現世や霊界とはまた別の世界―――ミッドチルダ。
霊界とはまた違う、魔法の文明が栄えている世界である。

――時空管理局遺失物管理部 機動六課 PM15:32 

「出張……?」
今日の訓練の半分を終え、今休憩中に聞かされた内容を、スバル・ナカジマはオウム返しに聞き返していた。

「なのはさん達の世界に? またですか?」
「こらスバル! 『また』とか言わない!」
そう言ってスバルの頭を引っ叩くのは相棒のティアナ・ランスター。スバルは頭をおさえて呻いていた。

「…でも、どうしてまた?」
「もしかしてレリックと関係が…?」
 二人の漫才を尻目に改めて聞き返すのは、同じ六課のメンバー、エリオ・モンディアルとキャロ・ロ・ルシエ。

「…まあ、そんなとこだ。」
新人達の教導の一人のヴィータは少々ぶっきらぼうに返した。

「今度の奴は前と違って一筋縄じゃいかないみてぇだ。ハンパな覚悟じゃ危ねえかもな。」
「ヴィータちゃん、それはちょっと脅かしすぎだよ。」
 そう言って、なのははヴィータを宥めた。

――高町なのは 19歳 髪の色/ブラウン 瞳の色/ブルー
弱冠19歳の若さで周りの人から「エース・オブ・エース」と呼ばれ、尊敬されるほどの、誰もが認める天才少女である。

「わーってるよ、ただ言いてぇのは、先走った行動や、無茶な行動は取んなってことだ」
 改めて新人達を見渡し、厳重に注意するヴィータ。
「たしかに、油断は禁物だけど…」
しかしなのは、変わらぬ笑顔で続けた。
「だけど皆も、ちゃんと場数は踏んできているし、最初の頃に比べたらすごくつよくなってるよ 気負わず、でも慢心したりせず、『普通どうり』でいけば、大丈夫だから ね」
 そう言って、なのはニッコリと笑った。その言葉に勇気づけられるように新人達も頷いた。
大丈夫だ―――自分達も強くなっている。何が起ころうとも――きっと乗り越えて行ける。
(私達にできることは、この子達が絶対壊れないように育てること――)
 そう胸に留め、なのはは新人達に告げた。
「詳しい話はまた今度にして、そろそろ訓練を再開しようと思うんだけど、いいかな?」
「いっとくけど、任務が目前だからって手ぇ抜いたりはしねーぞ」
 ニヤリと笑って相棒のデバイスを担ぎながら、ヴィータも続ける。
その顔に多少怯みながらも、しかし新人達は小気味よく返した。

「「「「ハイ!!!!」」」」


 ――――――――新たな始まりは、ここから―――。



        魔法死神リリカルBLEACH
        Episord 2 『The indication』



      ことの発端は、この一言からだった。

「浅野ケイゴの鳴海ツアーにご招待~~~~!!」
「「「………ハァ?」」」

 昼休み。
その日の学校の学業の半分を終え、束の間の休息の時間の途中。
その学校の屋上で一護は、いつものメンバーで昼食をとっていた時だった。

「今週の土日を使っての一泊二日旅行!! 現地でワイワイなイベントでキャアキャア楽しみ、旅館では混浴露天風呂や肝試しまでありとあらゆる企画が盛りだくさん! さあ、この土日は浅野の鳴海ツアー 鳴海ツアーへご招た――」
「待て待て待て待て」
やけにハイテンションな調子で旅館のポスターを広げながら、一人楽しそうに喋り立てる彼――浅野啓吾に一護はとりあえず聞いてみる。

「なんだよ、鳴海ツアーって」
「だから浅野啓吾の鳴海ツアーだって。今週の土日を使っての―――」
「わかったわかった!! もういい」
 延々と何度も同じ言葉を繰り返そうとする前に何とか啓吾を静止させることに成功する一護。面倒臭そうな雰囲気を隠そうもせずまた聞いてみる。

「で? どうして欲しいんだよ?」
「だから、行くだろ? 鳴海ツアー」
「イヤ、行かねーよ」
「何ィァ!!!!!?」
 先ほどの調子とは一変、急に迫力ある顔をして一護に迫る。一護は一瞬だけたじろきながらも言った。

