その頃、六課の格納庫。
バーニィが昨日言っていた、クワトロ用の「新しい機体」がシャアズゴの隣に立っている。
その機体は、かの「シャアザク」とそっくりの配色の上、装甲の各所(指揮官機を表す角とか)に金メッキコーティングが施されていた。
カミーユはアングラ雑誌で、なのはは『MSイグルー』で見たことがあるその機体に驚く。
その名は「EMS-10 ZUDAH」!
カミーユが思わずため息を洩らし、クワトロが嬉しげに答える。

「EMS-10じゃないですか」
「奇跡的に残っていた一機が偶然こっちに流れ着いていたらしい」

かくして、赤と金に彩られた「シャア専用ヅダ」が誕生したのである!!
と、それは置いといて……。
『軌道上に幻影は疾る』で、ヅダが空中(?)分解するシーンをしっかりと見ていたなのは、さり気なく注意する。

「これ、フルパワー出すと自壊しますよ」
「それを防ぐための対策は用意してある」

その一言と共に、クワトロは『旧約』夜天の書を取り出す。
ページをめくり、クワトロが空いているほうの手を置くと、彼の隣に一人の少女が現れる。
なのはは彼女の姿を妙に冷静に見つめてしまった。
もしはやてがこの光景を見れば、狂喜乱舞していたであろう。

「リインフォース……!」
「そうだ。リインフォースI(アイン)。この娘はヅダとユニゾンしてもらう!」

かつて消滅したはずの彼女、初代リインフォース。
驚いたなのはが、彼女に何故ここにいるのかを聞いたが、彼女は「気が付いたら彼の側にいた」の一点張り。
クワトロも、「こちらに迷い込んだ時には既に持っていた。いつ手に入れたのかは覚えていない」と答える。
初代リインフォース自身は、自分が生きている事を隠したがっているが、クワトロの方はヴィータが戻り次第はやてたちに教えるつもりである模様。
目が点になっているなのはを尻目に、カミーユは珍しそうに初代リインフォースを見ていた。


数分後、六課の一画では、はやてとフェイトがまた話し込んでいる。
どうやら、臨時査察の日取りが決まったようだ。
何故か、フェイトの手にはウサギのぬいぐるみが二つ。

「一週間後?」
「そう。急に決まってな。まあ、向こうもこっちに懸念を持ってるから、仕方ないけど」

少し困った表情で言うはやて。
一方のフェイトは、地上本部側の意図に気付いてしまう。
一刻も早く、こちらの粗を探したいことに。

(こちらのことが相当気に入らないみたいね、向こうは。多分、Ζガンダムやヅダの事で相当ねちっこく追及されるわね。ディエチとウェンディからも情報らしい情報は引き出せていないのに……)

唇に指を当て、考えるフェイトであったが、休憩室前の扉に差し掛かった際に、誰かの泣き声が耳に入り、思考が中断される。
何事かと思い入ってみると、そこには、なのはとカミーユに抱きついて泣いているヴィヴィオとロザミィがいた。
どうやら、二人と離れるのを嫌がっているようだ。

(エース・オブ・エースと最高のニュータイプにも勝てへん相手はおるんやね……)

そういえば、今日は機動六課設立の目的云々で、なのはとカミーユ、そしてクワトロと一緒に聖王教会本部に行くことになっていた事を思い出すはやて。
あれこれ考えている内に、両手にぬいぐるみを持ったフェイトがしゃがみ込み、ヴィヴィオとロザミィに挨拶していた。

「こんにちわ。私はフェイト、なのはさんとカミーユ君の大事なお友達。ヴィヴィオ、ロザミィ、どうしたの? なのはさんとカミーユ君の二人と一緒にいたいの?」
『うん』

涙目のまま、頷くヴィヴィオとロザミィ。
フェイトは優しく二人に諭す。

「でも、二人とも大事なご用でお出かけしないといけないのに、ヴィヴィオとロザミィがわがまま言うから、困っちゃってるよ。この子達も」

達人的なオーラを放ちながら、ヴィヴィオとロザミィを上手くあやすフェイト。
使い魔(アルフ)を育て上げ、甥と姪の面倒も見ており、エリオとキャロの小さい頃を知っているフェイトにとって、泣き止まない幼女二人をあやすのはわけないのかも知れない。
フェイトは、こうして見事にヴィヴィオとロザミィをなだめきった。


