔をそらし、デスクに腰を下ろす。そしてサミエルの方へ顔を戻した時、場の空気が変った。自然とサミエルも背筋を正す。
「私の譲れぬ案件、それは…
三ヶ月後に『団鬼八先生のサイン握手会』が控えておるのだ。やはりファンとしてはこのイベントを見逃す事は出来ん。
そこで私は仲間として、友として信頼出来るヴァンプに話を持っていったのだ…」
「………」サミエルは団鬼八がH小説家である事やヘンゲルが愛読し、ファンレターを送るほどの大ファンである事も知っていた。だがサミエルは何も言う事が出来なかった…
フロシャイム東京支部ヘンゲル将軍、彼の知能指数は150を超えるという―――――
最終更新:2009年02月18日 19:58