「なんでそんなツアーだかなんだかの為に貴重な休日使わなきゃならねーんだ。」
「何だとォ! それが健全な男子高校生が言うセリフかぁ!!」
「うっさい ちょっと黙れ トーンを落とせ」
 大声でまくし立てる啓吾をまた静止させる一護。
冗談じゃない。一護は内心そう思っていた。
ただでさえ死神代行という年中無休の仕事と、学校をなんとか両立させるので一杯一杯な状態なのだ。その一護にとって休日とは、それはそれは大切なものなのだ。貴重なものなのだ。朝寝坊しても唯一咎められない大事なモノなのだッ。

(絶対行くか! 面倒くせぇ)
そう決めて、相変わらず何か喋っている啓吾を無視して昼食を食べ始める一護。とりあえず何を言われてもスルーすることにした。
――しかし

「いいじゃねぇかよ!! 別によぉ!」
怒鳴るようだった啓吾の口調が

「ねぇ……絶対損させないからさぁ……」
だんだんと卑屈になっていき

「お願いします……この通り…」
終いには土下座までして頼み始めるようになった。
さすがの一護もこれには辟易した。

「何なんだよ、何でそんなになってまで――」
「だってよぉ…アレよぉ……」
「アレ…?」
ほとんど涙目になりながらも啓吾は続けた。

「ほらぁ…覚えてるだろ? 夏休み前のあの浅野ツーリング」
「あ…ああ」
 そういえばそんなのあったなぁ…と一護は思い返す。

「アレ俺すっごい楽しみにしてたのにさぁ…みんな用事があるとか言うしさぁ……アレ俺すっごい楽しみにしてたのにさぁ…みんな用事があるとか言うしさぁ……」
 と今度は片隅で座って皆に背を向け愚痴り始めた啓吾。
……さすがに少し可哀相に見えてきた。

(……………)
一護は今―――
(………………)
休日と旅行、どちらを取るか―――
(…………………)
秤にかけ、その結果―――

「わーかった 行くよ! 行きゃいいんだろ!」
「……マジでかぁ!!」
ついに根負けしたのか、そう言う一護。
啓吾は――まるで不死鳥のごとく―――立ち上がり一護達のもとへ駆け寄った。

「いいの? 一護」
そう聞くのは、一護のクラスメイトであり、級友である小島水色。
「仕方ねーだろ なんかそうしなきゃいけねー的空気が漂ってたんだからさぁ つーかオマエはどーすんだ? 水色?」
「う~ん…一護やチャドが行くんなら僕も行こうかな」
「チャドはどうすんだ?」
「………ム」
 一護は、全長2メートルはあろうかという大男―― 一護の中学からの親友でもあるチャドこと茶渡泰虎に聞いてみた。
 チャドは口数少なげにこう言った。

「…特に用事もないし……行こうと思えば行けるが…」
「……決まりみたいだね」
 再び楽しそうにわめき散らす啓吾を見て、水色が諦観じみた口調でそう言った。

「そうだ! 井上さんも誘おうぜ! あと有沢も! それから水色! 来るときには可愛い子ちゃんを最低2人は連れてくるよーに!」
「そこまで楽しいツアーになるの? ケイゴが企画したんでしょ?」
「うるせぃ! 俺が楽しいと言ったら楽しいのだァ!」
 そんな二人の会話を見やりながら、一護はこう呟いた。

「まったく、面倒くせぇことになったなぁ。」


 運命の針は刻み続ける―――。一つ…また一つ―――


       午前七時五十五分 土曜日

  空座町―――駅
「遅いぞ!! 一護!! 今何時だと思ってるんだ!」
「うっせーな、ちゃんと時間前には来てんだろうが」
「10分前行動は基本中の基本だ!! そんなにやる気がないなら帰れバカモノ!!」
「じゃ、帰る」
「あぁッ…待って!! ゴメンナサイもう言わないから帰らないでぇ!」
 朝になってからまだ間もないというのに既に道行く人で溢れ返っている中に賑やかな一団があった。面倒臭そうにもその仲間に加わる一護。

――その先に待ち受けるものが、何なのか知らずに――


    鳴海市 午後零時三分 同日

「うわあ、また来ちゃったねぇ、なのはさんたちの世界」
「そうね……」
 自分達の世界とは違う、けどどこか通ずるところもあるような建物を見やりながら感慨深げに呟くのはスバルとティアナ。これでもこの近くにレリック反応があるとみて、調査の途中なのであった。