数十分後、聖王教会本部。
はやてたちは、カリム・グラシアに案内され、その一室に入る。
そこには既にクロノ・ハラオウンがいた。

「やあ、昨日はちゃんと寝たかい?」
「そっちこそ、ドアをノックする癖はつきましたか?」

憎まれ口をたたきあうクロノとカミーユ。
これにははやてたち、特にフェイトが目を丸くした。

「お兄ちゃんと会ったことがあるの?」
「……Ζガンダムを改造してもらっていた頃かな。寝ずに『機動戦士ガンダム』を見てて、『めぐりあい・宇宙編』を見ようとしていたときにノックもせずにいきなり入ってきた挙句、名乗りもせずに説教垂れていなくなった」

刺々しい言葉で説明するカミーユ。
フェイトは呆れるような表情で、残りは苦笑しながらクロノを見る。
これにはクロノもバツが悪そうだった。
しかし咳払いをして、説明を始める。

「機動六課の設立目的は、迅速なロストギア対策及びガジェット迎撃を可能とすること。表向きはね」

クロノがモニターを操作し、彼とカリム、そしてリンディの写真が表示された。

「僕と騎士カリム、そしてリンディ統括官が六課の後見人。そして非公式だが、『伝説の三提督』と政府も支援を約束してくれた」

モニターに、今度はミゼットたち『伝説の三提督』の写真が表紙される。
なのはとフェイトは『三提督』が協力していることに驚き、クワトロとカミーユはミゼット以外の二人も協力している事を知り納得していた。
そして、カリムが席を立ち、同時に己のレアスキルを発動させる。

「これは、私のレアスキル、『プローフェティン・シュリフテン』。二つの月の魔力が上手く揃った時に初めて発動可能となるため、年に一度しかできませんが、最短で半年、最長で数年先の未来を詩文形式で書き記した預言書を作成することができます」

カリムの周りに、本のページと思しき物が彼女を囲むように集まる。
その内の一枚が、クワトロの元に近づく。
見たことも無い文字だったため、クワトロは読むことができない。
ページの方も元の位置に戻る。
それを見たクロノが説明した。

「……文章は解釈次第でいくらでも意味が変わるほど難解な上、使用文字は全て古代ベルカ語。更に内容もこれから起きる事態をランダムに書き出すだけ。的中率は『割と良く当たる占い』レベルだ」
「……この予言は、教会や本局に航行部隊のトップ、そして政府中枢も予想情報として目は通す。せやけど、地上本部の方は、レジアス中将が大のレアスキル嫌いやから目は通しとらん。まあ、信憑性はそれほど高いわけや無いから仕方ないけど」

少し困ったように説明するはやて。
それを見たクロノは、モニターにレジアスの写真を表示し、呟く。

「もっとも、レジアス中将の場合、自分に魔力資質が無いから、ひがみ半分逆恨み半分でレアスキルを嫌っているだけかもしれないがな」

表示された彼の顔を見て、カミーユとなのはは一気に眉をひそめる。
クロノも、汚いものを見るような目で評した。

「彼を尊敬しているはやての前で言うのもアレだが……。はっきり言って末期だな。真綿で自分の首を絞めているようなものだ」

冷たい表情で吐き捨てるクロノ。
はやての方は哀しげな表情でクロノを睨む。
しかし、クロノは更にダメ出しする。

「はやてが管理局入りした頃から、公の場での舌禍や部下の不祥事擁護などの問題行動を繰り返し、受けた批判と処分の数のワースト記録を更新中だ。魔法資質の無さを帳消しにできるほどのカリスマと超優秀な政治手腕のおかげで今の地位を維持できているに過ぎない」


クロノの言葉に頷き、「そうだよね」と呟くフェイト。
なのはも「地上の正義の守護者も地に堕ちたねー」とぼやく。
カミーユの方も、ここぞとばかりにレジアスをなじる。

「自分に無い力全てを妬み嫉み毛嫌いする。魔力資質が無いのはゲンヤさんも同じだと言うのに。どうやったらああも人として大きな差が生じるんだ?」
「他人を信じられるか否かの差だ。 信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始める。 そうやって自分自身を間違わせる。自分だけが英雄になろうとすれば、尚更だ。アレを見る度に他人を信じることの難しさを再認識してしまう」