 今回の任務は、滅多にない異世界の任務ということでレリックの調査から確保まで全て新人達で行われていた。
今までこなしてきた任務に比べて比較的簡単とはいえ、決して油断できるものではないが、いずれ自立の時の為に、あるていどこのような地道の調査も必要だというなのはの方針にもよった。
 ――とは建前で実際は人員不足から来ているだけなのだが。
今回の任務、参加しているのは新人4人となのはとヴィータ、そして結界担当のシャマルだけであった。他の人達は個人の事情や仕事自体が忙しく、来れない状況にあった。

(エリオ、キャロ そっちは何かあった?)
(いえ、特には…)
(そっちはどうですか?)
(こっちも成果ナシ)
念話ごしに別行動をとっているエリオとキャロに話しかけるが、特に何もないとわかると、ティアナはため息をついた。

(――まあ、そう簡単に見つかるわけないか)
「ねえ、スバル…」
 とティアナはふりかえると、目をキラキラさせて一点を見つめているスバルの姿があった。ティアナはスバルの見ている先を見て、その理由を悟った。

「……アイス?」
「うん…アイス」
「スバル…私達の目的は?」
「うん…アイス」
 ダメだこりゃ ティアナはそう思った。そう思うついでに、今持ってるこの世界のお金を計算してみる。無視してもよかったが、そうするとこの先ずっとうるさくしそうだし。

「一番安いやつにしときなさいよ」
 そういってお金を渡すティアナ。

「いいの!? ありがと~~ティア!」
「うっさい! さっさと買いに行く!」
「は~~い」
 まるで子供のように無邪気な顔をして店まで一直線に走りだすスバル。
―――と、突然ちょうどスバルが走る角から、人が現れ出た―――
(――――――!!)
あまりにも突然のことで止まれないスバル。

「いたっ!!」
「あたっ!!」
 結果、スバルとその人とは派手にぶつかり合ってしまった。
(バッカ、もう…)
ティアナはやれやれとため息をつき、急いでスバルのもとに駆け寄った。

「いたた…」
「大丈夫か?」
「はい、なんとか…」
 スバルにぶつかった人そう言ってはいち早く立ち上がるとスバルに手を貸した。
スバルは感謝しながら貸してもらった手でなんとか起き上がり、その人を見つめた。
その人、――オレンジの派手な髪に不機嫌そうな顔をした男は、怖そうな外見とは裏腹に優しげに聞いてきた。

「ケガとか、してねえか?」
「はい…あの、ゴメンナサイ、急にぶつかってしまって」
「別に、大丈夫だ 気にすんな」
 そう言って、男も自分を不思議そうに見つめた後、特に何もなくその場から立ち去って行った。

「大丈夫? まったく走らなくてもアイスは逃げないっての」
そう言いながらやってくるのはティアナ。しかしスバルは、まだぶつかった男の後ろ姿を見ていた。

「どうしたの…?」
「え…いや! なんでも…」
そうは言うものの、まだスバルは男の後ろ姿をしばらく見続けていた。姿が見えなくなっても、まだ。

(派手な髪の人だったなあ――)
色々な人と出会ってきたが、あそこまで派手な髪をした人はそうそういるものではなかった。
――しかし次の瞬間、

「それより、アイス いいの?」
 スバルの意識は、

「ああっ、そうだ! アイス!!」
再びアイスに戻っていた。

―――――これが最初の出会い――――――――――――
―――――お互いをもっと知るのは、この先――――――
―――――しかしそのときは、もうすぐそこまで――――。


(変な髪な奴だったなあ)
 そう思い、一瞬、振り返る一護。
いままでいろんな不良達を見てきたが、青色? のような色をした髪をした人を見るのは初めてだった。

「どしたの? 黒崎君」
「イヤ、さっきの、変な髪な奴だったなーって思って」
「それ、アンタが言う?」
 一護の会話に答えるのは同じクラスメイトの井上織姫と幼馴染の有沢たつき。
たつきの言葉にムッと顔をしかめながらも一護はもう一度後ろを振り返る。
――さっきの女の子は、もういなかった。

「ハイハイ!! みなさんちゅう~~~も~~く!」
 と手を叩いてそう叫ぶのは啓吾。
「これから昼食タイムと行きたいところですが、皆さんは何が食べたいでしょーか!?」
「じゃあ僕焼肉」
「じゃ、アタシはステーキ」
「じゃ俺は寿司 もちろんおごりだろ?」
「ちょお待て待て!! 何で皆さんそんなハイリスク!?」
 いきなりの注文に啓吾は大いに慌てた。
「もっとこうカレーとかラーメンとか一般的なものをだね……井上さんはどうする?」
「私? 私は…そうねえ…」
 顎に手をやって何やら真剣そうに考え始める織姫。今、織姫の頭の中にはとんでもない妄想が繰り広げられていた。
(丼……の上にお肉とようかん…あ、たまねぎとみかんもいいかも…その上に醤油と牛乳でしょ……あとは)
「い…井上さん?」
「おーい、織姫、入ってる?」
 考え込んだきり動かなくなった織姫にたつきは手を振って聞いてみる。
織姫ははっと辺りを見回し、唐突にこう言った。
「あれ? チャンピオンは? どこ?」
「え…今何食べるか考えてたんじゃなかったの?」
 底の知れない織姫ワールドにみんなが辟易していた
 まさに、そのときだった―――

「ホ~ロ~~~~~~~ウ!!! ホ~ロ~~~~~ウ!!!!!」
「うほっっほぁあ!!!」
 急にサイレンのような大きな音が、一護の腰の手形のような物から鳴り響いた。
一護は慌ててその手形から出る音を消す。

「どしたの? 一護?」
 若干驚いたように聞く水色。しかし、あれほどの大きな音にも関わらず周りの人々は平然としていた。水色も、どちらかというと一護の反応にびっくりしたようだ。

「あぁ……イヤ…ちょっと…」
 と、一護は、急に腹を抱えて苦しむそぶりを見せた。
「腹がッ!! 今スッゲェトイレに行きてぇ気分だッ!!」
「あ、ちょっと一護!!」
 唖然とする仲間達をおいて一目散にその場から離れる一護。彼の姿は土煙りに隠れてあっという間に見えなくなってしまった。

「大丈夫かな? 一護」
「さあ……っておいチャド!?」
「織姫!! アンタまでどこいくの!!?」
 今の出来事に唖然とする暇もなく、今度はチャドと織姫が一護と同じように明後日の方角に駆け出していた。

「ゴメン! 私達もトイレ!」
「そんな、走るぐらいキてんの!?」
「うん! いろいろともうキてんの!!」
「…じゃあもう行ってこい!!」

 たつきがそう言う頃には、もう二人の姿はなかった。
しばらくして、啓吾がいまだに茫然気味に言った。
「何食ったんだ? アイツら」
「さあ……」

――――便所室
「大丈夫? 黒崎君」
「ああ…ってか別に本気で腹が痛いとかそう言うんじゃないから」
「それより井上……ここ男子便所だぞ…」
チャドがそう指摘する。誰もいないからいいものの、何故か織姫は当たり前のようにそこにいた。
織姫は「まあいいじゃない!」の笑顔の一言で済ませると改めて一護に聞いた。

「虚なんだよね? 黒崎君」
「ああ…そうらしい」
 と、一護はため息をついた。――まったく、休日くらいゆっくりさせろってんだ。
「手伝いは……?」
「大丈夫だよ ってか普通の虚相手に何人もいらんだろ」
 そう言って一護は先ほどの手形、―――死神代行証を体に当てた。
すると一護の体から、黒い着物を纏ったもう一人の一護が現れた。最初の一護は、まるで抜け殻のようにぐったりとしていた。

「それよりコイツの相手を頼む」
 そう言って一護は抜け殻一護のポケットから丸い小さな玉を取り出す。
一護はそれを抜け殻一護の口に入れた。
―――瞬間、いままでぴくりとも動かなかった一護が急に起き上った。

「…ぷはぁッ!……ここどこだ?」
しばらく周りを見渡したあと、黒服姿の一護を見つけると、いきなり大声で怒鳴った。
「アアッ!! テメェ一護!! 俺様を汚ねえポケットの中に押し込みやがってぇ!!!」
「うるせーよコン!! 喋るヌイグルミとか連れてけるわけねーだろ!!」
「だったらそれ相応の対応の仕方があるだろうがッ!! 人権侵害で訴えてやる!!」
 けたたましく喋るのは改造魂魄・コン。
早い話が死神の仕事の際、その抜け殻になってしまう体に違和感無いように代行する存在である。

「本当に…助けはいらんのか?」
「ああ、大丈夫だ それより…」
 と、ここでコンは、今度は織姫を見つけると―――、
「うおっ! 特盛…じゃなかった、井上サーーーン!」
 急に織姫向って飛びかかっていた。
しかし数歩も行かずに一護に殴りたおされる。