クワトロもそれに続く。
しかし、みんなはやての表情がどんどん険しくなっていることに気付き、話を予言の方に戻す事にした。
カリムは、ページを手に持ち、内容を静かに読み上げる

「無限の欲望、『次元と大地の子ら』を名乗り、青いヴェールをまとう花嫁となりし、黒い翼なびかせる白と青の巨人と冥王の如き、二つの美しき星を欲する。
守り手達統べる三つの影と、それの威を借る堕ちた『地上の正義の守護者』の罪暴かれ、かの者が牛耳る地上を守りし騎士たち惑わす。
やがて無限の欲望は彼らの罪を理由に、騎士たちが守りし中つ大地を征する事を宣す。
そして、滅びし王の宮殿が中つ大地の法の塔を砕き、次元行く船をも屠らん。
されど三つの影は、古き夜空の風と金の角そびえし幻影を従えた赤い彗星に滅ぼされん。
堕ちたる『地上の正義の守護者』は、写された思い出の源泉たる白い冥王を取り込んだ、黒い翼なびかせる白と青の巨人に討たれ、欠片も残らん。
『次元と大地の子ら』と滅びし王の宮殿に挑みし者達の先頭に立つは、彗星と冥王の牙城なり」

この予言を聞き、クロノとカリム本人以外は驚愕する。
そしてカリムは冷静に、冷静に口を開く。

「……最高評議会とレジアス・ゲイズ中将の醜聞の露見による混乱と、その隙を突かれた地上本部と次元航行部隊の壊滅に伴う管理局システムの崩壊。そして最高評議会とゲイズ中将の討伐……! 解読されたこの予言の内容です」

カリムのこの言葉に、はやては表情を暗くする。
クワトロはお構い無しに、カリムに尋ねた。

「地上本部及び次元航行部隊の壊滅と、管理局システムの崩壊阻止。それが六課設立の真の目的か」
「……場合によっては、最高評議会とゲイズ中将の粛清も視野に入れられています。はやてはゲイズ中将の醜聞に関してだけは極めて懐疑的でしたが」

真剣な表情で答えるカリム。
どこまでが当たりなのかは分からない。
だが、プローフェティン・シュリフテンが未来の事を言い当てているのは事実であった
予言の一説に、クワトロは考えを巡らせる。
自分の異名がバッチリ出てきたのだから致し方ないが。

(古き夜空の風と、金の角そびえし赤い幻影……。リインフォースIと私のヅダか。『割りと良く当たる占い』と言うより、『滅多な事では外れない占い』と言った方が適切だな)


地上本部の最上階近くのフロア。
相変わらずレジアス・ゲイズがヒーロー物の悪役みたいな態度と目付きで、夕焼けに染まるクラナガン市街を見ている
その後には、オーリスが立っていた。

「よろしいのですか? 査察を行うのは一週間後で?」
「臨時だからな。その日のためにワシ自らメンバーを選抜した。ミラー一尉以下全員、指揮するお前を満足させるに値する優秀な者達だ。奴等の企みなど知らんが、この地上を守って来たのはワシという正義だ! それを理解できん『海』と教会の好きにさせてなるものか!」

己の言葉に醜く酔いしれながら、レジアスは続ける。
それに吐き気を覚えながらも、オーリスは上辺だけ肯定し、内心では「どこが正義なの?」と毒づいていた。

「何より、私には最高評議会という心強い味方がいる。この父が正義だからだ。そうだろ? オーリス」
「……はい」
「公開陳述会も近い。本局と教会を叩く材料になりそうな物を洗い出せ! 向こうはモビルスーツを抱えている上に、昨日ワシの命令で、あの小僧とシャア・アズナブルに任意同行を求めた首都航空隊第13部隊を襲撃している。楽な仕事になるさ」
「機動六課についてですが、事前調査の結果、かなり巧妙に出来ている事が分かりました」

オーリスはそう言って、モニターを表示させる。
そこに映し出される、はやてとなのはたちの写真。
オーリスが説明を始めた。

「若輩を部隊長にし、主力二名は本局からの貸し出し扱い。部隊長の身内であるヴォルケンリッターと、次元漂流者を除けば、後は新人ばかり。モビルスーツは何れも質量兵器と見なされないように魔力式に改造済み。Ζガンダムとズゴックに至ってはデバイス化されています」