「じゃあ頼むぞ 何かあったらかまわずなぐっていいから」
「…ム、わかった」
「オッケー! 気をつけてね、黒崎君」
「ああ、わかってるよ」
 一護は軽く返すと、窓からそのまま飛び去った。


鳴海市 とある建物内 午後一時十三分

「みんな、ちゃんとやってるかな?」
「さあな、まあ、いざとなったらシャマルの探査魔法もあることだしな」
 とある部屋でそう話すのはなのはとヴィータ。
任務の間だけ間借りすることにした部屋で新人達の報告を待っていた。
今回、レリックがこの世界に見つかったというのは聞いているが、それだけで大した情報はない。――早く見つかるに越したことはないが、先に敵方が見つけても、これまでの経緯からどう出るか、大体のパターンは読めている。だから楽観はせずとも過度な警戒はしていなかった。

「そういえばなのは、実家に挨拶はしてきたのか?」
「ううん、まだ これが終わってからにしようとおもってる」
「またしばらくは会えなくなるからな、ちゃんと挨拶ぐらいしとけよ」
「にゃはは、確かに」
 と、会話している途中だった――。
(なのはちゃん、ヴィータちゃん、見つかったわ!)
 念話ごしにそう言うのは新人達とは別に独自に調査していたシャマルからだった。
(五分後、ガジェット達が現れるわ! 座標は…)
「…早えーな」
「…近いのはスバル達ね」
 素早く思考を切り替えるなのはとヴィータ。しばらくの黙考の後、まずヴィータがシャマルに指示を出す。
(シャマル、結界だ)
(ええ、わかった)
 次になのはが新人達に指示を飛ばす。
(スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、聞こえる?)
(あれ…なのはさん?)
(予定よりレリックが早めに見つかったみたいなの、五分後、場所はスバル達が近いかな すぐに動ける?)
(え…はい! 大丈夫です)
(いつでも動けますよ)
 それぞれに返事を返すスバルとティアナ。
(今回も、私達はバックアップに回るつもりだから、スバル達はレリックの確保、ガジェットの殲滅 その状態からどう動くか、よく考えてから行動すること、わかった?)
*1
(じゃあ、各自、行動開始!)
*2))
威勢の良い返事を残し、通信は切れた。
「ふう…」
「あいつら、ちゃんとやるかな?」
「大丈夫だよ、みんな強くなってきてるから」
「まあ、それもそうだな」
 と、一息つく二人。―――大丈夫だ。いままでもいろんな危機をそうやって切り抜けてきた。だから大丈夫だ―――。と
――しかし異変はいつも唐突に起こるものである――

(な…なのはちゃん!! ヴィータちゃん!!)
 しばらくして、急にシャマルから慌てた声が飛んできた。
(どうした? シャマル)
(何かあったんですか?)
 シャマルはすぐには答えなかった。今起こっている状況を、必死で頭の中で整理しているようだった。

(そ…それが…)


   鳴海市 市街地 午後一時十八分前


「ゥ……ウオ…」
「テメエ、逃げんじゃねえ!!」
「ウゴアァァァァァァ!!!」
 高いビル群を器用に飛び回るサルのような虚を、ようやくしとめることができた一護。
虚は断末魔の叫びをあげながら塵となって消えた。
 ようやっと、一息つく一護。
「ったく、チョロチョロ逃げ回りやがって…」
そう言い、改めて周りを見渡す一護。さっきの虚を追いかけ続けたせいで、今自分はどこにいるのか、見当がつかなくなってしまったのだ。

「ヤベェ、どっから来たっけ……――」
冷や汗流しながらどうやって帰ろうか検討していたときだった。
ふと下を見やると――。
「………ん?」
そこには、赤く煌めく小さな結晶が落ちていた。
ちょうど、さっきの虚を倒した場所だった。
「…さっきの奴が持っていたやつか?」
そう言い、結晶を拾う一護。―――もしかしてさっきの奴はコイツを守っていたのか?
だけど何で―――
――そのときだった。

「……何だ?――」
急に空が赤く染まり、辺りが急に静まり返る。
見れば周りにいたはずの人影は急に消えていた。
そして―――。

(―――――!)
ズン と、
赤い空から急に、丸い影が、目の前に、落ちてきた。
「……え?」
巨大な丸い形をした、ただそれだけの存在。
そいつは、自分を見つけると―――
(――――――――!!!?)
―――いきなり、襲いかかってきた。




―――――――――――――――――――――――――――――To be continued
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最終更新:2009年03月03日 20:09

*1 わかりました!!

*2 ((はい!!!!