モニターに映し出される新人たちと、カミーユたちの写真。
それだけでなく、Ζガンダム、ザク、シャアズゴの写真まで表示される。

「何より期間限定の部隊、言わば使い捨て扱いです。本局にトラブルが起きても、簡単に切り捨てる事ができる編成になっています」
「小娘は生贄か……。同類とそれを庇う異常者の二匹が主力。身内以外の戦闘メンバーも、人間モドキにあの役立たずのティーダ如きに魔法を学んだ凡人、デッドコピーと己の力を使いこなせぬ出来損ないか。犯罪者にはうってつけだな」

とことん吐き捨てるレジアス。
その態度に嫌気が差しながらも顔には出さずにオーリスは呟く。

「もっとも、これ自体彼女が自分で選んだ道なのでしょう」
「オーリス!?」
「首都航空隊第13部隊に関して、教会系列のある病院から「敷地内に押しかけ、『ゲイズ中将の命令だ』という理由で高町教導官一行を包囲していた」と苦情が来ています。今日の予定は消化済みなので、直接赴いて事情を説明された方がいいかと」
「……ああ」

何事も無かったかのように淡々と語るオーリス。
彼女の心は既に決まった。


同時刻。
予定よりも早く帰りついたはやてたちは、休憩室で一息つく。
ヴィヴィオはなのはに、ロザミィはカミーユにくっ付いたまま離れようとしない。
ちょうどヴィータも事が終わったのか、戻っていた。
今がチャンスとばかりに、クワトロはヴォルケンリッターの残りを集合させてもらおうとはやてに話しかけようとする。
が、突如として警報が鳴り、モニターに外の様子が映し出された。
映し出されたものを見て、カミーユは声を荒げる

「……ガンダムMk-II! しかも何でティターンズカラーに戻っているんだ!?」

そこに映っているのは、ドダイに乗りこちらに近づくガンダムMk-IIと、それを追うガジェットの群れ、そしてガジェットの指揮機と思しきモビルスーツであった。
既にバーニィのザクと、シャアズゴが出撃してガジェット目掛けて発砲している。
出撃しようとするなのはたちを制し、クワトロは「君たちはヴィヴィオとロザミィをなだめていろ」と言って一人休憩室を出た。


格納庫。
クワトロはヅダに乗り、コックピットに隠してあった旧約夜天の書を取り出す。

「旧約夜天の書よ、セットアップ!」

バリアジャケットを装着し、ヅダを起動させて出撃する。
格納庫から出た直後、ガンダムMk-IIを乗せたドダイがすぐ近くに着地。
コックピットハッチが開くところが視界に入るが、クワトロはそれに構わずエンジンの出力を上げる。
ジール物産製の新型エンジン「新星」の大推力でヅダは飛翔し、クワトロもリインフォースIに命令した。

「ユニゾン・イン・ヅダ!」

この声と共に、ヅダの体が光に包まれる。
装甲の一部に布地のようなものが張り付き、ヅダの頭部に銀色の長い髪の毛が生え、更にピンク色のモノアイが何故か真紅のデュアルアイに変わった。
倍以上に跳ね上がった推力で、ヅダはガジェットの群れに肉薄する。

「魔法を無効化出来ても、衝撃に耐え切られないのなら無意味だぞ!」

ガジェットは構わずレーザーを発射するが、ヅダは大気圏内とは思えないレベルの機動で楽々とかわし、ガジェットたちにすれ違う。
数秒後、超音速で飛ぶヅダの発した衝撃波で吹き飛ばされ、ある機体は味方機のレーザーが当たり、またある機体は複数の味方機にぶつかり道連れにしながら、次々と破壊される。
既に、バーニィのザクとシャアズゴのおかげでかなり減っていたせいか、ガジェットの数は少なかった。
そこに、指揮機と思しき機体に乗っている者からの声が聞こえる。

「……我、現在地の確保に失敗。これにより、奪われたフラッグシップと搭乗者たちの奪還、それ以上に妹たちの救出は絶望的と判断。残存ガジェットは全機、地上の二機に特攻させ、本気はこれよりヅダに突貫する!」


モビルスーツがいきなりコックピットハッチを開けたかと思うと、中からディエチたちと同じ意匠の服をまとった幼女が出てくる。
右手では入り口の縁を掴み、自分の機体より下の高度にいるヅダ目掛けて手に持った投げナイフを投げた。
ヅダは構わずモビルスーツ目掛けて加速、投げナイフを装甲で弾いた直後、突如として起きた爆発により視界を遮られてしまう。

「爆弾だと!? 何時の間に?」
「先ほどの者が投げた金属片が爆発したのです。恐らく、あのパイロットは何らかの方法で金属片を爆発物に変えたものと思われます」

驚愕するクワトロに、ヅダとユニゾンしたリインフォースIが説明する。
それに納得した直後、クワトロの脳裏に光の筋が走り、敵がこちらに突っ込んで来ていることに気付き、回避動作を取った。
直後、広範囲にわたる爆風を散らしながら円盤状の物体が突進。
すれ違いざまにヅダはその物体に蹴りを入れた。

「避けきっただと!? だが避けるだけでは、このチンクのアッシマーには勝てん!」

チンクが叫んだ直後、アッシマーは再び変形し、モビルスーツ形体に戻る。
アッシマーの緑のモノアイが光り、ヅダを睨む。
これを見たクワトロは、間髪いれずヅダをアッシマー目掛けて体当たりさせる。
左肩のシールドが顔面に直撃し、アッシマーのモノアイ保護用の風防が砕け散ったが、チンクは動揺しなかった。

「……超硬スチール合金程度ではな!」

アッシマーはヅダのコックピットハッチに蹴りを入れ、弾き飛ばす。
ビームライフルを構え、引き金を引く直前に、全く別の方向から飛んできたビームがビームライフルに命中。
驚いたチンクが振り向くと、そこにはビームライフルを構えたガンダムMk-IIの姿あった

「あの男、あの距離から……!?」

右手ごとビームライフルが爆発し、その隙を突きヅダはギリギリまで接近、ゼロ距離で90㎜マシンガンを発砲。

「認めたくはないだろう? 自分の若さゆえの過ちというものは」
「あ、アッシマーが!」

この言葉と共に、アッシマーの頭部が弾丸で砕け散ったかのように破壊された。
しかし、同時にアッシマーのコックピット内に、チンク以外の第三者の声が聞こえる。

「チンク姉!」
「セイン! 何時の間に忍び……」
「ドクターの命令! もしアッシマーがやられた場合に備えて忍び込んでおきなさいって!」

この会話に感づいたクワトロは、急いでコックピットハッチを抉り取り、中を覗く。
すると、セインと思しき少女が、チンクを後から抱きかかえた状態でコックピットから「抜け出す」最中であった。
そのまますぐに姿を消し、数秒後にアッシマーの脇腹から飛び出し、そのまま落下、地面へと「潜行」する。
乗り手を失ったアッシマーはそのまま失速、盛大な水柱をあげながら海に突っ込んだ。
それを見届け、着陸するヅダ。
その視界の先には、セインが潜行した地点を凝視し、顔を見合わせて不思議がっているザクとシャアズゴがいた。

「あの撃ち方と気配……君もこの世界に来たのか? アムロ」


その頃、ガンダムMk-IIが着地した地点。
ガンダムMk-II内のコックピット内には、操縦していた青年だけでなく、壮年の女性とその使い魔もいた。
青年が二人に話しかける。

「プレシアさん、リニス、大丈夫か?」
「私とリニスは大丈夫よ……」

プレシアの方は少し気分が悪そうだったが、何とか強がる。
青年が振り向くと、リニスが優しくプレシアの背中を摩っている所が見えた。

「ゼスト・グランガイツの言うとおり、この『機動六課』に本当にフェイト・テスタロッサがいるというのか? シャア、お前が身を寄せている機動六課に……?」
「アムロ・レイ、彼はウソをついているようには見えませんでした」

アムロの呟きに、そっとツッコミを入れるリニス。
アムロは振り返らずに、モニター越しに見えるヅダの姿をずっと見ていた。
夕焼けの中で吹く風が、モビルスーツたちと、アムロたちを保護するために出たフェイトを、撫で回す。




次回


魔砲戦士ΖガンダムNANOHA

ディム・ティターンズの影
~ニューメロの鼓動~

カミーユ・ビダンはリリカルなのはの夢を見るか?




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最終更新:2009年03月10日 20:33